フィルダース・チョイス

   今回も質問メールが来てまぁす。これ、アタシもわかんなかったからちょうどいいや。


理奈 「カントク、またメールだよ。えーと、平岡・・・・・・」
一平 「? どした、理奈」
理奈 「これなんて読むの?」
一平 「平岡・・・公威さんか。読みにくい名前だね。こりゃ「きみたけ」って読むのかな?
    ん? ひらおかきみたけ・・・?」
理奈 「あれ? 知り合い?」
一平 「平岡公威ったら、三島由紀夫の本名だよ!」
理奈 「ミシマユキオって誰?」
一平 「(^^;)・・・。もういい。しかし、これ本名なのかな?」
理奈 「ま、いいや。で、質問ね。
    ”フィルダースチョイスについて教えてください。テレビで見ていてもよくわから
    ない
のですが?”だそーです。アタシもよくわかんないんだけどな」
一平 「なるほどね。サッカーのオフサイドとともに、わかりにくいルールではあるね」
理奈 「なんなの、これって?」
一平 「フィルダース・チョイス(fielder's choice)ってのは、日本語では野手選択を訳され
    ているね。これは直訳だけどね」
理奈 「どういう意味?」
一平 「字句の通りだけど・・・。正確に言うならば野手選択ミスになるかな。具体的に言うと
    な、走者一塁で打者がセカンドゴロを打ったとする。打球を抑えた二塁手は一塁ラン
    ナーを刺そうとして二塁ベースカバーのショートへ送球したけど、エンドランがかかっ
    ていたため、予想以上にランナーの足が速く、一塁ランナーは二塁でセーフになって
    しまった。もちろんバッターランナーも一塁セーフ。こういう状況をフィルダース・チョイ
    スというんだな」
理奈 「そうか、その時、二塁手がセカンドじゃなくファーストへ送球していればバッターはア
    ウトに出来たかもしんない。だから選択ミスってことになるのか」
一平 「そうだね。まあ、一概にミスと言い切れない面もあるんだけどね」
理奈 「あ、でもさあ、こないだウチの練習試合であったじゃない。同じようなケースで、記録
    は内野安打だったことがさ」
一平 「あ、それね。例えばな、上記の例で言えば、打球を抑えた二塁手はセカンドへ送球
    してセーフになっちゃいはしたんだけど、仮に一塁へ投げたとしても間に合わなかっ
    たって場合だね。こういう時は内野安打になるんだよ」
理奈 「どこへ投げても間に合わない時はヒットになるの?」
一平 「そうだよ。いや、ちょっと違うかな。ひとつクイズを出そうか。上の例でな、ゴロを捕っ
    た二塁手が一塁へ送球したんだけど、これがセーフになってしまった。ただし、二塁
    へ送球すれば間に合った、という場合だ。これはどうなると思う?」
理奈 「えーと、やっぱフィルダース・チョイスかな?」
一平 「それが違うんだ。この場合は内野安打になっちゃうんだな」
理奈 「えーーー、なんでよ?」
一平 「この時は走者がいたけど、もし走者がいなかったらどうだ? 一塁間に合わなかっ
    たら当然内野安打だろ?」
理奈 「はぁ、そういうこと・・・」
一平 「結局、走者にかまけてて打者走者を殺せなかった場合、フィルダース・チョイスにな
    るってことかな」
理奈 「ふぅん。他にはないの?」
一平 「あるにはある。例えば、ランナー二塁でバッターがセンター前ヒットを打ったとする
    な。二塁ランナーが三塁を回ってホームへ向かった。センターはバックホームしたん
    だけど、この間にバッターランナーは二塁へ到達した。こういうケースだね。これは
    打者の記録には残らないんだけど、これはセンターのフィルダース・チョイスになる
    んだよ」
理奈 「そういうのってけっこうあるよね。でも、あんまり知られてないんじゃないのかな」
一平 「そうだね。新聞のテーブルスコアにも載らない記録だしね。同じようなケースだけど、
    走者一塁二塁で、打者がライトへヒットを打ったとする。二塁走者がホームへ向か
    い、ライトはこれを刺そうとしてバックホームした。この送球の間に一塁走者は三塁
    に到達した。この場合、一塁走者の三塁への進塁はライトのフィルダース・チョイス
    となるんだね」
理奈 「あ、ところでさ、バッターがフィルダース・チョイスになる打球を打ったら、記録はどう
    なんの?」
一平 「記録上は凡打と同じだよ。打数が増えるだけだ」
理奈 「あれ、そうなの? だってエラーでもないんでしょ?」
一平 「そうだよ。当然ヒットにゃならんわな。考え方としてはエラーに近いんだろうね。プロ
    野球評論家の大島信雄さんは「野手の失策を免除しているだけ」と言ってるんだけ
    ど、私もこの意見に賛成だね。エラーとまでは言わないけど、それに近いプレーって
    ことだろうね」