ビーンボール
理奈 「さて、今回も1週間で登場できました」
一平 「そうだな、もうそろそろ1週間単位は解放されそうだな」
理奈 「なんで」
一平 「そろそろ質問メールも底をつくから」
理奈 「あ、そうなんだ。じゃここもおしまい?」
一平 「じゃなくて、もっとゆっくり出来るかなって」
理奈 「質問はどーすんの?」
一平 「以前のように理奈が考えたっていいし、私もちょっと説明させてもらいたいことが
いくつかあるし、そういうのでもいいだろう」
理奈 「そなの? まあいいや。えーと、Tadasi Hironagaさんからの質問で、
「危険球でいきなり退場になったりしてますけど、ルール的にはどうなって
いるのですか」だそうですけど。ふーん、危険球かー」
一平 「どういうのかわかるか、理奈」
理奈 「うん。つまり、わざと相手のバッターにぶっつけることでしょ?」
一平 「まあ、そんなところだ。ビーン・ボール(bean ball)とかブラッシュ・ボール
(brushing ball)とか言うな」
理奈 「ふぅん。どういう意味?」
一平 「ビーン・ボールのbeanてのは、俗に「頭」のことを言うんだ。つまり、頭目がけて投
げるタマだからってことだろうな。で、ブラッシュ・ボールのbrushというのは、その名
の通りブラシのこと。ブラッシングということはブラシをかけるということだね。要する
に、髪にブラシをかけるようなタマということで、これも頭へ投げるボールのことだ」
理奈 「へー。で、ルールではどうなってんの?」
一平 「野球規則では、以前は「打者の頭をねらって」となっていたんだけど、昭和37(19
62)年に「打者をねらって」に改正された。厳しくなったんだね。さらに昭和54(197
9)年には、審判は迅速に処理するようにとされた。ウダウダやってないで、危険球
だと判断したら、さっさと処置しろってことだ」
理奈 「だんだん厳しくなってんだね」
一平 「そうだ。ここでさらにまた一歩厳しくなった。昭和64(1989)年の改正で、危険球
があったとき、審判員は「ただちに該当投手、もしくは該当投手と監督を退場
させる」か、「再度そのような投球があった場合、退場させることを両チームに
警告する」となったんだね」
理奈 「最初のはわかるけども、後の方のは? ビーン・ボール投げたチームだけじゃなく
て、投げられた方にも警告すんの?」
一平 「そうなんだ。これ、大事なことだよ。つまりな、ビーン・ボールまがいの投球があった
場合、両チームともにエキサイトし過ぎてしまって、報復合戦になりかねないからな
んだ。だから、最初に危険球があった時、その投手を退場にした場合でも、しなくて
警告だけのときでも相手チームにも、「今度やったら退場だからね」と念を押しておく
わけだ」
理奈 「でもさあ、内角にキビシーのを投げるって、ある程度しょうがないんじゃないの?」
一平 「もちろんそうさ。インサイドを思うように攻められなくなったら、投手にとって死活問題
だ。クラウチング気味の打者とか、必要以上にかぶさって構える打者に対して、内角
を攻めて身体を起こし、外角への変化球で仕留めるというのは常套手段だ。まさか、
これをやめろというわけにもいかない」
理奈 「てことは、ピッチャーはわざをぶつけようとしたんじゃなくても危険球扱いになっちゃ
うってことなの?」
一平 「ルール上はそうなっている。野球規則にはね、「審判員は自己の見解でタイムを
かけたのち、投手と守備側チームの監督に警告を発して、ふたたび繰り返したら退
場させるべきである」と、しっかり書かれているんだ」
理奈 「審判の判断は絶対なんだね」
一平 「その通り。審判はグラウンドの神様なんだからね、当然と言えば当然だ。また、そ
うしないと収拾がつかない、というのも確かだしね」
理奈 「わざとじゃないのに退場じゃあ、ピッチャー気の毒だね」
一平 「まあね(^^;)。ただ、打者は投手の投球に対して、身を守る術がない。故意にせ
よ過失にせよ、ある程度は投手に厳しくなるのはやむを得ないね。それでも、速球
でブラッシュ投げられるのと、明らかに変化球のすっぽ抜けでぶつけるのを同列に
してしまう、というのも問題あるかも知れないね」
理奈 「でさ、一発で退場になっちゃうのと、警告になるのって、どういう区分けになってん
の?」
一平 「さっきも言ったけど、審判の判断に尽きる。まあ、頭にガーンとぶち当てちゃったら
これは一発だろうね。当たらずに打者がのけぞるようなタマとか、肩のあたりに当て
たのであれば、これは警告止りかな」
理奈 「それも審判次第なんでしょ?」
一平 「そ。厳しい人もそうでない人もいるんだろうね」
理奈 「でもこれってプロのお話なんでしょ?」
一平 「とんでもない。アマも含めた野球規則8.02bだよ。ただ、細かいところは違うけど
ね。警告を発した後も、危険球が繰り返されるようなことがあれば、プロの場合、
リーグ会長から制裁金が科せられる。特に悪質な場合は出場停止なんてこともあ
る。一方、アマの場合はその試合限りの退場処分だ」
理奈 「うん、わかった」
一平 「ついでだ、もひとつ覚えておいてもらおうかな。野球規則8.02bにこういう記述
もある。「種々な状況から、反則行為が起こりそうなときはあらかじめ警告を与え
る」とある」
理奈 「なに、種々な状況って?」
一平 「相手にぶっつけたくなる状況ってことだ。これは何も死球はブラッシュに限らない。
例えば、危険なスライディングがあったとか、クロス・プレーで交錯したとか、いくらで
もあるだろう。こういう場合、双方のチームが報復として、相手打者にぶっつける、と
いうことが十分に考えられるわけだ」
理奈 「そうかー」
一平 「こういうこともある。相手のバッテリー、つまり投手や捕手が打席に立ったら、あまり
厳しいボールは投げにくいものなんだ。なぜか? つまり、簡単に報復されるからだ。
これがあるから、メジャーでも捕手にはきわどいボールはなかなか投げない」
理奈 「正直なところ、ピッチャーって狙って投げることあんのかな?」
一平 「確信があるわけじゃないけど、恐らくは。江本孟紀氏なんかは、自著ではっきりそう
言ってるね。あるいは中日の星野監督なんかも、わざとぶつけたことがあると認めて
いる。ただ、この人の場合、巨人の王(現・ダイエー監督)を敬遠する指示に反発して
王のお尻にぶつけたんだそうだ。直後、王を見ると、王もニヤッと笑ってたそうだよ。
こういうのは罪がないけどね。もちろん、ミスでぶっつけてしまうことも多いんだろうけ
ど、明らかに悪意でぶつける人も、残念ながらいるのかも知れないね」
理奈 「……」
一平 「インサイド攻めのこともあるし、難しいところだけどね」