野球十戒


理奈−「またなんかムツカシイこと言ってるし」

一平−「そうか。そうだろうな(ため息)。実はな、ついこないだのことなんだが、ふと思いついたことが
     あってな、各検索サイトでこの野球十戒について当たってみたんだよ」

理奈−「へぇ」

一平−「そしたらまあ、Yahoo!もGoogleも、見事なくらいヒットしないんだ。野球十戒というタイトルじゃなく
     って、中の項目でも検索してみたんだけどね、これもダメ。ひとつ、有名な格言だけはいくつかネタ
     として掲載されているところもあったんだけど、十戒全部となると壊滅状態だね(少なくとも日本語
     サイトは)」

理奈−「どうでもいいことだからじゃないの?」

一平−「いや、そうじゃないよ…。ないと思うよ。でな、これは日本の野球ファンとして放っておけない気が
     してな。内容的に納得できるかどうかは別にして、野球ファンを名乗る人であれば、こういうものが
     あるということは知っていて欲しいんだよ。だから今回取り上げることにしたんだ」

理奈 「なんか大げさだなあ。まあいいや、で? どういうの?」

一平 「その前に、おまえ「十戒」って言葉の意味知ってるか?」

理奈 「アタシに何を期待してんの?」

一平 「そうでしたね(^^;)。十戒の十は言うまでもなく10のことだな。戒の方は、これは訓読みすれば
     いい。「戒め」ってことだね。つまり、簡単に言えば10個の格言集ってことだ」

理奈 「格言? 時は金なりとか、そういうやつ?」

一平 「なんか短絡的だが、まあいい(^^;)。そうだ、そういうもんだ」

理奈 「あームツカシイ話かー」

一平 「そうでもないから聞いてくださいよ(^^;)。じゃ、以下に羅列するよ。

  1.ボールの後ろをのろのろ歩いている者は、決して野球選手にはなれない。

  2.肩にかついだバットを離さなければ、3割打者にはなれない。

  3.昨日、自分がやってことを過大に考えている者は、その日、大したことは出来ない。

  4.頭を持ち上げていろ。決してうつむくな。

  5.いったん滑り込んだら、どんなことをしても滑り込め。

  6.あれはバウンドが悪かったと言い訳するな。バウンドが良ければ誰でも捕っている。

  7.いつも駆け出せ。口で用を足そうとするな。

  8.途中で放棄するな。

  9.あまり深く審判の欠点をほじくり出そうとするな。

 10.コントロールを身につけていない投手は、何も身につけていないのと同じだ。

     こんな感じですね。どう思う?」

理奈 「なんて言うか…。そうだな、なんか野球に限らない感じがするかな」

一平 「ああ、なるほど、そうだね。これはね、元々はメジャーに入ってくる新人選手に対する、基本的な
    注意事項なんだね。だから、野球はもちろんだけど、社会人としても通用するような人間になれ、
    という意味合いもあるだろうね。これは、セントラル・リーグの選手教本に載ってたんだけど、今でも
    載ってるのかな?」

理奈 「すごい基本的な事柄だよね。プロっていうより学生野球っぽい感じかな」

一平 「ああ、そうだね。学生野球とかアマチュア野球でも十分に通用する格言集だと思うから、是非とも
    参考にして欲しいな」

理奈 「でもさ、アタシ、メジャーの十戒ってのを何かで聞いたことがあるような気がするんだよね。それって
    これとは違ってたような…」

一平 「メジャーの十戒? …なんだろな…」

理奈 「んーー、なんだったかなー。えーと、確か、「乱闘になってもケリはダメだ」とか」

一平 「あはははは、なんだいそりゃ(^^;)」

理奈 「他にはね、ノースリーから打つな、とか…」

一平 「……。(!) あ、ああ、わかったわかった! 思い出したよ!」

理奈 「ほら、あるでしょ?」

一平 「やっとわかった。そりゃMLB十戒ってやつだな」

理奈 「そうなんかな。で、それって同じ十戒なのに、さっきのとずいぶん雰囲気違わない?」

一平 「そうだね。これは十戒というよりは不文律と言った方がいいからね」

理奈 「不文律?」

一平 「うん。日本語でわかりやすく言うと「べからず集」とでも言うかね。だから、こういうことしちゃ
    いけないよってやつ。文章としてあるわけじゃないけど、これはこの世界の常識的なことだから、
    憶えておいてね、って感じだよ」

理奈 「へー。全部わかる?」

一平 「一応な。野球十戒との比較という意味もあるし、書いてみようか。

  1.ノーヒットピッチングの阻止や、連続ヒット記録のためにバントしてならない。

  2.大量にリードしているゲームで、カウント0−3からヒッティングするな。

  3.大量にリードしているゲームの終盤ではバントなどするな。

  4.大量にリードしているゲームの終盤では盗塁などするな。

  5.大量にリードしているゲームの終盤では二塁走者はシングルヒットでホームインするな。

  6.打席で、投手の投球コースを知るために、捕手を覗き見るな。

  7.ホームランした時、打席で自分に酔うな。

  8.打者にぶつけるときは、腰から下を狙うこと。

  9.乱闘になってもバットを持ち出すな。

 10.乱闘になっても足蹴りするな。

     こんな感じだね」

理奈 「ふうん。これってちゃんと守られてんの?」

一平 「ああ。むしろ最初の野球十戒よりもきちんと守られてるんじゃないかな。先日もな、SFジャイアンツの
    新庄が、この不文律を破ったことがある。大差でリードした終盤に、ノースリーからフルスイング、見事に
    ホームランしちゃったんだな」

理奈 「あ、新庄ってば守んなかったの?」

一平 「ああ。よく知らなかったのかも知れないな。相手チームは怒ったね。お返しは迅速だったよ。早速、次の
    打席で初球に死球だったからね(^^;)」

理奈 「あらら。でも、そういう時はまたさらにお返しとかにならないの?」

一平 「ならない。ジャイアンツも新庄が打っちゃった時は「あらー」って思ってたんじゃないかな。だから、その
    お返しが死球だったことには文句は言わなかった。ただ、この時に新庄に対してビーンボールでも投げ
    てたら、今度はジャイアンツが逆ギレしてたろうな。この時は確か脚だったからさ」

理奈 「さっきの野球十戒とは根本的に違うような…」

一平 「まあそうだな。最初の十戒の方は、自分自身が成長するための格言集みたいなものだからな。一方、
    こっちのMLB十戒はと言えば、自分ではなく相手のチームや選手に対する礼儀と見た方がいいな。
    だから相手を重んじるということもあるし、ヘタに破れば手痛いしっぺ返しを食らうかも知れない、という
    ことがあるから、必然的に守られるわけだろうな」

理奈 「でもこっちはアマチュアは参考にしない方がいいね」

一平 「まったくだな。この辺は欧米人と日本人の違いとしか理解しようがないしな。まあ、7から10までは
    なんとなく理解できると思うんだが、1〜6は本当に違うね。特に1なんか、ノーヒットピッチングをやる
    くらい調子がいい投手を崩すためなら、脚のある打者がバント攻撃するなんてのは、むしろ日本では
    セオリーになってるくらいだしな」

理奈 「そうだよねぇ。10点勝ってても送りバントするなんてのは、高校野球じゃふつうにやってるもんね」

一平 「だな。日本は、たとえ10点リードしてても相手に11点とられないという保証はないじゃないか、
    だったらとれる時にとっておくのは当たり前だ、という考え方だな」

理奈 「向こうは違うのかなあ」

一平 「そうなんだろうな。アメリカでは、相手は10点もとられて十分に屈辱感を味わっているんだ。戦意も喪失
    しているだろう。なのに、なぜ敗者にむち打つようなことをするんだ。相手に対して失礼だ、という考え方
    だな」

理奈 「でもさ、日本ていうか、アタシだったらさ、10点負けてて、相手が5みたいなことしてきたら、逆にアタマ
    に来る気がするよ。なめてんのかって」

一平 「だよな。日本人は比較的理奈みたいな思考をすると思うよ。だからまあ、最初の野球十戒はともかく、
    こっちはあんまり気にしないでいいんじゃないかなあ。参考にすることはしてもいいけど。乱闘になって
    もバット持ち出すな、とか(^^;)。まあ、それ以前に乱闘になるな、って気はするが(^^;)」

理奈 「でもこれも、ルールにはないことだよね。だから、そのことに従うかどうかっていうのはきわどいと思う
    んだけどなあ」

一平 「そうだよな。これは私自身も今ひとつ自分を納得させられないんだよ。こういう不文律はあった方がいい
    のか、という問題。それと、逆にルールで規制されていなければ何をやってもいいのか、という問題ね。
    これ、次回のこのコーナーでも取り上げたいと思うんだよ。今度は別の例を出すから、それを読んで
    感想なりご意見なりを掲示板にいただきたいな。なにも次回掲載を待つまでもないです。今回のを読んで
    思ったことも気軽に書いて欲しい。どう思うべきなのか、どう適用されるべきなのか。20年も野球と
    関わってきて、未だに結論を出せません。みなさまのご意見をお待ちしています」


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