・野球の始まり



理奈−「あのさ、アタシの「教えて!野球」でもちょこっと話した野球の始まりのお話しよーよ」

一平−「「アタシの」ですか(^^;)。野球の始まりか」

理奈−「もちろん、アメリカよね」

一平−「国技だしな。もっとも、モデルはイギリスのクリケットだと言われている。だからまあ、アレンジしたもの
     だな。しかし、今や洗練されてるしオリジナルと言っていいだろうな。ちなみに、アメリカ発祥のスポーツ
     というのは案外少ないらしいんだ。バスケットなんかは起源もハッキリしているし、完全にアメリカ発祥
     だけどね」

理奈−「そんで野球の方は?」

一平−「1839年、アブナー・ダブルディという人が、ニューヨークのクーパーズタウンで行なったのが最初という
     ことになってるな」

理奈−「クーパーズタウンて確か野球の殿堂があるところじゃなかったっけ?」

一平−「よく知ってるな、その通りだ。野球に功績のあった人々を顕彰するための殿堂を発祥の地に設けたわけ
     だね。だけど、その後の調査で、実はクーパーズタウンより先にニュージャージーのホーボーケンでプレイ
     されたのが最初だ、という説が出てきている。事実、ホーボーケンにはその記念碑があって、そこには
     『1846年6月19日、最初の野球の試合がエリジアン・フィールドにおいて、ニッカーボッカーズVSニュー
     ヨーク・ナインの間で行なわれた。その時点まで、野球は存在していなかったと一般的に認められている』
     と彫られているそうだ」

理奈−「ふぅん。じゃ、どっちなんだろ?」

一平−「さぁな。150年も前の話だからなあ。記念碑があったと言っても、そんなものは後年建立されたものだろう
     し、証拠というには頼りない。まあ、どっちにしても1845年にアレキサンダー・カートライトという銀行家が
     野球のルールを体系化したというのは事実らしい」

理奈−「前に話したように最初に21点とったら勝ちってやつね」

一平−「そうそう。ただ、あの時は説明不足だったけども、21点とったら勝ちっていっても、その時点でいきなり
     終わりってわけじゃない。初回表にいきなり21点とってしまったら、その裏の攻撃がないんじゃ、これは
     不公平だな。というわけで、1回表に21点以上入っても、一応3アウトまではやる。そしてその裏の攻撃
     も行なうんだな。その結果、先攻チームの得点においつけなかったら後攻の負けだ」

理奈−「なんかヘンだなあ」

一平−「それにどれくらい時間がかかるかわからないよな。これも「教えて!野球」でやったが、当時の投手は
     下手投げ(ソフトボール投法)だったし、四球も三振もなかった」

理奈−「ああ、それも前にやったね」

一平−「うん。つまりは、投手は打者がフェアの打球を打ってくれるまで投げ続けなくちゃならなかったわけだ。
     ボール球をいくつ見送っても四球にはならず、逆に好球を見逃したり空振りを続けてもアウトにもならない。
     どうしたって打球を打たなくちゃ先に進まないんだな」

理奈−「それは時間がかかるでしょう」

一平−「そう。これじゃかなわんということで、1857年に最初のルールブックを作った際に、ヘンリー・チャドウィック
     記者が、9イニング終了時点をもって、得点を多くとっていたチームを勝ちとする提言を行なったわけだ」

理奈−「四球のいつ出来たんだっけ?」

一平−「「教えて!野球」の繰り返しになるけど軽く説明しようか。1880年に9ボール出塁制となり、1882年に
     7ボール、1884年に6ボール、1887年には5ボールとなり、そして1889年に現状の4ボールとなった
     わけだね」」

理奈−「関連事項は、「教えて!野球」の「フィールド距離」、「四球について」を読んでくださいね。
     ところで、さっきの話で、なんで9回なの? 別に10イニングでもよかったんでしょ?」

一平−「あ、なるほど。これについては、元のセントラル・リーグ企画部長の故・八木一郎氏がこういう話をしていた
     そうだ。12進法のためだろうというんだな」

理奈−「あのさ…」

一平−「待て、12進法ってなに?とか言うんじゃないだろうな(^^;)」

理奈−「バカにしないで、それくらい知ってるわよ。そうじゃなくて、なんで12進法が出てくんのってこと」

一平−「アメリカの単位の基準を考えてみろ。1ダースは12個だな。1フィートは12インチだ。つまり、そういうこと
     だ。だから当初は12回というのを考えたらしいが、これは少々長いんじゃないか、ということで9になった
     らしい。12進法ってのは、基本的には3の倍数で増減するらしいんで、12回から3回減らして9回にした
     んだろう、ということだ」

理奈−「あれ、だって塁は4つじゃん。12進法でも3の倍数でもないよ」

一平−「鋭いね。でもな、1塁(ファースト)、2塁(セカンド)、3塁(サード)と本塁(ホーム)。つまり4塁とは言わない
     よな。ホームは特殊なんだ」

理奈−「そうか。他にあるかな。バッターとピッチャーの距離については「教えて!野球」のフィールド距離でやったし。
     あ、なんでホームベースは五角形なんだろうね?」

一平−「ああ。1900年のことだよ、五角形になったのは。それ以前は他のベースと同じく正方形だったんだ。だけど
     正方形だとね、内外角ギリギリのボールの判定がしづらかったらしいんだ。そこで隅を切り落として四角形に
     したんだそうだ。おまけに、その頃は他の塁と同じように厚いベースだったんだけど、これだと低めのボールを
     打った時にバットがベースに当たっちゃったり、あるいはベースにボールが当たった時のバウンドの不規則さ
     を考慮して、今のような薄いゴム製になったと聞いている」

理奈−「ルールもどんどん進歩してるんでしょ?」

一平−「そうだ。面白い例だとこんなのがある。1957年のことだが、メジャーでレッズ対ブレーブスが行なわれて
     いた。1回表のレッズの攻撃で、1死走者1,2塁。ここで4番打者が平凡なショートゴロを転がした。これは
     おあつらえ向きのゲッツーだ、とばかりにブレーブスのジョニー・ローガン遊撃手が前進した。と、その時、
     2塁走者のホークが、このゴロを両手で捕ってしまった」

理奈−「へ? ランナーが? なんで?」

一平−「打球に触れたわけだから、無論、走者はアウトだ。ホークも当然知っていて、打球を捕るとショートのローガン
     に「オレ、アウトね」と言って、ボールをトスした」

理奈−「わかんないなー」

一平−「ルールでは打球に触れたら走者はアウト。だけど、打者にはヒットが記録されてボールデッド。つまり…」

理奈−「そうか、ゲッツー逃れだね」

一平−「正解だ。ホークの行為がなければ文句なくダブルプレーなんだから、ゲッツーでチェンジだ、とレッズ側は
     抗議したんだけど、残念ながら、その当時「併殺阻止工作」に関する規定がなかったんだな。従って、審判
     としてはレッズの抗議を退けざるを得なかった」

理奈−「う〜〜ん」

一平−「だけど、その一週間後に、両リーグ会長から以下の通達が出された。
     『ダブルプレーを阻止しようという目的で、走者が打球を故意に妨害したと審判員が判断したときは、その
     走者をアウトにするとともに、その走者のすぐ次の走者にもアウトを宣告する。同時に試合停止球(ボール
     デッド)となり、進塁も得点も認められない』
     この規則は即日発効され、翌年のルールブックにも記載された」

理奈−「不都合があればすぐに改訂されるんだね」

一平−「アメリカのいいところだな。こんな風に、ルールってのは生きている。どんどん進化しているんだ。それだけ
     に複雑な面もあるんだけど、そこかまた野球の魅力だと考えて欲しいね」


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