アマチュア野球の行われるところ、プロのスカウトあり。高校野球、大学野球、社会
人野球はもちろんのこと、場合によっては中学野球の大会にも顔を出したりする。
さすがに草野球まで見ることはないと思われるだろうが、実はある。草野球出身の
選手で有名なのは現広島投手コーチの大野豊だろう。何せ軟式野球の出である。
昔、西武でドラフト1位指名され、世間を「あっ」と言わせた森山投手も、硬式とはい
え草出身と言っていいだろう。森山は新人王を獲得している。
草野球まで見なければならないとはご苦労な話だが、これは無論、例外的。実際は、
各地に情報網を持っていて、そのスパイ(^^;)とも言うべき情報提供者から、「これは」と
いう選手の報告が入る、というのが一般的なシステムらしい。
最近、ここに新顔が目立つようになった。メジャーのスカウトである。もっとも、注目さ
れるようになったのが最近だ、というだけの話で、実際はかなり昔から日本にも入り込
んでいる。ただ、野茂や朴(ドジャース)の活躍で、アジア方面の選手にメジャーの目が
集まっているのは確かだ。
では、その大リーグのスカウティング・システムはどうなっているのか?
ヤンキースなどのような名門や、資金的に恵まれている球団は、メインスカウトや各方
面担当スカウト、情報提供者やパートタイマーまで含めると、実に50名以上もいる。
日本でスカウトを10名も抱えている球団は恐らくないだろう。
また、前述の通り、日本や韓国、台湾、中国の選手にも触手を伸ばし始めたため、
なお一層スカウトの数も増加している。
とはいえ、ここまで出来るのは、一部の金持ち球団だけなのは確かで、実際は日本と
そうは変わらない数しか抱えることの出来ないチームも多いのである。しかしそれでは
ますます球団格差が開いてしまう。
そこで考え出されたのが、スカウト専門会社なのだ。思うようにスカウトが雇えない
球団が資金を出し合って、野球選手スカウトの専門機関を設立し、そこで選られた情報
を平等かつ確実に受けとるというシステムなわけだ。
MLSB(メジャーリーグ・スカウティング社)は、1968年に20球団の出資のもとに
設立され、80名のスカウトが参加して、それぞれの地区を担当し、加盟チームに情報
を送った。
調査方法としては、A大学にBという選手がいたとする。この選手がカリフォルニアで
ゲームや練習を行なう場合は、カリフォルニア担当のスカウトが詳細なレポートを作成
する。B選手が遠征でワシントンで試合をした時は、ワシントン担当スカウトが彼を見て
レポートする、という、完全な担当地区制を採用している。
こうすることにより、選手を複数の目で公正に見ることが出来(日本は、ほとんどその
選手担当という形を取ることが多く、その弊害は言うまでもない)、スカウトたちの労力
を減らすことが可能なばかりか、交通費の節約にもなっている。
共通なレポートを加盟球団は受け取り、そこに自球団スカウトの意見も参考にしなが
ら、独自判定を加えて、ドラフトに臨むわけだ。至極合理的かつ有用なシステムではな
いか。
日本にこそ、このスカウト会社が必要なのではないか。確かに日本はアメリカに比べ
国土は狭く、選手層も薄いが、スカウト対象地区は世界へ広がっているし、この先、さら
に広がることはあっても、狭まることはないのだから。
大体、アメリカに在住スカウトをひとり置いてるだけで、外国人選手を獲ろうという球団
が多いし(それすらいない球団もある)、国内スカウトも、あれこれ掛け持ちで過重労働
を強いられている有り様だ。
日米の野球協定で、双方のドラフトに引っかかった選手は獲得できないことになって
いるが、逆に言えば、そこから洩れた選手なら取れるのだ。ここ数年、毎年のように、
アマ選手が大リーグとマイナー契約を結んでいるのをご存知だろうか? 実際、筆者の
住まいの近所にある某大学の投手がドジャースとマイナー契約を結んだ。最初聞いた
時は大層驚いたものである。何せ、その大学も参加しているリーグも、プロのスカウト
は見向きもしないレベルだったからだ(事実、その昔、その大学は地元の進学高校野
球部と練習試合をして、見事にコールド負けした(^^;))。
日本のスカウトが見落とす選手を、メジャーは確実に拾って行っているのだ。
常識的に考えて、選手層はアメリカの方が厚い。1回のドラフトで1,000人近い選手
が指名されるのである。それでも、お零れは日本より遥かに多いはずだ。それを獲得し
ない手はあるまい。
恐らく、12球団中、某球団だけは反対するだろうが、是非ともスカウト会社を設立し
て欲しいと考える。