例にもあった「ランニング・ホームラン」。日本野球では一般的な言葉
なのだが、もちろん和製英語。英語だと、ずばり「Inside park homerun」。つまり
グラウンド内のホームランというわけだ。
アメリカ人はこう言う。
「だってそうだろ、他にどう言うんだい。ウォーキング・ホームランかい?」
他に有名なのは「デッドボール」。死球ですね。これも典型的な和製英語。本当は
「hit by pitch」という。
アメリカ人ならこう言う。
「デッドボール? ボールデッドのことかい?」
どうも、日本人はここから勘違いしたらしい、というのが有力な説だ。ボールデッドと
言うのは、プレイ中止のこと。つまり、その時ボールは死んでるよ(試合停止球)、と
いう意味なのだ。
例えば、審判がタイムをかける。この時の状態がボールデッドなのである。
死球が打者に当たった場合は、審判は死球を宣言して打者を一塁に行かせる。
実はこの時のボールも、ボールデッド状態なのだ。つまり、初期の野球で、死球の時、
アメリカ人審判が「ボールデッド」を宣告したので、そそっかしい誰かが、「そうか、打者
にボールが当たるとボールがデッドか。当たると死ぬほど痛いからかな」と思った
らしい。
バントも面白い。よく言う「セーフティ・バント」。これもアナウンサーの実況を聞いて
いるとおかしい。セーフティ・バントというのは、セーフになって初めてセーフティ・
バントなのであって、試みた状態では当然セーフティという言葉は使わないのである。
じゃあどう言えばいいのだ、ドラッグ・バントか、というと、これも違う。
ドラッグ・バントのドラッグというのは、「引きずる」って意味で、左打者がバットを抱えて
一塁方向に引きずるように行なうバントをドラッグ・バントというのだ。
従って、どうやっても右打者には出来ないし、三塁側のバントは絶対にドラッグ・バント
とは呼べないわけだ。
じゃあプッシュ・バントはどうだ? プッシュ・バントのプッシュてのは、もちろん「押す」
って意味ですわな。左打者なら三塁側へ、右打者なら一塁側へ軽ーく押し出す
ようなバントをプッシュ・バントと言います。
他にもいろいろあります。「リリーフ・エース」や「フォア・ボール」、「ウェイティング・
サークル」、「ハーフ・スウィング」とかね。これらはまた別の機会に。
同じ言葉ってないのか、と思ったあなた、ご安心を。あります、あります。
「ファール・チップ」とか「セーブ」、「ボーク」、「シャット・アウト」なんてのは同じです。