White Angel
種別 音声 アニメ メーカー・ブランド 発売日
AVG なし なし light 1999.12

【いっせいの評価】

シナリオ システム 音楽 CGレベル エロ度
7 8 9 9 2
ハマり度 期待度 感情移入度 切な度 特別加点
8 9 7 8 8
総合点 俺のキャラ
75 便利なのは藤咲綾だけどなあ。

【コメント】
 うちの「エロゲ論」のページでも取り扱ってますけど、「To Heart」というゲームの完成度と影響力は、そりゃあもうたいしたもんでした。ことシナリオとシステムに関して言えば、いまだに、あの分野では最高峰に位置するゲームじゃないかと思います。足りないのは声くらいでね。それもPS版じゃ入れたから、あの声で18禁でエロ入ってたら俺は葉っぱっ子になるぞってくらい評価してます。シナリオをうちの1位にしてるのはご存知の通り。
 さて。何でそんな話を、ここでしてるかと言うと。
 このゲームは。というか、
 このシナリオは。もちろん、設定も。
 リーフとKEYの、非常に大きな影響に晒された、作りなんです。
 ちなみにこの「さて。」から「作りなんです。」までの4行は、後で取り上げますけど、このゲームのシナリオの、最も顕著な特性をコピーしたものです。そうとは言い切れないけど、どうやらシナリオで勝負しようとしているゲームのようなので、その辺りをみっちりとレビューしないと失礼に当たるかなあ、ということで。
 最初に断っておきますが、俺はこのゲーム、気に入りました。楽しみました。何だかんだ言って、こういう純愛系のビジュアルノベルってのは大好きなんですね。どうやら俺は、一歩間違えば、まっとうなソフト志向のエロゲーマーになれてたようです。一歩間違わなかったんで、こんなんなっちゃいましたけど。
 このゲーム、タイプとしては、あまりにも使い古されてきたんでもう誰も使わないかと思われていた分野、学園純愛ADVです。もうこの時点で、さあ「東鳩」なのか「ONE」なのかはっきりせえ、という感じになっちゃいますね。0310氏の「Paper Company0310」でのレビュー(だったかBBS上のカキコだったかこの辺記憶が曖昧)でも、「紅い髪した幼馴染みが出てきて失笑」というお話がありまして、それだけはプレイ前に読んでしまっていたもんで、結構覚悟を決めて遊び始めたんですが、・・・天然系のキャラに鯛焼き食わすのだけはやめて欲しかった。作ってる方々はオマージュのつもりなんでしょうが、プレイヤーからすると、いちばん好意的に受け止めても「自己満足のパクリ」、いちばんキツい見方なら「キャラクタ創造能力の欠けた製作者が最後に掴んだ“わら”」ですね。パクリとまでは言いたくありませんが、「東鳩」や「ONE」「Kanon」が通ってきた道を通りたくて仕方がない人達の作品、という臭いが必要以上にきつかった。わざわざこういった形で証拠を残すこともなかったんではないでしょうか? 判る人には判るんだから。
 思うに、学園純愛ADVという分野を選択した段階で、「東鳩」やら「ONE」「Kanon」とは比べられる運命にある訳ですし、全く違う土俵で戦うつもりじゃない以上、似てしまうのは仕方のないことだと思います(珍しく擁護してますが、もちろん、パクリを推奨するつもりは毛頭ありません)。ただね、女の子だけの姉妹が出てきたから、それが4人姉妹だったら「若草物語」風、というとんでもないくくりを作りたがる向きには、俺なんかが語るべきじゃない「パクリ」と「盗作」の違いとか、そういう微妙な問題なんかこの際どうでもいいんだろうなあ、などと最近思うんですよ。
 ただ、大きな不満があります。この「White Angel」では、各シナリオで、必ず、それぞれの女の子に暗い過去っつーか重い枷っつーか、そういうものが設定されている、という点。それに合わせて、基本的には同じパターンで、主人公も暗い記憶を背負っていて、しかもそれを忘れている、という部分。
 これだけはやっちゃだめだよ。その瞬間に、シナリオが安っぽくなっちゃうもん。昼メロと一緒。不治の病か両親の死か知らんけど、そういう重いものは、とことん重く扱うか、とことん軽く扱うか、いっそ扱わないか、しか許せません。俺はね。で、それを軸にしたシナリオは、「Kanon」である種の完成形を見せてしまっているから、それ以上のものってのは難しいよ。あれだけ作為的に書いたシナリオでも、ようやく破綻しないでストーリーを進めている訳だから。作為を忘れた瞬間、こういうタイプのシナリオは、偽物である以上、うすっぺらになります。「Kanon」ももちろん例外ではないんだけど、俺の評価は、「Kanon」てのはそういう制約のある中で、構成力と文章力でプレイヤーを納得させられている(というか納得せざるを得ないものに仕上げている)、この「White Angel」は残念ながらその域までは達していない、というものです。
 そこで思い至るのが、文章力、という厄介な能力の存在なんですよ。
 このゲームのレベルで7点というのは、もちろん、ストレートな評価ではありません。10点満点はさすがにムリかもしれないけれど、少なくとも9点のレベルではある。後半、それと各エンディングに盛り上がりが欠けるきらいはあるけど、基本的には破綻もなく、不快な気分にさせられる変換ミスもほとんど見受けられなかった。
 じゃあどうして7点か。これは、最初に触れた、この文章の顕著な特性に、あるべき個性が見出せなかった、というのが要因です。ま、平たく言えば、こりゃ模倣だよ、ということですね。「てにをは」の後で句点を打つ。内容を強調するために、あえて読点を増やす。「というか。」、この言い回し。判る人には判るって。
 新井素子そのまんまじゃん。
 いや、もしかしたら、ライターさんにはその自覚はないのかもしれない。俺、最近のSF界に疎いんで、彼女がどういう位置に置かれているか、その影響力ってのはどの程度なのか、その辺の知識が欠けてるんですよね。だから、別にこのシナリオのこの言い回しは模倣じゃなく、たまたま行きついた先が同じところ、同じテクニックだった、というだけのことかもしれない。とんでもない言いがかりなのかもしれないんだよ確かに。
 でもね。こんだけ似てると、俺には我慢がならないんです。そういう訳で、一方的な言いがかりになっていてもやむを得ないということで、7点。
 構成力もちと足らないんで、それは模倣とかそういうことはまるで関係ないから、さらなる精進を願います。材料は揃えてある、キャラも立ってる、じゃああと足りないのは何かというと、この構成力ということですから。あの「青い光るかけら」を、もう少し巧く使って欲しかった。ただの光る石としか読み取れないような文脈は、幻滅の対象でしかありません。主人公の設定も生かしきれてない。設定自体がリーフやKEYに対するオマージュのつもりなら、もっと極端にするか、いっそほとんど触れないか、しか方法はないんじゃない? 
 結局、「東鳩」の設定で「ONE」をやろうとして、さらに「Kanon」を絡めようとした、その方法論に無理があった、という結論ではいかがでしょうか? 俺はこのゲームをやって、改めて、「東鳩」の凄さを認識しました。イタくなくても、きっちり締められるシナリオ、っていうのが、俺の中では理想のシナリオです。いろいろな要素をぶったぎって、その部分だけで考えたら、やっぱり「東鳩」は凄いゲームです。いまだに現役だし。だから1位なんですよ。中途半端にイタい要素を出しちゃいけません。それは禁じ手。やるなら、「Kanon」くらい徹底的に。この両者の共存はムリ。
 そういう経緯で、内容の直接的なレベル以外の部分で引っかかってしまったので、シナリオカウントダウンには入れません。他の作品にも失礼でしょうし。
 シナリオ以外の要素についても書いとかなきゃ。
 CGは、ちと少ない気もしますが、充分に高いレベルです。ただ俺、Carnelian氏の絵柄はそれほど好みじゃないんで。申し訳ない。巧いんだけどね。
 音楽は、BGMも歌も、レベル高い。特に歌。オープニング、エンディングの他、挿入歌ってのが新機軸ですね。どの歌も、曲としてなかなかです。俺は好き。サビが特徴的なメロディライン、でもそこまでのメロディがちょっとフツー過ぎ、ってノリが、かつての「Wの悲劇」みたいで好き。いや、誉めてんですよ。挿入歌を聴けたら、そこまでの選択肢は間違っていなかったのが判る、って手法も好き。全てのキャラについてそうだから、「偉大なるワンパターン」ですね。こういう決まりごとがあると、プレイヤーは安心できます。
 システム的には、スキップに昔懐かしいCtrlキーを使っているのがちょっとマイナスかな。スキップ中にもエフェクトを回避できない、という致命的な弱点もあるし。セーブポイントも少ない。
 ま、気に入っただけに、目につく欠点をずらずら並べちゃいましたよ。すいません。
 久々に楽しませていただきました。(2000.3.4)