とらいあんぐるハート3 〜Sweet Songs Forever〜
種別 音声 アニメ メーカー・ブランド 発売日
AVG あり なし アイボリー 2000.12

【いっせいの評価】

シナリオ システム 音楽 CGレベル エロ度
7 9 8 8 7
ハマり度 期待度 音声 オールスター度 特別加点
7 6 7 8 10
総合点 俺のキャラ
77 月村 忍

【コメント】
 シリーズ最終章、と銘打って発売された、シリーズ3作目。おりしもつい最近発売になった某大作RPGが既に10作目であることを思い出すまでもなく、シリーズって言うからにはもう少し続けても別に罰は当たらないんじゃないかなあ、などと思いつつプレイしてみると、なるほど、もうこのシリーズは飽和状態に陥っていてこれ以上続けたらこれまで積み上げてきた信用も品質も保つことができない、んですね既に。人気シリーズだけにたったの3作で終わらせてしまうことを惜しむ声もかなり出たんだろうけど、例えば俺は、このシリーズに関して言えば、好きだからこそ、ここで終わらせてくれることを感謝したいと思いました。
 思えばこのシリーズ、開発者には結構酷な内容なんだよね。
 対象になる女の子とは「恋人エッチ」をする、つまり最後の1回だけじゃなく何回も何回もエッチする、その中で最初は痛がってたのがいつの間にかイッちゃえるようになる、なんてシステムがウリなもんだから、どんなに魅力的なキャラをこしらえても、そいつは主人公の毒牙にかかっちゃってそのままいいようにやられまくる。つまりシナリオライターは、この話において、自分の好きな女の子は事実上作れない。でも作らないとシナリオが魅力的になってくれない。だから多分、都筑氏はみんなに思い入れをして、それぞれのキャラを愛して、そんで奪われて、また新しいキャラこしらえて、また奪われて。そうして2つのイミで、彼は限界に達してしまったんじゃないかな、と。
 ひとつは、精神的な限界。もう、これ以上奪われるのはイヤ、という純粋な気持ち。エロゲーに携わる人は必ず、それが作る側と遊ぶ側とにかかわらず、夢を忘れない純粋な気持ちを持ち続けている、という重要な特質がある。純愛でも陵辱でも、対象が架空の存在でやることが架空の事実で結果が架空の結末である以上、そこに想像と夢が存在していなければ、楽しめない。ならば必ず、その夢を作る人間が必要な訳です。通常は企画やシナリオでその登場人物なり舞台となる世界なりをこしらえる人間の夢が投影されて、そこに夢の世界が成り立つ。いわば、作家は自分の夢を切り売りしながら世界をこしらえてるんですよ。
 新しい夢をどんどん作れる人間ならいい。でもこういうタイプのエロゲーって、類型化するとはいえ、作者の理想が色濃く反映されるもんでしょ? だとすればこの「とらハ」ワールドってのは、都筑氏の精神世界そのものでもあるということなんですよ多分。どの程度の割合を占めているかってのもあるんだろうけど。
 んで、もうひとつは、その「類型化」に属する問題。対象になる女の子は必ず「いいひと」で、シアワセになることが前提だから、いきおいその女の子の性格とか置かれている状況とか目指しているものとか、そのあたりは必ずかぶるんですよ。「○○タイプ」って分類できてしまうのはそのせいだけど、同じシリーズだと、その傾向が余計に顕著になっちゃう。当たり前なんだけどね。プレイヤーは目新しいものを求めるから、あまりにも類型化された世界だと飽きてしまう。1作目では目新しかった「中国人」とか「学園モノなのに猫耳娘」なんて要素も、さすがにここまで繰り返されてしまうとパターン以外の何物でもなくなってしまう。偉大なるワンパターンってのは確かに存在するんだけど、1作目や2作目の設定まで借りてこないと作り上げられないようなワンパターンなんてのは、結局「ワンパターン」としてさえ存在できなくなった類型でしかない。残念ながら、それが作品の持つパワーの総容量、なのかも知れません。
 ちょっと残念だったのが、作り手の側でもワンパターン化してしまったのがはっきりと見て取れる点。せつなくてたまらないキャラ、ってのが、何故か今作には存在しないんです。フィアッセの能力の話でも、残念ながら2作目の知佳の設定とかストーリイをまるで超えられていないし。せっかく綺堂さくらを登場させた忍の話でも、本来ならかなりぐっと来るはずの設定が生かされていなくて、妙に淡々と話が進んで閉じてしまって。レンの位置づけがいちばんせつなくできそうではあったんだけど、何だか消化不良のまま終わらされてしまったし。これら全ての根本的な原因が、作り手の思い入れの薄さではないかと思うんですよ俺。そうでなかったら申し訳ないんだけど、システム的なバグがほぼないのとは裏腹に、世界観やストーリイの練り込みってのが、あんまりされてないのと違いますか? いや、薄味ってだけかもしれないし、総集編的な楽しみ方をすればいいんだってことであれば、俺の指摘は筋違いなんだけどさ。
 今後のアイボリー/ジャニスを支えていけるようなシリーズが新たに生まれることを切に希望して、今回のレビューは終わりにしようと思います。(2001.8.5)