いちょうの舞う頃
種別 音声 アニメ メーカー・ブランド 発売日
NVL なし なし Types 1998.10.9

【いっせいの評価】

シナリオ システム 音楽 CGレベル エロ度
9 3 10 7 4
ハマり度 期待度 感情移入度 切な度 特別加点
8 9 8 7 9
総合点 俺のキャラ
74 松山千枝

【コメント】
 どこかのレビューページで、春は「To Heart」、夏は「Piaキャロ2」、冬は「WHITE ALBUM」で、秋がこの「いちょうの舞う頃」だ、というまとめ方をしてるところがありました。「Piaキャロ2」はともかく、他のには結構な愛着を持っちまってるもんで、このゲームについてもかなりの期待を持って臨みました。期待しすぎはケガのもと、んなこたあ判ってるんだ、けどこの場合は仕方ないのよ。あの汁ゲオンリーの(失礼)PERO氏のエロゲカウントダウンでも何やら誉めてたし、俺はどっちかと言えばシナリオ重視だし、買って説明書開けばヒロインの半分は年上だって言うし。
 で、結論から言っちゃうと、佳作でした。特に、こと音楽とシナリオに関しては。CGも、好みが分かれる系統の絵柄ではあるんだけど、俺的にはOKでした。原画の「わがすりあ狂介」氏はどうやらTypesの専属さんとみえて、ブランド第2作「SEVEN」でも原画を担当されてます。独特のタッチが好ましいんですが、まだこの作品ではCGを描き慣れてないのかな、ちょっとデッサンが狂ったりもしてました。ま、ご愛嬌かな。パケ絵も俺好みだった。デフォルメキャラはあんまり好きじゃないけど。
 さて、シナリオだけど、どうやら久し振りにカウントダウンエロゲシナリオへのランクイン作品になるんで、ここでは少しだけ触れることにします。当初は10点満点間違いなし、と喜びながらプレイしてたんですが、途中からどうも気になることが出てきまして、で、最終的には9点で落ち着いちゃった。プラス要素はいくらでも出てくるんだけど、たったひとつのマイナス要素が消しきれない。それだけ、このマイナスはでかい。そんなマイナスって何や、とライターさんには怒られそうだけど、そこはそれ、勝手気ままなレビュアーですんで許してもらいたいっす。
 それはね、キャラが立ってない、つー部分。言い方を変えれば、4人のヒロインに、魅力が足りない。
 これは多分、極論です。そんなことねえだろ、というご意見があっても当然だし、その方のそういう意見も、もちろん正しいんだと思う。けどね、フィクションである以上、デフォルメは多かれ少なかれ必要になってくるはずで、そのデフォルメ要素を限りなく少なくしていけば、つまりこういう「フツー」の女の子というキャラ設定に落ち着かざるを得ない、そういうことになるんだよね。メイドロボもアイドルも出てこない学園生活が当たり前なんだから、あるイミ、このシナリオはこれ以上ないほどの王道なんです。
 けど。けどさ。あまりにもフツーなんだもん。年上とはいえ幼なじみ、これはもう「To Heart」系にはデフォルトのヒロインだし、美人の先輩、引っ込み思案の後輩、その友達ははねっ返りだけど実は弱虫。これだけ? いや、カウントダウンの方でも語っちゃいますけど、このシナリオについては、俺的な評価はえらく高いんですよ。ホントに。ほとんどの選択肢にその後のシナリオを対応させてる、つまり全ての枝葉を別々に作ってあるあたりなんざ、今まででいちばん文章量は多いように思えるし(だからこそ対象キャラが少なくなっちゃったんだろうね)、フツーという表現を誉め言葉にも使えるんだとしたら、これほど「フツー」の生活を「フツー」に表現してくれてるゲームはありそでなかった、とも言えるし。日々の学校生活が、自分の気持ちとは裏腹に、間違いなく流れていってしまう、ひとつの問題がなかなか解決されないうちに日々が過ぎてく、そんな感じの表現が抜群に上手い。地の文の破綻がほとんど見られなかったことも好材料。
 音楽は、これはイイ。リーフの一連の作品群とは(「こみパ」はやってないけど)また違う、えー、クラシックの文法を根底に持ってる人が映画音楽的な手法で作ったBGM、とでも表現すればいいのかな。ひとつのテーマを執拗に使い回すんだけど、アレンジの巧みさもあって、バリエーションがえらく豊富に感じられる。結果、飽きない。何度聴いても、イイ。思わず口ずさんじゃうような、心地よいメロディ。手放しで誉めちゃいますぜ。
 そういう、高いレベルのシナリオや音楽とは裏腹に、悲しいくらい前時代的で操作性の悪いこのシステムが、俺は憎い。だってこれ、東鳩よりだいぶ後の作品でしょ? なんであれよりこんなに落ちるのよ。なんだって右クリックで出すメニューが全画面なんだよ。セーブポイントはいまどき8つ、なんて、信じられないほど少ないしさ。選択肢はそれほど難しくなかったから良かったようなものの、これで選択肢間違えて繰り返しやりなおさなきゃ、なんてことになったら、攻略断念する人も出てきただろうね。ビジュアルアーツが勢力を広げるのも、こういう才能の偏ったブランドが増えてきたからなんだろうなあ。あそこには汎用のADV用システムが用意されてるって聞くし。それにしても、次の選択肢までスキップさせられるくせに、毎度毎度の学校のチャイムはなんでスキップできないの? 1日の終わりの音楽もそう。煩わしいことこのうえない。
 ま、総じて、いいゲームだったなあ。顔がにやついちゃうゲームって、いいゲームだなあ、って思うよね。なんか、高校時代が懐かしく思い起こされる、っつーのかな。俺には美人の(もしくは可愛い)幼なじみはいなかったけどさ。
 やむを得ず、ブランド第2作「SEVEN」購入決定。でもさ、カードバトルとすごろく形式で進めるNVLって、一体どんなん?(99.10.17)