GREEN 〜秋空のスクリーン〜
種別 音声 アニメ メーカー・ブランド 発売日
AVG あり あり jellyfish 1999.12.29

【いっせいの評価】

シナリオ システム 音楽 CGレベル エロ度
5 6 7 8 8
ハマり度 期待度 音声 アニメ度 特別加点
3 5 6 8 6
総合点 俺のキャラ
62 どれもキライ。

【コメント】
 のっけからこういう言い方で恐縮ですが、かの「エロゲカウントダウン」では発売の1年以上前から待ち焦がれ追い求めていた作品です。実は俺、この業界の内情とか人の動きとかにえらく疎いもんで、そういう期待ができるほどこのゲームや他の期待作の期待される所以を知らなかったりするんですが、この「GREEN」に関しては、前情報がやたらと多かったことや幾度にも及ぶ発売延期のお蔭で、ちょっとは期待できるくらいに予備知識を仕入れることができてました。
 VIPERを凌ぐエロアニメ!とか、
 ナチュラルを凌ぐエロ音声!とか、
 ○○を凌ぐ完成度のCG!とか、
 そういう情報ね。後は、何しろPEROさんとこであんだけ期待するんだから、汁ゲーとしての期待も。
 で、部分部分を順番に検証していこうと思います。結論を急ぐのはアレなんで。
 分類では一応ADVとしましたが、結局、TRUEエンドってのが唯一のハッピイエンドな訳ですよね。マルチエンディングでもない。じゃあストーリイに面白みがあるかというと、例えば一本道ストーリイの最高峰と俺が評価する「クレイジーナックルII」と比べようものなら、「クレイジーナックルII」のファンから1000枚単位で剃刀送りつけられても文句言えないほど、ストーリイはほんっとに、つまらねえ。いや、王道ってば王道なんだろうけどさ、あまりにもひねりがなくて、パパ泣いちゃうぞ。短い時間を一生懸命割いてるんだからさ。
 じゃあその平平凡凡たるストーリイに燦然と輝くキャラが散見できるかというと、とてもとても、いやしねえ。主人公からヒロインにサブヒロイン、敵役に至るまで、これまた類型キャラのオンパレード。で、これは個人的な受け取り方だろうけど、そのどのキャラをとってみても、ほんっとに、ムカつく。俺、名前が変更できると思わず本名入れちゃうクチでさ、このけったくそ悪い主人公に自分の名前がついた状態でプレイする破目に陥ってしまったんですよ。これは悲劇だよー。やった人なら判ると思う。これからやる人でこれを読んじゃった人には申し訳ないけど、名前はデフォルトのままでやった方が身のためかも。あ、でも、小野伸二(字は変えてあったけど)だからなあ。あの顔がちらつくのもどうかと思うよね。ついでだからキャラの名前にも苦言を呈させてもらうと、あんだけ発売遅らせるくらい推敲の時間があったんなら、こういう安易なネーミングはやめようよ。中田・本山・財前、バッカじゃねえの、という感覚でした。男はどうでもいいから、つー言い訳は聞けませんぜ。
 CG数も、実は、拍子抜けでした。アニメを入れてるから止め絵は少なくていいや、つーのがミエミエでイヤ。ま、ストーリイがあまりにも一本道だし、あんなもんかもしれないけどさ。バッドエンドにはCGなし、って、最近のエロゲじゃ見ませんよねえ? 手、抜きすぎ。絵柄も一定じゃないし。ホントにこれであんなに何度も発売延期したゲームなの、というのが率直な感想です。
 で、肝心のアニメパートですが、これはまあ、こんなもんじゃないかと。映画製作をストーリイの核にしている以上、作ってる映画のアニメが入るのは予想できたんだけど、そっちばっかでエロが少なすぎる。これは、発売日買いした皆さんの感想からそれとなく知らされてはいたんですが、改めて実際にプレイしてみて、かなり寂しくなりました。それなりに頑張ってはいるんだけどね。VIPERの最盛期にはかなわないんじゃないか、と。胸の揺れ方もイマイチだし、CGとか映画の1シーンと比べて、エロシーンでの女の子達のプロポーションが変わりすぎてて興醒めだった、とか、あんまり誉める要素はなかったなあ。あ、そうそう、通常の会話の声優さんがホントにエロシーンも担当したのかどうか、ちょっと疑わしかったり。トーンが違いすぎるんだもん。

 通常のエロゲとしてのレビューはこんな感じです。これだけでも充分過ぎるほど長いんで、ここから先は、どっちかというと別コーナーのエロゲー論に乗っけようかと思ったんですけど、この「GREEN」があまりにもいい例なもんで、ここで並べちゃうことにしました。

 このゲームで俺がいちばんムカついたのは、他でもない、テーマの「自主映画製作」に関する扱いなんです。
 あのね、自主映画って、こんなにカンタンじゃないの。
 ずいぶん昔のマンガですけど、「あどりぶシネ倶楽部」って知ってます? 細野不二彦がスピリッツかなんかで月イチ連載してた、大学の映画製作サークルでの日常を綴ったマンガ。全1巻。各話読み切り。つーか、各話でたいていひとつの映画ができあがっちゃう。
 実は俺、最初はこのマンガ、結構気に入ってたんです。で、映画製作サークルに在籍してる友人にこのマンガの話をしたら、「読ませてみ。」読ませたら、「ふざけんな。」こんなにカンタンじゃねえよ、とその友人は言うんです。ま、実際に苦労してる人はそんなもんかな、と他人事で考えていたある日、その友人に、「お前、手伝え。」後輩達がみんな逃げちゃったから、助監督をやれ、と言われまして。結局、自分が部分的に監督をやったものも含めて、3本かな、手がけました。その頃の話をまとめりゃ、軽く文庫本1冊くらいにはなるんで、ここでちゃんと語るのはムリなんですが、ここで言いたいのはね、ホント、映画製作って、大変、ってこと。脚本書いて、コンテ切って、機材揃えて、人材揃えて。
 脚本完成してない映画を撮り始める?
 ばーか。
 期間は20日間?
 ばーか。
 あくまでもエロゲーの中の話だしね、フィクションにご都合主義はつきものだってのもちゃんと判っていて、それでも、この設定はやり過ぎだと思った。苦労した者として。まして、俺はあの頃大学生だったんだけど、このキャラ達は高校生でしょ? ちょっとムリがなあ。素直に受け入れられないや。
 できあがったものもね、当時は結構「おーっしっ!」とか思ってたんですけど、改めて見ちゃうとね、悲しくなるよお。「GREEN」中の「ポートレート」は登場人物が若いんでまだマシなんだろうけど、ちょっとでも年かさの人間を出そうとすると、スタッフの家族とかね。それでもダメなら、スタッフがメークして。自主映画って、そういうチープな部分がほとんどなんです。
 鼻についたものはもうひとつあります。
 映画関連のうんちく。
 俺、決してうんちくが嫌いな訳じゃないんです。「星のささやき」で星座関連のうんちくが並んだときも、ストーリイ上必要だったからかもしれないけど、結構楽しんだし。
 でもこれは、イヤ。キューブリックをハチブリックって言い換えてるとか、そういう理由もあるけど、何しろ、イヤ。
 とことん自己満足の世界じゃん。発売延期の理由がこのうんちくだったら、それこそギャグだよなあ。このうんちくが正しいかどうか、そういうことはここでは問題じゃないよ。ここでわざわざこういううんちくを垂れることに、いったい何の意味があるんですか、ということです。

 今度は、ムカついた訳じゃないけど、これはやっちゃいけないんじゃないか、という部分について。
 本篇プレイ中に、本山ってイヤなヤツが何度か、主人公達にプラスになるような情報を持ってきます。それと、ヒロイン真琴と何か重要な会話をしたような気配を漂わせるシーンがあったり。でもそのどちらも、じゃあどうやって、どこで、ということは全く知らされないまま、話はエンディングを迎えてしまいます。
 さて、問題はここから。「ボーナスシナリオ」と題されたストーリイを「読まされ」て(だって選択肢がひとつもないんだもん、これは読まされてるだけでしょ)いるうち、本篇で語られなかった伏線の正体が明かされていくことに、プレイヤーは気付かされます。
 これはダメだよ。
 何故ってそれは、エロゲーでできる限り避けなくちゃいけない手法、「視点転換」をやってしまっているから。
 エロゲーって、俺としては、「究極の私小説」じゃないかと思うんですよ。インタラクティヴの要素まで備えた、いわば、完成されればこれ以上私的体験はあり得ないほど私的な世界(セックスですね)を表現するもの。大袈裟だけど、プレイヤーの感覚はこれだよね。少なくとも俺はそう。
 そうするとね、「今度はこっちの人の視点からこの話を眺めてみよう」ってのは、私的でも何でもない世界を無理矢理見せられているだけ、ということになる。まして、そこでしか本篇の伏線を解けないってのは、シナリオライターの怠慢でしかない。ボーナス(おまけ)じゃなくて、「さらなる拷問」だね。

 ま、いろいろキッツいこと書いてますが、それだけ期待されてたってことで、カンベンしたって。(2000.3.15)