縛鎖 〜Chained heart〜
種別 音声 アニメ メーカー・ブランド 発売日
SLG なし なし ZENOS 1999.12.17

【いっせいの評価】

シナリオ システム 音楽 CGレベル エロ度
8 5 8 9 7
ハマり度 期待度 感情移入度 マッシヴ度 特別加点
9 9 3 6 8
総合点 俺のキャラ
72 真希

【コメント】
 うちのメインコンテンツ、「カウントダウンエロゲシナリオ」をごらんいただくと判るんですが、俺はエロゲーのシナリオとして、ディーオーの「虜」のそれにえらい高い評価をしています。そもそも調教SLGのシナリオなんてなきに等しいものと認識されるのが当たり前、そんなトコにいろいろ詰め込んだら却って調教部分を楽しめないからやめといた方がいい、つまり調教SLGは調教部分が命であって他はおまけだから考える必要なし、というのが業界の趨勢で、多分本来のエロゲ(エロ部分で抜いてもらう)のあるべき姿なんだと思います。なのに、「虜」は真正面からそいつを否定しようとして、あるイミではそれに成功していた。調教部分が手抜きってことは毛頭なく、むしろシステム的にも完成度の高い、調教部分だけでもしっかり遊べるSLGになっていて、それでいてその他の、言ってみれば抜きにはまるで必要のない部分についても、いやそういう部分こそむしろ、このゲームのキモなんだと考えていることがひしひしと伝わってくるような作り込みがされてました。その最たる例が、調教される女の子達に対して語る調教者(プレイヤー)の一種独特な哲学。あの語り。いやー、思い出しちゃうなあ。どこ行ったろ、あのCD−ROM。「虜2」ならすぐ見つかるはずなんだけど。「2」はつまらんし。
 おかしいなあ。「虜」のレビューじゃないのに。
 えー、そういう、SLG部分がメインであるはずの調教SLG界(あるのか?)において、この「縛鎖」は非常に不思議なSLGです。
 まず、根本的に、調教は非常にカンタン。実は俺、どうやらこれがTRUE ENDらしい、というエンディングになかなか辿り着けず、某有名攻略関係掲示板にカキコして情報もらったんですけど、俺攻略ヘタなんで、普通のエロゲーマーなら鼻歌交じりで全てのエンディングとCGを見られちゃうと思います。最近のSLGでは、ダントツ、っつーか別世界の、カンタンさです(お前がゆーなというツッコミは今だけ控えてください)。
 じゃあ何を評価するのか、ってーと、結果的に最大3人になる調教対象をどういうふうに増やしていくか(あるいは増やさないか)、その部分の、いわばADV的シナリオ。舞台設定もキャラ設定も非常に非現実的なんだけど、このADV部分のシナリオは、俺的には結構気に入りました。俺の中での基準である「虜」「虜2」あたりと比べても、キャラの増え方(あるいは減り方)は、ちゃんと遊べるように作ってあるなあ、と、正直感心しました。
 だからこそ腹立ったのが、それ以外、ADV部分と調教部分を結ぶ役割を果たす、日常風景描写部分に対する軽視のしかた。ほぼ全部同じテキストで、夜寝る前、朝起きたところ、調教場所に着いて依頼者からの言葉、主人公の無言の返事。
 この辺が「Partner」なのか。なるほど。
 実は「Partner」の時にも思ったんだけど(もしシナリオライターが同じってんならね)、文章がヘタって訳じゃないんですよこの人。あっちはもう、第2部に入った瞬間に他の評価が全てすっ飛んだんで正当に評価するのはまずムリなんだけど、こっちなら何とか評価はできるんで、考えてみるでしょ、そうすると、「文章を書く体力が決定的に欠けてる」という事実に行き着くんです。
 悪口と取られてもしょうがないんだけど、俺も昔は結構文章書いてたんで、いろんな人からいろんな感想やら文句やら批評やらいただきまして、その中でいちばん適切かつ痛烈だった意見が、実はこれでした。
 多分、エロゲーひとつまるごと、というボリュームは、文庫本で言えば厚めのを1冊書き上げる、くらいの気力が必要になるんだと思います。いや、自分一人で完結できないことを考えると、そんなもんじゃないのかな。それくらい集中力を持続させてひとつのものを完成させる、書き上げる、というのは難しいことなんじゃないかなあ。作家あるいは商売としての物書きの人というのは、もれなく凄く稀有な才能、「自分がきっちりその世界の中に嵌まり込んで細部に至るまでびっしり書き込む」を持ってるんじゃないかと思います。つーか、持ってない人間は物書きやっちゃいけない。
 また話が逸れたんで、戻すと、このゲームのシナリオライターさん、そのへんの才能がいまいち足りない。いや、ないんじゃなくて。組み立ては面白いんだから、もっと気合入れれば、もっと面白くなってたはず。そういう意味じゃ、もっと体力つけてくんないと。あちこちで叩かれてるし俺も全面的に支持することはまずありませんけど、かの葉っぱの高橋龍也氏ってのは、そういう体力には恵まれてますよね。何でもない日常、変化に乏しいんだけど全く同じじゃない日常、これをどれだけ上手に表現するか、で、こういう調教SLGはどれだけ面白くなるかが決まるんじゃない?
 こんな不思議な評価基準を持ってるのって、俺だけ?(2000.1.21)