わたしのありか。
種別 音声 アニメ メーカー・ブランド 発売日
ADV あり なし アイボリー 2000.10.27

【いっせいの評価】

シナリオ システム 音楽 CGレベル エロ度
8 2 6 8 7
ハマり度 期待度 音声 感情移入度 特別加点
9 7 10 7 8
総合点 俺のキャラ
72 北園ありす

【コメント】 「萌えゲー」と呼ばれているエロゲーは一般的にエロが極限まで減らされてるし、「やりゲー」と呼ばれるエロゲーは一般的にキャラへの思い入れがまずできないようなシステム。これはまあ常識で考えれば当然なんだけど、恋人Hで注目されるようなエロゲーを作っちゃうメーカーだもん、「いややりまくる萌えゲーがあったっていいじゃん」的な発想が出てきても全く不思議じゃなかった。ただ、どんなシステムで作ればそういうエロゲーになってくれるか、その辺の問題さえクリアできればいい訳だよね。結論から言えば、この「わたしのありか。」に採用されたアイデアって、決して悪くはないものだったと思う。女の子側から見た発想って点では欠けてたかも知れないけど、それはもう片方の視点を充実させるための方法論で、いわば「わざと無視した」ものだったから。
 じゃあ評価がめちゃめちゃ高いかって言うと、残念ながら、それほど高くはならなかった。むしろこれでもかなり甘く採点してるように思う。この採点において、CGレベルの採点が結構高くなったのは、俺が目黒三吉さんの原画を好きだから。ハマり度が高いのは、むきになったから。感情移入度と特別加点が高くなったのは、あくまでも俺の贔屓目ゆえ。個人的な評点だからこうなるけど、もっと客観的につけたら、もっと下がっちゃうだろうなあ。残念だけど、素材がいいだけに、その料理法があんまりにも粗忽すぎるのが目立つんだよ。ま、アイボリーの作品にはつきものの「熟成不足」「調整不足」なんだけどさ。
 相互リンクまでしてもらってるんで、敢えてこの際キッツいこと言わしてもらおうかなあ。メーカーHPのBBSは荒らされてる訳じゃなくて、みんなここのゲームに期待してるからこそ、ああいう表現を使いたくなるんだと思う。「メーカーはもっと作品の完成度に責任を持つべきだ」とか、「バグを取りきれていない(あるいはほとんど取ろうともしていない)ソフトを“商品”として市場に出すのは、メーカーとしての認識不足だ」とか。あれをメーカーの人たちがどんな気持ちで読んでいたかは知らないけど、高い金出して買った側からは、あれでも言い足りない、優し過ぎるんじゃないか、と思えた。もっとキツい言い方でも反論できないんじゃないかな。「欠陥商品を世に出すな」ってさ。
 具体的に、評価すべきところと糾弾すべきところを改めて列挙しましょ。
 目黒三吉氏の原画は、好みが分かれるところだけど、俺は大好きです。なんか前よりロリにシフトしてるように見えるのがちょっとつらいんですけど、それでも好きです。それをCGに起こしたのは、本人? 凄くいい出来です。この辺では心配してなかったんだけど、「東京九龍」の頃よりCGがレベル上がってます。今後を楽しみにしたくなります。
 音声は完璧です。Hの時の声もさることながら、ドラマ部分の台詞回しの見事なこと! サファーには表業界でも有名な方を持ってきたんではないでしょうか? そのうち鷹玖さんの「せぐしたやす」あたりで調べてくれることを期待してます。
 シナリオについては、この8点てのも含みのある点数です。ゲーム全体を俯瞰して、バランスとかそういうのを見たら、もっとずっと点数は下がります。残念ながら、内容の整合性で惨いほど合致していない部分が何箇所かありました。あれは致命的で、人によってはそれを見た瞬間に遊ぶこと自体をやめてしまうほどのものです。地の文章を執筆されたまりのあや氏が実際のゲーム作成にほとんど手を貸していないとしたら、まりのあや氏にはひどく気の毒なゲームになってしまっています。この人の文章が巧いのはもう明白な事実なので、あとはそれをどうやって生かすかってことになってくるんだけど、それぞれのパーツを組み合わせる段階であまりにも雑駁な処理をしていて、具体的に言えばHしたのかしないのか、誰とどんな約束をしたのか、誰と会っているのか、その辺のフラグ管理をまるで放棄してしまっているらしくて、直前の女の子との会話と次にやってることが全然整合性取れてなくて、もうげんなりしてしまう、ってのを何度も経験しました。Hした次の日に「もう何日もしてない」とか言われると、やっぱげんなりするっしょ? そういう部分を作る時にまりのあや氏が手を貸していたのなら、まりのあや氏の責任も重大です。自分の書いたものを責任持って並べるくらい、プロなら当然でしょ? 2回もテストプレイやればわかることじゃないですか。
 そして何より、この酷いシステム。このメーカーの、もはや伝統とも呼べるほど繰り返される、不備と矛盾に満ちた部分。これで客減らしてるって事実に、メーカーさんはいいかげん気付いてください。さっきも書いたフラグ管理の不備はもちろん言語道断だけど、毎度毎度繰り返される「バグ報告」〜「パッチ公開」の泥沼といったら。スキップにこれほどストレスを感じるゲームなんて、システムだけなら二流の下、いやそれ以下。なんでこうなんだろ。俺はもう情けなくて情けなくて。好きでたまらないメーカーなのに、手放しで褒められたためしがないんだもん。
 書き足りないんで、続きは明日。(2000.12.3)

 さて。一部ネタバレは混じりますが、まあ気にしないでください。申し訳ないけど、ここに書いてあることをあらかじめ知っていたところで、ゲーム自体に覚える感動と失望はそれほど大きく変わらないから。それだけはっきりとした長所と短所があって、じゃあ短所だけ直せば傑作になってくれるのかといえばなってくれるはずなんだけど、どうした訳かこのアイボリーというメーカーはその辺の調整をきっちりとやったためしがない。いや、前作「有限会社ロンドン☆スター」にはパッチ当てなくてもバグはなかったけど、でも整合性とフラグ管理という2点において致命的なミスが残されたまんまだったからやっぱり「きっちり」とした仕事にはなってないんだね。引越のサカイのおかあさまが怒るぜホントに。
 大学でありすに会ってから何日目か、ぶつかってきて素通りされちゃうというイベントがあるんですが、ここでの主人公の台詞は「久しぶりだな、北園」。前の日に会ってるだろーが
 病院を退院する直前、恵子さんを追っかけると、彼女の部屋の番号と電話番号のメモをもらえます。で、次の機会に病院に行って、恵子さんとお話できる時にも、ほぼ同じ会話を繰り返します。メモも改めてもらいます
 毎日どこかしらで女の子を捕まえていても、10月中旬にはサファーに「おなかすいた」と脅されます。前の日に魂食わせたはずなのに。
 希更を追っかけてる時、一切手を出していないのに、懐かれているのを恵子さんに冷やかされながら、主人公は「(Hを)してるんだけど」等々の表現で希更としたことをほのめかします。
 三田村親娘シナリオで、なぜかサファーが実体化して、でもそのまま(なのか実体化自体が無視されたのか)3ヶ月がいつの間にか経過して、いざ環ちゃんの合格発表の日、って時にはサファーはまた元の姿に戻ってます。何の説明もなしに。つーか多分これって、実体化の場面はなかったことになってるんでしょう。
 まだ挙げるぅ? もういいよね。とにかく、あんまりといえばあんまり、という完成度。定価ベースで考えれば、PS2のゲームとかと同じような値段な訳でさ、あっちはほんのすこしでもバグが残ってればとんでもない大問題になってもう二度とゲームなんて発売できないくらいの状況に追い込まれるのに、こっちは同じことを何度も何度も何度も何度も繰り返しても潰されない。理不尽の一言に尽きる。俺みたいな、一生懸命いい部分を探すレビューを書いちゃうお人よしがいるからいけないのかなあ。
 繰り返すけど、俺はこのゲーム、気に入りましたよ。好きですよ。だから余計に、完成度の低さが悲しいのよ。もうこういうことを書くのにも飽きたし、言われる方も言われ続けて飽きてるかもしれないけど、改めて言っとかないと「あ、結論で褒めてるからOKだね」なんて誤解されるんで。
 作品の完成度を上げてください。
 これは商品のレベルじゃないです。
 あ、相互リンク切られてもいいんで。13cmもそうだけど、ネットでまで媚売ろうとは思わないんで。(2000.12.4)