第4位

Kanon
KEY

名作「ONE」を世に送った面々が、エロゲー界に自分達の
存在価値を問うた問題作にして、文句無く傑作。
7年前、俺はこの街で少女と時を過ごし、記憶を育み、
なぜかその記憶を失くしてしまった。
あの時俺は何を言いたかったんだろう。

 「ONE 〜輝く季節へ〜」(以下、「ONE」と表記)との比較で言うと、俺としては断然こっちが上と考えます。完成度は高いし、内容も好み、とくれば堂々のトップ割り込み!ってのもアリだとは思ったんですが、よく考えれば判るとおり、この「Kanon」はシナリオの重要な要素のほとんどが非日常、「あり得ないこと」なんですよね。そういう非日常をフィクションとして仕上げることは、日常を切りとってストーリイに仕立て上げることより、たやすいもんです。ストーリイテリングの才能が云々つう訳じゃなく、昔創作をやってた者の実感として。だもんで、ランキングとしては、日常を描いた作品よりこいつを上に持ってくるのはフェアじゃなかろう、ということで、この順位と相成りました。
 ま、もうひとつの順位決定要素としては、「もうちょい(つーかもっともっとずーっと)エロにこだわってればなあ」という部分。はっきり言ってこれ、エロゲーじゃない。シナリオの完成度にだまされちゃうんだけど、エロは要素にもなってなくて、言っちゃえば「おまけ」なんだよねえ。でもその完成度がハンパじゃないんで、ランキングに入れることについては、俺的には納得してます。うーん、こういう「切ない系」ゲームの、あるイミ限界なのかも。

 日常生活シーンに入ってしばらくは、まんま「ONE」、あるいは「To Heart」。もう「あれに似てる」っていちいち指摘すること自体がヤボなのかも。今回は従妹の家に居候ってことで同居ですが、幼なじみの女の子と一緒に登校するシーンてのは、今の学園モノエロゲーのオープニングとしてはかなり普遍的なものなんでしょうね。

 各キャラ別ネタバレレビューはこちら。だもんで、ここでは全体を俯瞰しての感想なんぞをつらつらと述べてみます。

  「ONE」とはどうしても較べてしまうし、較べるのは当然だと思うんだけど、シナリオの“完成度”“バランス”“整合性”では圧倒的に、「Kanon」のが上。でもそれで「Kanon」のシナリオが絶対的に優れているかというと、そうとも言いきれない。未完成なものこそが持つ、触れれば裂けてしまいそうな、「表現のキレ」。形容詞がこなれていて巧い、と唸らされるのが「Kanon」なら、意外で荒削りだけど何か心に引っかかる表現というのが「ONE」のキモでした。それともうひとつ、「ONE」にあって「Kanon」にないのが、「(あざといほど)激しい痛み」。「Kanon」は、「奇跡」をキイワードにしたが故に、本当に激しい痛みからは(大抵の場合)逃れられてしまう。細かいトコはネタバレレビューを見てもらえれば全部書いてあるんだけど、バレない程度に言うと、「ONE」にあった「吐き気を伴うほどの痛み」は、「Kanon」にはほとんど(いや、全くって訳じゃないんだけど)ないです。でも切なさはたっぷりあって、それは狙っても出せるものではないと思うので、完成度や整合性と並んで、この作品がこの位置まで来た要因にもなってる訳です。
 もうひとつの新機軸。それは夢のシーンで用いられていた、知る人ぞ知る、「タイポグラフィ」という技法です。今じゃスーパーメジャー作家、朝日新聞夕刊の連載小説まで書いてるかの夢枕獏氏のデビュー作が、実は「カエルの死」と題されたタイポグラフィ作品だったという事実は、あまり知られていません。あ、タイポグラフィつーのはですね、活字のイミを利用しつつ、活字で絵を書くこと。アスキーアートとは根本的に違います。文でもあり、絵でもある、この不思議な手法は、「Kanon」ではひどくオーソドックスではあるけれど、非常に効果的な用いられ方をしてました。そのシーンのBGMも素晴らしかったもんで、俺の中の「Kanon」ベストシーンのひとつです。

 次はどんなんだろ。リーフ亡き後(勝手に殺すなって)、シナリオ的には、いちばん期待を持たせるメーカーですね。
 でもいつ発売かなあ。

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