第3位

星空☆ぷらねっと
ディーオー

いつか一緒に宙を飛ぼう、一緒に宇宙飛行士になろう、
なんてこっぱずかしい約束も今は昔、夢を忘れつつある7年後の主人公。
シナリオライターの本当の気持ちを汲んであげようよ、という1本。

 語ればいくらでも語れるシナリオ、ってのが、特に最近は多くなってきました。所詮エロゲー、なんて言い方はこの際失礼千万です。そんなこと言ったらさ、館淳一先生はどうなんの? あの人だって「たかが」ポルノ作家ですけど(少なくともこの名前では)、その耽美性といい文章の練度といい、なかなか真似できるものじゃあありませんぜ。バカにしちゃいけない、エロは文化のターボチャージャーなんだよ?
 俺は個人的には、このシナリオライターさんを知りません。どうやら例の泣きゲー「加奈」のライターさんらしいけど、エロゲーにおける泣きゲーが反則だとかなんだとかそういう論議は、ここでは忘れます。純粋にこの「星空☆ぷらねっと」だけを評価させてもらいます。
 どこぞのサイトで大誤解していたので、改めてまとめておこうと思うんだけど、このゲームは「宇宙飛行士になる夢を捨て切れなかった主人公が、かつて共に夢を語った少女たちに励まされ心の傷を埋めることで、もう一度夢に向かって歩き出す、オーソドックスな成長物語」なんかじゃないよ? そんな陳腐なお話なら、これほど評価はいたしませんですよ俺は。つーか俺は、そんな受け取り方はできませんでした。多分俺の受け取り方が正解だと思うんだけど。そうあって欲しいんだけど。
 誤解を恐れずにざっくりと表現するなら、このお話は、主人公の記憶を取り戻す過程、痕が癒される過程、それだけのものです。宇宙飛行士とかかつての夢とか、そういうのは、あくまでも主人公を差別化するための一種の記号でしかない。傷が癒される過程を丁寧に綴ったら、たまたまこんなふうに成長譚に見えるように形が整っただけで。だから極論すれば、前向きな話ですらない訳です。かつて到達できたレベルに、ようやく戻れるまでの話、ということですから。
 それでも俺、めちゃめちゃ評価します。
 あるイミ、斬新でした。「今」から始まって、エンディングに向けて「先」に進むのが、現在のエロゲーの王道。時系列がそういうベクトルを持っている以上、王道というか当たり前というか、それが本来の進め方です。それをこのゲームは、あるイミ裏切った。100%ではないけれど、振り返ることを主に、通常の時間の流れ方を従に考えて、シナリオを構築した。結果、例えば瞳シナリオなんかでは、振り返ってばかりの「後ろ向き」なシナリオが出来上がってしまった。でもそれは、底の底まで沈みきった主人公がもう一度浮かび上がるための、いわば必要条件だった訳です。
 まとめ方さえもっと手馴れていれば、多分「To Heart」にも勝てたと思います。
 そこはそれ、ちょーっとライターさんが若いかなあ、と。設定は、途中までは完璧に近いんだけど、受験を絡めようとするとどうしても1年ずれちゃうんだよねこれが。それをそのまま「1年が過ぎた。」ってのは、さすがにシロウト臭いんで、順位が少し落ちてしまいました。あと蘭子シナリオの「納得ずくの失恋」ての、あれは許せないや。あのシナリオはもちろん許せないんだけど、何がダメって、あの表現がダメですわ俺は。待ってる→後でくっつく、でダメな理由でもあんの? サーシャの方はそうなってたじゃん。
 SF畑にいた人だと思うんだけど、佳多奈シナリオで「アルジャーノンに花束を」をめちゃめちゃ意識してるのがありありと読めてしまったのも、マイナス要因です。って俺、このシナリオでは(エロゲーでは生まれて初めて)泣きましたけどね。否定している訳ではもちろんなくて、もっとオリジナリティを持って欲しいなあ、と。予想できる筋書きでさえ、あれだけ読ませるんですから。
 欠点をあげへつらうのはカンタンです。でもね、こういう、能力を持ったライターさんが業界を支えていく訳ですから、俺たちみたいな身勝手レビュアーは、ただけなすだけでなく、的確に評価することでそのライターさんの能力を伸ばせるようにしていくべきだと思うんですよ。だからみなさん、もっとライターさんの意思を汲んであげましょうよ。
 いや、俺が勘違いしてるんだったら、それは謝っちゃいますけどね。
 瞳・ゆかり・佳多奈シナリオで高得点、恭子・サーシャシナリオで及第点、蘭子シナリオで「?」。これが俺の評価です。でも総合的には、このゲームを遊べてよかったと思ってます。ホント、正直な気持ち。