第14位

いちょうの舞う頃
Types

副題は「Autumn Colors」、文字どおり秋のゲーム。
せつなくてもどかしい、がテーマだそうだけど、
主にもどかしかったなあ。そこがイイと言えばイイのだけれど。

 実は最初の印象で、初めてリーフの1・2位の牙城を崩すシナリオが現れたか、と思いました。それくらい、第一印象は良かった。
 あくまでもこれはシナリオランキングなんだけど、どうしても俺、シナリオを考えるときに、BGMを思い浮かべちゃう。小説でもコミックでもそうだけど、ほんの少しでも「音」あるいは「音楽」にこだわる人って、その文なり絵なりを他者に見せるとき、脳裏に流して欲しい音楽ってのを一緒に文章に(あるいは絵に)織り込むものなんです。これは、多少なりとも文章を書いていた俺だけでなく、ほとんど全ての作家さんに共通の性向。無音状態を織り込むこともあるし、ただのモブ(群集)の騒音だとか、動物の鳴き声だとか、そういうものを織り込んだりもするから、言い換えれば文や絵にも「音」があるんだよ、つーことになる訳だね。
 相変わらず、語る前には前置きが長くなっちゃうなあ。えー、つまりですね、この「いちょうの舞う頃」のシナリオにも、そういう「音」や「音楽」が仕込まれてるんだけど、それはほとんどが枯葉を踏む音と、このゲームのBGMのメインテーマ。ピアノソロ、オーケストラ調、現代ポップス風、とアレンジは様々だけど、どんなシーンにも合ってしまう、見事なメロディ。ショパン系。かなり意識してるはず。
 その音楽が、シナリオを過大評価させてしまった。俺の結論はこれです。そのくらい、音楽は良かった。
 じゃあシナリオはそれほどでもないか、というと、そんなことはない。シナリオの完成度も、そりゃあ見事です。レビューの方でも言ったけど、各選択肢のほとんどすべてに対応してしまう、細やかで丁寧なつくり。やっつけ仕事ではあり得ない、つまりこのゲームに対するスタッフの方々の思い入れが並々ならないものだという証拠の、ボリュームです。ヒロインは4人しかいないけど、それはこういう細かい仕事をやっているから。4人が限界なんじゃないかな。しかもこの4人、他のヒロインを攻略しているときには、重要なサブキャラとして登場してくる。はっきり言うと、そういうサブキャラ状態の時の彼女達の方が、主役張ってるシナリオの中の彼女達より、輝いてる。立ってる。
 もうひとつの大きなプラス要素は、日常生活の表現。単調な毎日。将来なんか考えてないから、日々だらだらと過ごす。部活やってなければなおさら。今日は寝坊した、今日は早く目が覚めた、クラスメイトとの何気ない会話、帰り道の風景。本当にフツーの生活をしていたらこうだろうな、というのをそのまんま描いたシナリオは、ゲームとして成り立つかどうかのぎりぎりの線で進められてます。で、その中で女の子達との出会いがありふれあいがあって、ちょっとした喧嘩でも何日も引きずっちゃって、なかなか謝れなくていつまでもうじうじしてて、という膠着感が、かなりリアルに感じられました。自分が高校生だった頃を想像してみたりしてさ。結構、古い付き合いの彼女でも、喧嘩すると謝れないものなんだよね。で、それがイヤでイヤでしょうがないんだけど、でもまだ謝れなくて、結局友達の力を借りたりして。くぅーっ、青春だったんだなあ。あんなん、もっかいやりてえなあ。
 こんだけ誉めてて、でもこの順位になっちゃったいちばんの理由は、やっぱり、キャラが立ってない、というところに尽きるんだろうね。あくまでも俺の感想でしかないし、俺の評価でしかないんだけど、千枝ちゃん以外のキャラって、あまりにも自分が殺されてて、まあ言ってみれば「いいこちゃん」じゃない? それをポイントにしてるのがみやこシナリオかもしれないけど、それでも、鼻についてしようがなかった。主人公(つまりプレイヤー)が見ていないところ、シナリオに描かれていないところで、彼女達がどんな生活をしているのか、それがまるで見えてこない。うちのランキングの上位にある作品って、その辺が優れてる作品揃いでしょ? 俺はこの作品は大好きだけど、ランキングに入れることを前提にしてひとつずつ比較していったら、ここに入れるのがやっとだった。フツーの生活を描くんなら、他の種類のものより余計に、その辺に気合を入れて欲しかった。
 もうひとつ。エロゲーじゃない。これは、シナリオランキングには直接は関係ないんだけど、もう少しドキドキさせて欲しい。エロの薄さは「Kanon」並み。要するにひどい。
 でもまあ、下地はバッチリ、というレベルでしたんで、発売がアナウンスされた「いちょうの舞う頃2」には期待してます。でも12月17日発売の秋のゲームって(涙)。エロゲー界も、少しは季節感ってものを考えたらどうだろう。(99.10.23)