
第10位
フロレアール 〜すきすきだいすき〜
13cm
燈台守の青年ジャン・ロタールと、彼と一緒に暮らす少女メルンが送る、静かな日常を描いた物語。
「優しく日常を逸脱する、リリカル・ラヴストーリー」だそうだ。
日常を描いた割にはずっとごたごたが続くんで、
あんまり怠惰な気分にならないうちにゲームが終わってしまった。
この13pというメーカーさんは、メーカーの方が自分とこのBBSでも言ってたけど、シナリオライターを複数人抱えているんだそうだ。で、ひとつのゲームでも、この何人かのライターが共同作業でシナリオを完成させる。俺なんかの素人感覚だと、そんな方法で書かれるシナリオがある一定のレベルに保てる訳はないと思うんだけど、実際に13pのゲームをプレイすると、これがきちんとあるレベルはクリアしているからびっくりする。藤子不二雄みたいなもんなのかな。でなきゃゆでたまごとか、CLAMPとか。あ、ガイナックスってのもアリか。
で、このゲームでも、まずは13pに求められる最低限のレベルはクリアしてる。1回目のプレイで、既にそれは判った。でもなんか、えー、やたらと薄味。エロもとことん薄いし、なんだこれ、とうとう13pも最近の流行りに流されたか? などと憤りながら、2回目以降をプレイ。
さて、ここではネタバレを避けるつもりなんで、このからくりは説明できないんだけど、えー、なんて言うかな、基本的に13pのゲームは、コンプしないとその価値が判らないんですよ。作り手側も、ハナっからそういう作り方をしていて、だから何とかコンプさせようと努力する。で、そのいちばん手っ取り早い方法として、全体のボリュームを抑えてしまう。この「フロレアール」も、シナリオスキップがもしなくても(ちゃんとあるけど)、コンプにはそれほど時間がかかりません。シナリオスキップを利用すれば、ものの数時間でコンプできてしまう。前作よりはじっくり遊べるけど。だからこれから、こんなレビューを読んでエロゲーの買い出しに行こうと考えてくださってる方々には、この「フロレアール」をぜひオススメします。まだ発売から間もないのにすっかり実売価格が落ちてしまってます(涙。8/13現在、高くても3980円だった)し、じっくり腰を据えてエロゲーやりまくるヒマのない諸兄にもきっちり楽しめるこのゲーム、買いです。
とうとう宣伝までしてる(涙)。
とまあこんな訳で(どんな訳だ)全体の説明がちょっと難しいんで、細部の解説をば。
舞台に日本を選ばなかったのは、正解といえば正解だけど、プレイヤーの感情移入を大いに阻害してくれるねえ。日本人にカタカナの名前はきっついです。おいおい俺がジャンか? そういえばゴクミってどうしてるんだろうね。そういう理由で名前の変更も×。確かに、どんな田舎町に舞台を持ってきたとしても、やっぱり日本国内じゃしっくり来ないのかなあ、とは思うんだけど、……うーん。その辺をもう少し何とかできればよかったような。いまどきの日本の大学生を主役に据えて、舞台は親から与えられたど田舎の海の見える別荘で、とか。ムリに燈台守にする必要は、この場合ないでしょ? その前の「元神父」ってところで引っかかりますけど。これだけは言い換えが効かないもんねえ。元坊主、ってのとは根本的に違う……よねえ?「昔は珍念と呼ばれたものだ」とか独白しちゃうの。
静かな日常、穏やかな生活、という描写について。もっと長くできなかったのかなあ。ストーリイ上意味を持たないから、という理由だけでこの最初の部分を軽く書いていたんだとしたら、それは絶対的な失敗です。主人公の、ある種神経症的な状況を描き出すためだけにでも、無駄な日常があと1週間は欲しかった。プレイヤーはそこで(無理矢理にでも)主人公ジャンに成り代わる時間を持てるし、メルンというキャラクターをさらに引き立たせる余裕が生じたんではないかなあ。
ま、この意見は、少しでももっと長くこのゲームを楽しんでいたかった、という俺自身の意見が色濃く反映されてますんで、あんまり公平ではないのかもしれないけど。
精神病、あるいは精神病的描写について。「好き好き大好き!」の主人公とは根本的に異なり、世を儚んでいるという特徴(つーか弱点)がある主人公についての描写だけに、バイタリティが表に出せないのはしゃあないのかなあ、とは思います。そばにいたら鬱陶しいイヤなヤツ、という2作の主人公たちの共通点は、こと「フロレアール」に関しては、あまり強調されてなかった。イヤになる前に、コンプしちゃった。かと言って、書き込み不足という訳でもなさそう。ねっとりと絡みつくような言葉たち、耳につくゴムの音、鼻を刺すゴムの臭い、という要素が使えなかったせいなんでしょうね。
でも神経症(ホントにこの主人公の設定が神経症だとして、ですが)の症状、あるいは神経症に罹っている人物を表現するのなら、もっとしつこくてもOK。実際に神経症を患ってる人間を知ってるもんで。いっそのこと、精神病院を取材(まあ表向きは患者のふりでもしないと入れてもらえないだろうけど)した方がよかったのでは?
なんだか文句ばっかり並んじゃいましたけど、つまるところ、これ以外については、少なくとも俺的には、シナリオは◎ということなんです。迫力で「好き好き大好き!」には勝てないんで、ひとつ下、ということで落ち着きました。
コンプしたときの驚きと安心感は、何にも勝るものがあります。そういえば「好き好き大好き!」も、コンプしないと本当の意味でのトゥルーエンド(あれはおまけじゃない、と俺は結論付けました)は見られないんでしたよね。ほんのちょっとネタバレしちゃうと、エンディングの有機的結合ってのが、13p的シナリオ、なのかも知れません。
ゲームとしての俺の感想・意見は、「13pの部屋」に置いてあります。さしつかえなければそちらへもどうぞ。