● 有限会社アイボリー(00.10.23)

 もう何年も前から言われ続けていることですが、エロゲー業界のブランドなり会社なり部門なり、そういう「名前のついた」組織は、総数はおろか概数さえ全く把握できないほど日々離合集散を繰り返しています。全くもう、雨後の筍っちゃ聞こえもいいけど、湿地にうち捨てられた木造平屋建の柱のシロアリっつーか独りもんの台所の陰の生ゴミに涌くウジっつーか、キリがないにもほどがある、よね? ホントにさ。
 この状態に対抗するため、というかこれしか方法がないもんで、愛好家はこのブランド群を代表作で見分けます。代表作ってほどのもんがないと、分野っつーか傾向っつーか、そういうモノで見分けたりもします。どちらもあるメーカーやブランドは業界でもかなりの地位を持ってるんでしょうし、少なくともユーザーはそれを認めてます。どちらかがあれば、ユーザーはその名前を何とはなしに記憶の端にはとどめていて、それはある程度の新規購入への動機づけにはなってるみたい。どっちもないメーカーやブランドは、新規参入組か、選挙で言うところの「泡沫候補」的存在なんでしょう。少なくとも俺にとってはそうなんだよね。
 具体例はそれほど重要じゃないんでやめとくわ。異論もあるだろうし。今回のこれはその中のひとつを認めて褒め称えようってんだから、他のメーカーの悪口書いてもしょうがないもんね。
 さて本題。キャラクター本位でエロゲー作るメーカーの最右翼、といえば、俺的にはここです。有限会社アイボリー。(ジャニスってのは販売担当だろうから、多分実際にゲーム作ってる集団ってのはこの「アイボリー」なんだろう、と。もし間違ってたら教えてください。)「星のささやき」で業界デビュー、2作目の「とらいあんぐるハート」が大ブレイクし、一躍「次回作を期待されるメーカー」に。「I WISH…」はそのシステムのせいもありそれほど伸びなかったみたいだけど、昨年前半に「東京九龍」「とらいあんぐるハート2」と立て続けにスマッシュヒットを飛ばし、今ではすっかり中堅ブランド。特に看板シリーズ「とらハ」はファンディスク「らぶらぶおもちゃ箱」も出し、キャラ萌えを購入の第一条件にする人々にとってはいまや葉っぱや鍵に次ぐ期待の星。というのは言い過ぎですか?
 俺自身は、キャラ萌えってのはあんまり興味ないんです。そりゃあエロゲーから抜けられない以上二次コンのケはあるんだろうけど、逃げ道としては「俺ケッコンしてるもーんっ」てのがあって、別に現実の女がダメな訳ではなくて両方スキなだけなんで、ストーリイとかシチュエイションには憧れますけど(失ってしまってもう取り戻せないものとしてね)キャラに憧れるってのはあんまりないのよね。イイなあこんなコ、くらいはあっても。だからキャラ萌えしたくてアイボリー、ではないんですよ。ごめんなさいそっち系の方々。同志にはなれそうにないですわ。
 そもそも俺、アイボリーのゲームについて、単なるキャラ萌えゲーだと思ったことはありません。ま、エロ全開の抜きゲーの要素はほとんどないし、そういう意味での実用性はあんまりないんだろうけど、俺が求めてるもんってそういうのでもないし。単にキャラだけのゲームばっかり作ってるんだったら、例えばうちの「カウントダウンエロゲシナリオ」にランキングされる訳はないんで。
 じゃあ何だって言いますとね、デビュー作「星のささやき」以降、少なくとも俺がやった「とらハ」「とらハ2」「東京九龍」「ロン☆」で判断するに、登場する女性・男性キャラの全てが生じさせる「」、あるいは「空気」というものを、俺は気に入ったんだと思います。気に入った、なんて軽いもんではなく、激しくハマったっつーか。
 このメーカーのゲームでかなり特徴的なのが、主人公の名前変更を許さない、という部分。プレイヤーは自分をそのゲームの世界に投影するのではなく、ゲーム中の主人公の視点を引きずり出して自分の中に収め、そこで初めてそのキャラになりきることができます。つまり、例えば小説がそうであるように、他人の名前に感情移入しなければならない。だとすれば、シナリオライターは、安易に氏名変更できるエロゲーよりさらに高い文章力を要求される訳です。字面も、声優が呼んでくれる名前も、プレイヤーのものではなくて、それでもイイ、と納得させなきゃならないんですから。
 で、全部同じライターさんじゃないと記憶してるんですが、どのゲームも、それに成功してます。ここが不思議なんですけどね。プロデューサーが有能なのか、シナリオライターの徒弟制度でもあってその辺の技術が代々受け継がれてきてるのか。都築真紀氏とまりのあや氏の力が大きそうなんですが、ただの憶測なんでこれ以上は書けないや。ある程度以上のレベルが保たれているってのは、まあ誇るべきことですよね。買う側から言ったら、やっぱり安心感が違いますもん。期待度も。その割にお前今ごろロン☆やってるじゃねえか、みずいろの地図はどうしたよ、とは訊かんでください。発売日にエロゲー買ったことなんてそれほどないんです、何しろ金曜日はほとんどアキバになんか行けませんから。ええ、ええ、じゃあ通販にすりゃいいじゃねえかって声があることも理解してます、けどね、無尽蔵に資金がある訳でもないんで、どうしても発売後数週間って辺りの「買いどき」を狙っちゃうんですよね俺。○ッセ○ン○ーは店員の態度が物凄く気に食わないんで極力避けてますし。Laoxの地下はなんか高いんでスキじゃないし。○フ○ップでエロゲーってのもなんだし。いや別にイヤでもそこにしか売ってないって時はためらいもせず買っちまうんですけどね。
 おっとっとっと。話がそれちゃいました。えー、このライターさん達のキャラ群創作能力ゆえ、少なくとも俺がやったアイボリーのゲーム中には独特の「場」が生成され、それが個々のキャラのみならぬキャラ群としての魅力を生んだ。俺の認識はこうです。エロゲーのキモは「思い入れ」だと考える俺にとって、そこがもっとも優れたメーカーは、俺的にはこのアイボリーです。いや、だからと言ってここのエロゲーが一番だってんじゃないんですけどね。残念ながら。  どのメーカーでもそうですが、優れた部分があれば、劣った部分もある。ここまでを読んでもらえれば、俺がこのメーカーを評価していることは判っていただけるでしょう。だからこそ、この場で苦言を呈しておきたい。異論もありましょうが、このアイボリーは、やり方によっちゃ、もっと売れるエロゲーを作れるようになるはずなんです。
 シナリオライティング、および演出等によって、確かにキャラは立った。必ずしも現実的ではないんだけど、生き生きとした、魅力的なキャラ群が生まれました。ここまではいいんだ。問題はその後。じゃあ他のパーツは?
 原画、CG、音楽、声、システム、ゲームバランス。シナリオ以外の要素って、実はエロゲーの外見のほとんどを形成してるんですよね。原画みたいに、そこが売れセンでないとまず売れない、なんて要素もあるし、ゲームバランスみたいに、そこがうまく調整されてないと「うざいからすぐアンインストール」なんてあちこちにカキコされてしまう要素もある。
 遊んでいていちばん実感するのが、「システムがしっかりしていないエロゲーは遊んだ後の印象が悪くなる」っつー点ですかね。システムにいらいらさせられると、楽しんだことまで忘れちゃうんです俺。脳みそ軽いんで。だからとらハ2にはあんまりいい思い出はないです。でもあのキャラ達の存在感って言ったらすばらしいもんだし、ああ悲しいかな、ってトコですか。
 原画、CG、音楽、声、このあたりは、好き嫌いも当然出てくるんだろうけど、とりあえずロン☆レベルであればまずひどい評価は受けないでしょ。及第点は確実に超えてるもん。んであのキャラだから。
 いやあ、「とらハ3」が楽しみだなあ。頑張ってよアイボリー。
 頑張れ有限会社アイボリー。負けるな有限会社アイボリー。
 あなたたちは路線変更しないでね。ついていきますから。

 

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