入院
<こんなゲーム>
とうとう13pも流行りモノに走ってしまったか、と一部のマニアを失望させた作品。俺、Zyxの「淫内感染」シリーズはやったことないんだけど、多分それと同じ系列に分類される、いわゆる「病院ADV」。清らかなヒロイン、はすっぱだけど実は優しいところもあるサブヒロインなど、押さえるところは押さえているが、言ってみればそれだけとも言える作品。BELL−DAの「ほたる」の方が、主人公のキャラ設定やストーリイに絡めた幽霊譚などの味付けといい、音声のいやらしさといい、数段上。おっと、ここまで読むと、俺、このゲームけなしてるなあ。
13pテイストの感じられない部分は、正直言って、フツーのゲームだった。出来は決して悪くないし、あんみつ草氏の原画が嫌いでなければ、それなりに楽しめる。難易度はそれほど高くない(つーか低い)んで、CG100%にもそれほど難儀しなかった。シナリオは、こういうタイプのゲームなんであんまり目立ってなかったけど、それなりにまとまってる。力の入れ方がちと弱いような気もするけど。
そうそう、主題歌の桃井はるこにはびっくりした。<こんなところが13p>
さて、このフツーのゲームの中の13pテイスト、というのが、登場キャラのひとり・須恵岳萌架のシナリオ。ああまたシナリオか、なんて言わないでね。今のところ、13pテイストをもっとも色濃く顕現しているのは、間違いなくシナリオなんです。
レビューページの焼き直しになっちゃうんだけど、このシナリオには強烈な男意気を感じました。だってねえあなた、普通、入院患者と仲良くなったら、入院患者は少しずつよくならなきゃウソでしょ? で、主人公がようやく退院、というあたりで、一緒に退院とか、先に退院してて迎えに来てくれるとか、まだ退院できなくても「もうすぐ追っかけるからね」くらいの台詞を吐くとか。
ネタバレしちゃうと、他の女の子のシナリオでは、この萌架ちゃんは難病治療のためアメリカに渡って、エンディングではだいぶよくなりましたって手紙まで遣してしまう。他の子のシナリオなのに。ならあんた、この子自身のシナリオなら、もっと綺麗にハッピイ・エンドしてくれたっていいじゃないですか? ねえ?
そう、予想がついたと思うけど、ハッピイになりません。一度経験したい、って彼女のたっての希望で一度シて、さあこれから彼女と共に闘病生活だ、というエンディングで、「ねえ知ってるの? あの子、この冬越せないかも……」なんて台詞を看護婦の1人にぶつけられてしまうんです。しかもその台詞に対して、「判ってる、でも俺が最後まで一緒にいるんだ」なんて言うんだよこの主人公は。
ふざけんなよ。
なんでそんなに強くなれるんだよ。
しかもそれで話はおしまい、エンドロールに突入すると、他の子のエンドロールは桃井はるこの底抜けに明るい歌なのに、この子のはピアノのしめやかなインストゥルメンタルだぜ?
まあ俺もコドモじゃないんで、少し落ち着いたら、このシナリオはすげーぜって評価でまとまりましたけどね。「Kanon」とか「加奈」とか、泣かせるシナリオってのが最近流行ってるみたいだし、一方的に否定はしません(つーかキライじゃないよ、話としてはね)けど、本当に悲しい話ってのは、こういう小品だからこそ、逆に際立つんじゃないかなあ、なんて思ったりもします。
うーん、俺も歯切れが悪いねえ。<俺的評価>
ゲーム全体としては、残念ながら、それほど高い評価はできません。上に書いてあるとおりですね。
ただ、全部が全部「萌架シナリオ」みたいにしちゃったら、こういうゲームは成立しなくなるんじゃないか、とも思うんですよねえ。フィクションなんだから、そこまで現実に貼りつかなくったっていいじゃない、という割り切りは絶対に必要です。でなきゃ、エロゲーを含むエロ関連のメディアはほとんど存在できなくなっちゃうだろうし。投稿写真だけしか載ってない雑誌がすべて、という世界はちと、ぞっとしませんなあ。投稿写真好きだけど。
現実世界を舞台にして(つまりSFとかそういう、現実離れした設定にしないで)こういうエロゲーを作る場合、男のロマンとか夢とか、そういう要素が90%までは叶えられていないと、まずは商品として成立しないでしょうね。だからほとんどのキャラでハッピイ・エンドになるのは必要条件なんです。鬼畜系のゲームがあれだけ出てくる理由も、このへんにあるんでしょうね。愛を持って苛めれば、女の子は必ずや応えてくれる。鞭や蝋燭、縄にもしっかり濡れてくる。そういうのはねえ、ウソ。ウソに決まってるでしょ? オトナになんなさいって。でもいいの。ウソで。
話が逸れちゃった。お気楽な恋愛を病院に持ち込む、っていうノリは、そういう理由で、正解です。しかも、例えばマゾの看護婦さんが出てくるんだけど、その人にとっては主人公について行くのか行かないのか、って選択はその人の存在価値にも迫る重大な要素なのに、ついて行くって決まっても、たいしたドラマが用意されてない。エンディングで首輪(奴隷の象徴、ってヤツね)渡されて、にっこり笑ってみせて、ハイおしまい。見事なまでの軽さだね。
で、それがキモチイイ訳ですよ。いっつも重大なゲームばっかりやってたら、疲れっちゃうでしょ? そういえば最近は軽い恋愛ゲームってのがあんまりないらしいから(必ず萌え系になってるらしい)、今、改めてこのゲームに注目するってのもまた一興、かも。(99.8.14)