嬌烙の館

<こんなゲーム>

 目が覚めるとそこは狭く暗い部屋。自分の名前も思い出せない。現れたメイドは自分を「あなたの召使」と呼び、けれど何ひとつ説明してはくれない。部屋から出るとそこは廊下で、似たような扉がいくつも並んでいて、主人公はそこをひとつひとつ開き、中にいる女性と会話を、やがて体を、交わしていく。
 雰囲気は、あんまり経験はないんだけど、古き良き時代の館モノなんだと思う。記憶を探し、鍵を探し、つー感じで話は進む訳。単純っちゃ単純なんだけど、王道のひとつだけあって、材料さえ揃えれば、きっちりおもしろくできる作り方だよね。「雑音領域」とか、すっごい好きだったなあ。
 敵というか鍵を握る人物というか、ヘンなヤツがいるんですが、そいつのイメージがどうも喪黒福三(だっけ?)と重なって見えて、意味もなく不快でした。俺キライなんだわあいつ。
 で、ストーリイはあれだけど、テキストがやたら深くて、正直なところついて行けないところまであった。たかがエロゲー、されどエロゲー、てな気分でしたね。西洋哲学まで持ち出されちゃうと、大学ん時にサボりまくった俺としては、ちょっとキツいんですよね。レビューかなんかでも触れたんだけど、ベンヤミンとかフッサールとか、よくもまあこんなん使うわなあ、てな感想を持ちました。ベンヤミンなんか俺の卒論のテーマのひとつだよ? 卒論のネタがエロゲーに使われちゃうのって、なんか不思議だわ。もちろん嬉しくはないんだけど、ようやくああいうテーマも一般的になってきたなあ、つー感慨っていうか、そういうのを感じますわ。

<こんなところが13p>

 始めから終わりまで、別にテキストスキップなんか使わなくても、10時間もあれば終わる。
 これは凄いことですよ。賛否両論なんだろうけど、普通は「否」の方だろうなあ。俺は是々非々だったけど。いくら社会人で時間がなくても、大枚払って買うエロゲーですもん、10時間で終わっちゃったら悲しいんじゃないかなあ。俺は満足できる部分があったんでまあええか、とか思ったけど、普通は暴れるよね。しかも、ワンプレイ10時間、再プレイ3時間、とかじゃなくて、ワンプレイオンリーじゃないですか。
 もう少し安ければよかったのかも。でなければ、ワンプレイじゃすべてのCGを集められないとか。クリアしたら必ずすべてのCGを集め終えてる、というのは、最近のエロゲーじゃ珍しいです。
 もうひとつ。ここまで故意に触れなかったけど、「音声合成システム」。雑誌とかじゃ、結構注目してたみたい。その記事を読んだ俺も、実はわくわくしてました。いきなりグラフが出たりして、ふたつのグラフを選択して、ホントのイミでの音声合成ができるんじゃないかなあ、なんて。
 実物見てがっかりしたのは、俺だけじゃないと思います。まあ、あれがフツーの音声合成ですよね。俺が想像してたのはちょっとマニアックだし、第一、エロゲーでそんなんやろうなんて誰も思わんもん。
 でも、ちょっとは期待してたんだよなあ。 

<俺的評価>

 シナリオを通して読むだけで買った価値がある、と初めて思わされたエロゲーです。感動モノ、萌えモノじゃなくて、このゲームでそう思えた俺は、多分、流行りには置いて行かれてるけど、正常です。
 感動したいんなら、他のメディアでいくらでも凄い作品が出てるもん。クローネンバーグの「デッド・ゾーン」(映画)、ジェイムズ・ティプトリー・ジュニアの「たったひとつの冴えたやりかた」(小説)、幸村誠の「屑星の空」(漫画)。この3つなら、いつ見ても(読んでも)、俺は泣けるぞ。そこまでのチカラは、まだ今のエロゲーにはないはず。だとすれば、そういう方面に向くんじゃなくて、いろいろ新しい試みをしたり、とにかくいやらしくしたり、といった、絶対的に必要なことを、エロゲーはすればイイと思う。
 そういうふうに見ていくと、この「嬌烙の館」は、正常なベクトルに向いてるエロゲーです。こういうエロゲーを作り出せる13pと言うメーカーも、正常なベクトルを持ってるメーカーです。少なくとも俺的には、こうあるべき、という方向性を維持している、数少ないメーカーさんです。
 こんなとこでこんなことをいうのも何だけど、これからも頑張ってください。(99.8.14)