タイトル「輪廻の杖」
主人公 グラビル
主人公の友人 蒼
主人公の幼馴染 フェレス
モルル王国王子 ウルグ
第1章 王都ミンツ
モルル大陸から旅立ったグラビル達は、世界で一番大きな都市、ミンツに着いていた。
そしてグラビル達が見た世界は、すでに戦争は大きく広がり、長い年月を戦い続けていた。
ミンツ国とバロール国。どちらも大国で、戦いは膠着状態が続いていた。
人間と魔人は、愚かしくも歴史の繰り返しをしていた・・・かのように見えた。
しかし、今起きてる戦いでは魔人と人間が同じ国で共存し、国同士での戦いとなっていた。
そしてグラビル達がいるミンツでも、多くの人間と魔人が協力し合って、バロール国と戦っていた。
グラビル達は人間と魔人の共存に喜びを抱いていたが、国同士での戦いに大いに悲しんでいた。
そしてグラビル達4人は、王都ミンツの兵士舎で掃除や炊事・洗濯など手伝いをしていた。
「オ~~イ、こっちの食材運ぶの手伝ってくれ~~」
「は~~い、今そっちに行くよ~」
蒼は魔人としては力も体力もあり、荷物運びを主にしていた。
「ウルグ~、薪割してくれ~」
「は~い、今行きます~。」
ウルグはモルル王国皇子の名を隠し、薪割や荷物運びをしていた。
「フェレスちゃんは、一緒に洗濯干し手伝ってね~」
「わかりました。」
フェレスは洗濯や食事作りを手伝っていた。
「グラビル~、お風呂掃除するから手伝って~。」
「は~い。」
グラビルはあまり力がないので、掃除や食事を運ぶ手伝いをしていた。
グラビル達4人は、毎日手伝いに追われていた。
「やっと終わったよ・・・疲れた~」蒼がベットに倒れて言った。
「毎日これじゃね~」ウルグもベットに倒れた。
「仕方がないわよ、私たちに出来る事といったら手伝いしかないんだもん。」
フェレスは椅子に腰かけて、疲れた体を癒していた。
「・・・でも、僕達ってこんなことするために来たわけじゃないのにね・・・」
グラビルも自分のベットに座って言った。
「だよな~、俺達って世界を見て回って、戦争を止めるためにモルルから出てきたのに、何も出来ないんだよね~」
蒼は天井を見上げてそう言った。
「そうだな・・・確かに俺達って無力だよな・・・」
ウルグも天井を見上げた。
「何言ってるの!!お手伝いだって立派なお仕事だし、今の私たちじゃ戦争を止めるなんて無理なのよ?」
フェレスは二人を見て言った。
「そうだね・・・僕達は今出来ることを精一杯やろう。」
蒼とウルグはグラビルの言った言葉を聞き、「そうだな」と言って、うなずいた。
「よ~し、早く寝て明日に備えるか~」
「うん」
蒼の一言でみんなはそれぞれの布団に入り、眠りについた。
あくる日、兵士舎に二人の軍人が来た。
「皆さん、おはようございます。」
「あら、沙我様にブランシェ様、おはようございます。」
兵士舎の管理している百日紅さんが、深々と頭を下げた。
「これこれ、そんなことはしなくて良いよ。いつも我が部隊をお世話して貰っているのだからね。」
沙我将軍。人間の部隊での最高指揮官であり、ミンツ国の軍事を取り仕切っている人。
「そうですよ。百日紅さんや他の皆さんがいるから、私たちは安心して戦いに行けるのですからね。」
ブランシェ軍師。魔人で主に戦では後方支援をしていて、戦いでも戦略を考えている人。
「そのお言葉、有り難く思います。他の者たちもより一層頑張れることでしょう。」
百日紅はそう言ってまた頭を下げた。
沙我とブランシェは困ったように笑った。
「それで、今日はどういったご用で?」
百日紅は二人を奥に誘い、椅子を用意してお茶を入れた。
「うむ・・・実はな、また大きな作戦をしなければならなくなった。」
沙我は真剣な顔で百日紅に言った。
「・・・また・・・ですか。」
「そうです。このままではミンツの防衛網は破られるのは時間の問題。多少傷ついている者も、
戦いに出さなければならなくなってしまったの・・・。」
ブランシェは少し俯きながら言った。
「そうですか・・・今私が管理しているところは、怪我人がほとんどです。お二人が来た時に薄々感じていました。」
「すまぬな。」
沙我は頭を下げた。
「いいえ・・・私に頭を下げないでください。確かにここの母親代わりをしていますが、
今は戦争・・・仕方がないのです。」
百日紅はそう言って、俯いた。
「何が仕方がないのです!!」
3人が振り返ると、そこにはグラビルとウルグがいた。
「お前たち・・・聞いていたの?」
百日紅が二人に近づいた。
「ごめんなさい。盗み聞きするつもりはなかったんですけど・・・。」
ウルグは2人に近付き
「人間と魔人を何と思っているんだ!!お前たちの道具じゃないんだぞ!!」
「これっ!!沙我様とブランシェ様に向かって、何を言ってるの!!!」
「良いのです。」
ブランシェが百日紅を止めた。
「ウルグ君だったかな?確かに私たちは怪我人さえも戦いに出さなくてはならない選択をした。
でもね・・・今私たちが負ければ、ミンツにいる人たちがみんな殺されてしまうの。」
「それはわかってるよ・・・でも!!」
「君はやさしい子だね。その心・・・いつまでも忘れないでほしい。」
沙我はウルグに言った。
「だかね・・・力って言うのは二つあるのだよ。破壊する力と守る力。私たちは守る力が欲しいのだよ。」
「沙我様、ブランシェ様・・・この件了承しました。今出来ることを精一杯し、少しでも早く怪我が治るように
全力を尽くします。」
百日紅はそう言って頭を下げた。
「無理なことを言ってすみません。お願いします。」
ブランシェも頭を下げた。
そして、沙我とブランシェは兵士舎を出てっていた。
「ウルグ?あなたが言いたいことはわかる・・・でもね・・・ほんとに仕方がないの。」
百日紅は涙目になって言った。
「・・・・・・・」
ウルグな何も言わずに出てって言った。
「グラビル・・・ウルグをお願いね。」
百日紅そう言って、椅子に座り泣いていた。
「ウルグ~~。」グラビルはウルグのもとまで走ってきた。
「大人達はどうして・・・こうも・・・」
「何?どうした?」
そこには蒼とフェレスもいた。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
二人に事情を話した。
「なるほど・・・」蒼は俯いた。
「確かに、大人の人は・・・ううん、戦争は酷いはよね。」
フェレスも俯いた。
「・・・違うんだ。」
「違う?」グラビルは頭をかしげた。
「そう・・・違うんだ。僕が言いたいのは、自分の無力さだよ。沙我さんが言ってた・・・守る力が欲しいって。
今の僕には守る力どころか、君たちみたいに魔法も使えない。だから悔しいんだよ。」
ウルグは涙ぐんでいた。
「そんなことはないよ?ウルグは立派よ♪前だって、土人形から救ってくれたし、モルルだって救ったじゃない。」
フェレスはウルグに近付きそう言った。
「そうだよ、お前は無力じゃないよ。」
蒼もウルグに近付きそう言った。
「・・・ごめん、俺弱気になってたな・・・よし!!頑張って、手伝うか~~!!!」
「その意気だ!」蒼はウルグの背中を叩いて、励ました。
その夜・・・ウルグは夢を見ていた。
「ここはどこだ?」
ウルグは白い煙に包まれた所にいた。
「何も見えないな~」
ウルグはゆっくり前に歩いていた。
「・・・・・・・・・・・・」
「なにか聞えた・・・」
ウルグは声のするほうに向かって歩いた。
「・・グ・・・・をう・・・・」
「え?何?」
「ウ・グ、・・・を受け・・て」
ウルグはどんどん前に進んだ。
「ウルグ、・・剣を受け取って」
「え・・・剣?」
「ウルグ、魔法剣を受け取って」
「魔法剣?なにそれ?」
ウルグの目の前には、光り輝く剣があった。
「君は誰なの?」
ウルグがそう言うと、急にあたりが眩しくなり、ウルグは目を覚ました。
「・・・今のは一体。」
ウルグがあたりを見渡すと、いつも通りの部屋だった。
「・・なんだ夢か。」
しかしウルグの枕には見たことの無い物があった。
「なんだこれ?・・・はっ、これは夢で見た剣。でも・・・剣を持つところはあるけど、肝心の刃が・・無い。
何この剣?これじゃ、何も出来ないじゃん。でも・・・いちょうしまっておこう。」
ウルグは刃の無い剣を机に入れて、また眠りについた。
翌朝、ウルグは刀剣の無い剣のことをグラビル達に話し見せた。
だれが握っても何も起きない剣。4人は不思議に思い、他の人や沙我やブランシェにも聞いたが、
誰も何もこの剣のことを知らず、何事もないまま日が過ぎていった。
第1章・・・終わり
第2章 魔人の試験
ガサガサと、腰の高さまである草を分けながら進む蒼。
その後ろから、フェレスがグラビルの手を引きながら、草むらを進んでいた。
ラシュアン村の南にある『ムリフェンの森』
この森は、杖を作るために必要な木が生息する唯一の森。
そして子供達がよく遊ぶ森でもある。
「針木から枝をとって、蛇木から蔓。そして、ペガサスの羽根か。」蒼は草を分けながら言った。
「そうね。最初の二つは良いとして、最後が問題ね。」フェレスは、村長から貰った紙を見ながら答えた。
「グラビル、大丈夫か~?」と、蒼が後ろを振り向くと、グラビルは小刻みに震えながら頷いた。
「・・・・本当に大丈夫か?」
「う・・うん。大丈夫。い・・一人前の魔人になるために・・がんばるよ。」
蒼はグラビルの後ろに回り「その意気だ!」バシーンと背中を叩いた。
グラビルは、叩かれた勢いでヨロつきながら笑った。
蒼があたりを見渡した。「着いたな。」
森の中で数少ない草源。広さはあまり無く、草源の中央に数本の木が生えている。その木こそ針木である。
「そういえば針木の周りって、他の木生えてないよな。」と、蒼が言うと
「たぶん、針木が他の木を攻撃するから・・・かな?」フェレスが答えた。
『針木』・・・この木は大人の背丈ぐらいで、近づく者(物)に対して、鋭い枝で突き刺す・・・まるで生き物のような動きをする。
蒼が周りを見渡すと、他の子供達は木に近づくのに戸惑っている。
「どうしたの?」と、フェレスが聞くと「魔法が解けてないみたい・・・」と、近くの子供が言った。
「えっ?」蒼とフェレスが言うと「見てて。」と言って、小さな枝を針木に投げた。
高く飛んだ枝は、弧を描きながら針木に近づき「パキッ!!」と音を立てて、半分に折れた。
「・・・・・・」蒼とフェレスはお互いの顔を見ながら青ざめた。
「村長は魔法を解き忘れたんだ・・・。」誰もがそう思った。
そんな時、少し離れた所からガサガサと歩く音が聞こえた。
他の子供達も気づき周りを見渡すと、グラビルが「逃げちゃ駄目だ。怖く無い。」と言いながら針木に近づいていた。
グラビルの行動に気づいた蒼とフェレスは、慌てて走り出した。
「グラビルーー!!近づいちゃ駄目だーー!!!」走りながら蒼は叫んだ。
フェレスも走っていたが、草が邪魔でなかなか早く走れなかった。
「ゴン!!」と、音を立てて突然グラビルは倒れてしまった。
「いや~~~~っ!!!」と、言いながらフェレスはその場で泣き崩れた。
「嘘だろ・・・・」蒼も立ち尽くしがら「グラビル~~~ッ!!!」と叫んだ。
「なに、蒼?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・」周りがシーンとなった。
「いたた。目を閉じながら歩いてたら、頭ぶつけちゃった。」笑いながらグラビルは起き上がった。
「・・・・・・・・・・・・・・・・」
「あれ?みんなどうしたの?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・」
「みんな口を開けてどうしたの?フェレスは泣いてるし・・・・」グラビルは顔をかしげながらフェレスに近づいていった。
「お・・おまえ・・・な・・なんとも無いのか?」蒼が尋ねると
「うん。頭を枝にぶつけただけで、なんともないよ♪」と、笑顔で答えると
フェレスが力強く抱きしめてきた。
「いたた。フェレス・・・いたいよ。」
「このバカッ!!心配させないでよ!!」泣きながらフェレスは、グラビルをさらに強く抱きしめた。
「いたたた。いったいどうしたの?何かあったの?」と、グラビルが言うと蒼が今までのことを話した。
「・・・・・・・・・・・・・・・・」グラビルは、顔を青ざめながら立ち尽くしていた。
「一体どうなってるんだ?」と、蒼が言いながら村長から貰った紙を見てみると
最初に針木に行くのじゃ。魔法は解いておくからの。
ただし、針木に木を投げてはいかんぞ。木に対しては魔法を解いても、攻撃するから投げてはいかんぞ。
「フェレス・・・こんなの書いていたか?」蒼が紙を見せると
フェレスは涙を拭いながら横に顔を振った。
「みんなの紙にも書いているのか?」と蒼が聞くと「書いてる。」と答えた。
「おかしいな~。最初は書いてなかったんだけどな?」と、考えながら紙を見るとまだ続きがあった。
尚、この文章は針木に着いてから出るようにした。
最初に書くと、試験にならんからの~。ホ~ッホッホ~。
「あの・・・くそじじぃ・・・最初に言っとけよ~~!!!」誰もが叫んだ。
まだ文句を言いながら、蒼はまた草を分けて歩いていた。「絶対に嫌がらせだ!!」
フェレスも泣きやみ、「そうね。最初に言ってくれないと、万が一に紙を無くしたりしたら、大怪我じゃすまないわよ!」
と、蒼と同じく文句を言いながら歩いていた。
子供達は針木から枝を取り、奥にある森から蛇木の蔓を取り、最後のペガサスのいる泉に向かっていた。
ガサガサと草を分けて歩いていると、目の前に泉が見えてきた。
この泉は木に囲まれていて、水の透明度が高く、動物達の水のみ場となっている。
泉の中央に大きな岩があり、ペガサスはその岩の上にいた。
「きれい・・・」フェレスが見とれていた。
真っ白なペガサスは羽を休めて、静かに水を飲んでいた。
「あの岩までは、橋で行かないと駄目だな。」蒼が指した指の先には、人一人が歩ける程度の橋があった。
「よしっ!俺がまずいって来る!!」と、蒼が気合を入れて言った。
「ガンバッ、蒼!!」
みんなが蒼に、声援をかけた。
蒼は一度紙を見て、「離れて一礼、頭を下げてきたら鼻を撫でる。羽を広げたら、ゆっくり取り、礼を言って一礼。」
何回も呟きながら、最後に顔を叩いて気合を入れた。
蒼は橋の手前まで歩き、ペガサスに向かい一礼をした。
ペガサスは蒼の行動に気づき、蒼のほうを向いて頭を少しずつ下げてきた。
蒼はそれを確認しゆっくりとペガサスに近づいていった。
ギシッ、ギシッ、っと音を立てながらゆっくり歩き、ペガサスの前まで歩いた。
間近で見たペガサスは、遠くで見た時よりも体も大きく、迫力があった。
蒼はその迫力に負けまいと、大きく息を吸って深呼吸をし、ゆっくりと手をペガサスの鼻に当てた。
ペガサスの毛はとても柔らかく、撫で心地も良かった。
「ごきげんよう。」と蒼が言うと、ペガサスが顔を上げ、羽を広げてきた。
羽はとても大きく、雄雄しく見えた。
蒼は羽に近づき、ゆっくりと羽根を抜いた。なんの力も要らずに取れた羽根はとても軽く、
大きさもちょうど手のサイズと同じだった。
蒼はペガサスから少し離れ、「ありがとうございました。」と言い、一礼をして
みんなのいるところの戻った。
「どうだった?怖くなかった?」と、みんなが蒼の周りに集まり、いろんな質問をしていた。
「ぜんぜん・・・、と言いたいけど、ちょっと怖かった。間近だとすっごい迫力あるよ。」
と言うと、今度は手に持っている羽根をみんなに見せた。
「すごく軽いぜ。みんなも早く取ってきなよ。」と言うと、順番に子供達はペガサスの元に行った。
「最後はグラビルね。大丈夫?」とフェレスが聞くと、少し青ざめながら頷いた。
「あのペガサスの迫力に、負けるなよ!」と蒼が励ましてくれた。
グラビルは橋の手前まで歩き、深々と一礼をした。
ペガサスの頭を下げるのを確認してから、ゆっくりと歩きペガサスの前まで歩いた。
ペガサスの雄雄しさに、グラビルは震えながらゆっくりと鼻を撫でた。「ごきげんよう。」
蒼やフェレス達は、グラビルの無事を祈りながらは、無事に羽根を取り終えるのを待っていた。
そしてグラビルが羽根を取り、最後の一礼をした時に、蒼が異変に気づいた。
フェレスのほうを見て蒼が言った。「ペガサスの様子が、変じゃないか?」
「え?そう?何も変わらないと思うけど・・・」フェレスはペガサスを見ながら答えた。
周りの子供達も、ペガサスに異変がないか見続けた。
そのときである。「バサッ」っと急に羽を広げ、
ペガサスは橋を渡っているグラビルの上を飛び越え、橋の入り口に舞い降りてきた。
蒼とフェレスは慌てて近づこうとしたが、
ペガサスの迫力に負けてしまい、近づくことが出来なかった。
「魔人の子供よ。なぜお前は私の羽根を取る時に、一度ためらった。」ペガサスが、グラビルを睨みながら聞いてきた。
グラビルはいきなりの出来事に、震えて泣き出しそうになっていた。
「答えよっ!!」と、大きな声でペガサスはさらに睨みながら聞いてきた。
「だ・・だって、い・・痛そうだったから・・・・・ご・ご・・ごめんなさい。」
「痛そう?フッ・・フッフ・・フワッハッハッハ~~~~~~。お前みたいな子供は初めてだ。」
ペガサスはグラビルの頬に頭を擦りながら
「お前はいずれ、大きな試練に立ち向かうだろう。それまで、あそこで私を睨んでる
二人の子供を大切にするのだ。」と言い、天高く飛び去っていった。
ペガサスが居なくなったのを確認し、蒼とフェレスが勢い良く駆けつけてきた。
「大丈夫か?怪我無いか?」蒼は慌てながら、グラビルの体に怪我が無いか確認していた。
「グラビル、ゴメンね。すぐ駆けつけたかったけど・・・本当にゴメンね。」すすり泣きながらフェレスが言った。
「大丈夫だよ。なんともないよ。」グラビルは満面の笑みで答えた。
ラシュアン村まで帰ってくるころには、日はすでに傾き夕方になっていた。
村の入り口には多くの人が集まり、自分の子供達の帰りを待っていた。
心身ともに疲れきった子供達は、村の明かりが見えた瞬間に疲れも忘れ、勢い良く親の元に走り出した。
「おかえり、子供達よ。」村長が子供達に言うと
「村長!なんで先に紙の事言ってくれなかったんですか!!」と子供達が怒り出した。
「ふむ。やはりお前達は枝を投げたようじゃな。」と、髭を撫でながら子供達を見渡した。
「よいか、子供達よ。今回の試験の意味は一人前の魔人としての心構えの試験じゃ。
杖を作る試験もじゃがの。」
手招きをして、子供達を集めた村長は
「お前達は最初に、魔法が切れているか試すのに枝を投げた。そうじゃな?」
子供達は頷いた。
「うむ、良い事じゃ。いくらワシが安全といっても、確認をせずに木に近づくのは危
ないのじゃ。これは日常でも同じじゃぞ。お前達はこれから杖を使い魔法を使うじゃろう。
しかし、魔法というのはとても危険なものじゃ。何時、如何なる時も安全を確認する。
この事を身をもって知ってほしかったのじゃ。」
子供達全員の頭を撫でながら、村長は話を続けた。
「お前達は、安全という言葉の裏にある危険を知り、
そして今魔法の危険を知り、無事に試験を乗り越えた。
おめでとう、子供達よ。全員合格じゃ。」
「やった~~~♪」子供達は喜び、抱き合っていた。
喜び合っている中、グラビルは村長の所に歩み「村長。」
「どうしたのじゃ、グラビル?」
「ペガサスが、僕に大きな試練があるって言ってたけど・・・。」
村長はグラビルの頭を撫でながら
「ペガサスは予知の力を持つとも言われている。ペガサスが言った事は、
おそらく未来のことをじゃ。他には何か言っとらんかったか?」
「うんとね。蒼とフェレスを大事にって言ってた。」
「そうか・・・。今言ったペガサスの言った事は、忘れるでないぞ。」
村長の顔を見上げ「うん。絶対に忘れない。」と、力強く頷いた。
「さ~、子供達よ。」と、村長は辺りを見渡し
「ご馳走の準備が出来とる。一人前になったお祝いじゃ。
大いに食べ、大いに騒ぐが良い。」
村長が言うと、子供達は我先にとテーブルまで走り、ご馳走を食べ始めた。
大人達もテーブルに着き、ご馳走を食べ、踊り、歌など歌い夜遅くまで大いに騒いだ。
第2章・・・・終わり
第3章 モルル王国の王子
モルル王国王都・・・王都の北は広大な海に囲まれ、魚介類が取れ、
南は広大な平地で、野菜や果物などの食料が豊富に取れる豊かな都。
都の大きさはさほど大きくないが、とても賑やかで活気のある都である。
そんななか、モルル王国王子ウルグは毎日、国王になるべく勉強に励んでいた。
「ウルグ様、おはようございます。今日は世界の歴史についてお話いたします。」
赤いローブに包まれた、赤く長い髪の男。都でも噂になる美青年。
この人が僕の先生。見かけは・・・おいといて、知識だけはすごくある人。
いつも、僕にいろいろ教えてくれる、他国から来た先生。
「おはようございます。閼伽(あか)先生。」
「では、勉強を始めます。遥か昔に、大きな大戦がありました。
この戦いは多くの犠牲を払い、人間と魔人とが別々に暮らす結果を生みました。
では問題です。人間はそのあと、どう生活を過ごして来ましたかな?」
「はい先生。そのあと、魔人の居る村を避け、戦争の武器を捨てて、
二度と争いが起きないように、平和に過ごせるように、心がけて生活をしてきました。」
「そのとおりです。二度と愚かな戦いを起こさない生活、これが一番王として大切なことです。」
「はい、先生。・・・・先生、質問しても良いですか?」
「何ですか?」
「魔人はそのあと、どう生活しているのでしょうか?」
「ふむ。先も言ったように、魔人との交流は避けていて、私にはわかりません。
ただ、魔人も愚かな争いをしないように、人間を避けて生活していることだけはわかります。」
「そうですか・・・」
「・・・・ウルグ様は、魔人に興味がお有りですかな?」
「!?・・・・いいえ。」
「そうです。魔人には興味を持ってはいけません。それが争いを起こさない、一番良い方法なのです。」
「はい、先生。」
「では、今日はここまでです。」
「ありがとうございました。閼伽先生。」
ウルグは先生にお辞儀をして、部屋を出た。
「・・・・魔人か。一体どんな人達かな。」
モルル王国王子ウルグは好奇心旺盛で、小さい頃から城内で探検をしたり、
新兵を連れて城外を探検するのが好きだった。
そして今、最も興味があるのが魔人である。
「最近、兵士の警戒が多いから、城から抜けるのも大変なんだよな~」
今、王都ではたくさんの兵士が都を巡回し、
特に城内ではすべての廊下に兵士が巡回をしていた。
「父上に聞いても何も言ってくれないし、
閼伽先生も教えてくれないしな~。
・・・・気になるな~。」
バタンと自分の部屋の戸を閉めたウルグは、フカフカのベットに寝転びながら、
いろいろなことを考えていた。
一番興味があるのは魔人のこと。次に、兵士の巡回のこと。
巡回が多いということは、何かが起きるということ。
「よし、今日は久しぶりに城外に出よう。」そういうと、ウルグは怪しまれずに、城の地下に向かった。
ウルグだけが知ってる抜け道。小さい頃に探検して見つけた、あまり大きくない洞穴。
前かがみになり、両手両足で歩いてやっと通れる洞穴。
「ふぅ、やっと出れた。」と言い、背伸びをしてウルグは辺りを見渡した。
「今日も晴。さて今日は奥の森まで行ってみるかな。」
そういってウルグは歩き出した。
「この辺は・・・確かあまりにも大きな森で、迷いの森とも言われているんだったな~。」
森の手前まで来たウルグは、入るか入らないか迷っていた。
「や~めた。万が一に迷子になって帰りが遅れたら、父上に怒られるし・・・
今日はこの辺で帰るな・・・。」
と後ろを振り返った瞬間、なにかが空を飛んでるのが見えた。
「な・・なんだ、あれは?」
ウルグが見上げた先の見えたのは・・・・
第3章 終わり
第4章 初めて・・・
夜遅くまで騒いでいた子供達。寝る時間になってもなかなか寝付けないでいた。
そして、ラシュアン村に朝日が昇ってきた・・・。
「おはよう子供達。昨晩は・・・良く眠れなかったようじゃな。」
長老が子供達を見渡すと、ほとんどがあくびをし、眠そうにしていた。
「眠そうなところすまんが、わしの話を良く聞くのじゃぞ。」
長老は部屋の隅にある箱を持ってきた。
箱を開けると、そこには杖の材料である針木の枝・蛇木の蔓・ペガサスの羽根があった。
それを取り出したとき、子供達は眠気もなくなりスッキリした顔になった。
それもそのはず、とうとう自分の杖を作る時がきたのである。
「さて、子供達よ。杖について覚えているじゃろうな?」
「はい、村長。杖は1つの魔法が使えます。」手を上げて、フェレスは答えた。
「うむ、そうじゃ。杖は前大戦の時は、何でも使える万能の杖じゃった。
しかし、万能の杖の恐ろしさを知ったわれわれ魔人は、
万能の杖を捨て、特殊な材料で作った、1つの魔法しか使えない杖を、作ったのじゃ。」
「二度と愚かな争いをしないようにですね。」グラビルはそう言った。
「そうじゃ。子供達よ、今の事を決して忘れる出ないぞ。」村長はそう言いながら、
杖の材料を子供達の前に並べた。
「では・・・杖の作り方にはいるぞ。」
村長が言うと子供達は姿勢を正し、真剣な眼差しで村長を見た。
「作り方は簡単じゃ。蛇木の蔓に火をつけ、ペガサスの羽根を燃やし、
針木をその煙で焙すのじゃ。そして、その時に呪文を唱える・・・それだけじゃ。」
「えぇ!?それだけなの?」蒼が驚いた。
「そうじゃ、それだけじゃ。」
子供達は少し拍子抜けしていた。なぜなら、材料を手に入れるのに苦労したから
、魔法の杖を作るのも難しいと思ったからである。
「では良く見ておくのじゃぞ。」
そう言うと村長は蔓に火をつけ、燃えた蔓に羽根を落とした。
すると、真っ白な煙が出てきた。
「この白い煙は、ペガサスの魔力がこもっておる。この煙の中に杖を入れると・・・」
村長の持っていた杖は、灰色からだんだんと白色に変わってきた。
「白くなってきた状態で、呪文を唱えるのじゃ。」
子供達は夢中になりながら、村長の様子を真剣に見ていた。
「空を翔る箒星」
村長がそういと、杖は白く輝きだした。
そして杖は全体が真っ白になり、魔法の杖が完成した。
「これが魔人として初めて持つ魔法の杖、空の杖じゃ。」
「おぉ~~~~」
子供達が歓声を上げた。
「さぁ、子供達よ。お前達もやってみるのじゃ。」
子供たちは村長を見習い、杖を作り始めた。
「みな出来たようじゃな。」
「はい、村長。」と、子供たちは答えた。
「うむ、良く出来た。さて杖について、また一つ教えておこう。杖には火を生むもの、
水を生むもの、風を起こすものなどたくさんあるのじゃ。」
「おぉ~」子供達は今の言葉に、大いに関心をもった。
「そして今、お前達が作った杖は空の杖じゃ。空の杖の魔法は、空を飛ぶことが出来るのじゃ。」
「おぉ~~~~」
「ただし、杖による悪行をした場合、わしはお前達に罰則を与えなければならない。」
「えぇ~~~」
「罰則ってどんなのですか?」フェレスが聞いた。
「杖の没収じゃよ。二度と杖は使えなくなるのじゃ。」
「・・・・・・・・」子供達は黙り込んでしまった。
「安心せい、悪さをしなければ良いのじゃ。」
「悪さって、例えばどんなことですか?」蒼が聞いた。
「ふむ。人に向けて火を放ったり、危険な飛び方をしたりじゃ。わかったかの?」
「はい、村長。」
「うむ。では子供達よ、外にでるのじゃ。」
子供達は急いで外にでた。
「さぁ、子供達よ。次はどうやって空を飛ぶかじゃが・・・
実際見たほうが良いじゃろ。」
そういうと、杖を取り出し
「空を翔る箒星」と唱えた。
すると、杖はみるみる伸びてきて、箒の長さまでになった。
「これが空飛ぶ杖じゃ。」と、村長が言うと
「すげ~~」と子供達が歓声を上げた。
「飛ぶときは、頭で飛ぶのじゃ。」
「????」子供達は、頭をかしげた。
「頭とは、念じることじゃ。つまり、どれだけの高さを飛ぶか、
どっちに進むかは自分の意志で飛ぶのじゃ。」
子供達はまだ首をかしげていた。
「ふむ、実際に飛んでみるのじゃ。」
そういうと、子供達は「待ってました」と言いい、
それぞれ呪文を唱えた。
「空を駆る箒星」
子供達の杖はみるみる伸びていき、箒の長さになった。
ほとんどの子供達はなかなか飛べなかったが、
「おぉ!?グラビルが飛んでる!!」と蒼が言うと、
みんなはグラビルに注目した。
すると、少しだけだが足が浮いていて、揺れもせずに浮いていた。
「見事じゃ、グラビルよ。」村長は拍手をし、グラビルを褒めた。
「さて、これから各々練習をし、自由に飛べるようにするのじゃぞ。」
「はい、村長。」
そして子供達は、各々練習のためにばらばらに移動し始めた。
「しかし・・・グラビルにさき越されるとは思ってなかったな~」
蒼がそう言いながら小道を歩いていた。
「うん、僕もビックリした。」
「でも・・・どうやって飛んだの?」フェレスが聞いてきた。
「うんとね、少しだけ飛ぶって思っただけだよ。」グラビルが答えた。
「それが出来ないから聞いてるんじゃないか・・・」
蒼が俯きながら言った。
「・・・・そうよ、それよ!」フェレスが何かに気づいた。
「私達は早く飛びたいって思うあまりに、焦っていたのよ。」
「・・・たしかに、そうだな。俺も早く飛びたくて、うずうずしてたしな~。」
蒼とフェレスは村長の言った事を思い出していた。
『頭で飛ぶ。』つまり、雑念があれば飛べないということである。
「よ~し、今度こそ飛んでやるぞ~~!」
蒼は両手を挙げて気合を入れた。
「でも、何処で練習するの?」グラビルが蒼に聞いた。
「そうだな~、あまり人がいなくて、広い所が良いよな~。」
「そんな所って、なかなか無いわよね。」フェレスも、良い練習場所がないか考えていた。
「・・・・あった。」突然蒼が言った。
「・・?どこ?」フェレスが聞いた。
「森の外だよ。あそこなら広いし、草むらだから万が一に落ちても安心だよ。」
「!!・・・森の外に出てはいけないのよ!村の掟を忘れたの?」
フェレスが蒼に詰め寄った。
「良い?森の外は、人間との境目でもあるのよ。もし人間がいたらどうするの?」
「大丈夫だよ。前にも行ったことあるし、何より人間だってあの草源には来ないよ。」
蒼が自信満々に言った。
「でも・・・」フェレスはまだ迷っていた。
「グラビルはどうする?」蒼が聞いてきた。
「僕は・・・行ってみたい。」
「よし、決定~。じゃ~、行こう。」
そういって蒼は歩き出した。
ラシュアン村の森を出た草源、マルフィク草源。
広いこの草源は魔人と人間の境目とし、誰も近づくことの無い草源。
「着いた。ここが、マルフィク草源だ。」蒼が辺りを見渡しながら言った。
「すごく広いのね~。」フェレスも辺りを見渡し、あまりの広さにビックリしていた。
「よし!じゃ、早速特訓だ~♪」蒼が片手を上げて気合を入れた。
時間が少したち、グラビルはある程度自由に飛べるようになっていた。
フェレスも少しずつ飛べるようになっていた。
「ちょっと、そこを退いて~~!」
蒼は飛べるようになったが、進む方向が定まらずに、あっちこっちに飛んでいた。
すると、蒼は何か動くものがいるのに気づいた。
「動物かな?」そう思った瞬間に、急に進路が動く物のいるほうに向いてしまった。
「ちょ、待てって。そっちに行くな~~。」
と言ったやさき、蒼が飛んでいる眼下に人がいた。
魔人と人間の、初めての出会いであった。
第4章 終わり
第5章 出会い
「もうっ、蒼はどこ行ったのよ~!!」
フェレスは、空の杖でどこかに飛んで行った蒼を探していた。
「確か・・・こっちのはずなんだけど・・・グラビル、そっちにはいた?」
「いないよ~」
「もうっ、どこまで飛んで行っちゃったんだろう?」
フェレスとグラビルは、蒼がいなくなった広い草原を探し回っていた。
一方、蒼はというと・・・
「ちょっ、言う事と聞けって!!・・・うわっ!」
ズサササッ・・・
空の杖が地面に向かって突っ込んでいった。
「いたたたた。草があったおかげで大怪我しなくてすんだ;」
蒼は草がクッションとなり軽いかすり傷ですんでいた。
「しかし・・・さっきのはいったい・・・」
蒼はあたりを見渡した。
「う~ん、動物だったのかな・・・?」
ガサッガサッ
草むらが揺れた。
「誰だ!!」
「その声は・・・蒼ね。」
「お?フェレスか・・・ビックリさせるなよ~。」
草の中からフェレスとグラビルが出てきた。
「ビックリさせたのはあなたでしょ~!」
ため息交じりでフェレスは言った。
「だって・・・勝手に飛んで行くんだから仕方がないじゃないか。」
「仕方がないって・・・あなたがそう思ったから空の杖は飛んだのよ?」
空の杖・・・魔人の心に反応し思うがままに飛ぶことが出来る。
だが、雑念がはいるとうまく飛べないのである。
「村長から言われた事、もう忘れたの?」
「・・・・忘れてないけど。」
二人の間にグラビルが入り
「そんなことより、蒼?怪我はないの?」
「あ~、無いよ。なんて言ったって俺は体は丈夫だからな~。」
ハハハハハ・・・と笑いながら蒼は言った。
フェレスは呆れ顔で、蒼に怪我が無いか確かめていた。
「そういえば・・・さっきヘンな動物を見たんだ。」
「「?」」
フェレスとグラビルはお互いの顔を見て
「ヘンな動物?」と言った。
「そう!草の中で動くもの見えたんだ!」
「それのどこがヘンなの?」グラビルが聞いた。
「それがな・・・」
不意に後ろから・・・ガサッガサッと誰かが近づいて来る音がした。
そして・・・音は目の前まで来た。
「グラビル、フェレス・・・俺の後ろに隠れろ!」蒼が小さい声で二人を促した。
「誰かそこにいるの?」
不意に聞こえた声は大人の声ではなく、三人と同じぐらいの声だった。
「ほっ、なんだ村のやつか。」
蒼が安堵した・・・が
「聞いた事の無い声よ。」フェレスが言った。
そして・・・ガサッっと音がして目の前に三人と同じぐらいの子供が出てきた。
「あれ?君たちは誰?」
見た事の無い子供が、問いかけてきた。
「お前こそ誰だ。」蒼が言った。
「失礼なやつだな~。普通、問いを問いで返すかな~。」
「お前こそ、失礼なやつだな~!自分から名乗るのが普通だろう!」
蒼が強めの口調で言った。
「おっと、それは失礼。ぼくの名前はウルグ・・・モルル王国王子ウルグだよ。」
三人は固まってしまった。
モルル王国と言えば、人間の国である。いくら子供でも
その事は村長から聞かされていた。
「?どうしたの?名前を言ったんだから答えてよ?
あ・・・そっか、王子って言っちゃったから困ってるのか・・・別に良いよ、気にしないで。」
ウルグは同じ人間と思いどんどん話をして言った。
「ちょっと・・・どうするのよ・・・」フェレスがウルグに聞こえないように
二人に語りかけた。
「どうするって言ったって・・・」
村の掟を破る・・・それはぜったいにしてはいけないものだった。
と、突然
「ぼくはグビルって言うんだ。」
グラビルが返事をしてしまった。
「おい!なにしてるんだお前!!」蒼がグラビルの口を押さえた。
「どうしたの?グラビル・・・だった?苦しんでるよ?」
ウルグは心配そうに言った。
「いえいえ、なんでもないです。」
蒼はフェレスをひじで突っつき
「では、ぼくたちはこれで失礼します。」
蒼はグラビルの口を塞ぎながら、後ずさりした。
「ねえ・・・君たち・・・ひょっとして・・・人?」
ウルグが突然聞いてきた。
蒼とフェレスはビクッと体が硬直した。
「・・・・やっぱりそうなんだ。さっき空飛んでるの見かけて、
ひょっとしたら・・・と思ったけど・・・」そう言ってウルグは身を震わせていた。
「おい・・・震えてるよ・・・やばくない?」蒼はオドオドしながら言った。
「やった~~」
突然のウルグの歓喜に蒼とフェレスは飛び上がってしまった。
「なにを喜んでいるの?」グラビルがウルグに聞いた。
「だって・・・ずっと魔人に会ってみたかったんだ。」
「ほんと?」
「もちろんさ~」
「ぼくもだよ♪」
グラビルとウルグは満面の笑顔で握手しあった。
「おい・・・グラビルって・・・あんなに勇気あったか?」蒼が小声でフェレスに聞いてきた。
「いいえ・・・無かったはずよ・・・でも、この前の試験以来
少し成長したのかも・・・」
フェレスも小声で蒼に言った。
「なにしてるの?二人ともこっちにおいでよ~。」
グラビルが二人を呼んでいた。
「そっか~、ラシュアンでも同じ掟があるんだ。」
「うん、そうなんだ。」
グラビルとウルグはいろいろな話をしていた。
グラビルは村の事・友達の事・家族の事そして杖の事も話した。
ウルグも同じく王国の事・家族の事・人間の事などいろいろ話した。
蒼とフェレスもたまに会話に入り、ウルグと次第に仲良くなっていった。
「それで・・・どうやって、この杖で飛ぶの?」
ウルグが空の杖を眺めながら言った。
「んとね・・・杖を持って、空を翔る箒星って言うんだ。」
「なるほど・・・空を翔る箒星!」
・・・・ウルグが言ったが何もおきなかった。
「あれ?何も起きない・・・」
「そうよ、杖は魔人にしか使えないの。」フェレスが答えた。
「え!?そうなんだ・・・飛んでみたかったな~」ウルグは残念そうに言った。
「人間は何か無いの?」蒼がウルグに聞いた。
「あるよ・・・でも今は持ち合わせてないや。明日、見せるよ」
「ほんと?やった~~」グラビルと蒼が大いに喜んだ。
「うん、今日はもう帰らないといけないから、明日もって来るよ。」
ウルグは立ち上がりながらそう言った。
三人も立ち上がり
「それじゃ、またここで会おう。」
と言って、ウルグに握手した。
「うん。じゃ、またね~」
手を振りながらウルグはそう答え、モルル王国に帰って行った。
三人もラシュアンに向けて歩いていた。
「この事は絶対に秘密だからな!」蒼が二人の顔を見て言った。
「うん、言わない。」グラビルが答えた。
「でも・・・本当に良かったのかしら・・・」
フェレスが心配そうに言った。
「大丈夫だって。ウルグは良いやつだっただろう?」
「それはそうだけど・・・」
「そんな心配な顔してたら、余計怪しまれるから、普通にしていろよ。」
蒼がフェレスに念を押した。
「うん、わかった。」
長い年月を経て、今また魔人と人間が出会った・・・。
第5章 終わり
第6章 異変
今日も前の日もそのまた前の日も、ウルグはグラビル達と会い続けていた。
「今日も楽しかったな~♪明日は倉庫にあるちょっとびっくりする様な物を見せてあげよう~っと♪」
そう言いウルグは誰にも見つからないように、城の地下に向かっていった。
「ギーー」っと音をできるだけ立てないように静かに戸を開けた。
「あった。これこれ♪ビックリするだろうな~♪」そう言ってウルグは倉庫を出た。
ウルグが部屋に戻ろうと王室の前を通ったとき、王室から声が聞こえた。
「あれ?父様の部屋に誰か居るのかな?」
そう思って近付いて少し戸を開けてみると、そこには閼伽先生が居た。
「何しているんだろう・・・」
そうウルグが思った時にあることに気づいた。
「あっ!!あれは魔法の杖だ・・・なぜ閼伽先生が・・・でも・・・杖の色が赤紫色だ。蒼達が持ってるのとは色が違う。」
そのとき突然閼伽先生が杖を振るい
「惑わすは人心の心」
と言った。
閼伽先生はモルル国王に魔法をかけたのである。
「操心の杖は人を操るのに便利だが、効果が一日で切れるのは実に疲れる。
だが・・・そろそろ頃合だろう。王の名の下に傭兵も集まった。魔人との戦の準備はすでに済んだ。
あとは・・・」
ウルグは自分の耳を疑った。
「え・・・何?どういうこと?あの閼伽先生が魔法使いで、しかも父様を操っていたの・・・」
ウルグは混乱していた。と、突然
「誰だ!!そこにいるのは!!!」
その声を聞いたウルグは無我夢中で走り出していた。
「一体どうなってるの?」
ウルグは走りながら、少しずつ平静を取り戻していた。
「でも・・今はとにかく逃げなくちゃ。」
ウルグはいつも外に出る抜け道に向かって走った。
城の外にうまく抜け出したウルグは、
「どうしよう・・・このままじゃ、人間と魔人の戦争になっちゃう。」
ウルグは城からできるだけ離れるために、森に向かっていた。
「そうだ。このことをグラビル達に伝えよう。」
ウルグはいつもみんなの待ち合わせている平原に走っていった。
平原に着いたウルグは、どうやってみんなを呼べば良いのか考えていた。
「いつもは時間帯で集合してるけど、今回ばかりは明日なんて待てない。」
何か良い方法がないか模索していた。
「あっ!!そうだ。倉庫から持ってきたこれを使えば・・・みんな気づいてくれ。」
ウルグはそう言ってポケットに入れてたものを出し、それを使った。
「今日も楽しかった~♪」蒼が村に戻りながら言った。
「そうだね。ウルグが持って来る物ってどれもスゴイよね♪」グラビルも
ウルグが持ってきた物を思い出しながら、そう言った。
「そうね。やっぱり私達とはまるで違う生活をしてるのね。」フェレスも今までのことを思い出してた。
ウルグが持ってきた物。
火を生む物・音を溜める物・遠くを見る物など魔人に世界には無い物をいつも持って来てくれた。
「明日が楽しみだ♪それじゃ家に戻るよ。」そう言ってグラビル達は解散した。
夜更け・・・突然大きな声が聞こえた。
「火事だ~!!みんな起きろ~!!」
村の人たちが起きてみると、薄く白い煙に森が包まれていた。村長は
「あわてる出ない。みなの者、水の杖を持ち消火にあたるのじゃ。まずは場所の特定じゃ。
子供達はここで大人しく待っているのじゃぞ。」
そう言って大人達を連れて、森の中に行った。
その時一人だけ異変に気づいた。
「おかしいわね?煙があるのに焦げ臭くないなんて、有り得るのかしら。」
フェレスだった。
「クンクン。・・・確かに臭くない。」蒼も匂いを嗅いだ。
「ねぇ、この煙の方向っていつもみんなが集まる平原のほうじゃない?」
グラビルが言った。
「確かに・・・そうだ。」蒼も煙の流れを見て言った。
「ウルグに何かあったのかも・・・」
そう言ってグラビルは駆け出していった。
「ちょっ、待てって。」蒼も駆け出した。
その後ろをフェレスも「本当に、もう」と、ため息をついて後に続いた。
平原に着いたグラビル達はウルグを探した。
「お~い。ウルグ居るのか~い。」
みんなしてウルグを探した。
そしてウルグは居た。
「こっちだ、早く来てくれ!」
ウルグはみんなを急かした。
「どうしたの?」フェレスが息を切らせながら言った。
「大変なんだ!人間と魔人の戦争が始まる。」
「・・・・えぇ~~~!!!」
グラビルは一斉に声を上げた。
ウルグは今までのことを話した。
「その杖が魔法の杖だってのは、間違いないのか?」蒼がウルグに聞いた。
「間違いないよ。操るは人身の心って言ってた。」
「聞いたこと無い呪文ね。しかも赤紫って
見たこと無い。」
フェレスが今まで親達が持っていた杖の色を思い出していた。
「でも本当だよ。城には強そうな傭兵も居た!!」
「僕はウルグのこと信じるよ。だって、夜中にここまで来て嘘言っても仕方ないよ。
でも・・・もしそれが本当なら・・・大変だ~!!」
グラビルは慌てだした。
「急いで戻ってこの事を村長に言いましょう。」
フェレスが戻ろうとしたときに
「ダメだよ!うち等がウルグと会っていたのがバレてしまう。それどころか、
ウルグが言ってるのは嘘だと言って、罰を受ける可能性のほうが高い。」
蒼がそう言ってフェレスを止めた。
「・・・でも、私達じゃどうしようもないのよ?それよりも村長に言って何とかしたほうが良いわよ。」
フェレスが反論した。
「いや・・・方法ある。みんな付いて来て。」
そう言って森に入っていった。
「方法ってどんなの?」ウルグが聞いてきた。
「この森に禁断の洞窟があって、そこに効果が判らない杖がある。」そう言って、
4人はどんどん森の奥にはいって行った。
第6章 終わり
第7章 試練の先
ラシュアンの奥地にある忘却の洞窟。
ラシュアン村の掟で、誰も近付くことの許されない地。
グラビル達4人はこの洞窟に向かっていた。
「そういえばあの煙は何だったの?」グラビルがウルグに聞いた。
「あれはね~、煙玉って言ってね、ただただ煙が出るだけなんだ。」
「最初はビックリしたよ。火事かと思った。」蒼がウルグに言った。
「だって、あれしか良いの持ち合わせていなかったから・・・」
「でも、ウルグのおかげで悪い魔法使いの存在がわかったから、いっか♪」
「良いわけないでしょ~。私達が向かってるのは禁断の地なのよ!危険が多いの!!」
フェレスは蒼に対して文句を言った。
「仕方が無いだろう。これしか方法はないんだから。それともフェレスは何か良い方法があるって言うのか?」
「それは・・・」
「だろ?文句言わずに急ごう。」
4人はどんどん奥に向かっていった。
グラビル達の前に長く高い崖が見えてきた。
そして崖には大人が2人並べるくらいの大きさがあいていた。
「ここが忘却の洞窟だ。」蒼が言った。
「行こう。あまり時間が無い。」ウルグがみんなの顔を見渡し言った。
洞窟に入ってすぐフェレスが言った。
「真っ暗ね。どうやって進むの?」
「確か・・・あった。」
そう言ってウルグはポケットから丸い玉を出した。
「なにそれ?」グラビルが言った。
「これはね、こうやって使うんだ。」
そう言ってウルグは玉を壁に軽く叩いた。
コンコン・・・すると見る見る明るくなってきた。
「すご~~い。」グラビル達は驚いた。
「これをみんなに渡すよ。」
「たくさん持ってるの?」グラビルが聞いた。
「夜に城から抜け出すように、いつも5個常備してる。」
「こんな凄いのあるなら、もっと早く見せてくれても良かったのに。」蒼が少し残念そうに言った。
「これは暗くならないと、光ってるかどうかわからないからね。」ウルグが答えた。
「二人とも何してるの。早くしないと手遅れになるわよ!」
フェレスとグラビルは、蒼とウルグより前に歩いて二人を急かした。
洞窟を進むと、ある程度大きな空洞に出た。
「ここなんだろう?」ウルグが辺りを見渡しながら、空洞の中央まで歩いたとき、
ズズズズ~ン・・・と地響きがした。
「なんだ?」
みんなは辺りを見渡した。
すると地面からボコボコと盛り上がり、人型の土人形が出てきた。
「なに・・・これ囲まれたの?」フェレスが怯えながら言った。
ウルグは辺りを見渡し、「向こうに道がある。」
そう言ってウルグの指が差した先には、道があった。
「でも・・・囲まれてるからいけない。」蒼が少しずつ迫ってくる土人形に向けて、
石を投げながらいった。
「ここは任せて!」
ウグはそう言って、腰に下げていた棒を取り出した。
「そんなもので何するきだ?」蒼が聞いた。
「ま~、見てて。」
そう言って棒をおもいっきり降ると、棒がいきよい良く延びた。
「これは護身用の武器なんだ。普段使ったことないけどね。」
そう言って目の前の土人形に向かっていった。
「や~~っ!!」
ボコッと音を立てた。しかし土人形は硬く、あまり効いていなかった。
「逃げて!ウルグ!!」
フェレスが叫んだ。土人形はウルグ目掛けて、殴りかかろうとしてた。
バチバチ・・・と音を立てて、土人形黒く焦げた。
「これは、当たった時に電気が流れるようになってるんだ。」
「でも・・・」
「大丈夫。先のは出力が足りなかったんだ。今度はいけるよ♪それに城で剣術もやってたんだ。
あんなのには負けない!!」
ウルグは棒を振り
「一気にあの道まで行くよ!」
そう言ってウルグは、土人形に向かっていった。
ボコッ、バチバチ・・・ボコッ、バチバチ・・・
「ハァハァハァッ・・・」
「大丈夫?」グラビルが心配そうに言った。
「・・・あぁ、平気だ。これくらいで負けてたまるか~!!」
ボコッ、バチバチ・・・ボコッ、バチバチ・・・
「こいつで・・・どうだっ!!!」
バチバチッと音を立てて、土人形は倒れた。
「いまだ。走れ~~ッ!!」
ウルグの合図で、みんなは走り出した。
「ハァハァ・・・」
「すごい~、ウルグ♪」フェレスはウルグまで駆けつけて抱きしめた。
「ウルグがこんなに強いとは思わなかったよ。」
蒼も駆けつけた。
「待って!まだ終わってない!」グラビルが空洞のほうを見て言った。
ズズズズズッ
新たに土人形が出てた。
「ここは任せて先に行ってくれ。」ウルグが言った。
「出来ないよ!」
「ウルグも奥に進むぞ!」
グラビルと蒼はウルグを止めた。
「ここを抑えないと、後ろから襲われたら危ないだろう?任せとけって♪」
みんなでウルグを軽く抱きしめ、
「絶対にすぐ戻ってくる!!」
そう言って、3人は奥へと進んでいった。
「・・・さ~て、剣の修行でもするか~!!」
ボコッ、バチバチ・・・・・
洞窟の奥へと進むグラビル達。
「ハァハァ・・・」
3人は走り続けた。
すると置くが3方向に分かれた小さな空洞に出た。
「どっちに行けばいいんだ?」
蒼はそれぞれの入り口を覗いた。
「一つずつ探したらウルグが・・・」
グラビルは心配そうに後ろを振り返った。
「入り口は3つ・・・ならそれぞれ行きましょう。」
フェレスは2人にそう言った。
グラビルも蒼も頷いた。
「いいな!絶対に無理はするなよ!!」
蒼はそう言って右の入り口に入って言った。
「グラビル・・・気をつけてね。」
フェレスはそう言って左の入り口に入っていった。
「くっそ!どこまで続いているんだ!!」
蒼はひたすら走った。
そのうち奥に小さな光が見えるのに気づいた。
「光?なぜここに・・・」
洞窟を抜けた先は天井が高くあまり広くないところだった。
蒼が辺りを見渡すと石台の上に杖が置いてあった。
「これがそうか・・・」
蒼は杖を手にした。
「灰色の杖か・・・でもどうやって使うんだ?」
蒼がそう思った瞬間
パラパラッ
っと小石が落ちてきた。
「なんだ?」
蒼が上を見上げると、天井が少しずつ下に迫ってきた。
「やばっ!」
あわてて蒼は走り出した。しかし入り口は閉まっていた。
「くそっ!!」
辺りを見渡した蒼は
「他に出口は無いのか?」
しかし、どこにも出口は無かった。
「くそッ!!どうすれば良いんだ~!!!」
不意に蒼の意識が遠のいた。
「・よ、・・・うんだ。」
「誰だ!」
「蒼よ、・・使うんだ。」
「誰なんだよ!!」
「蒼よ、杖を使うんだ。」
「杖を使えって言ったって、呪文なんか知らないよ!!」
「お前は知っている。」
「何言ってるんだ!誰なんだよ!!」
「・・・・・・・・・」
「おい!!」
不意に蒼は意識が戻った。
「くそっ!!なんだったんだ?」
上を見るとまだ天井が下がってきていた。
「杖を使えって言われても・・・くそッ!!やけだ!!!」
そして蒼は杖を掲げた。すると頭の中に呪文が浮き出してきた。
「我拒絶するは、万物の物!!」
すると杖は光だし、天井に向けて灰色の玉が飛んでいった。
ズズズズ・・ズ・・・・ズ・・・・・・
みるみる天井は動きを止めた。
そして入り口も開いた。
「・・・・なるほど、杖を使わないと出れない仕掛けか・・・」
蒼は手に持っていた杖を見て
「この事を早くみんなに知らせよう!」
そう言ってまた走り出した。
「ハァハァハァ・・・」
フェレスは洞窟をひたすら走っていた。
すると目の前に木で出来た扉が見えた。
「ここがそうね。」
フェレスは木の扉を開けた。
扉の奥は広い部屋になっていた。
部屋には木で出来た人形があり、動かないかどうかそわそわしながら、フェレスは奥へと進んでいった。
部屋の奥には木で出来た箱があった。
「もしかしてこの箱が・・・」
そう言って開けてみると、杖が入っていた。
「見つけた!」
そう言ってフェレスは杖を手にした。
「透明の杖?すごい・・・透き通ってる。」
そう言ってフェレスは出口に向かおうとしたその時
ギギギギッ・・・と木の人形が動き出した。
「嘘?・・・早く逃げなくっちゃ。」
そう言って走り出したが、木の人形はフェレスの周りを囲った。
「・・・・どうしよう。」
木は少しずつフェレスに近づいていった。
すると不意に杖が光りだし、フェレスの意識は遠のいた。
「・・・・よ、・・・・・だ。」
「え?何?」
「・・・スよ、・を・・んだ。」
「誰なの?どこにいるの?」
「フェレスよ、杖を使うのだ。」
「・・・誰?」
「・・・・・・・・・・・・・」
「誰なの?答えて!」
急にあたりが眩しくなり、フェレスは目が覚めた。
「一体なんだったの?」
フェレスは辺りを見渡したが、木に囲まれてるだけで、他には何もなかった。
「杖を使えって言っても・・・呪文が知らない。」
木の人形は、もう少しでフェレスに届くまで迫っていた。
「・・使うしかないのね。」
杖を木の人形にかざした瞬間、呪文が頭に浮かんできた。
「我透けるは、万物の者」
すると杖は光りだした。
「・・・・・あれ?何も起きない?」
しかし、木の人形はフェレスには向かわずに、あたりをウロウロしだした。
「・・・どうしたのかしら?」
そう思った瞬間、フェレスはある異変に気づいた。
「何これ?私の体が透けてる!!」
フェレスの手は透けて、地面が見えた。
「・・・・ひょとして、体が透けて見えないから、木の人形は襲ってこないのかしら。」
フェレスは少しずつ、歩き出した。
そして、入り口についた瞬間木の人形は、姿を消した。
「ふぅ、怖かった。」
手に持った杖を見ながら
「よし!戻ろう。」
そう言ってフェレスは走り出した。
「ハァハァ・・・どこまで続いてるんだろう?」
グラビルは洞窟を走っていた。
だがグラビルが入った先は行き止まりだった。
「ここはハズレだったのかな?」
そう言って戻ろうとしたとき、不意に後ろから声が聞こえた。
「・・・こっちよ。」
「?」
「グラビル、こっちに杖があるの。」
「どこ?」
声を頼りに壁のほうに向かっていくと、急に意識が遠のいた。
「グラビル・・・やっと来てくれた♪」
「君は誰なの?」
「それは・・・今は言えないの。」
「なぜ?」
「そんなことより早くこの杖を持って、みんなのところに戻って。」
「杖?」
「そうよ。この杖は今は何も効果は出ないの。でも・・・いつか役に立つときが来る。
その時まで大切に持ってて。お願いね。」
そう言って声は消えていった。
グラビルは気がつくと、杖を手に持っていた。
「何だったんだろう?」
グラビルは考えたが
「今はこんなことしてる場合じゃない!戻らなくちゃ!!」
そう言って走り出した。
「ハァハァハァ」
グラビルは急いで戻るために、力いっぱい走った。
そして、元の道に戻ったとき、同時に蒼とフェレスも出てきた。
「グラビル、フェレス、俺杖を手に入れた。」
「え?私も手に入れた。」
「僕も。」
それぞれ手に入れた杖を、手に持ち見せ合った。
「3つも杖を手に入れたのか。」蒼はフェレスとウルグの杖を見て言った。
「そんなことより、早く戻ろう!」
「ハァハァハァ・・・・」
3人は急いで戻った。とっくに体力も尽きているのに。
一人土人形と戦い続ける、ウルグの元に少しでも早く戻るために。
そして、大きな空洞に戻ってきた。
3人の目の前に広がるのは、たくさんの焦げた土人形だった。
「遅いぞ!!待ちくたびれた。」
土人形の所にウルグは座っていた。
「おまえ・・・一人で倒したのか?」蒼が驚き顔で聞いた。
「うん・・・疲れたよ。」
「す・・・すごい。」グラビルも驚き顔で言った。
「その手に持ってるのが、新しい杖か。」
「そうよ。結構役に立つと思うの。」フェレスが言った。
「よし急いで戻って、戦争を止めよう!」蒼は言った。
「でも・・・どうやって?」グラビルが聞いた。
「魔人なら、杖を奪えば良い・・・だろ?俺の杖ならそれが出来る。」
「すごい!」グラビルは蒼の杖を見て驚いた。
「私のは、姿を消せるの。」フェレスは杖をみんなに見せて言った。
「二人ともすごいや。・・・僕のは、今は効果がないみたい。」
「効果が無いって・・・・」蒼がグラビルの杖を見た。
その杖はただの木の色だった。
「それより早く戻ろう。夜が開けちゃう。」
ウルグがそう言って、他の3人も頷いた。
4人は洞窟を抜けて、ひたすら走った。
モルル王国の戦争を止めるために、必死で走った。
第7章 終わり
最終章 世界
ウルグが良く城から抜け出すために使っていた抜け穴に、グラビル達はいた。
「ここが秘密の抜け道だ。」
ウルグが入ろうとした時、
「ちょっと待って。」フェレスが止めた。
「どうしたの?」グラビルが聞いた。
「無闇に入っても、捕まるだけよ。ここは作戦を立てましょう。」
「そうだな・・・」蒼はフェレスの意見に賛成した。
「魔人の魔法を解く方法は、杖を奪うこと。それと相手を気絶させること。」
フェレスは、魔法を解く方法をみんなに伝えた。
「なるほど・・・。なら、フェレスの姿を消す魔法と、蒼の物を飛ばす魔法と、
僕の武器を使って何とかすれば良いんだね。」
ウルグは、今現在使えそうな道具を言い並べた。
「ゴメンね。僕・・・何も役にたちそうにない。」
グラビルは、落ち込んだ。
「そんなことないよ。」ウルグは励ました。
「役に立つさ・・・たぶん。」
「蒼!!たぶんってなに!!グラビルも役に立つの!!!」
「・・・ゴメン。」
「ううん。良いんだよ。僕の杖は使い方わからないんだから・・・」
「・・・・・・」
みんなは無言になった。
「今はそんなこと言ってる場合じゃなかったね。」
グラビルが話を戻した。
「・・・そうだね。もう朝日も昇り始めた。」
蒼は見上げた太陽はすでに昇り、朝になっていた。
「作戦は、フェレスの魔法で姿を消して、閼伽先生・・・いや、閼伽の所まで行く。」
みんなは頷いた。
「その後は、閼伽ってやつが油断した時に俺の魔法で、杖を飛ばす!」
みんなは頷いた。
「飛ばしたら、ウルグの武器で閼伽を倒せば良いのね。」
ウルグは頷いた。
「よし!この作戦で行こう。」
みんなは小さい声で「オーッ!」と気合を入れた。
モルル城地下倉庫。地下にいても、兵士の声や傭兵の話し声が聞こえた。
「いいかい、こっからが本番だ。みんな声を立てちゃダメだよ。」ウルグはみんなに言った。
「じゃ、蒼とグラビルは私の肩に手を当てて、後ろから付いて来て。
ウルグは私の手をつないで、先導してね。」
「わかった。」3人はフェレスの言うとおりにした。
「我透けるは、万物の者」
4人はみるみると姿が透けていった。
「いい?絶対に手を離しちゃダメよ?」
フェレスは3人に言った。
「わかった。」3人も頷いた。
そしてウルグは、ゆっくりと倉庫戸を開けた。
モルル城1階。たくさんの兵が戦の準備をしていた。
「しかし、いきなり戦争か~」
「何でも、魔人が責めて来るのを閼伽講師が言ったそうじゃないか。」
「なんでわかるのかね~」
「なんでも、すごい技術で作った未来予想機だとか。」
「信じられんね~」
「でも、王のご命令だ。準備は怠るわけにはいかんからな。」
「だな~」
4人は兵士の話を聞いていた。
「胡散臭いな。」
「蒼、声出しちゃだめ。」
フェレスは蒼に注意した。
モルル城2階。謁見の間まで4人は来ていた。
「ここに閼伽がるはず。」ウルグは小声で言った。
そしてウルグが覗くとそこには閼伽がいた。
「このまま蒼の魔法で杖を飛ばせないかな?」
グラビルは聞いた。
「無理だ。まだ慣れてないから、命中が低いんだ。」
「そっか・・・」
4人は少しずつ近付いた。
しかし、フェレスの様子がおかしくなってきた。
「大丈夫?」グラビルが心配そうに言った。
「ゴメン、も・・もう、無理。」
そう言ってフェレスは膝を突いた。
と、その同時に4人の姿が現れてしまった。
「・・・何やつ!」
一人の兵士が気付き、他の兵士も集まってきた。
「これは!!ウルグ様。」
兵士が膝まついた。
「おぉ!?ウルグ。どこに行っていたのだ。」
4人の目の前に現れたのが、ウルグの父モルル王であった。
「・・・・父様。おはようございます。」
ウルグは言った。
「うむ。今までどこに行っていた。夜は見かけなかったぞ。」
「それは・・・・」
その時一人の声が割って入った。
「たぶん魔人の子と遊んでいたのでしょう。」
4人の目の前に閼伽が現れた。
「なんと!!まことか?」
「はい。私の記憶が正しければ、この女が持っているのは、魔法の杖に相違ありません。」
「なんと!!・・・このばか者めが!!!」
国王はウルグに激怒した。
「一国の王子が禁を破るとは、何を考えておる!!!」
「しかし父様、この閼伽は父様を操り、戦争を仕掛けようとしているのです。」
ウルグは閼伽を睨み、そう言った。
「何を馬鹿なことを、閼伽は人間だ。何を世迷言を言っておる。」
「・・・たぶん、この子達に嘘を教え込ませれたのでしょう。」
閼伽はウルグを見て言った。
「城の内部を混乱させて、魔人が責めてくる策かと。」
「なんと・・・こうしてはおれん!!兵を集めて出陣するぞ!!」
国王は兵に向かって言い放った。
「待ってください。」
王が振り返った。
「誰じゃ?私を呼び止めたのは?」
グラビルだった。
「僕達は戦争を止めに来たんです。」
「止めにじゃと?」
「そうです。」
「何を言っている!戦争をしようとしてるのは魔人のほうではないか!!」
国王はグラビルに近付き、言い放った。
「違います!ご自分の子供の言ってることが信じられないんだすか?」
「この・・・言わせておけば!!」
国王は持っていた剣を抜き、グラビル目掛けて振り下ろそうとしていた。
「待ってください!!」
ウルグがグラビルの前に出て、それを止めた。
「邪魔だ!!そこをどけ!!!」
「どきません!!」
「グムムムッ!!」
国王はウルグを目の前にして、剣を振り下ろせなかった。
「兵達よ、部屋の外に出るのです。」
閼伽が謁見の間にいた兵を外に出した。
「何をする閼伽よ。」
国王は閼伽に向いて言った。
「これは失礼。国王自ら子に手を下してはなりません。兵達も動揺しましょう。」
「ふむ・・・確かに。」
そう言って閼伽が杖を取り出し
「惑わすは人心の心」
そう言って王に放った。
「何をする!」
「これは失礼、ウルグ王子。邪魔な国王に眠っていただいたまで。」
「本性を現したな!」蒼は閼伽を睨んだ。
「ふむ、馬鹿な連中だ。大人しくしていれば、痛い目見なくてすんだのに。」
そう言って閼伽は蒼に近づいていった。
「ふん!お前なんか怖くなんか無いやい!!」
蒼は閼伽に言った。
「ほう・・・いい度胸だ。」
閼伽はどんどん蒼に近付いていった。
蒼はタイミングを見計らって
「我拒絶するは、万物の物!」
蒼の杖は光だし、閼伽目掛けてはなった。
「なに!」
閼伽はとっさに避けて、蒼の魔法は玉座にあたり、椅子は壁目掛けて飛んでいた。
「これはこれは・・・なんと危ないものを。」
閼伽は蒼に向いていった。
「クッソ~!!」
「お前・・良い物持っているな?しかも、暴の種類か。」
「暴?」4人は、閼伽が何を言ってるのかわからなかった。
「なんだお前達、そんなことも知らないのか。まぁ、ウルグ様は仕方がないが、
魔人として恥ずかしいやつらめ。」
「なんだと!!」蒼が閼伽をにらんだ。
「良いだろう、教えてやろう。杖には大きく二つに分かれている。
私の杖や、お前の持っている杖は、暴に位置された杖だ。
暴とは、そのままの意味だ。者や物を傷つけるのに特化したもの。
そして、そこの女が使った杖は、それ以外の普の杖だ。普の杖は置いておいて、
暴の杖は、選ばれし者しか使えん。」
「なん・・・だって・・・」
蒼は驚いていた。
「無理も無い。こんな片田舎じゃ、何も知ることは出来んだろう。どうだ?私と来ないか?
俺にはわかる、お前はもっとその杖を使いたいはずだ。いや、その杖以外に、
たくさん使ってみたいはずだ。どうだ?」
「ダメよ!そんな誘いにのっちゃ!!」
フェレスは疲れた体を起こし、懸命に蒼に言った。
「そうだよ。ダメだよ!」
グラビルもフェレスを支えて言った。
「・・・・・・蒼!!」ウルグも叫んだ。
蒼はウルグのほうを見て、小さく頷いた。
「わかった。一緒に行こう。俺もいろいろな魔法を使ってみたい。」
蒼は閼伽に近付き、隣に立った。
「では・・・」
閼伽が言った途端に、ウルグが蒼目掛けて走り出した。
「この裏切り者~!!」
「我拒絶するは、万物の物!」
蒼の杖は光、ウルグの武器を弾いた。
そしてウルグは、フェレスのところまで転がって行った。
「いたたたっ。」
「ウルグ!大丈夫?」
ウルグはフェレスに摑まり、体を起こした。
「フェレス・・・・」
ウルグはフェレスに何かを言った。
「そこで何してる!!」
閼伽は二人を見て言った。
フェレスは杖を取り出し、
「我透けるは・・・」
「我拒絶するは、万物の物!」
蒼は先に言い放った。
フェレスの杖は、後ろのほうに飛んでいた。
「さすがだ。蒼よ。」閼伽は蒼のほうを見て言った。
「さぁ、私の杖でこの者達を操り、国王を殺してもらおうではないか。」
そう言って、閼伽は杖をフェレスに向けた。
「ダメ~!!」グラビルは閼伽に目掛けて、杖を掲げて突進した。
「何!?」閼伽は不意をつかれ、たじろいだ。
「我拒絶するは・・・」
「そうだこいつの杖を弾け!!」
「・・・万物の物!」
蒼は閼伽に目掛けて、放った。
「馬鹿な!!」
閼伽の杖は弾かれ、遠くまで飛んで言った。
「何をする!!」
その時閼伽の目の前にウルグがいた。
「良くも今まで騙してたな!!!」
ウルグの手には武器があった。
「馬鹿な・・・魔法で弾いたはず。」
「馬鹿はお前だ!」蒼が言った。
「これはお前を油断させるのに、お前に近付いただけだ。」
「何だと!!では・・・お前の放った魔法は・・・」
「威力を弱くしたもので、紙さえ飛ばせないよ。」
「は・・・謀ったな!!!」
「お前が言うな~!!!」
バチバチバチッ
閼伽は電気ショックにより気絶した。
「ナイス~♪」
蒼はウルグに近付き、お互いの手をたたいた。
「あれ?どういうこと?」グラビルが聞いた。
「あ・・・うん、まぁ~とっさに思いついた作戦だ。」
蒼が答えた。
「ハハハ、うまくいったな。」ウルグが言った。
「私もウルグに聞いたときはビックリよ。」
(蒼は油断させるのに、閼伽の近くに行った。魔法は弱いから自分で杖投げて)
「うまくいくか不安だった。」
フェレスはため息交じりでいった。
ドンドンドンドン・・・謁見の間の戸がなった。
「・・・どうする?」蒼が慌てて言った。
そして戸が開き、兵士がなだれ込んで来た。
「これは一体。」
「国王様!!」
「こちらには閼伽様もいるぞ!!」
兵士達は倒れている国王を、起こした。
「う・・・・む。」
国王は目を覚ました。
「・・・・これは一体、どうなっているのじゃ。」
「父様。」
ウルグは国王の前まで走って行った。
「ウルグか・・・、どうなっている。」
ウルグは今までのことを話した。そして閼伽が持っていた杖を持ってきて見せた。
「ふむ・・・、にわかには信じられんが、お前が言うのだから、そうだったのだろう。」
国王は4人のほうを向いて、
「すまなかった、わしはどうやら閼伽のやつに操られていたようじゃ。」
国王は4人に謝った。
「いいえ、それよりも早く戦争の中止を。」
ウルグは言った。
「うむ。」
ドタドタドタドタ・・・・。
廊下から走ってくる兵がいた。
「国王!大変です。魔人が空から攻めて来ました!!」
「何だと!!」
そう言って窓を見ると、空の杖をまたぎ、たくさんの魔人が、城目掛けて飛んでいた。
そして、
ガシャーーン・・・と音を立てて、謁見の間に村長達が入ってきた。
「おぉ~、子供達よ。」
そう言って、村長と大人達は4人のところまで走ってきた。
「これは一体どうゆうことじゃ!!」
村長は国王に言い放った。
「待ってください!!」
グラビル達4人が割って入り、村長達を止めた。
そして今までのことを話した。
「なるほどの~。」
村長は頷いた。しかし、ほとんどの魔人は信じられないと思っていた。
長い年月がたった今でも、人間と魔人には大きな亀裂があり、信じるには至っていなかった。
人間と魔人は睨みあっていた。
しかし、
「僕達に大人の言うことは聞きなさいって言うのに、僕達のことは大人達は聞いてくれないの?」グラビルは言った。
大人達は静まり返った。
「僕達4人を見てください。いつも一緒に遊んで、たまに喧嘩したりて、それでも仲直りして
また一緒に遊んで・・・。僕達が出来ることをなんで大人達は出来ないの!!」
グラビルは泣きながら言った。
「・・・・よもや子供達に悟らさせられるとはな。」
国王が言った。
「たしかに・・・・そうじゃな。」
村長も言った。
「今回の件、お互いのことを知らないのを良いことに、旨く利用された。」
「そうじゃな・・・。これからは、少しずつじゃが、交流を持ち、知っていくべきなのかもしれん。
たとえ禁を犯してもじゃ。」
「そうですね。」
国王と村長は互いを向きあった。
「なら、握手だね。」グラビルは言った。
「そうじゃな。」
「そうですね。」
グラビルは二人の間に立ち、
「仲良しこよし、握手」と言った。
周りは静まり返り、
「フフ・・・フフフ・・・・フアハハハハハ」
周りが笑い出した。
「な・・・何なんだよ。」
「お・・お前はお子様だな~」蒼が笑いながら言った。
「そうね・・フフフッ」フェレスも笑っていた。
「グラビル・・・やっぱ面白いよ。」ウルグもおなかを押さえて笑っていた。
「なんなんだよ~~~~~!」
グラビルが叫んだ。
数日がたち、人間と魔人の間に条約が出来た。
『お互いを良く知るために交流を持ち、人間は魔人を助け、
魔人は人間を助けること』
この在り来たりだが、とても意味のある条約を何よりも大切にすると、
国王と村長・・・いや、モルルにいる者すべてが誓った。
「やっぱり行くのか・・・。」国王が、子供達に言った。
「はい、僕とグラビルと蒼とフェレスで、大陸に行ってきます。」
「危険じゃぞ?」村長は言った。
「大丈夫です。船もあるし、お城の兵士さんもついてきてくれます。」蒼が言った。
「気をつけてね。」
「うん。行って来るね、ママ。」フェレスは家族と抱き合っていた。
「行ってきます。そして他の大陸を見て、
戦争をする者がいることを、みんなに教えてきます。」
グラビルは港に集まってた人達に向かって言った。
こうして、4人は大きな大陸ミンツへと向かって、旅立っていった。
子供達が待っているのは、戦争か・・・それとも・・・。
第1部 最終章 終わり