―序章―
それは不思議な夢だった。何かの力に導かれるように、迷宮の中を歩いて行く。
「法と力、秩序と混沌。双方を天秤にのせ、良く考えて進むのだ・・・」
見知らぬ声が響く。そして二人の少年と一人の少女に出会う。そこで目が覚めた。
東京の吉祥寺。閑静な住宅街に一人の少年が住んでいた。そこで起きた突然の事件。
それがすべての始まりであった・・・。
町に魔物や悪魔が現れた。街の交通機関は閉鎖され、少年に見知らぬ人物から1本のソフ トと腕に装着するハンドパーソナルコンピューターが送られてきた。
「悪魔召喚プログラム*1」(*1、悪魔と会話をすることができるプログラム)
それは、街に現れた魔物や悪魔を「仲魔*2」にすることのできる、夢のようなプログラムだった。(*2、共に戦ってくれる悪魔の仲間)
やがて、理由もわからずに少年は拉致される。そこで知り合った一人の少年。彼こそ夢の 中で会った少年の一人だった。そして、悪魔召喚プログラムを作った制作者と話す事が出来た。
「研究中のターミナルシステムが、魔界に通じてしまった。とりあえずここを脱出するの だ。」
脱出した少年達は夢で会ったもう一人の少年と出会う。少年達はお互いの目的のために行 動を共にすることにした。2人と共に家に着いた少年は、家の異変に気付いた。
「なに・・・この空気の悪さ・・・。」
慌てた少年は、家の奥に進んだ。部屋には母親がいた。しかし、様子がおかしい。
2人の少年は声を上げた。
「その人は悪魔だ!」
母親は悪魔に食べられていた。悪魔を倒した3人は、この吉祥寺を出ることに決めた。
家を出た少年の前に1匹の犬が現れた。愛犬の「パスカル」だった。パスカルは少年の後を 付いてきた。
少年達は「邪教の館」と呼ばれる所まで来た。この邪教の館は悪魔同士を合体させること で、より強力な悪魔を仲魔に出来る所であった。パスカルは自ら悪魔と合体をし、「魔獣ケルベロス*3」となっ た。(*3、地獄の門番・番犬と言われている強力な魔獣)
そして、3人の少年とケルベロスは吉祥寺を脱出するために、エコービルに向かった。この 街から出る方法は、エコービルにあるターミナルシステムだけであった。ターミナルシステムには、ほかのターミナルシステムへと転送することが出来るシステ ムがあった。
ターミナルシステムまでたどり着いた少年達は、ケルベロスの突如吠えた声と共に一台のパ ソコンの画面に吸い込まれていった。
3人の少年達がたどり着いた先は新宿であった。しかしそこにはケルベロスの姿が無かっ た。
少年達は駅前の巨大なスクリーンを見上げた。そこで演説放送をしていたのが戒厳令司令の 「ゴトウ」であった。
「東京はある巨大な力によって制圧されようとしている!それを阻止するために古き神々の 力を目覚めさせた!悪魔と呼ばれる力を借りている!東京を守るにはこの方法しかないのだ!」
少年達はこの世界を知るために、真実を知るために、情報を得るために地下街に入っていっ た。そこでレジスタンスの存在を知る。一人の少女が率いているレジスタンス。レジスタンスのリーダーに会った少年達は驚いた。そこにいたのは夢で見た少女 だった。レジスタンスは途中で知り合った2人の少年が欲している情報を持っていた。
しかし、少女は突然現れた女に連れ去られてしまった。少年達は少女を探すために情報を集 めた。「どうやら少女は都庁で処刑されるようだ。」という情報を手に入れた少年達は、都庁へと向かった。
そこにはたくさんの悪魔に囲まれた少女がいた。処刑間近であった。3人の少年達は悪魔の 群れに走り出した。悪魔たちを倒した少年達は、少女を捕まえた女が逃げだすのを見計らい、少女の元へと走っていった。
情報を得た2人の少年は、それぞれ別れを告げて旅立って行った。レジスタンスの少女は 言った。
「この事件を起こしたゴトウとアメリカ大使トールマンに会わなければ・・・。一緒に来て 欲しいの。」
二人はレジスタンスが用意した偽造のID・PSを持ち市ヶ谷にいるゴトウの元へと向かっ た。そしてゴトウに会った二人はゴトウから告げられる。
「神は選ばれた者しか構成されない千年王国を作ろうとしている。神々はその力でこの東京 をミサイル攻撃している。我々は悪魔の力によって今もミサイル攻撃を防いでいる。」
ゴトウの言葉を信じて良いのかわからなかった二人は、六本木にある大使館へと向かった。
二人は大使館に着いた。地下から侵入した二人はなぜか大使館にまで入っている悪魔たちを 倒しながらトールマンの元へと向かった。トールマンは二人にこう告げた。
「ゴトウは悪魔の力を使い、この世界を混沌と力で支配しようとしている。我々の力では抑 えきれない。協力してほしい。彼を、ゴトウを倒してくれないか。」
二人は悩んだ。「神々の力でミサイル攻撃しているトールマン」「悪魔の力で支配をしよう としているゴトウ」どちらの言葉も今まで見て聞いた情報で真実味があった。ゴトウは確かにミサイル攻撃を防いではいたが、悪魔の召喚で街は崩壊を起こして いる。トールマンはゴトウが悪魔で支配を阻止するために戦っているが、ミサイルによる攻撃で街を破壊していた。どちらに協力するか迷った二人は・・・。
二人はトールマンにもゴトウにも協力しないことにした。なぜなら二つの考えにはある物が 無かったからである。そのある物とは「人」であった。どちらも街を破壊し、多くの犠牲を出していた。少年と少女はトールマンに言った。
「僕達はどちらにも協力はしない!」
トールマンは雰囲気が急変した。体はみるみる大きくなり別人・・・いや、悪魔のような姿 になった。
「哀れな人よ。我の声に聞く耳をもたぬとは。神罰をくらうが良い!我はトール!魔神トー ルなり!!」
二人は魔神だったトールマンと戦った。辛くもかった二人はゴトウの元へと向かった。すべ ての戦いを終わらすために・・・。
ゴトウの元にたどり着いた二人は、ゴトウに「魔神トールを倒したのだな。」と言われた。
「別にお前の為じゃない!僕達は僕達の為に戦う!ゴトウ!!お前ともだ!!」
ゴトウは不敵な笑みを浮かべ「笑止な!」と言い、悪魔を召喚した。二人は驚いた。悪魔召 喚プログラム無しでゴトウは悪魔を召喚していた。
「我は悪魔の力を手に入れた。この力でトール亡き今、我はこの世界を導かん!」
超人と化したゴトウはすさまじい攻撃を繰り出してきた。しかし、少年と少女は仲魔と協力 しゴトウを打倒した。しかし突如声が聞えた。
「ゴトウを倒したのだな!我の邪魔する者は居なくなった!神の怒りの一撃!神罰をくらう が良い!!」
魔神トールの声であった。外に出た二人は上空を見上げた。そこには無数のミサイルが飛ん でいた。そして東京はミサイルの雨が降り注いだ。すべてを破壊する攻撃であった。
数年後、東京は荒れ地とかし悪魔が徘徊し、人が住むには危険な地に変わっていた。世界は 大きく2つに分かれていた。
「神を信仰し、千年王国を作り上げようとしているメシア」
「悪魔を崇拝し、混沌と力を信じ千年王国を阻止しようとするガイア」
この2つの勢力がぶつかり合う世界へと変わっていた。そして・・・その勢力に入らない者 たちもいた。ただひたすら世界が平和になるようにと戦い続ける者たち、祈り続ける者たち。この物語はメシア・ガイアに属さない一人の少女の旅の物語であ る。
~本編に続く~(真・女神転生より)
―裕奈の 小さな戦い―
魔人トールによって破壊した東 京。破壊した街には悪魔がうろつき、気候も荒れ果て人が住むには不自由な世界となっていた。生き残った人々の中には、破壊したのが神だとも知らずにメシア 教に救いを求め、この世界が良き世界、千年王国になるようメシア教に入った。そしてある者は、街を徘徊している悪魔を崇拝し、力と混沌で千年王国を阻止し ようとガイア教に入る者たちがいた。今この世界にはこの2勢力が争い、絶えず戦いが起こっていた。そして、その両方に属さない者たちもいた。その中には悪 魔を仲魔にする「悪魔召喚プログラム」を持ち入り、悪魔を仲魔にして街を守ろうとする者たちがいた。人は彼らのことをこう呼ぶ。
「デビルバスター」と・・・。
「我を欲する者よ。汝の名を言 え!さすれば、我は汝を助けよう!」
「私の名は裕奈。今日からあなた と共に戦う仲間よ。」
「承知した。我は汝と共に歩も う。」
廃墟と化した街の隅で裕奈は悪 魔召喚プログラムで悪魔と契約をした。悪魔の名は「コボルト」人型で、顔は犬のようで全身が毛で覆われた下級の「地霊」だ。裕奈は初めて悪魔と契約をし た。
「改めて、はじめましてコボル ト。私の名は裕奈。これからよろしく。」
裕奈はコボルトに手を差し伸べ握 手を求めた。
「汝は解っているのか?我は悪 魔。汝はデビルバスター。たとえ契約したとはいえ、そこまで慣れ合う気はない。」
裕奈は寂しそうに手を戻した。
「実はね私、悪魔と契約したのが あなたと初めてなの。だから、これから一緒に戦うのだから握手はしたほうが良いかな・・・と思って。」
「我は悪魔。人のやり方には従わ ぬ。」
「・・・そう・・・だよね。」
悪魔には人と契約する理由があった。その理由とは、「マグネタイト(気とも呼ばれる)」 だった。彼らはそれを欲し、人と契約することがあった。このマグネタイトは悪魔にとっては生命とも同じものであった。悪魔にとってマグネタイトは体を構成 する物、維持する物であった。
「汝よ、これからどうするの だ。」
「今この近くで悪い悪魔が暴れて いるの。それを退治する!」
「承知した。」
裕奈とコボルトは、悪魔が暴れて いると言われている場所へと向かった。
この世界では廃墟と化した街を 捨てて、新たに地下にプラントと呼ばれる地下街を作っていた。そこで人は不自由をしながらも暮らしていた。しかし、悪魔はそのプラントに入り込み、悪さを したり人を襲ったりしていた。街を守るために力のある者はデビルバスターになり、プラントを守るために悪魔と日々戦いを繰り広げていた。裕奈もそんな中の 一人であった。
「ここがそう。この小さなプラン トにオークが暴れているって報告があったの。」
人が数十人住んでいるプラント。 規模的にはかなり小さく、腕のあるデビルバスターは大きなプラントで戦いをしていた。
「汝・・・ここまで来るのに、な ぜここまで苦労しなければならない・・・。」
裕奈はデビルバスターとしての才 は全く無く、ほとんどが下級の悪魔を相手にしていた。そしてここまで来るのに、何回も怪我を負っていた。
「えへへ。確かに私は弱いよ。で もね、私はデビルバスターをやらなくちゃいけないの!だから協力してね!」
裕奈は力強い目でコボルトを見 た。
「我は汝と契約を交わした。その 契約はいかなる場合も破りはしない。」
「ありがとう。」
裕奈とコボルトはプラントに 入って行った。プラント内はシーンとしていた。オークがいつ襲ってくるかわからないので、ほとんどの人は家に籠り身を潜めていた。
裕奈は辺りを警戒しながら進んで行った。
「安心するが良い。我は汝を守ろ う。汝がいなくては、我はマグネタイトが手に入らぬからな。」
「あ・・・ありがとう。」
プラントの奥まで進みコボルトは 裕奈の歩みを止めた。そして、コボルトが指をさした。そこには肌が黄色く丸々と太った人がいた。
「あ・・・あれがオークね。」
コボルトは裕奈の問いに頷いた。 オークは豚に似た顔をしていて何かを食していた。
「オークは馬鹿だが力が強い。我 が前に出て戦う。汝は魔法で援護を頼む。」
そう言ってコボルトはオーク目掛 けて走って行った。
オークはコボルトの突進に気付 き、手に持っていた大きな斧を振り回した。コボルトはそれを紙一重でかわし、一気に間合いを詰めた。
「ガキーン!」
オークは硬い鉄の前掛けをしてい た。コボルトの攻撃は効いていなかった。攻撃が効かないと悟ったコボルトは、慌てて間合いを取った。
「あの鎧は硬い。汝の魔法で牽制 をし、その隙に我が攻撃をする。良いな。」
裕奈は頷き、その後コボルトは走 りだした。オークを挟み込みスキを作るためだった。裕奈は詠唱した。
「火よ!来たりて焼き尽くせ!」
裕奈の指先に小さな火が灯り、 オーク目掛けて放たれた。
「ギャー」
オークは裕奈に背を向けてコボル トに攻撃を仕掛けていた。裕奈がはなった「アギ」はオークの背中に当たり火傷を負わせた。しかし、あまり威力が無くオークは、今度は裕奈に目掛けて突進し てきた。
「く・来るなら来い!」
裕奈は模造刀を手に持ち、オーク の攻撃に備えた。しかし、オークは急に動きを止めた。オークの後ろにはコボルトがいた。オークはコボルトの攻撃で倒れたのだった。
「なぜ汝は逃げなかった。汝では オークには勝てない。なぜ逃げなかった!」
「だって・・・、背を向けたら負 けだもん!それにコボルトがいるもん!」
「汝は、我が間に合わなかった時 のことを考えなかったのか!」
「考えてないよ。だって、信じて いたし。」
コボルトは唖然としていた。
「汝はオークと同じ馬鹿だ。」
「ちょ・・・、それ酷い!」
「汝は自分の命をもっと大切にす るべきだ。」
そう言ってコボルトは歩きだし た。
プラントの内部には、デビルバ スター用に設けられた宿泊施設があった。普通の宿に悪魔を連れて入るとお客が怖がるとのことで、ほとんどのプラントにはこのような施設があった。
「今日はここで泊まりましょ う。」
裕奈はそう言って部屋に入って 行った。
その夜、宿の食堂で裕奈とゴブ リンは食事をしていた。悪魔は基本的にはマグネタイトで空腹を補う。悪魔が人を襲うのは、人間が持つ生体マグネタイトを得るために襲うのである。契約した 悪魔は契約者の生体マグネタイト、もしくは悪魔を倒した時に得るマグネタイトで補給をしていた。
「ねぇ、お腹とか全然空かない の?これ食べてみる?」
そう言って差し出したのは野菜 だった。
「な・汝は知っているだろうが。 我らはマグネタイトしか食さん。他の物を食べても意味はない。」
「でもさ~、美味しいよ?」
そう言って裕奈はコボルトの口の 前まで野菜を持ってきた。後ずさりするコボルト。裕奈は「さぁさぁ」と言って箸を前に出した。観念したコボルトは口を開け食した。
「どう?」
裕奈は聞いてきた。
「まずい・・・」
そう言ってコボルトはポリポリと 頬をかきながら言った。「おかしいな~」という顔で裕奈は今度「ハムは?」と言ってコボルトの口まで持ってきた。ハムを食したコボルトは少し驚きながら 「これは・・・うまい。」と、ボソッと言った。裕奈は満面の笑みで店主にハムの追加を頼んだ。
次のプラントに着いた時には既に暗くなっていた。宿屋に着いた裕奈は店主に
「このプラントの外に悪魔が住み つき、何人かの人を連れ去って行った。お願いだ!助けてやってほしい。」
急いで準備をしようとした裕奈 を、コボルトは止めた。
「闇の中でも悪魔は良く見ること ができる。しかし汝ら人間は暗闇では悪魔は見えぬ。夜が明けてから行くのだ。」
しかし裕奈は
「それじゃ遅いの!悪魔が人を連 れ去る理由は一つ!食べるためよ!今いかないと連れ去られた人たちは助からない!
コボルトは、いつも以上に取り乱 した裕奈に驚いていた。
「なぜ・・・そこまで焦ってい る。」
裕奈は俯き、何かを思い出してい るようだった。
「私ね、一度連れさらわれたこと あるの。」
コボルトは驚いた。悪魔に一度連 れさらわれた者が生きて帰ることは難しい。生きて戻るということは、その悪魔に打ち勝つことのできない人、つまりデビルバスターやメシア教徒・ガイア教徒 以外の人。それ以外の人が生きて帰れることは至難の業だった。
「どうやって戻って来れた?」
コボルトは裕奈に聞いた。
「あまり・・・覚えてない の。・・・でもね、同じぐらい年の少年と少女が助けてくれたんだと思う。声がね、聞えたの。もう、大丈夫だよ。今、怪我を治してあげるからね・・・っ て。」
コボルトは少し考え
「汝がデビルバスターになると決 めたのはその理由なのか?」
裕奈は頷いた。
「私にしてくれたように助けた い。たとえ私が弱くても、力無くても、少しでも役に立てるのであれば・・・私は危険なことでも構わない!」
コボルトはまた少し考え
「行くぞ、裕奈。」
裕奈はコボルトを見つめた。
「助けるのであろう。」
「良いの?」
「我は汝と契約した者。汝の意志 に従おう。」
「ありがとう~」
裕奈はコボルトに勢い良く飛び付 いた。
廃墟ビル。この破壊された世界にも原形をとどめた建物があった。その廃墟ビルに人を連れ 去った悪魔が住んでいた。
「気をつけろ。数多の邪気を感じ る。」
コボルトは裕奈に言った。
「わかっている。」
廃墟ビルの前には数多くの悪魔が いた。
「餓鬼(最も弱い鬼で常に飢えて いる)やスライム(マグネタイトが不足して形が保てない下級悪魔)ね。凄い数・・・。」
裕奈はビル前を見渡せる所で、身 を隠していた。
「どうする?このまま正面から 行っても、返討ちにされるぞ。」
裕奈とコボルトは作戦を練ってい た。
「他の悪魔を多数配下にしてい る。おそらく、かなり位のある悪魔だろう。」
「そうね・・・。餓鬼とかなら何 とかなるだろうけど、その後が問題ね。疲労があっては強い相手なら勝ち目は無いね・・・。なにか、良い方法は無いかな・・・。」
しかし、裕奈達にはあまり時間は 無かった。
「汝は、足に自信はあるか?」
「足?速さってこと?・・・あま り無い。」
コボルトは何かを考えていた。
「なにか良い方法ある?」
「あることはある。しか し・・・。」
「言って!!あまり時間が無いん だから!」
コボルトは少し考え・・・
「我の属性は知っておるな?」
「地霊でしょ?」
「そうだ。我は地中を進むことも できる。」
「ほんと!?」
「うむ。そこでだ、我が先に侵入 し配下を誘いこむ。そこで汝は、裏口から侵入するのだ。」
「・・・でもコボルトが!!」
コボルトは、大きな声を出した裕 奈を宥め、
「案ずるな。我は大丈夫だ。だ が、汝が見つかった時は・・・。」
コボルトは裕奈を心配して言っ た。
「・・・コボルト、ありがとう。 私は大丈夫。コボルトの案でいきましょう。」
廃墟ビルに侵入したコボルト。あたりには悪魔は居なく、ほとんどが外で見張りをしてい た。好機と見たコボルトは「バリン!ガシャン!」と辺りの物を壊し始めた。その音に気付いた餓鬼とスライムはビルの中に入っていった。そのことを確認した 裕奈は急いで裏口に向かった。
裏口の道は隣の崩れたビルに よってほとんど塞がっていたが、遠目から見ても人が何とか通れるぐらいの隙間はあった。
「イタッ!」
瓦礫で擦り傷が多数できたが、そ んなのはお構いなしに進んで行った。
「あった!」
入口を見つけた裕奈は、瓦礫で壊 れた裏口からビルに入っていった。
カツーン、カツーンと足音を立 てて裕奈は辺りを警戒しながら進んで行った。裏口は悪魔の影もなく、シーンとしていた。だが、「バキッ!ドガッ!」と遠くからコボルトが戦っている音がし た。2階まで来た裕奈はコボルトが来るのを待っていた。そして、コンコンと壁を叩く音がした。コボルトの合図だった。
「コボルト、大丈夫?」
裕奈は急いでコボルトの元に駆け ていった。コボルトは傷を負っていた。
「ひどい・・・。今治すね。」
コボルトを床に寝かせ、裕奈は呪 文を唱えた。
「傷つきし者に癒しを、ディアラ マ!」
コボルトの傷は回復していった。
「・・・すまぬ。」
「無理しすぎよ、コボルト。」
裕奈はコボルトを抱き起した。
「コボルトには悪いけど、急ぎま しょう。」
コボルトは頷き走り出した。
ビルの上からかすかに声が聞こ えてきた。顔を見つめあった二人はその声が聞えた階に急いだ。そして、聞えてきた階に来た裕奈とコボルトは警戒しながらゆっくり進んで行った。
「・・・・・・・・・」
またかすかに聞えた。
「あっちだ。」
コボルトは指をさした。できるだ け足音を立てずに進んだ裕奈達は、会議室と書かれた所の部屋の前まで来た。そして耳を澄ませると、
「我が神よ!供物を受け取りたま え!我、ガギソンは主の・・・・。」
裕奈とコボルトは会議室から少し 離れた場所まで戻っていった。
「相手はガギソンね・・・。」
「そのようだ。」
堕天使ガギソン。もとは天使だっ たが、天に背いたために地獄に落とされた悪魔。その力は天界にいた時と同じか、それ以上とも言われる。
「どうする。はっきり言うが、勝 てる相手ではない。」
コボルトは裕奈に言った。
「わかってる。でも、倒さなけれ ば連れ去られた人が!」
二人は沈黙した。力は歴然として いた。堕天使の中でも下級とはいえ、下級地霊のコボルトでは相討ちにも持っていけないほど、力の差はあった。
「正面から行くしかない。ビルの 部屋だからあの場所しか入れないし、コボルトと一緒なら大丈夫!」
「根拠は?」
「無い!!」
コボルトは「ハァ~」ため息をつ いた。
「な・何よ!」
「汝はいつもそうだな。汝の身を 全然考えていない。それでは・・・。」
「わかっている。でも ね・・・。」
「連れ去られた者を助けるのであ ろう?汝の考えはわかっている。もう、契約期間も長いのでな。」
コボルトが少し笑った顔で答え た。
「コボルト・・・。うん!助けに 行こう!!」
裕奈とコボルトは会議室の戸を 「バタン!!」と思いっきり開けた。
「堕天使ガギソン!連れ去られた 人を返して!!」
裕奈は模造刀をガギソンに向けて 言い放った。
「何事だ?」と言ってガギソンは 裕奈達のほうを見た。見た目は人と変わらない体格だったが、肌は赤く、頭には角が2本生えていた。背には赤黒い羽根が生え、顔は鷲のように見え、すさまじ い形相で裕奈達を見た。
「なんだ。小娘に下級地霊ではな いか。餓鬼ども、侵入者に気付かぬとは・・・。」
「餓鬼とスライムはコボルトが倒 した!次はガギソン!あなたよ!!」
ガギソンは少し驚いた顔で
「コボルトがあの数をか?・・・ ふむ、どうやら餓鬼どもは怠けすぎたようだな。」
「御託は良い。覚悟!」
コボルトはガギソン目掛けて走っ た。・・・しかし、コボルトの攻撃は空を切るばかりであった。裕奈も援護に魔法攻撃を唱えたがほとんど効いていなかった。
「そ・そんな・・・、ここまで差 があるなんて。」
裕奈はガギソンの魔法攻撃で膝を ついた。
「弱気になるな!汝はいつも前向 きであったろう!」
コボルトの声で裕奈は傷つきなが らも立ち上がった。
しかし、コボルトもガギソンの攻撃により傷つき倒れそうになっていた。
「なるほど、コボルトにしては良 くやる。小娘のほうは弱いな。そんな力でデビルバスターをやっているとは、デビルバスターも地に落ちたな。コボルトよ、我が配下になれ。さすれば命だけは 助けよう。悪魔とはいえ死ねば助からんぞ。とりあえず、契約者であるその小娘を食え!さすれば配下として認めよう。」
コボルトはガギソンを睨み
「だまれ!我が契約者を愚弄する でない!!それに、お主の配下になどなるものか!!」
「良く言った、コボルトよ!なら 死ぬが良い!!」
「ダメー!!!!」
裕奈はコボルトの元に走って行っ た。
「グサッ!!」ガギソンの爪がコ ボルトの胸を貫いた。裕奈はガギソンを模造刀で追い払い、コボルトを抱きかかえた。
「コボルト!お願い!!死なない で!!!」
裕奈は急いで回復魔法を唱えた。 しかし、コボルトは体が透けてきた。
「無駄だ、体が透けてきている。 いくら回復魔法でも手遅れだ。」
「よ・よくもコボルトを!ガギ ソーン!!!!!」
コボルトはとある人物の前に立っていた。
「戻ってきましたか、コボル ト。」
「あなた様は・・・、我が主神 『女王ヘカーテ』様(地底の女王であり夜と犬の女神でもある)。我は・・・一体。」
「そなたは死んだのです。」
悪魔は人間界で死ぬと、魔界での 主神の元に帰ることになっていた。そして、主神の力で新たな肉体を得て、魔界でまた過ごす事になっている。
「我の契約者は・・・。」
コボルトはヘカーテに聞いた。
「おそらく食われるでしょう。」
「そ・そんな!どうか主神ヘカー テよ。我を人間界に戻らせてください!」
「出来ぬ。そなたも知っておろ う。人間界で契約した者は戻ることは出来ぬ。」
「し・しかし!!」
「そなたは、なぜそこまで彼女の ことを案じる?」
「そ・それは・・・。」
コボルトは考えていた。「なぜ、 我はそこまで案じている。」その理由がわからなかった。
「理由がわからぬのか?理由がわ からぬのに、そなたは戻りたいと申すのか?」
「・・・・。理由ならありま す。」
「申してみよ。」
「戻りたいからです!死なせたく ない!あの者は我に悪魔としてではなく、一人の人として接してくれた!あの者は悪魔とか人間の概念が無い!分け隔てなく接してくれた!それにあの者は震え ていた!例え怖くても逃げもせずに戦った!いや、それどころか悪事をしていた悪魔にさえ、倒した後には悲しい顔をしていた!我は、そんな・・・そんな裕奈 を死なせたくはないのだ!!頼む!女王ヘカーテよ!我の願いを!!」
ヘカーテはコボルトの言葉を聞 き、少し考え
「戻る方法は一つだけある。」
「本当ですか!」
「たが、そなたはその存在自体消 えることになろう。それでも良いか?」
「構いません!」
コボルトは即答した。
「わかった。なら、そなたの真名 を授けよう。」
「真名?」
「そなたは普通の地霊コボルトで はない。そなたの本来の姿は妖精の女王メイブ(マブとも言う。ケルトの妖精の女王)によって、コボルトの体に封じられている。そして、真名を得ることに よって封印は解けるのです。しかし、真名を得てもマグネタイト不足で、体は長くは持たないでしょう。それでも良いのですね?」
「はい。主神ヘカーテよ!我に真 名を与えたまえ!」
「コボルトよ、そなたの名 は・・・。」
裕奈はコボルトを抱きかかえた まま、ガギソンに魔法を放った。しかし、ガギソンはその攻撃を跳ねのけ「死ね、小娘!」と言って、鋭い爪を突き刺そうとした。
「待て!ガギソン!!」
突如の声と共にガギソンは壁まで 吹き飛ばされていた。
「ぐぬ・・・いったい何が!?」
コボルトは突如強い光を放った。
「コ・コボルト?どうしたの?」
光とともに強い衝撃があたりに 走った。
「キャッ!」
裕奈はその衝撃で吹き飛ばされ た。しかし、誰かが裕奈を受け止めた。そして裕奈は光が薄れる中、抱きかかえてもらっている人影を見つめた。
「コボルト!生きていたのね!」
抱きしめてきた裕奈に優しい声が 聞えた。
「裕奈、もう大丈夫だ。」
裕奈の目の前にいたのはコボルト の姿とは違い、白い服装で長い槍をもった人だった。
「な・何者だ!」
ガギソンは突如現れた者に言い 放った。
「我が名はク―フーリン!(メイ ブの九敵。メイブの部下によって命お落とした)」
「バ・バカな!なぜそんな上級妖 精が現れる!!」
ガギソンはうろたえていた。クー フーリンは妖精の中でも上級に位置し、下級堕天使であるガギソンよりも位が高く、強い存在であった。
「あなた、コボルトね。私にはわ かる。良かった、生きていたのね。」
ガギソンは裕奈に言った。
「バカな!悪魔が生き返るはずが 無い!」
「裕奈よ、よく私と分かった な・・・。」
「わかるよ。だって私達はパート ナーじゃない。」
裕奈は泣きそうになりながら言っ た。
「バカな!!こ・これでは悪魔合 体・・・いや、転生ではないか!!」
クーフーリンはガギソンに近付き
「そうだ。私はコボルトに身を封 じられ、真名と我の全てのマグネタイトで封を切った。だから、我には時間が無い!いくぞ!!ガギソン!!!」
クーフーリンは槍を構えて、ガギ ソンに攻撃を仕掛けた。
「クソッ!」
ガギソンも翼で上空を移動し攻撃 をかわした。しかし、クーフーリンの様子がおかしかった。
「なるほど、すべてのマグネタイ トを使い力が出ないか!」
ガギソンはクーフーリンの状態に 気がついた。
「確かに我は力尽きる身!だが、 貴様だけは道連れだ!」
クーフーリンはまた攻撃を始め た。しかし、数回攻撃しては息を切らせているクーフーリンではガギソンには攻撃が当たらなかった。
「裕奈!援護を!」
裕奈はすでに魔法攻撃の準備をし ていた。
「くらえ!ガギソン!!私の一番 強い魔法!!」
『雷よ!大雷となり敵の頭上に落 ちれ!!ジオンガ!!!(電撃系の単体最強魔法。一時的に麻痺させることができる)』
「バリバリバリ」と轟音が響きガ ギソンに命中した。
「しまった。小娘に気がまわらな かった!グギャ――――!!!!」
「いまだ!!」
「ザシュッ!!」クーフーリンの 槍はガギソンを貫いた。
「ば・ばかな・・・。小娘がジオ ンガを使えたとは・・・。」
「油断したな。裕奈は人を傷つけ るどころか、悪魔を倒すこと自体も嫌いなのだよ。だから力が出せずに弱いのだ。」
ガギソンは体が燃え上がり塵と なって消えていった。しかし、クーフーリンもまた膝をつき倒れた。
「コボルト!大丈夫?」
裕奈はクーフーリンを抱きかかえ た。
「我を未だコボルトと呼ぶの か?」
「だって、コボルトはコボルト じゃない。」
だんだんと薄れるクーフーリンを 抱きしめそう言った。
「裕奈よ、お別れのようだ。」
「だめ!やっと、名前言ってくれ たのに、別れるなんて絶対出来ない!!」
クーフーリンは体の半分以上が消 えていた。
「裕奈と一緒にいて楽しかった。 良い勉強にもなった。そして、悪魔としてではなく、人として接してくれて、ありがとう。」
裕奈はクーフーリンの体を強く抱 きしめ
「そんなの当たり前じゃない。 だって、パートナーなんだから。これからもコボルトと私はパートナーなんだから!消えちゃダメだよ!!」
クーフーリンは満面の笑みで「あ りがとう」と言って消えた。
「コボルトーーーー!!!!」
裕奈はクーフーリンの消えたその 場で号泣した。そして、裕奈の目から光り輝く一粒の涙が流れた。裕奈はその眩い光に気付かずに泣き続けた・・・。
人を襲う悪魔がさ迷うこの混沌とした世界の中、一人の少女の声が響いた。
「ちょっと~、おそ~~~い!! そんなんじゃ、困っている人を助けられないよ!!ほら、急いで!急いで!!」
彼女は悪魔退治を専門としている デビルバスターと呼ばれ、少しでもこの世界が救われるよう日々戦い続けていた。確かに彼女の戦いは世界から見たら小さい事だった。だが、彼女が助けたプラ ントの人達は皆、彼女のことをこう呼ぶ。「小さな救世主」と・・・。
「モタモタしている場合じゃない のよ!少しでも私達を必要としてくれている人達がいるんだからね!分かっているの、コ・ボ・ル・ト!」
少女と白い服装と長い槍をもった 「コボルト」と呼ばれる悪魔は、今日も旅を続けているのであった。
~終わり~
―あとがき―
メガテンをやったことが無い人は、わかりずらい話だったかな?^^;
さてさて、気付いた人はいるか な?誤字らしきものがあったのを・・・。まぁ、実際誤字や変な文はあると思うけど^^;
裕奈が最初のほうでコボルトに 言った「仲間」です。これは裕奈がコボルトに対して最初から「悪魔として見ていなかった」ということです。小さい頃に悪魔に連れ去られたけど、その時の恐 怖で悪魔を見ると震えてしまうけど、それ以上に同じように会っている人を助けたい。その為には恐怖に打ち勝たなければ!ということで、仲魔になったコボル トを仲間として契約した。悪魔に慣れるために、悪魔を悪魔と見ないために・・・。そして、コボルトと一緒にいる期間が長くなるにつれて、心から信じ会える パートナーとなっていった。
最後に起きた奇跡。あのコボル トをこの世に留めた一粒の涙。あれは裕奈の思いがこもった裕奈のマグネタイトです。そのマグネタイトでコボルトは消えずに済んだのです。消えて欲しくない と心から思った裕奈の気持ちが奇跡を起こしたのです。その奇跡が起きた理由は・・・、人それぞれ思い・意見があるでしょうが私は「絆」だったと思います。 たとえ姿が違えど、同じものを食べ、お互いの背中を預けて戦った日々。そして、裕奈はコボルトを心から信頼し、コボルトは裕奈を本気で守りたいと思った絆 が起こしたと思いたいです。書いた本人が思う・・・って変か^^;
まぁ、この小説のテーマは 「絆」で書きました。例えどんなことがあっても絆があればつながっていられる。私はそう信じています。悪魔を怖がっていた裕奈と、人間に興味を持っていな かったコボルト。この二人のように、たとえ違いがあれど絆を結べる。そう信じています。