短編小説「勇気一つを友にして」



 ダイダロスは息をついた。
 ようやく完成したその翼を、イカロスに手渡す。
 塔の中で妙な剥製を見つけ、そこから羽根をむしり、毎日こつこつと作ってきたのだ。
 軽く、強く、見事な出来栄えだ。
 ダイダロスが言う。
 「息子よ。さあ見事に飛んで見せよ。この翼で」
 イカロスは、神妙に頷く。
 翼を装備した。
 目の前には、はるかな大空が待っている。
 「素晴らしい出来ですよ、父上」
 イカロスが感嘆して言った。
 窓わくに乗り、大いなる海原をしっかりと見据える。
 さあ、飛ぶのだ。
 「…これならきっと飛べるでしょう! ようやくこの時が来たのですね! 父上、いったい何という鳥の羽根ですか?」
 「…ダチョウだ」



















 「わ〜〜〜〜〜〜〜っっ!!」




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