短編小説「勝負師」



 ぎらぎらと輝くライトに照らされ、今、俺の体が闇に浮き上がる。
 真っ白な花道。鳴り響く入場テーマ。
 そして、リングだ。
 拳を開き、頬を2度、叩いた。さあ仕事だ。
 リングの上では、俺を待ち受ける一人の男。今は遠い存在だが、肌と肌を合わせてみれば、お前のことはすべて分かる。
 未来さえも。
 俺はゆっくりとロープをまたいだ。お前の視線を感じる。
 それは歓喜か。それとも、脅えているのか。
 間もなくそれが分かる。
 ゴングだ。
 同時に走った。
 軸足狙いの低空タックル。決まった。テイクダウンだ。
 ニー・イン・ザ・ベリーから馬乗りへ。
 秒殺だ。
 マウントから激しくパンチの雨を降らせる。
 お前はたまらずうつ伏せになる。客の悲鳴が聞こえる。
 チャンスだ。俺はすかさず腕をお前の首に差し込む。
 チョーク・スリーパー。
 分かるぞ。お前が分かるぞ。
 お前の未来は俺のものだ。
 がっちりと決まった。
 お前は舌を出し…。
 落ちた。
 俺は、すべてを悟っていた。
 立ち上がり、雄叫びを上げた。
 「うおおお、今日は大凶!」
 叫んだ。
 「待ち人来たらず! ラッキーカラーは黄色!」
 いつまでも、叫んだ。











 格闘占い・ぷらいど亭。
 あなたもどうぞ。



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