短編小説「私はシスター」



 ラララ、私はシスター。綺麗なシスター。可憐で陽気な神の下撲〜。ハレルヤー、今日も異教徒どもを皆殺し〜。ラララ、神のメス豚、神に仕える公衆便所〜。アーメン。
 …今日は喉の調子がイマイチだわ。
 あら、お客さんね。神様ありがとう〜、今日の最初の獲物ですわ〜。
 「へいらっしゃい! お祈りですか懺悔ですか改宗ですかぁ?」
 「う…ここは教会だろ?」
 「おっさん、目がねぇの?」
 イャ〜ンな中年。おヒゲは剃ってきましょうね〜。
 「ち、ちっとかくまってくれねえか」
 おじさん一人ご案内〜。はいご指名はぁ? とか言っても私一人でお留守番。これも神の与えたもうた試練なのね〜、アーメン。
 「よお姉ちゃん」
 「私はシスター!」
 燭台アタック。ちょっと痛かったかしら〜。
 「は〜い、ローソクを持ちましょうねえ」
 「あ、あたた…。まあいい、ここで話したことは絶対に洩れないんだろ?」
 「もちろんですわ。迷える子…だった羊さん」
 神の扉は誰にでも…こらオヤジ! てめー禁煙だっつーの! んで何? 懺悔ですかぁ?
 「実はよお、俺、盗みを働いちまってよお」
 ピポパ。「もしもし警察ですかぁ?」
 「ちょっと待てー! 最後まで聞けっての。俺、工場で火薬を扱っててさ。それで、今までもその、ちょこっと横流しをしてた時期もあったんだよ」
 「えーと、2年以上10年以下の懲役、または…」
 「刑法を朗読するなよ! それで、それをIRAの奴らに知られてよ」
 「あいあーる…ええ? ふっふっふ、お主、異教徒か?」
 「よお、目が座ってるぞ…おい! どっから出したんだその青龍刀! ま、待て! 俺はメンバーじゃない、脅されてやっただけだよ! 俺の家は敬虔なプロテスタントなんだ!」
 あ〜ら、早く言えばいいのに。十字架をタテに震えないで〜。
 「それでさ。ごっそり火薬を盗んで、手製の爆弾を作ったんだよ。ほらここに」
 「うぎゃ〜っ!」
 「し、塩をまくな! …で、怖くなって逃げちまったんだけど、どうしよう?」
 どうしようって、あーた…。
 どん、どん、どん。
 イキな3拍子はノックの音。外にはたくさん足音が。
 「おいカルロ、中にいるんだろ? 分かっているぞ。早く出て来い」
 「うわっ、奴らが来た!」
 「大丈夫です。ここは私に任せなさい」
 「おお、シスター!」
 うるうる瞳のおじさんを後に、私は扉に立ちました。
 んで、鍵を開けましょうね。
 「ほら、あれがカルロですわ」
 「捕まえろー!」
 「裏切りものー!」
 ああ神よ。人はなぜ傷つけ殺し合うのでせう? まあいいわ〜。金の台座と、大事なへそくり。確認よ〜し。
 しっかり扉を閉めましょうね。はい、3、2、1。どか〜ん。
 アーメン。あの者たちが主のそばに行けますように。
 ちょろい爆弾、事故の元〜。
 ラララ、私はシスター。綺麗なシスター。あなたの街にもごあいさつ〜。
 ああ、今日もいい天気〜。



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