プロレス初心者の方へ。

〜 動画で分かるプロレスの楽しみ方 〜




 さて、久しぶりにプロレスの記事であります。
 久しぶりといっても日記では時おりプロレス小ネタを挟んでおりますが、今回はそんな小ネタでは語れない、先っちょだけでは満足できない方々にこそこの記事を捧げたいと思います。
 実は正式な依頼があったわけではありません。
 なのになぜ「依頼された記事」に書くのかというと、単に私が書きたいからという非常に大きな理由があるんですけど、それだけじゃありません。
 以下に転載いたします。



 突然ですが、プロレスについて教えていただけませんか?
 わたしの印象では、体格のいい男の人たちがただじゃれあっているだけ、なのに死んじゃうときもある、意図のよくわからない競技に見えるのですが、それでも合ってるのでしょうか。
 プロレスの醍醐味とは何なのですか?




 ・・・という事で、これは2月9日に拍手ボタンで書き込んでくださった方のご質問であります。
 豪腕にしては珍しく、結論から書いちゃいます。
 あなたの感じた印象は。



100%合ってます。




 けっこう笑いました。
 初心者や門外漢がたまに核心を突く事がありますけど、それと一緒ですね。
 あなたの認識はまったくもって正しいのですよ。
 ただ、それで手打ちにしちゃうとプロレスファンは誤解して豪腕に闇討ちを仕掛けかねないし、プロレス未見の方はますます何が何だか分からないと思います。
 よって補足いたします。
 プロレスというのは、観る側によっていくらでも好きに認識できるジャンルなのです。

 あなたが「体格のいい男の人たちがただじゃれあっているだけ、なのに死んじゃうときもある、意図のよくわからない競技」というジャンルを面白くないと感じるなら、別に無理して観なくてもいいと思います。
 無理やり他者の認識を変えさせるのも何ですし。
 ただしあなたは、「プロレスの醍醐味とは何なのですか?」という質問もされています。
 おそらく自分が面白くないと感じているモノに対し、そんなモノを面白がってる人がいるという事実に対してこうした質問をされたのではないかと推測いたします。
 「そんなモノのどこが面白いの?」みたいな感じでしょうか。

 わりと多くの方が思う所ですが。
 自分の趣味と合わないモノに対し、それを絶賛する人まで不当に評価を低くしてしまう事があったりしますね。
 適当な具体名が思いつかないんですけど、例えばパンツ以外に売りがまったく見当たらない萌えアニメがあったとしましょう。
 豪腕はパンツ大好きですけど続けます。
 こういうアニメを、つまらないと感じる。
 個人の認識ですからどう感じようと勝手なんですけど、問題はこの次に来る思考です。
 すなわち、そんなモノを面白がって観ている奴は程度が低いと。
 そう考えてしまう事ってあると思います。
 わたくし自身、まったく人の事は言えません。

 こうした思考をしてしまうのは普遍的な事実らしいので、仕方ないと言えば仕方ないです。私も皆さんも人間ですから。
 それでも人は好きなモノに対してその魅力を語ろうとします。
 もしかしたら相手が本当に魅力に気付いていないのかもしれないし、魅力ある部分を見逃しているかもしれないからです。
 大切なのは客観的に語る事でしょうか。
 それでもなお相手がそのモノを面白くないと言うのなら、それ以上の深追いは止めておくのが吉でしょう。
 そういうスタンスで行かせていただきます。



 ちなみに、わたくし豪腕はりー。



 つまらないモノを面白く語る事に関しては、ちょっとだけ自信があります。


 騙されたと思ってほんとに騙されたという可哀相な方々が全国的に存在します(すみません)。
 されど今回の相手はうんこ映画ではありません。
 騙してしまうと色々とアレです。
 筆が滑って余計な事を書かないうちに(もう十分滑ってますけど)、まずは一本行きましょうか。
 以下に動画のURLを貼っておきます。
 画質はあんまり良くないんですが、できればフルスクリーンで観てみましょう。この下の文章を読む前にね。



体格のいい男たちのじゃれ合いダイジェスト。




 ・・・いかがでしょうか。
 私の知っている範囲で補足いたします。
 まず、プロレスのマットというのは時代によって変わるし、団体によっても多少の違いがあります。
 よって正確な固さというのは出せません。
 ちょっと古い情報になりますけど、畳と同程度の固さだと思って間違いないです。
 柔らかいマットだと投げ技の時に脚を踏ん張れないので、かえって危険なんですよ。
 下には一応スプリングが入ってます。

 そして、いわゆる花道というのがありますね。
 入場ゲートとリングを結ぶ白い通路の事ですけど。
 あれの構造は、鉄骨を組んだ上に固いボードを貼ってます。
 200キロ超級の選手が歩いてもたわまない程度に、鉄骨が各所に入ってるわけです。

 そして場外。



コンクリです。




 その上に、厚さ3センチくらいのビニールマットが敷いてあります。
 わりとよく剥がされます。

 さらに団体によってピンキリですが、メジャー団体の選手ってのは1年間に100試合以上は軽くやってます。
 そういう世界なんですね。

 ぶっちゃけ「体格のいい男の人たちがただじゃれあっている」というのは、総合格闘技もバーリ・トゥードも相撲もボクシングもK−1も全部一緒なんですよ。
 よく知らない人にとってはみんな同じです。
 重要なのは、じゃれ合いの度合いが常人とは別の次元にあるという事。これだけなんですよね。
 そういう所に迫力を感じる人々が、お金を払って会場に来るわけです。
 これは総合格闘技もバーリ(略)みんな一緒です。

 プロレスの特異性の一つに、勝敗だけをもってして語れない部分があると思います。
 そこが「意図のよくわからない競技」とされる所以かもしれません。
 しかしこれは誤解であり、どんなスポーツでも勝敗のみが重要なら試合そのものを観る意味がなくなってしまいます。
 スポーツ新聞で結果だけ見りゃいいって事になっちゃいますからね。

 そうでない事は、皆さんご存知だと思います。
 では、プロレスの「意図」とはどこにあるのか?
 単に体の頑丈さを比べる世界びっくりショーではないわけで、そこには当然のごとく勝負の要素が入ってきます。

 今、意図的に「勝敗」と「勝負」という言葉を使い分けました。
 その理由は簡単で、プロレスほど「勝敗」と「勝負」が乖離したスポーツは珍しいからです。
 プロレスにおける勝敗とは、もちろん3カウントを取れるかどうか。
 野球やサッカーでは、そこが点の取り合いになるわけですが。

 野球に例えてみましょう。
 すべての野球チームは、相手チームよりも高く得点する事に主眼を置きます(当たり前です)。
 そして特にプロともなれば、試合中に何度か素晴らしいプレイが見られるでしょう。
 お客さんもファインプレイには期待しているはずです。

 しかし。
 お客さんの多くは、自分の贔屓のチームの勝利を観たいがために会場に足を運ぶと思います。
 単にファインプレイを観たいから会場に行く客は少数派でしょう。
 特に、そのために贔屓でも何でもないチーム同士の試合を、お金まで払って観に行く人は希少のような気がします。

 しかしプロレスは違うのです。



 何よりもまず、ファインプレイが観たいから会場に行くのです。



勝敗は二の次です。




 もちろん好きな選手の勝利を期待して観ますけど、ファインプレイのない試合なんて観る価値もないと思ってるんですよプロレスファンは。
 逆に言えば、ファインプレイを出す事そのものがプロレスにおける「勝利」なのです。
 それは3カウント以上の価値をもちます。
 結果よりも試合内容が重視されるのです。

 だからプロレスラーは、毎回ファインプレイを求められます。
 それは豪快な必殺技だったり、格上選手に必死に食らい付く姿だったり、小ずるい悪党が無理やりリングアウトで心中したり、蛍光灯の束で頭を叩き割られる事だったりします。
 そういう「客を納得させる内容」、これができない選手は勝っても負けてもショッパイ認定されちゃうんですよ。
 勝てばいいわけじゃないのです。

 よって、プロレスにおける「勝負」とは。



客との勝負なんです。




 試合に勝つという事以上に、内容で客を納得させないといけないわけです。
 例えば野球で、巨人と横浜が試合をして巨人が勝ったとします。
 私は横浜ファンなのできっと涙目ですが、巨人のファンは盛大な拍手を贈るでしょう。
 それは当然の事です。
 横浜ファンが盛大な拍手を贈ったら、ちょっと変な光景ですよね。

 しかしプロレスは違うのです。
 小橋と三沢が試合をして小橋が勝ったとします。
 今すでに涙目ですが、小橋のファンは盛大な拍手を贈るでしょう。
 そして三沢のファンは?
 もちろん盛大な拍手を贈るはずです。それがいい内容であったなら。

 だからプロレスファンは暖かく、そして非常に残酷なんですよ。
 しょっぱい試合をするレスラーは容赦なく切り捨てます。
 負けても強さを証明でき、そして勝っても負ける事がある不思議なスポーツと言えるでしょう。
 けれども唯一のスポーツではありません。
 相撲にだって勇み足はあるし、ボクシングにもラッキーパンチがあります。
 九分九厘勝っていた敗者に対して暖かい拍手を贈る。
 それは試合の内容が素晴らしかったからなのでしょう。
 その部分が他のスポーツよりも顕著なのがプロレスです。

 プロレスラーは、だから役者さんにも通じる所があると考えます。
 主役だろうが何だろうが、演技がショボかったらバッシングの対象になるでしょう。
 多少外見が良くても、そんな大根役者ではドラマを楽しめません。
 事務所のおかげで売れてるんだろうとか、顔だけでファンがいるとか、そういう叩きも出てくると思います(新日本の某T選手に言ってるわけではありませんが)。
 よってプロレスラーとは、闘いの中でドラマを作り出さなくてはならない存在である。そんな風に豪腕は思っております。

 突然ですけど、サーカスや大道芸ってあるでしょう?
 あれも一所懸命に練習し、常人にはできないような技術を駆使して観客を楽しませるわけですよ。
 プロレスも同じなんです。
 空中ブランコやジャグリング、はたまた火を吹いたりナイフ投げたり飛んだり跳ねたり垂直落下で落としたり、普通の人には真似のできない世界を観て楽しむんです。
 ここがプロレスのショーたる所以であり、エンターテイメントである所以です。
 ただし、一歩間違えば死に直結する。
 三沢の例を出すまでもなく、そういう世界に彼らはいます。空中ブランコの人もプロレスラーも一緒なんです。

 プロレスラーにも色々います。
 空中ブランコ的な人、ピエロな人、手品師、猛獣遣い、火の環をくぐったり口から火を吹いたり、そういう様々なエンターテイナーがたくさん揃っているんです。
 そうした人々の技術に驚嘆し、興奮し、拍手を贈る。
 プロレスってのは、こんなに分かりやすいんですよ。

 そういう事で、そろそろもう1本行きましょうか。
 上の動画と同じく、この文章の先を読む前にぜひ一度観てみましょう。



何だか色々とすごい技のダイジェスト。




 ・・・動きがもう大変ですね。
 この動画も上の動画も同じプロレスなんですけど、同じジャンルにはとても思えないほど非常にアレな感じですね。
 プロレスとサーカスは非常に近い、その事がお分かりでしょうか。

 この動画に出てくるドラゴンキッドという人は、身長が162センチしかありません。
 成人男子の平均身長よりも低いんです。
 だからプロレスは、体の大きな人の専売特許ではないのです。
 体が小さくても技やスピードで勝負できる。
 柔よく剛を制し、小柄な選手が大男を打ち倒す。
 そんなシーンもプロレスの醍醐味の一つだと思います。

 さて、どんどん行きましょう。
 続いてはこの動画です。たっぷり楽しみましょう。



サーカスにおけるピエロの試合。

その続き。




 ・・・いかがだったでしょうか。
 こういうのもまたプロレスです。
 吉本新喜劇にお笑い観に行ってるのと同じ感覚で行けますね。

 結局の所、勝ち負けや記録だけを追及するスポーツは、「客ありき」の必然性はそんなにありません。
 極論ですけどそういう事です。
 別に客に見せなくても世界記録は出せるんです。
 しかしプロレスは、そして多くのスポーツはそうではない。
 大抵のプロスポーツ選手は、自分の記録やチームのためだけでなく、お客さんを喜ばせるためにも頑張っていると思います。
 プロなんだから当たり前です。
 そしてプロレスというのは、勝敗を越えた所でそれが体現できる数少ないスポーツなのです。

 プロレスの間口は広いです。
 最初はどんな所から入っても良いと思います。
 ただまあ野球だって年間140試合もやってるわけですし、そのすべてが名勝負というわけでもないでしょう。
 プロレスだって地味な試合がたくさん動画サイトにアップされてます。
 いかな名選手であろうと、その相手がしょっぱすぎたら名勝負は生み出せないんですね。
 だから、知識のない方が良い試合を観たくなっても、どうやってそれを探していいのか分からないと思います。
 そこでコツを伝授しましょう。

 もちろん豪腕はりーに聞くのが当サイトでは一番手っ取り早いんですけど、お一人でも大丈夫です。
 例えば動画サイトで試合を探す場合、再生回数がなるべく多いものをお薦めいたします。
 当然っちゃ当然ですが、みんなが観てるわけですしね。

 さし当たって「プロレス」だけで検索してみてください。
 生涯をプロレスに捧げても観切れないほど引っかかります。
 そこで便利なのがグーグルです(順番逆)。
 今、試しに「プロレス 年間最高試合」でググッたんですけど、データとしても面白いものがたくさん引っかかりました。
 とりあえずこの辺りを参考に、ベストバウトの試合を探してみるのも良いでしょう。
 識者がベストと言ってるんだからショッパイはずもありません。
 ただし、そうした試合の多くは著作権の関係でなかなか流れていないのも事実です(すぐ消されちゃうので)。

 そんな時でも大丈夫。
 そこで挙げられているレスラーの名前をコピペして探せば、きっと興味深い試合が見つけられるでしょう。
 上記の再生回数との合わせ技で向かいましょう。
 本当はちゃんとDVDを買うべきなんですけど、貧乏界のタイトルホルダー豪腕はあまり強く言えません。
 これをきっかけに、いつかは会場にて生観戦する事を強くお薦めしたいです。やっぱり生は最高ですよ。

 あともう一つ。
 できれば年代が新しい試合から観た方が良いでしょう。
 プロレスというのは年々進化しているのです。
 確かに昔のレスラーはレジェンドと言っていいくらいの大御所がたくさんいますけど、今からオタクを目指す人が「鉄腕アトム」から始める理由もありません。
 そういうのは好きになってからでいいでしょう。
 まず名勝負(とされる)試合をいくつか観て、興味があればそのレスラーについてちょっと調べたり、さらには歴史を探ってみたり。
 ご自身で、どんどん広げていくのが吉と心得ます。

 そして最終的に。



 豪腕はりーにチケットを贈って一緒に観戦するというのがもっともベターな選択です。



私にとっては。




 いつでもメールをお待ちしております。
 チケットが手に入らない場合は、代わりに現金を贈ってみるのも有効な手段です(私にとって)。

 もちろん、このグダグダな駄文をちゃんと最後まで読んで、なおかつ動画も観た上でなお面白くないと感じたのなら、それがあなたのジャスティスです。
 私もあなたも何一つ間違っていません。
 おのれの信じた道を進むべきです。胸を張って。

 なお、八百長談義とかその辺は、前に書いたプロレスの記事にて啓上しております。
 わずかばかり付け加えるなら、ブックとかアングルとかは確かにブラックボックスです。
 されども、一つ一つの技やタイミングまで事前に打ち合わせして練習する事は不可能だと思います。
 あいつら年間100試合以上やってますから。

 そういうわけで。
 長々と綴って参りました今回の記事ですが、結局の所は多くのファンが認める試合をまず観てみましょう、という一点に尽きるような気がします。
 醍醐味ってのは自分で見つけ出してこそ面白いと心得ます。
 ひとまず種のまき方は書きましたので、あとはどんな芽が出るのか楽しみにお待ち申し上げます。

 ・・・ぜんぜん動画貼ってないですね。
 お土産としてくつか置いておきます。リンク切れの際はご容赦ください。
 真面目な試合と楽しい動画、交互に行きます。



ミスターIWGP対ミスターGHC、新日対全日(全4本)



ラッシャーさんのマイク劇場。



若き世代とプロレスの未来(全2本)



実はこいつら天才かもしれない。



こいつらは絶対に不死身(全3本)



プロレスラーが家屋を壊してみた。



タッグとしての完成形を見る(全3本)



プロレスとは、筋書きのあるドラマである。






相手の技をすべて受け、

その上で自分の必殺技で勝つ。

そうして完全に相手の上を行く。

このスタイルは、

他の格闘技では滅多に見られない。







プロレスっていいなあ。






ではでは皆さん、いつか会場でお会いしましょう。






2010.2.10 豪腕はりー。





BACK


HOME