『瑞樹ちゃんと桂木の死闘』



 べらぼうに久しぶりです。
 これだけ間が開くと、子供だって旅に出ます。
 今回は本編にはぜんぜん出てこなかった優希の妹、最強小学6年生の瑞樹(みずき)に登場願いましょう。

 


 こいつですね。



 前とまったくアイコンが違うんですけど、さすがに小学生でピンクの髪はいろいろとヤバイので。
 いや、前の顔も可愛いんですけどね。
 この年頃の子供はすごい勢いで成長するという事にしてください。

 さて、この瑞樹ちゃん。
 小学生の行動範囲は渡り鳥のように広いので、時おり桂木の狭い事務所に遊びに来ます。
 されど桂木は、子供が大の苦手です。
 こまっしゃくれたガキは特に嫌いです。
 大体、頭にきたらとりあえず殴ってから考えるタイプのこの男にとって、それができない相手というのは困るのです。

 


「子供に生まれないで良かったぜ」



 バカなんですけどね。

 加えてこの瑞樹ちゃん。
 神をも怖れぬ大胆な切り口で攻めてきます。
 日常的にこんな感じです。

 


「よー、桂木ぃー」


 


「桂木さん、だ」


 


「このコーヒー薄いぞ?」


 


「子供はそれでいいんだ!」




 …その辺の投げ技よりもはるかにデンジャラスです。

 この二人、立ち位置はまったく違いますが、それだけにお互いこいつよりも自分の方がずっと上だと信じきっているのが怖い所です。
 もちろん優希は終始こんな顔です。

 


「・・・・・・・・」




 何と言うか、この地雷の信管をつつくキツツキみたいな瑞樹ちゃんの登場によって、桂木の事務所は今日も嵐が吹き荒れるのです。
 加えて、のんびり屋さんのお姉ちゃんと正反対の戦闘向きなこの性格。
 子供ならではの無邪気さ。
 「赤子の手をひねる」などという慣用句がありますが、本気でひねる度胸がないと瑞樹ちゃんには勝てません。

 ある日の午後に繰り広げられた、血みどろのデスマッチを見てみましょう。

 


「なぁ、桂木ぃー」


 


「桂木さん、だ」


 


「なんで人殺しちゃ駄目なんだ?」



 一本ッ! それまでッッ!
 しかしここで桂木、カウント2・9で返す!

 


「それはだな。自分の身を守るためなのだ」


 


「…どーいう事?」


 


「例えばだな。そこの茶髪の女子高生が殺されたとする」


 


「なんて事すんだお前!」


 


「コタツに乗るな! …その時、お前ならどうする?」


 


「桂木を殺す」


 


「…まあいい。要するに、人を殺していいなら自分が殺されても文句が言えんわけだ」


 決まった! 鮮やかな逆転技ッ!
 しかし。いやさ、しかし。
 桂木なんだから、ここでやめておけば良かったものを。

 


「そんな世界を誰が望む? そういう事だ」


 


「お〜。納得したぞ」


 


「だから、体を鍛えねばならんのだ」


 


「はあ?」


 


「だから、プロレスが最強なのだよ」



 …すみません。
 やっぱりバカでした。

 


「やっぱりバカだよ桂木…」


 


「桂木さん、だ!!」



 超満員の後楽園ホール、もとい桂木の事務所からお送りしました。
 優希のオロオロっぷりを想像しながら読んでいただけると幸いです。

 …なお。
 ここに広海さんが加わると、最強タッグが結成されます。
 ペコも入れば最強トリオです。
 桂木、行くは茨の道。
 でもいいんです。桂木だから。



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