『智恵子さんの平和な日々』



 ようやく出番が来ましたね。
 今回は、レッドデータブックの絶滅危惧種に指定されるくらいに総天然ボケの平和な方、武本智恵子に登場していただきましょう。
 なにしろ、この人の場合は空気が読めません。
 というかこの人が空気を読めません。
 普通、こういう人は、頭の硬い方から敬遠されがちなんですけど。
 本人がよく分かっていません。
 返す返すも平和な人なんです。


「私ったら、何かとんでもない失態を…」


 いや、あんたはそれが普通。
 どうか長生きしてください。
 ボケても誰も気付かないから。


 さて、日々平和な智恵子さん。
 今日はお稽古です。
 なんでこんなトロそうな人が合気道やってるのか謎ですけど、それはまた何かの機会で語るとしましょう。
 まあ、「和の武道」ですからね。
 相手と同化する事を旨とした格技ですし。
 普段何一つ同化できない智恵子さんも、この時ばかりは真剣です。


「はいっ! 次!」


 けっこう強いです。
 これも超常現象のひとつなんですが、智恵子さんは黒帯です。
 ある意味最強です。


 という事で。
 お稽古も終わって、お茶など飲んで帰宅です。
 同じクラスのおばちゃん達とおしゃべりしてますが、すごい事になっています。
 会話が成立していません。
 しかし、ハタから見ると楽しそうなんです。
 智恵子さんもすごいですが、おばちゃんもすごいです。
 ヲタク同士の会話みたいです。


「お疲れ様でした」


 ところで智恵子さん、なぜかいつも裏口から出入りしているようですね。
 その理由はこれです。


 ZZZ…。 (そぉ〜っと、そぉ〜っと…)


 出ました犬。
 道場の入り口にデンと構える番犬くん。
 はっきり言って無理です。
 頑張れ智恵子さん。


 するとそこに。


「あら、智恵子さん」 「まあ優希さん」


(ちわっす) 「・・・・」


 ああ、出会ってしまった。
 誰にでも苦手なものはありますが、この人のそれはケタが違います。
 オバQみたいです。
 ペコVS智恵子。
 勝負になりません。


 円の動きで智恵子さん防戦。
 ペコは、不思議そうに見ています。
 ようやく優希も気付いて、ペコを抱っこしてみます。
 ひょい。


「駄目でしょ!」 (あれ、いいの?)


 優希のものすごく遅いフォローによって、その場は事なきを得ました。
 もちろん智恵子さんの笑顔は引きつっていますけど。


 こんなんで、よく日常生活が営めるもんですな。
 まあ、新庄なみに宇宙人ですから。
 例えば、帰りに寄ったソニプラなんかで。


「あら可愛い」 「それって…」


 犬の携帯マスコットを愛でる智恵子さん。
 そんなんでいいのか。
 返す返すも不思議な人です。
 ひょっとして、智恵子さん世界に我々の世界が追いついていないのかも知れません。
 どうか長生きしてください。



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