『桂木さんの大作戦』



 今回は、■外道狩り■で一応メインを張っている桂木紳一郎のお話を。
 こやつを語るキーワードは誠に簡単で、ただ一言「貧乏」です。
 ご飯にチーズとケチャップをかけレンジでチンして、「これはドリアだ」と言いながら食う奴です。

フィレンツェを思い出すぜ…。

 はい、馬鹿です。


 では、この体の大きな子供が今日はどんな風に過ごすのか、多少の哀れみを持って観察しましょう。
 時間的には、ノベルのエンディング辺りだと思ってください。
 エンディングテーマが流れている間のある一日です。
 季節は夏の終わりですね。


 こいつの一日は、コーヒーを「どうにかする」事から始まります。
 なんせ安い豆ですからね。
 鍋でローストしたり、手でガリガリ挽いたりして作ります。
 だから毎回味が違います。

…失敗。

 成功する方が不思議なんですが、ともかく今日は出かけます。
 向かう先は本屋です。
 とりあえず、「週刊プロレス」とかを隅から隅まで立ち読みします。
 購入する意思はゼロですね。
 店からすると道路の置き石みたいなもんですけど、こいつは一向に気にしません。
 新日本の永田選手の勝利を確認して、次は「Tokyo Walker」です。


 …とうきょううぉーかー!?

あんだこの値段は!

 …買ってしまいました。


 私たちは今、ある種の超常現象に遭遇しているわけですが、こいつの周囲にそれは売るほどあるのです。
 んで、家に帰ってしげしげ見るわけですよ。
 もうぜんぜん似合わない。
 イングリッシュ・アドベンチャーを聞く吉幾三みたいです。


 そして手に持つのは、なぜか猪木詩集・『馬鹿になれ』。
 「Tokyo Walker」よりよっぽど納得のチョイスです。
 適当にページをめくると、出てくるんですよ。

心の師よ、また力を貸してくれ。

 そこには数枚の福沢諭吉が鎮座です。
 姑息を絵に描いたような男です。てか今時いねぇよ。


 …さて、この男が「Tokyo Walker」で何をチェックしたのか見てみましょう。
 『損保ジャパン東郷青児美術館』と書いてありますね。
 新宿にある美術館です。
 美術館です。
 優希に対するゲイバーくらいにかけ離れた組み合わせですね。


 催し物は、以下の通り。
 『高村光太郎展−彫刻、絵画、書−「いのち」の造型』
 という事で。

おべんと作らなきゃ♪

 …ラストシーンに至る、と。
 勝手にやってくれ、と。


 んで、ちょっとした後日談ですけど。


 いつものように、事務所で桂木がファミコンやってるんですね。
 ええ、単なるファミコンです。
 ロードランナーです。
 チャンピオンシップじゃない方です。
 優希は報告書をまとめています。


 優希が書類をどけると、そこに見慣れない(というか、有り得ない)雑誌が。
 なんかページが折ってある。
 なんかボールペンで丸がしてある。
 これは…。

ふ〜ん…。

 優希ちゃん、ささやかな勝利の瞬間でした。


 もう勝手にしてくれ。



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