『PARADISE LOST』







今回、かなりの長文ですので、とりあえずごめんなさい。

今回はレビューの前に、この作品をプレイするに至った経緯からお話しましょう。

実はこれ、メーカーさんからタダでいただいた物なんです。

拙作■外道狩り■作成時に、この『PARADISE LOST』の製作会社である獲ight様のキャラクター作成ツールをお借りしまして。

お礼の書き込みをしたんです。

すると、なんと代表の方から感想のメールをいただいたと共に、「よろしければ、弊社の近作を送らせていただきます」との事で。

2本もゲームを贈っていただきました。

すげえ太っ腹です。






婦人の目にも涙。

そんなわけでこの作品、いつになく真剣にレビューを書きたいと思っております。

今回は大真面目です。

まずはストーリーです。






 




…以上です。



続いて、キャラクター紹介です。










…以上です。



信じられないかもしれませんが、今回ほんとに大真面目です。

神に見捨てられた街、D区画。
そこにデスサイズの異名で畏れられる主人公、ライルがいます。

人気小説「ラグナロク」の主人公だと思ってください。

クールでニヒルな超人…かと思ったら、女子中学生みたいによくしゃべる男です。

その身の内に「ナハト」という、もうひとつの存在を住まわせているんです。

化け物みたいに強いんですが、要するにこいつは化け物です。

退廃した街で、ある日、唐突に「リル」という少女を拾ってしまいます。

主人公の性格からして共生は有り得ないんですけど、一緒に暮らし始めるんです。

どうやら、この少女が物語の鍵らしいんですが。

まったく感情移入ができません。

早い話が「浮いている」んですよね。世界から。

サイバーパンク世界におけるそういった存在とはかけ離れています。

よくあるギャルゲの、単なる女の子なんですよ。

サイバーパンクに憧れる同人作家が、単に自分の「萌え」を突っ込んだだけみたいに感じたんです。

売るんならとっとと売れよデスサイズとか思ってしまいました。

ただし、これは狙っているのでしょう。
勘のいい方なら、すぐに気付かれるでしょう。

そうやって割り切ってしまえば、けっこう可愛いです。

私にとっては属性違いの壁を越えられませんでしたが、そうでない方なら受け入れられる可愛らしさはあると思います。

そのノリで、もはやお約束の「血の繋がらない妹」も出てきます。

「謎の人形少女」も登場します。

綾波レイのファンは怒りでモニター割るかも知れませんが、こいつは完全なるコピーです。

危険な賭けですけど、大丈夫です。

意匠権侵害で訴えられないように、背中から羽根が生えるので別人です。

作家さんも頭がいいですよ。






 

…これくらい違います。



お姉属性の方も、ご安心を。

社長秘書が出てきます。

ガーターベルトは正義です。

電話と並ぶ偉大な発明です。

この姉ちゃんはいい。

首脳会議に、ニュウリンが見えかけのスーツで出席してます。

頭に酸素が来てないんでしょうか。

さらには、眼鏡白衣も出てきます。

「赤城リツコ」だと思ってください。

こいつ、個人的にヒットです。

えっちシーンはありませんが。

今回、真面目に書きます。

世界観の構築、張り巡らされた伏線、どれを取っても一級品です。

なぜなら。

元ネタが一級品だからです。

モチーフは聖書。
破壊された世界を背景に繰り広げられるサイバーパンク。
過去の超兵器。

全部どこかで見た事があります。

確かに、考証は「そこそこ」しっかりしていると思うんですよ。

天使の階級とか、やや怪しい点はありますけど。

それでもなおこの作品には、オリジナリティというものがまったく感じられないんです。

正直な話、設定も舞台も、そしてオチですら、今まであったどこかの作品の繋ぎ合わせに感じてしまうんです。

ライターさんの趣味が透けて見えます。

先程書いたキャラクター紹介は、絶対的を得てますよね?

「トライガン」とか好きでしょ?
「バスタード」好きでしょ?
「エヴァ」大好きですよね?

この作品は、そういった元ネタの呪縛から、最後まで抜け出せなかったお話だと感じてしまったんです。

何かひとつ、その殻を破っていたなら。

素晴らしい傑作になっていたのかも知れません。

実に惜しい。
しかし。

だからこそ安心してできるという面も、否定できないんですよね。

知っている方なら「ニヤリ」とする、あの感覚に近い物があるとも言えます。

もちろん、お客にそれを期待してちゃ単なるパロディに過ぎないはずです。

今回は大真面目です。

これを読んだ獲ightさんから「ゲーム返せ」と言われるかも知れませんが、真剣にレビューを書きます。

弱気になってはいけません。

でも言われたらお返しします。←早速かよ。

え〜、さて。
お伝えしたい事はまだまだあります。

ゲームの背骨とも言える、文章を見てみましょう。

このゲーム、実はノベルと言った方が伝わりやすいんじゃないかと思います。

まず、文章量の多さが目を引きます。

修飾詞、多すぎです。

サイバーパンクに似合う乾いた文章など、期待してはいけません。

日本人の情念を歌い上げるのが演歌なら、この作品は紛れもなく演歌です。

その上さらに、普段まったく目にしないような難しい単語や言い回しが、秋葉原におけるソフマップみたいに大量に出てきます。

これが作中、目覚ましい効果を上げているんです。

読みにくいという効果ですけど。

あんまり言いたくないんですが、この際なんではっきり言いましょう。

ライターさん、自分の文章に酔いまくってません?

これって、いい方向に作用する場合もあるんですよ。
ライターさんと趣味が同じ方なんかには。

でも、いみじくも商用として売り出される以上、まずは読みやすさを目指すのが本筋だと思うんですよ。

世界観とのマッチングは、悪くはないと感じましたけど。

どうしてもテンポが崩れてしまうんですね。

アクションが大きな売りのこの作品において、ここは致命的に感じました。

雰囲気だけお伝えすると。

一発殴る間に、軽妙(と思われる)会話がメッセージウィンドゥ10個分くらい続くんですよ。

細っかい文字4行ぎっしりで。

なおかつ。
CGの少なさが、それに追い討ちをかけています。

それだけセリフが進んでも、立ち絵も背景も何も変わらない事がけっこうありました。

少ないCGと過剰なシナリオ量が、もうひとつ噛み合っていないという印象を受けました。

しまいに、こいつの驚異的な強さは分かったから早くトドメを刺せよとか考えてしまう私がいました。

ゲームの本質は、もっと大きな仕掛けにあるはずですよね?

軽妙な会話は、あくまで味付けに過ぎないと思うんですけど。

文章そのものは非常に美しいだけに、残念に感じた点でした。

以前レビューで上げた、『彼女の願うこと。僕の思うこと。』なんかと比べると、文章自体は全然こっちの方が上だと感じたんです。

惜しむらくは、その崇高な文章を噛み砕いて伝える所で、失敗してしまっている点です。

合コンでの盛り上げ役は、面白い人で止まっちゃうんですね。

あと少しでもイケメンだったら。

まるで鏡を見ているようです。

イケメンになるために、あと1割でもいいからCGを増やしてくれていれば。

素敵な彼女ができていたかも。

眼鏡白衣とか。←しつこい。




ところで、作中妙に気になった点があるんですよね。

対立の図式という奴なんですけども。

例えば序盤、クレメンスと写楽くんの対立。

そしてジューダスと眼鏡白衣の対立。

さらにはサタナイルと変態社長秘書の対立。

共に男と女、確執の様相も似通っています。

これは、意図した演出なのでしょうか?

それとも、単にバリエーションが少ないだけでしょうか?

前者なら、これは立派な「厚みを付けるための手法」と言えるんですが、その割には何のフォローもありません。

注意して始めて分かる程度のものですし。

もしそうであるなら、それを強調する事で、上手い演出の可能性があったように思えます。

後者だったら論外です。

引き出しの少なさを露呈しただけです。

上記の3つの対立を物語世界の各層に当てはめると、どこまで行っても出て来る奴は同じ事しかしていないんですよ。

キャラクターの立ち位置が似通ってしまった弊害、と言えなくもありません。
言うは易しですが。

そのキャラは、本当に必要なキャラなのですか?

そしてこれは、えっちシーンについても言えます。

そのえっちシーンって本当に必要?

この件はもう不可能に近いほど難しいんですけどね。

妹が自宅で監禁状態になっている。
早く助けないと。

捕まれば殺される。
一刻も早く、妹を連れて逃げよう。

周りには監視の目。

時間は迫る…。



そこでヤッちゃうのかお前って奴は!!







やっておしまい!!





…今回、相当真面目です(まだ言う)。

「物語」という塊がありまして。
それを膨らませ、装飾を施し、立派な作品として完成させる手法があります。

逆に、切れ目を入れ、無駄なものは削り出し、純粋な核として完成する方法もあるんです。

この作品は前者です。

今まですごい悪い事ばかり書き連ねてきましたが、この作品に関しては妥協をしたくないんです。

そして私は素直じゃないんです。

素晴らしい伏線、見事に収束する物語。

それに見合うだけの量のCGが欲しかった。

そして、ジューダスを始めとする魅力あるキャラたち。

しかし使い捨ても多かった。

文章は美しいけれど読みにくい。

それでも、いい点もまた数多い作品です。

システムはやや重たいけれど、セーブなどは親切設計。

そして音楽がまたいい。

これは、すごい完成度ですよ。

パイプオルガンが響き渡るたびに、もう。

鳥肌が立ちます。







皇居に向かって敬礼!



ぜひ、ご自身の耳で確認いただきたい。

先程も書きましたが、世界観の構築、張り巡らされた伏線、どれを取っても一級品なんです。

綿密な構造の建造物なんです。

聖書がモチーフったって。

元が聖書なんだから、すごくないわけないわけで。

従来の作品を打ち破るべく作られた野心作、そう言っていいでしょう。

そしてそれは、ある程度以上に成功しているんですよ。

けっこう何度も繰り返してプレイしてますけどね。

あれだけ広げた風呂敷を、きちんと畳んでいる。

これは、実はすごい事なんです。

だから、じっくりとプレイする価値のある作品です。

あとですね。
「アナザーストーリーモード」っていう機能が、おまけでありまして。
「AS」と略すんですけど。

この作品を作ったのと同じ環境で、ユーザーがゲームを作成できてしまうのです。

なんと、ゲーム作成ツールが付属してるんですよ。

この作品のCGや音楽のデータを自由に使って、ゲームを作れ、という事ですよ。

これは挑戦なのか。

私への挑戦か。

これだけ言いたい放題言うんなら、お前が作ってみろ、という事ですか。

いいでしょう。

作りましょう。

野には恐ろしい人材がいるという事を、この私がお教えしましょう。

じゃーん。

…………………………。



えらい事を言ってしまった。

ある日突然私が消えても、探さないでください。







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