ケース2. 「開けてはいけない箱」 さて今回のお話は。 やはり新潟のある知人より聞いた物語です。 このお話も、もちろん「実話」であり…。 そして、この私もその場にいたのでした…。 ◆ ◆ ◆ 若い頃は、たくさんゲームをやりましてね。 当時、みんなゲーム機を持っていて。 ほら、今でも流行っているじゃないですか。 コンピューターゲーム、って奴ですよ。 CDのようなのを、こう…挿入してね。 友達同士で集まって。 それぞれ、好きなゲームを持ち寄ってね。 それこそ何時間も、何時間も…。 飽きずに良くやったもんですよ。 今の子供たちも、きっとそうやって遊んでいるんでしょう。 電気街など行けば、ほら。 華やかなお店がたくさんあって。 テレビの前でね。子供が並んで。 真剣な表情で遊んでますよね。 私なんか、足元にも及ばない反射神経で。 敵の弾を避けたり、技を繰り出したりしてね。 最近のこの国らしい風景だとは思いませんか。 そりゃあね。 ひと昔前までは、こんなに恵まれてなかったですから。 ボールの一つでもあれば、みんな喜んで遊んだものですよ。 それすら無くてもね。 鬼ごっこやら何やらで、いくらでも時間は潰せたものでした。 それを思うと、今という時代は。 いや、本当に豊かになったのだなあ、とね。 そんな風に、つい思ってしまう次第でして。 かく言う私も、一応はゲーム世代になるんでしょうか。 若かった頃に、ファミコンというのが出てね。 そりゃもう流行った流行った。 家に帰るなり、電源を入れて。 夕食時まで、わき目も振らずに遊んでいましたよ。 母親に叱られてね。 宿題はやったのか、と。 皆さんにも、ご経験があるんじゃないですかね。 懐かしいものですよ。 私も、いい年になりましてね。 いつまでもゲームなんかで遊んでいる年ではありません。 されどもね。 時には皆と集まって、そうした話題も出るのですよ。 もちろん、最新の知識には着いていけません。 私が知っているのは、ニュースなどで放送された話題作だけ。 果たして昨今のゲーム事情は、どんな感じであろうかと。 あるお店に入りましてね。 表通りからかなり入った、誰も来ないような路地の店で。 そこの店員に、尋ねてみたんですよ。 最近の話題作をね。 表通りの店だと、何だか面映いですからね。 この通り、いい年ですから。 昔は電器屋なんて照明からステレオまである大きなビルでしたけど、 最近はゲームだけでもそうしたビルが建つんですね。 そして少し歩けば、小さな専門店がたくさんあって。 テレビの、それも液晶ばかりを扱う店とか。 パソコンの部品ばかりを扱う店とか。 私が入ったのも、そうした専門店のひとつ。 薄暗く、狭い店内にびっしりとゲームを配した、不思議な香りのする店でした…。 「これ、一番新しいです」 肌の浅黒い店員に、そう言われてね。 日本語の怪しい、どう見ても外国人の店員に。 手に取ったのは、ゲームにしてはかなり大きな箱でした。 皆さんもご存知でしょう? 最近のゲームは、みんなCDなんですよ。 昔みたいな、不恰好なカセットではないんです。 なのに、こんなに大きな箱で。 もちろん理由を聞きましたよ。 こちらは素人ですからね。 するとね。 その店員、ただ首を振るんですよ。 「分からない。ただ、一番新しい」ってね。 あからさまに怪しいと感じました。 店からして怪しいんです。 店員も怪しければ、この箱も。 周りに山と詰まれたゲームの箱とは、明らかに違うんですよ。 値段もね。 ゲームにしては、けっこういい値段でして。 そりゃあ迷いますよ。 変なものを売りつけられても困りますからね。 迷って、悩んで。 それで結局。 好奇心に負けて、それを買ってしまったんです…。 去り際に。 件の店員が、私の背に声をかけました。 何を言っているのだろう。 不思議に思って聞きなおすと。 店員がね。 まったく無表情で。 こう言ったんです。 …何を。 何を言っているのでしょう。 浅黒い肌の店員は、ただ無表情に立っています。 まるで不思議な呪文のように。 その言葉が、耳に届きました。 私はもう一度、聞き返してみました。 箱を指差してね。 耳に手を当てて。 すると。 …そう、言ったんです。 はっきりとね。 一瞬、箱に目をやりまして。 その時、ほんの一瞬ですが。 箱がね。 ・・・かたり。 …小さく、鳴ったような気がしました…。 目を上げてみれば。 すでにあの店員は消え。 薄暗い、陰気な店構えがあるばかりでした。 私の買った「これ」は、何なのだろう。 ただのゲームでは無いのだろうか。 それとも。 ゲームですら無いのだろうか…。 帰りの道々、そんな事を考えて。 あの気味の悪い店員。 あの薄暗い店。 そうした事が、まるで魔術のように感じられて…。 確かめるのは簡単です。 今、ここで。 ここで、この箱を開ければいい。 しかし。 あの黒い肌の店員の言葉…。 …これが、気になって仕方が無いんです。 一人になってから開けろと、そういう意味でしょうか? 外で開けるな、という意味でしょうか。 しかし、なぜ? なぜ外で開けてはいけないのか。 開けると何が起きるのか。 さらに不思議なのは。 どうして私に、それを伝えようと思ったのか…。 漆黒の瞳の奥に、あの店員は何を見ていたのでしょう。 夏だと言うのに、背筋が寒くなりました。 一度などはね。 意を決して。 駅で電車を待つ時に、開けてやろうかと思いましたよ。 ベンチに箱を置いてね。 指を掛ける所まで行きました。 されどもね。 また、その時に。 ・・・かたり。 聞こえたんですよ。 音が。 箱から。 箱の中から…。 これは。 この箱には、きっと何かある…。 そう確信しましてね。 店員の言うとおり。 家に帰って、一人になってから開けようと。 そう思った時にね。 気づいたんですよ。 …一人の時に、これを開ける…。 その事が、たまらなく怖くなったんです。 誰もいない所で。 得体の知れないこの箱を。 もし何かあったら…どうしよう。 お恥ずかしい話ですが、そんな風に考えてしまいまして。 どうするべきかと悩むうちに、思いついたんですよ。 皆を呼ぼうと。 知人たちを集めて、そこでこの箱を開ければいい。 何事も無ければ良し。 もし何かあったとしても、皆と一緒なら大丈夫だろう。 そう、考えましてね。 早速皆に連絡しました。 本当の理由は告げずにね…。 そういった経路があって。 たまたま暇だった知人たちが集まり。 その日が日曜だという事もあって。 総勢…そうですねえ。 5,6人はいたでしょうか。 そんな中、大きなこの箱を抱えましてね。 何食わぬ顔で、輪の中に入っていったんですが。 やっぱり、目立ちますからね。 早くも質問されまして。 おいお前。その箱は一体何だ、と。 そりゃあ、聞かれますよねえ。 私だって同じ事を聞くでしょう。 怪しい大きな箱を抱えているんですから。 だから、私は答えました。 少なくとも、表面上は正直に、です。 「これは、新作のゲームだよ」と。 これだけ人数が集まれば、ゲーム好きの一人や二人はいるんですよね。 だから早速箱を開けようとして。 やや離れた所から、私はそれを見つめていて。 期待と、不安と。 そして少しの後ろめたさと…。 もちろん、後ろめたさはありますよ。 もし何かあったらと思うと。 それでも、好奇心の方が勝ってしまいました。 知人が箱に手を伸ばします。 一応の断りを入れてから、包装紙を解き…。 その時。 もう一人の知人が言ったのです。 これは、「あれ」じゃないかと。 その道では有名な…「あれ」。 彼も、詳しくは知らないようでしたが。 どうやらこれは。 「開けてはいけない箱」と…呼ばれている代物で。 いや、それだけでは正しくありません。 正確にはこうです。 「外では絶対に開けてはならない箱」…。 これの意味する所が。 ついに今、明かされようとしています。 顔を見合わせた私たちは、ともかく開けてみようとして。 知人の一人が。 箱に手を。 すると。 ・・・かたり。 …また、あの音が鳴ったのです。 何かが、中に。 中にいる。 それが一体何なのか。 開けると何が起きるのか。 固唾を呑んで。 ゆっくりと、ゆっくりと、ゆっくりと開く箱を。 皆で凝視し。 言葉は無く。 いよいよ。 箱が開き…。 ぴろりろり〜♪ 「・・・・・・・・・・・・。」 スゲェよ『ときメモ』。 ま〜さか、音が鳴るとは思わねぇわなぁ。 そりゃ電車じゃ開けられねぇや。 ◆ ◆ ◆ 『ビッグマウス田中のお返事』 こいつぁスメルねぇ。 なかなかビガーなクズ臭だなオイ。 開けた時は固まってたからな。 例の「2秒後に爆笑」ってやつ? こーいう仕掛けが求められてるってのは、アレだな。 負けるわけだよ戦争に。 俺っちが毛等の軍人だったらよぉ。 はっきり断言できるね。 いらないね日本。 これがアンゴラならアレだよ。 今ごろ地雷で木っ端微塵だぜ。 なにがぴろり〜だっつの。 ここよか平和な場所は宇宙にねぇよ。 こいつぁ誇っていいんじゃねぇの? 世の中、こんなニュースもあるくらいだからな。 back home |