『ひとくち感想』

(第一回)




 はい、皆さんこんばんは。
 ストック映画も溜まってきて便秘気味の豪腕ですが、要するにうんこが溜まってるのと一緒であります。
 少しガス抜きをしましょうね。
 一気に書き捨てて参りますので、尻の穴をかっぽじってご覧ください。

 ちなみにここでレビューするのは、あくまでうんこ映画と言えばうんこ映画かなぁという、非常に微妙な作品たちになると思います。
 すなわち、

  ・ どこの誰から感想を聞いても「微妙」と言われる映画。
  ・ かなりの大作またはヒット作だけど、豪腕的に微妙な映画。
  ・ 誰も知らないだろうけど、地味に面白かった映画。
  ・ どこかに光るものはあれど、他がおおむね水準以下の映画。

  ・ 『恋空』から『電車男』までのライン。


 大体こんな感じになるかと思われます。



 んじゃ行きますか。
 まず1発目は、ジョン・ウェイン主演の痛快娯楽作品。
 ハンドルが右にしか切れないという極右バリバリの映画です。
 『バキ』の独歩ちゃんも言ってましたが、派手なアクションも当然のように入ってます。
 それでは始めましょう。






『グリーンベレー』







アメリカ以外終了の
お知らせ。



 この映画は要するに、聖なる国アメリカの選ばれた神の使いである兵隊さんが、薄汚いベトコン野郎をボロ雑巾みたいにやっつけるというストーリーです。

 何しろアメリカ映画ですから。
 アメリカのやる事は1から10まで全部正義なので、ベトナム戦争というのは黄色い豚共を仕方ないから救ってやるための親切な行為だったんですね。


 そのためだったら枯葉剤でも何でも撒きます。


 アメリカという国は神様が特別に選んでくれた土地ですから。
 牛や豚は人間の食料として神様が作ってくれた動物ですから。
 ベトナム野郎なんて何人殺しても罪になりません。
 むしろヒーローになるためには、率先してバンバン連中を殺しましょう。だって黄色い豚ですからね。

 この映画の白眉はここでしょう。
 ベトナム側の協力者たちが、報復として同じベトナム人に惨殺されるシーン。



 「ベトコンは悪魔のような連中だ」と思わせる事に成功しています。



 それに対して、アメリカ人が死ぬ時のなんと感動的な事よ。
 タカ派たるジョン・ウェインの面目躍如ですね。

 けっこう昔の映画ですけど、さすがにお金をかけてますよ。
 銃撃戦とか頑張ってます。
 すべてはアメリカのために、惜しむところ無く贅沢な画面作りをしてますね。
 この時代は豊かだったんですね。

 そして時代はくだり。
 ベトナム戦争を「聖戦」と捉えた映画は鳴りを潜め、次第にあの戦争の狂気が表に出始めます。
 問題作として今も引き合いに出されるのは、フランシス・フォード・コッポラ監督の『地獄の黙示録』でしょう。
 時代は60年代から70年代になっていました。

 さらに時は進み。
 80年代に入って、ついに映画は真実を映し出します。
 それがアカデミー作品賞にも輝いた『プラトーン』であったり、記録映画の体裁を採った『ハンバーガー・ヒル』であるのです。



 とても同じ題材とは思えないよね。



 要するにこの『グリーンベレー』という映画は。

 古き良き時代のアメリカの遺産と見る事ができるでしょうね。

 それが正か負かは個人的にどーでもいいです。
 映画なんてどうせ娯楽ですし、人生における2時間分を楽しめればそれで良いのです。
 そうなんです。
 これこそ本来の映画の楽しみ方なんですよ。

 2時間我慢してレビューを書くというのは、だからきっと間違った観かたなんでしょうね。
 よってこの作品はうんこじゃないです。
 思想は激しくうんこですが、当時のアメリカとしてはこういう映画も必要だったのでしょう。
 あなたや私がもしアメリカ人だったら?
 手放しで賞賛していたかもしれませんね。



 ちなみに、アメリカ陸軍特殊部隊司令部 (USASFC)特殊作戦群 (SFG)、いわゆる本物のグリーンベレーの記章には、以下のような文字が書かれています。



「DE OPPRESSO LIBER」

対訳:「抑圧からの解放」




 いくら何でも解放しすぎです。

 お前は場末のパチンコ屋か。



 そんなわけで続いては。
 とんでもなく売れた映画の隠し子みたいなこの映画で行きましょう。






『ジョーズ4 復讐編』







 そこにロイ・シャイダーの姿は無かった。



 スピルバーグの『ジョーズ』から10年以上を経て、いわゆる続編の法則というものをさらに強固にしちゃった映画です。
 仕方ありませんね。
 これまでに2作目として成功したのは、せいぜいこの程度だと思います。

  『ゴッドファーザー2』。
  『ターミネーター2』。
  『エイリアン2』。

 あとはまぁ『マッドマックス2』くらいでしょうか。
 映画界に2匹目のドジョウなんていないのです。



 そこへ持ってきてこの映画。

 4作目ですからね。

 2作目は怪獣映画、3作目は立体映画。
 そして4作目は単なる映画でした。

 いや、映画としては確かにつまらないんですけど、それほど劣悪な映画というわけでも無いんですよ。
 むしろ初代が良すぎました。
 偉大な父の背中を十分に意識しつつ、また特撮の進化という武器も取り入れ、それなりに頑張って作っているとは思いました。

 だから、うんことは言いたくない。
 言いたくないけどうんこです。
 人間も年を取れば、知識が増える代わりに体は劣化しますよね。
 知識を撮影や音響の技術、体を脚本や演出の完成度と考えてみましょう。
 それがシリーズ物の宿命であり、人間と同じく逃げられない足かせであり、重たい十字架なのですよ。








ごめん十字架重すぎた。




 何が駄目ってアナタ。

 特撮そのものは少ししか進歩してないのに、動脈硬化も甚だしい脚本の出来なんですよこれが。
 こっちが脳卒中しそうです。
 ちょっとストーリーをご紹介しますけどね。




またしてもアミティの平和が破られ、ブロディー家は血に飢えたサメに命を脅かされる。サスペンス満載のヒットシリーズ第4弾!

ロレイン・ゲリーが今度は、未亡人となったエレン・ブロディを演じる。巨大なサメに次男を殺された、あの恐怖が再び彼女を襲う。

悲しみにくれたエレンは、長男の住むバハマへ。
そこでマイケル・ケインが演じる、楽しいパイロットと出会う。

だが再びジョーズの恐怖が襲い、二人は最後の対決を迫られ、
命がけの闘いがはじまるのだった・・・。









またしても。




 これだけでもう凄いうんこ臭です。

 第一、初代のサメとはまったく関係ないサメが追いかけて来る、という点ですでに電波です。
 普段は寒い海にしかいないホオジロザメがカリブ海まで出張です。
 熱帯ですよ?
 お前は小島よしおですか?

 しかもこのサメ。
 お母さんの家族しか襲いません。



 史上初、サメのストーカー。



 さらには。
 お母さんが電波を受信。
 サメの接近を感じると、まるでニュータイプのようにピピッと分かってしまうのです。



 お母さんがエスパーに。



 脚本家は薬でもやってたんでしょうか。
 いっその事、サメじゃなくてザクレロか何かを出してもいいと思います。



 その上ね。
 クライマックスがまた凄かったですよ。

 家族を殺されたお母さん。
 悲しみの淵に沈みながらも、サメに対する怒りの炎を燃やします。

 もう許せない。
 そして取った行動は。






武器も持たずに小さなボートで一人海へ。








なんでっ!!!?






人それを自殺と言う。





 たかが映画と言えど、自分の見たものが信じられない瞬間ってありますよね。
 私なんか途方に暮れましたもん。
 もしかしたらこのお母さん、ものすごい気合の入ったマゾだったのかもしれません。

 しかもね。
 素手のくせに。

 勝つ気マンマンなんですよ母さん。

 人食いザメ相手にね。



 お前は花山薫か。



 私、いよいよC級うんこの真髄が見られるかと思いました。
 還暦近いババアが素手で人食いザメを倒す。
 これに笑わない自信がありません。
 この映画で初めてワクワクしましたよ。

 「ついに、この私が本気で拳を握る時が来た…」

 これは燃える。

 本当にやってくれたら、私は処女をあげてもいいですよ。
 お母さん最強伝説。



 だけど結局、サメが来て「きゃー」とか叫んで助けられてんの。

 どこまでもうんこ。

 最後はその場で組み立てたオモチャみたいな箱で「ちゅど〜ん」とか爆発して終わり。
 うんこ映画に余韻なし。
 私が爆発したくなりました。

 そういうわけで、この映画は100点満点で0点です。
 だから皆さん観てください。
 そして頭からどっぷりと、うんこの世界に浸りましょう。



 それでは最後にこの辺で。
 ともかく走る映画でした。






『ドーン・オブ・ザ・デッド』







 ゾンビ速ぇ速ぇ。





 突っ走るゾンビ軍団。
 それまでの「ゾンビは鈍重」という常識を覆し、完膚なきまでに叩きのめした新しい時代のゾンビ映画です。
 いやあ走る走る。

 まるでゾンビが鷹を生んだようです。



 一言で言えば、数100人のベン・ジョンソンが一斉に襲って来るような感覚でしょうか。

 あらすじをご紹介しようかと思いましたが、やめときます。
 だって普通のゾンビだから。
 お約束、マーケットに篭城してからエクソダスという伝統を守りつつ、まるで尻にジェットエンジン付いてるかのようなゾンビたちのアグレッシヴな動きに翻弄されてみてください。

 何しろ名前がドーン・オブ・ザ・デッドですからね。






ど〜んと来ますよ。





ど〜ん。






ゾンビのようなもので後頭部を一撃。





 そしてこの映画の素晴らしい所は、ですね。



 他に見るべき所が何にも無い所ですね。

 いやもう、本当にゾンビが走るだけ。
 これほど気持ちいい直球は久しぶりです。

 こういう映画の楽しみ方の一つとして、「誰がどういう順番で殺されるか」というのを予想してみるのも良いでしょう。
 1発目の予想倍率はこんなもんで。


  ・ 馬鹿な若造 ――― 1.2倍
  ・ 守銭奴 ――― 1.5倍
  ・ 色男 ――― 1.8倍
  ・ 科学者 ――― 3.0倍
  ・ 色っぽい姉ちゃん ――― 2.2倍
  ・ 清楚な娘 ――― 5.2倍
  ・ しゃべる肉体派 ――― 2.0倍
  ・ 無口な大男 ――― 4.0倍
  ・ 気の弱そうな男 ――― 4.5倍
  ・ お婆ちゃん ――― 6.3倍
  ・ お爺ちゃん ――― 5.8倍
  ・ ガキ ――― 7.2倍
  ・ 主役の男 ――― 8.5倍
  ・ 主役の女 ――― 9.0倍


  ・ 犬 ――― 100倍




 最後の奴は、英語圏の映画でのみ有効です。
 分かりますね?
 アジア映画の場合は50くらいで割ってください。

 全員が出揃った所で一度止め、一気に予想立てすると面白いですよ。
 ちなみに私、けっこうな確率で当たりました。
 この映画で外す事ぁそうそう無いけどね。
 馬鹿でも予想できますし。



 そんなわけでこの映画。

 走るだけでいいのに余計な退廃を入れちゃうから、若干の中だるみがありました。
 そんな所まで本家と一緒なんですね。
 ロメロはどんな気持ちでこの作品を観たのでしょう。


 ちなみに私は大好きです。


 もう最初からクライマックスですからね。
 そして最後は重武装のトレーラーで脱出という、まんま『マッドマックス2』のパクリで大変楽しめました。
 だからうんこと呼びたくないんですが、やっぱりうんこなんですよねえこれが。

 例えばヒロインの描写ですね。
 この作品、ゾンビ映画にしては珍しく女性が主役なんですけど、登場時からもう災難が卍解なみに襲って来てます。

 旦那は殺され。
 その旦那はゾンビに。
 そしてガキにも追い回される。



 それでも生きてる辺り実はラッキーマンなみの強運の持ち主なんですが、そこは主役だから仕方ありません。

 愛する旦那は死んじゃってるわけですよ。
 オープニングの時点でね。

 悲しみに沈む主人公。
 当然ですね。
 もう旦那は帰って来ないのですから。






そして違う男と
ラブシーン。








旦那、死んでも死にきれない。

(ゾンビだけに)




 こういう所がうんこの醍醐味です。
 私も画面を観ながら「ぽか〜ん」としてしまいました。
 それは無いだろ。


 まるでゾンビに油揚げ盗られたみたいな気分です。


 大体、ゾンビってのは愛など知りません。
 生前どれだけ相手の事を愛していようと、ゾンビになったらギャル曽根よりも食う事だけです。
 そこに悲哀がある。
 ゾンビはあんなにも汚い姿に見えますが、その一方で実に哀れな存在なのです。

 なのに主役が裏切ってどうする。

 この脚本の微妙っぷり。
 どうせホラーというジャンルそのものがB級っぽいんですから、下手に一流なんか求めないでいただきたい。
 微妙なものは微妙な所を楽しむべきです。

 だから、お勧めしますよ。これ。
 血まみれとか平気な方ならきっと楽しめます。
 意外とファミリー向けかもしれません。



 あなたとゾンビにファミリーマート。



 はい、嘘です(笑)。ソロで観ましょう。



 話を戻しますけども。
 生者に対する対比として、彼らは描写されます。
 恐怖に駆られる人間と、感情を持たないゾンビ。
 活動的な生者と不活性な死者。
 愛を知る者と知らない者。

 その常識を、この作品は打ち破りました。
 走り回って駆けずり回ってもう大変。



 ゾンビがくるりと輪を描いたりね。



 これ自体は非常に画期的であり、このジャンルに新風を呼び込んだと言ってもいいでしょう。
 走るゾンビ。
 生者と死者の垣根は危険な速度で取り払われました。

 惜しむらくは、生きてる人間まで簡単に愛を忘れちゃった点ですけど、ここは無駄以外の何ものでもありません。
 ウソ臭くなるんですよね。
 やるならもっと徹底して欲しいです。そうできないのはどこかのフリゲみたいに人数出しすぎだからだと思います。

 ま、今さら楊枝で隅をつついても無意味ですね。
 多くの弱点を抱えながらも、観てる間はすっげえ面白かった事を強調しておきます。
 基本もバッチリ押さえてます。

 セックスしたら死ぬ。

 肉体派は死ぬ。

 金持ちは死ぬ。

 途中からいい奴になったら死ぬ。

 かっこいい奴は最後に死ぬ。



 ホラー映画に関して言えば、ニートのオタクこそが勝者でした。


 意外な所で真理発見。
 ビバ引きこもり。

 そういう方がおられたら、今日からは安心です。
 もうゾンビに怯えない生活をエンジョイしてください。

 …されど。






実はそういう奴こそ
「生ける死体」だった。




…というオチで今回はさようなら。







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