…違います。














詐欺です。








 これほど堂々としたパチモン商法を私は今まで見た事がありません。

 JAROと間違えてジェロに電話するようなもんです。
 パクリ王国・中国の方々もこれには脱糞でしょう。
 「家」でなくて「部屋」って。


 スケールダウンしてどうする。


 パイの少ないB級ホラーファンの、さらに少ないソリッド馬鹿オンリーを狙ったテロです。
 そこらのシーア派よりよっぽどタチが悪いです。
 これだけ派手に自爆すりゃ、パキスタンでは聖戦士になれるかもしれませんね。
 ダンバインでは無いですよ。
 コンバインみたいなもんですよ。
 引越ししたばかりの私にとって、心から寒々しいプレゼントになりました。

 そういうわけで始めましょう。
 たぶん書く事がすっげえ少なそうなこの作品。






『悪魔の棲む部屋』





 開始早々、激しいフックに意識が飛びそうです。
 もちろん始まる前からうんこな事は屁を見るより明らかですが、それでもエンドロールまで逃げちゃ駄目です。
 レビューを始めた当初の目的を思い出しましょう。


 ここはうんこの地雷原。


 私のレビューは探知機となって、子供たちがうんこまみれになるのを防ぎましょう。
 犬が麻薬を嗅ぎ出すように、日立製のユンボが地雷を撤去するように。

 そんな子供はたぶんここを見ませんが、気持ちだけは前向きでありたい。
 鼻つまんでも戦いたい。
 そんな私の覚悟の便座に、皆さん座ってくれますか?



 そんな感じで、こんばんは。

 うんこ撤去のNGO、小さなものから大きなものまでクソ出す力だ豪腕はりーです。







 毎度毎度、前フリの意味が分からなくてすみません。
 正直私も良く分かりません。

 ではここで、いつもならストーリーをご紹介する所ですが。
 今回は違う方のストーリーを先にご紹介しましょうか。



1974年ロングアイランドのアミティビル。

念願の屋敷を手に入れたラッツ一家が引っ越してきた。

しかし、その家は悪霊に取り憑かれていた。



家の中で次々と起こる怪現象。

果たして生きてこの『家』を出られるのか。

住みついた家族に襲いかかる悪霊の恐怖をセミ・ドキュメンタリー・タッチでダイナミックに描いた本作。

映画撮影の際、原作者や関係スタッフが怪現象に襲われるなど、その真実性は群を抜いている。





              , -‐;z..__     _丿
        / ゙̄ヽ′ ニ‐- 、\  \   ところがどっこい
       Z´// ,ヘ.∧ ヽ \ヽ ゝ   ヽ   ‥‥‥‥
       /, / ,リ   vヘ lヽ\ヽヽ.|    ノ  夢じゃありません
       /イル_-、ij~  ハにヽ,,\`| <      ‥‥‥‥!
.        N⌒ヽヽ // ̄リ:| l l |   `)
            ト、_e.〉u ' e_ ノノ |.l l |  ∠.   現実です
          |、< 、 ij _,¨、イ||ト、|     ヽ      ‥‥‥!
.           |ドエエエ「-┴''´|.|L八   ノ -、   これが現実‥!
            l.ヒ_ー-r-ー'スソ | l トゝ、.__   | ,. - 、
    _,,. -‐ ''"トヽエエエエ!ゝ'´.イ i l;;;;:::::::::::`::ー/
   ハ:::::::::::::::::::::| l\ー一_v~'´ j ,1;;;;;;:::::::::::::::::::
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 今度こそ名作、『悪魔の棲む家』からのご紹介です。
 これの公開当時はまだまだホラーも円熟前。明確なスプラッターなどの生まれる以前の映画でした。
 そういう時代、まさに群雄割拠のB級ホラー中興期において、この『悪魔の棲む家』の売りは実話という点。

 その実話度は東スポ級でした。

 大阪の方は大スポ、九州の方は九スポと読み替えてください。
 重要なのは実話を元にして作っている、という所なわけです。
 そこには当然のように脚色が入ってきます。
 そして、それを素直に楽しむ心意気。
 そこがあってこそ、この手の設定は生きてくると思われます。



 要するに、私が言いたい事は。






プロレスが好きだ。




今回も豪腕が大変失礼いたしました。





 第一、ホラー映画が全部実話だったらジェイソン一人にアメリカは壊滅するわけで、そんな事を真面目に議論する方が馬鹿馬鹿しいです。
 『食人族』というフィクションの実録映画もありました。
 それでいいではないですか。
 要するに、内容さえ面白かったら何でもいいんですよ。

 どんな設定や展開も面白ければ許される。
 それが映画というものです。



 お分かりですか?






それがプロレスだ。




失礼いたしました。





 色々言ってますけどね。
 この『悪魔の棲む家』という映画の影響は、当時としてはそこそこ大きかったと思うんですよ。
 『世にも奇妙な物語』のハシリですしね。
 内容云々よりも戦略のお話ですけど、それが花開いたからこそ後続のドラマなり映画があるわけで。

 正直、実際の恐怖体験で2時間近くの上映時間を持たせるってのは世界のナベアツに24時間テレビの司会をさせるようなもんです。
 どこかで絶対に無理がかかるんです。
 それを虚々実々織り交ぜ、現代におけるゴシック的な様式を守りつつ商業的にも成功した『悪魔の棲む家』。
 ホラーファンならチェックしておいて良いでしょう。

 この「実話」というファクターを最大限に推し進めたのが、あの『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』でしょう。
 映画だけではなく、マルチメディア展開で成功を収めたのは記憶に新しい所です。
 ぶっちゃけ大して怖い映画じゃないんですけど、人々はその公開戦略の「新鮮さ」に拍手を送ったのでした。

 そして前途の『世にも奇妙な物語』。
 短編オムニバスという実にホラー向きの手法によって、ドラマは大成功を収めました。
 その影響は『ほんとにあった怖い話』のような明快なパチモンを生み出したりもしました。
 これ、原作の漫画雑誌は好きなんですけど。



なぜ司会に愛川欽也なんか
呼んじゃったんでしょう。







「おまっとさんでした」





あなたの街の宣伝本部長、やもめのジョナサンです。





 どーでもいい話が続いておりますが、その理由はアレですよ。
 ジャンプだって漫画家が風邪を引いたらガモウひろしに匹敵する画力の新人とかの読み切りが突然載ったりするでしょう?
 私の場合はそんな漫画で記事を一本書いているのですよ。
 何だか楽しくなってきました。

 んで。
 やっぱり今回も作品の事を何も書いてないですね。
 もしかしたらレビューの名を借りた水洗トイレなんでしょうか。
 その通りです。

 今回のこの『悪魔の棲む部屋』だか何だかいう映画ですが。



 『悪魔の棲む家』とは一切何の関係もありません。



 また日本の宣伝屋が適当な事を言いやがっただけです。
 そんな事は生まれる前から分かってました。
 同じ宣伝でも愛川欽也とは大違いです。

 どれだけ違うかというと、この映画の原題は『FEVER』です。



 『FEVER』のどこをどう訳せば『悪魔の住む部屋』になるっちゅうねん。



 無理やり豪腕に解釈してみます(なんでこんなに頑張ってるんだろう)。

 まず字体を個々に見てみます。
 普通は最初の文字から始めるのでしょうけど、それじゃありきたりなのでド真ん中から行きます。
 すると【V】がありますね。

 この【V】の意味する所は何でしょう。
 我々は隠された真実を見なければならないのですから、常識に囚われてはいけません。
 例えばこれがアルファベットでないとしたら。
 考えられるのは何でしょう?

 同じ形をした数学記号では、これを「離接」と解釈します。
 離接とは、例えばAVBと書いた時に「AかつBである」という意味に使われます。
 ではVと隣接した文字は。
 両方とも【E】ですね。

 この、数学的には正しくない記述。この【E】もアルファベットでないものとして考えます。
 数学記号には対応するものがありません。
 しかしよく考えてみてください。
 AVBと書いた時に「AかつBである」のなら、BVAと逆に書いても真なのです。

 これは非常に重要な意味を持ちます。
 なぜなら、神秘学に相当する古代の記述の多くでは、「鏡文字」というのが重要なテーマになっているからです。

 離説を表す【V】は、鏡に映しても同じ形です。
 意味は変化しないのです。



しかし【E】は【∃】になります。





数学記号では、どういう意味だか分かりますか?






これは「存在」の意味なのです。






その「存在」を鏡に映すという事は。



「存在の否定」に相違ありません。






皆さん、今一度原題の『FEVER』を見てみましょう。






「EVE」という字が見えますか?






数学記号からアルファベットに立ち戻った時、それが誰を指すのか見えましたか?






始祖より作られし存在が、鏡に映す事で存在を否定される。



あなたはそれを目撃しましたか?







そして。



それを包む【F】【R】・・・。







それの意味は。







飽きたから終わります。


        ____
       /::::::::::  u\
      /:::::::::⌒ 三. ⌒\  
    /:::::::::: ( ○)三(○)\ 
    |::::::::::::::::⌒(__人__)⌒  | ________
     \::::::::::   ` ⌒´   ,/ | |          |
    ノ::::::::::u         \ | |          |
  /:::::::::::::::::      u      | |          |
 |::::::::::::: l  u             | |          |
 ヽ:::::::::::: -一ー_~、⌒)^),-、   | |_________|
  ヽ::::::::___,ノγ⌒ヽ)ニニ- ̄   | |  |


全部嘘です。

         ____
       /::::::::::  u\
      /:::::::::− 三. −\   ブーーーーーーッ!!
    /:::::::::: ( ○)三(○)\  ________
    |:::::::::::::::: ゙)(__人__)ル ゚。 ゚ | |          |
    ノ::::::::::u ゝ'゚      ≦  | |          |
  /:::::::::::::::::≧       三  | |          |
 |::::::::::::: l  u -ァ,       ≧| |          |
 ヽ:::::::::::: -.イレ,、       >  | |_________|
  ヽ::::::::__ ,≦`Vヾ  ヾ ≧     | |  |





 すんませんでした。
 反省はしていますが、後悔もしています。
 世の中には無理やり聖書の中に暗号を求めたり、画家の絵から馬鹿な妄想を引き出したりする変わった方々がおります。

 昔からそういうのは大ッ嫌いです。

 面白がって私もけっこう読んでいた時期がありますけど、それらの大部分は私が今書いたようなような「こじつけ」ですからね。
 ちなみに約30分間で書きました。
 たかが高卒の私が30分で書ける程度の問題です。

 皆さん、ゆめゆめ変なこじつけには気を付けましょう。
 『ダ・ヴィンチ・コード』はそれ以外の要素が面白かったから売れたんでしょうね。けっこう面白かったですし。



 …はっ、私は何を書いているんでしょう(笑)。
 映画の話に戻しましょう。

 配給会社の妙な宣伝により、原題の持つ意味もへったくれも無残にレイプされてしまったこの作品。
 まずはストーリーです(遅ぇよ)。



ブルックリンの薄汚れたアパートに住む画家志望の主人公は、

絵の講師によってわずかな生計を立てていた。

ある夜、仕事から戻った主人公は大家と住人の言い争いに出くわし、

次の日大家が惨殺されていた事によって殺人事件の重要な目撃者となる。



しかしその夜を境に、主人公は夢か現実か分からない幻想に苦しみ始める。

高熱に冒され記憶が定かでない主人公に襲いかかる不気味な悪夢の数々。

そして事件当夜、最上階の部屋へ越してきた正体不明の住人の存在。

謎が謎を呼ぶ殺人事件に再び新たな犠牲者が出た夜、

主人公は衝撃の真実を知る。





                  ____
                /      \
               / ─    ─ \
             /   (●)  (●)  \   ない ない
             |      (__人__)     |
              \     ` ⌒´    ,/
      r、     r、/          ヘ
      ヽヾ 三 |:l1             ヽ
       \>ヽ/ |` }            | |
        ヘ lノ `'ソ             | |
         /´  /             |. |
         \. ィ                |  |



悪魔が何一つ関係ない。





 ごくごく普通のサイコスリラーなんですって。
 このストーリーを見て、どうしてこんな邦題にしたのか理解に苦しみます。
 まぁすでにさんざ文句を言ってきたので、いい加減ディスクを入れてみましょうか。

 すると。



 大変困った事になりました。

 いや何と申しますか、これは私が悪いんですけど。
 これがまた。
 この映画。






面白いです。






どうせうんこと馬鹿にしましたが。

きっとパチモンだとタカを括っていましたが。






地味ですが、真面目にきちんと作ってある良い映画です。






こういう事されると困るんです。






 何でしょうこの出し抜かれた感。
 不良学校だと思って舐めていたらピッチャーが阿仁屋だったみたいな。
 全面的に敗北を認め、謝罪させていただきます。
 今日の豪腕は謝ってばっかです。

 黒板に描かれた人物たちの無機質なクロッキー。それをカメラが静かにパンしながら映画は始まります。
 やがて登場する主人公。
 白人のくせにヒゲも生えてません。
 別段かっこいい訳では無いし、さりとて不細工でも無い。
 デブでも無ければガリでも無く、小橋みたいなマッチョでも無い。

 こういう奴出されると困るんです。

 豪腕はりーは工業系ですが、1本1本のネジまで区別は付きません。
 どこかで見たような、どこにでもいそうな顔。
 地味です。
 ひたすら地味なんです。






ジミーと呼びます。





 映画は、このジミーが日常からゆっくりと裏切られるシーンを丹念に描き出します。
 無機質な安アパート。
 不思議な住民たち。
 色彩を失った日常。
 そこで不意に彩られる「赤」。

 ある人物の死によって、この物語はわずかに、でも確実に動き出すのです。
 それはあくまで静かなまま。
 ショッキングなはずの「死」のシーンが、それまで構築されたモノトーンと比べて明らかに異質な鮮やかさをもって描かれます。
 私はここで強烈に感じました。

 その感情は「安心」です。

 安心といってもやっぱりうんこ映画だったという安心ではありません。
 そうではないのです。
 鮮明な血の「赤」によって日常に戻れたから。
 そういう意味での安心だったのです。
 お分かりになりますか。

 それまで丹念に、いやごく普通にシーンを重ねるだけで徹底的に刷り込まれてしまった無機質な空間。
 私の目に映っているのはどこにでもある安アパートであり、ごみごみした都会のはずれの町であり、そして日々を生きる普通の人々だったはずです。
 それらはすべて生き生きとしていて当然なはずのモノたちです。
 それがカメラという魔法のフィルターを通して見ると、まるで色彩を忘れてしまうほどの陰鬱なモノトーンに変わるのです。

 それはなぜでしょう?
 それは。
 ごくわずかに生じた狂気が常に画面を薄く覆っているからです。



 これは凄い事ですよ。



 我々は、その狂気(と気付けないほど)の薄い膜を通してしか、ジミーに触れる事はできないのです。
 ジミーの行く末を不安な気持ちで見守るしかない。
 映画なんだから当然ですけど、わざわざそれを思い出してしまうという点を言いたいのです。
 どこかがおかしい。
 何かが狂っている。
 しかしそれは誰にも分からないままゆっくりと進んで行く。
 そんな感じなのです。

 その不安感、緊張感は、死によって破られます。

 血が膜を突き破るのです。

 そこで見せられた鮮烈な「赤」の中に、少なくとも私はずっと隠され続けてきた日常が戻ってきたのを感じました。
 逆説的です。
 日常が日常で無くなって行き、「死」が日常として迎えられる。
 こんな不思議な感覚が得られます。






なんでこんなに褒めてるんでしょう。






悔しい。でも感じちゃう。





 今会社ですが、これ見られたら死ぬしか無いですな。
 私の日常にも死が迫って参りました。

 もちろんこの映画にも欠点はあります。
 最大の欠点はタイトルですけど、言葉足らずの脚本にも言えるかもしれません。
 しかしそれはそれで悪くない。
 あえて必要最小限の言葉にする事によって、謎めいた世界の構築に役立っていると考えられなくもありません。

 そしてやはり人物でしょうか。
 ジミーの姉とか出てくるんですけど、別にさりとて美人というわけではありませんが(作中では不相応に容姿を褒められてますが)、これが実に弟思いの良い姉です。
 姉というだけで何でも許してしまう私ではありますけども、そういうのとはちょっと違うんですよ。

 単に普通に地味に良い人です。

 この「普通」という点が、後になって重要な意味を持つようになります。
 思えば上司のメガネ男も型通りの役割だし、ジミーの父親や黒人刑事もそうでした。
 だけど確かに何か不安を感じる。
 普通に見える人々こそ日常という回転木馬を構築する重要なパーツであり、あくまでその1つに過ぎないと解釈する事は可能です。

 しかし気になる。
 どうしても気になってしまうのです。
 それは。



 彼らは本当に、見たままの存在なのか?



 すなわち。
 主役のジミーを始め、全部普通の人のはずが。
 実際には違うのではないか。みんな裏側に、何かを隠し持っているのではないか。そういう緊張感があるわけですよ。

 そしてその普通の人々の微妙に普通でない部分が非常に良く描かれています。

 それらが次第に狂い始め、やがて大きな何かが見えてきます。
 そのために。
 そのためにこそ、ジミーはごく普通の人間が演じねばならなかったという理由があるのでしょう。



 悔しい。でも(略)



 先ほど書いたように、この映画はホラーというよりサイコサスペンスですね。
 それも派手な映像が一切無い辺り、昔懐かしのスリラー映画の一端を担う存在であるかもしれません。
 地味すぎて眠くなります。
 それでも面白いと思えるならば、この作品と付き合う価値があるでしょう。
 私が言いたいのはここです。



外見に騙されてはいけません。






そして偏見を無くしましょう。






そうやって観る事こそ重要なんですよ。







プロレスは。





心よりお詫び申し上げます。





 どうでもいいですけどこのジミー、実はあの傑作『E.T.』にも出演してたらしいですよ。
 凄いですね。
 あの愛らしかったエリオット少年がこんなに劣化しちゃって。
 E.T.も星の彼方で嘆いている事でしょう。
 月日というのは本当に残酷なんですね。

 ちなみに黒人刑事のビル・デューク。
 シュワちゃん映画『プレデター』の黒人兵士さんです。
 あの時はプレデターに派手にやられましたけど、今回はジミーを相手にひたすら地味〜に迫ります。

 いや話を戻しましょうか。
 さっきから雰囲気を語るばかりで中身にさっぱり触れないという実にうちのレビューらしい展開に陥っております。
 それじゃいけません。
 そろそろジミー以外の人間にも触れてみましょうか。

 重要な人物に、ジミーの上の階に越して来た人物がいます。
 やや不気味です。
 不気味さで言うと急に笑い出すつぶやきシローくらい不気味です。
 「やや」じゃ済まんわ。
 でも顔は全然似ていません。ヨーロッパ系です。ご安心下さい。

 でもこいつはシローと呼びます。

 こいつがこの物語のキーマンになります。

 カギ十字のグッズを持ったナイフ好きという、まるで中二病のエセオタクみたいな彼。
 もちろん単なるオタクじゃありません。
 嫌なオタクです。
 それでありながら、やはりジミーとは生活の階層が違うだけで「ちょっと変わった普通の人」に過ぎないんですよ。
 この映画の中ではね。

 どうしてそう見えるのか?
 その理由はもちろん、ほとんどの登場人物が少しずつ変だからでしょう。
 木を隠すには森の中。
 デビルアローは超音波。
 つぶやきシローが一般人の中にいたら目立ちますけど、芸人の中にいたら大して目立たないのと一緒です。









ごめん目立つわ。





 ファンの方には大変失礼な事を申しております。
 つぶやきシローの熱狂的なファンってまったく想像できないんですけど、お気に触りましたら拍手ボタンにて苦情をお受けいたします。

 そんなこんなで物語は進み、何だか分からないままに世界はどんどんレスラー高山の顔みたいに歪んで行きます。
 誰が殺したのか?
 俺は大丈夫なのか!?
 そして舞台はクライマックス、シローを追って駅へと走るジミーに至ります。



 そういうわけでこの映画。




わけが分かりません。






説明という行為を拒否したその行く末に広がる虚無感。






いたずらに不安を煽るだけ煽って
唐突に物語は終了します。







そこに残るのは不条理さという名の苦い味。






私はこの味を知っています。






そう。それは。







オナニーです。

                 ___
               / ⌒  ⌒\
              / (○)  (○) \    
            /   ///(__人__)/// \  
            |   u.   `Y⌒y'´     |  
             \      ゛ー ′  ,/   
              /      ー‐    ィ





 そういう事なのですよ。
 それも、わくわくしながら行うオナニーではなくてやる事が無いからとりあえずやったオナニーなんです。
 分かります?
 さし当たって適当な快感はあるんですけど、なんか疲れた。なんか罪悪感。
 後味のあんまり良くないオナニー後。


 これはそういう作品です。


 すっきりとした何かを求めても裏切られます。
 劇中ジミーが裏切られ続けたように、我々もまた裏切られるのです。
 この作品は確かに面白い。
 面白いけどつまらない映画であると言えましょう。

 劇中のジミーは何度も悪夢から目を覚まします。
 悪夢と言っても内容を克明に描写するのではなく、あくまで雰囲気だけで「悪夢だった」と観客に気付かせるという手法を用いています。
 だから地味です。
 数えてませんが、6、7回くらいそういうシーンがありました。

 むさ苦しい男の寝起きを6回も7回も見せられるわけです。

 だから退屈だし、途中で飽きてきたりもします。
 だからこの作品はつまらないんです。
 それでもなお、何かがあるような気がして最後まで観てしまうのです。
 そういう意味で、どこか義務のようなオナニーに似ている気がしました。
 そういう意味でこの作品は面白いんです。

 そして結局、最後は我々の手に委ねられます。
 この映画は問題に対する解答を持ち得ません。
 突如としてぶった切られます。そこには余韻も後日談も無く、ただジミーの人生と共に急に消えてしまうのです。



 そこでようやく、我々は気付くのでしょう。






ジミーとは一体
誰だったのか?








 この映画は、まさにそこを言いたかったのではないでしょうか。
 それとも、これは私の考えすぎですか?
 ではその考えが正しいか間違っているか、一体どうすれば確かめられるのですか?



あなたは誰ですか?



あなたはあなたですか?



あなたがあなた自身である証拠はありますか?



あなたがあなた自身である事を証明できますか?



あなたが常にあなた自身であると言い切れますか?




本当に?






 …という事で、今回はちょっと毛色の変わったレビューにしてみました。
 はっきり言ってこの映画をこんなに持ち上げているレビューは世界中探してもここだけだと思います。

 結局ジミーが悩むだけの映画だし。

 消化不良もいいところだし。

 母親の思い出とか何の意味も無いし。

 ナチスも聖書も単なる小道具。

 圧倒的に説明不足で、気付いたら監督のオナニーに終わってます。

 されども。
 時にはこういう、雰囲気だけで引っ張った映画というのも良いもんですよ。
 絶対に期待して観たら駄目です。
 お金を払って買ったり借りたりなんて論外。動画サイトに転がってたら観てみる程度で上等だと思います。
 それでもたぶん多くの人が途中で寝るでしょう。
 そんな映画です。

 そして、なぜこの映画がこんなにも退屈なのかを考えてみましょう。
 我々は毎日寝たり起きたりしています。ええ、そんなの当たり前です。
 時には悪い夢に起こされる事もあるでしょう。言い知れぬ不安に押し潰されそうになる事もあるでしょう。
 それを他人が見ていて楽しいと感じるでしょうか?
 そういう事だと思うのですよ。



 最後に。
 この映画を『悪魔の棲む部屋』などという、中国版のディズニーランドみたいなタイトルにしちゃったスタッフには同情します。
 いつもなら怒る所ですが、今回は仕方が無い。
 こうでもして釣らないと誰も観てくれなかったでしょう。
 見事に私はその釣り針に引っかかり、レビューまで書かされてしまいました。
 何だかとてもごめんなさい(なぜ謝る)。

 出だしと終わりでぜんぜん違う文章になりましたね。
 部屋には悪魔なんか棲んでませんでしたけど、いつか現れるかもしれない『悪魔の棲む小屋』とか『悪魔の棲む土間』のために今から体力を蓄えておこうかと思います。










『FEVER』1999:イギリス

製作総指揮:グラハム・ブラッドストリート、コニー・トラベル
製作:クリスチャン・マーティン
監督・脚本:アレックス・ウィンター
撮影:ジョー・デサルヴォ
視覚効果:ロブ・ベネヴィデス

出演:ヘンリー・トーマス(ジミー)
    テリー・ハッチャー(シロー)
    ビル・デューク(黒人刑事)




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