『ひとくち感想』

(第4回)




 いつも当サイトみたいなカラメ手のサイトをご覧いただき、まことにありがとうございます。
 最近のうちのレビューはどうもいかにB級うんこ映画を発見するかのような風情がありますが、別に私は普段、B級うんこ映画ばっかり観ている訳ではないのです。
 一応新作とか名作・佳作も観てるんですよ本当に。
 うんこを知るにはまず、偉大な映画を知る所から始まるものなのです。
 本当ですよ。

 ※今回、わりと真面目に書きます。

 そういうわけで。
 今回のテーマはこれです。



「マイナーだけど佳作」






 けっこう面白いのに周りは知らない。
 個人的には好き。
 みんなタイトルだけは知ってるけど実際観た人は少ない。
 こうした世に溢れる名作とB級の狭間、例えるならば映画界の7番バッターを特集したいと思います。

 そういうわけで行きましょう。
 誰もが知ってるけど実際に乗った事のある人は非常に少ないという、今回のテーマにぴったんこカンカンな素材を使った異色アクション映画です。






『ブルーサンダー』







 異色の戦闘ヘリコプターアクションです。

 来ましたね。
 ヘリコプターモノの歴史で言えば、72年の『爆発!ジェットヘリ500』を父に持ち、そして90年の『アパッチ』を息子(娘?)に持つ。
 そんな絶妙な立ち位置にあると言えましょう。
 ちなみに83年の映画です。

 このヘリコプターという魅力的なメカニックは、アクション映画に限らず様々な映画で重要な脇役として登場します。
 ベトナム戦争における兵員輸送。
 絶望的な状況で、最後にやって来る救いの天使。
 特に後者はホラーでもおなじみですね。

 なぜおなじみなのか。
 それはもちろん、ヘリコプターでないと不可能なシーンだからです。
 飛行機とか車じゃ駄目なんですよ。
 飛行機では長〜い滑走路が必要だし、たかが映画の撮影でシーハリアーをイギリス軍から借りるわけにも行きません。
 車はもっと駄目です。
 目線がキャラクターと一緒だからです。
 車じゃ大空を手に入れられないんです。
 大空を飛び、そして場所を選ばないヘリコプターこそ救いの天使には相応しいのです。

 そして豪腕は発見しました。
 ヘリコプターの、映画としての最大の持ち味を。
 それはこれです。



 ゆっくりと近付いて来る。


         _,,....,,_  _人人人人人人人人人人人人人人人_
      -''":::::::::::::`''>   ゆっくりちかづいてね!!!   <
      ヽ::::::::::::::::::::: ̄^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^ ̄
       |::::::;ノ´ ̄\:::::::::::\_,. -‐ァ     __   _____   ______
       |::::ノ   ヽ、ヽr-r'"´  (.__    ,´ _,, '-´ ̄ ̄`-ゝ 、_ イ、
      _,.!イ_  _,.ヘーァ'二ハ二ヽ、へ,_7   'r ´          ヽ、ン、
      ::::::rー''7コ-‐'"´    ;  ', `ヽ/`7 ,'==─-      -─==', i
      r-'ァ'"´/  /! ハ  ハ  !  iヾ_ノ i イ iゝ、イ人レ/_ルヽイ i |
      !イ´ ,' | /__,.!/ V 、!__ハ  ,' ,ゝ レリイi (ヒ_]     ヒ_ン ).| .|、i .||
      `!  !/レi' (ヒ_]     ヒ_ン レ'i ノ   !Y!""  ,___,   "" 「 !ノ i |
      ,'  ノ   !'"    ,___,  "' i .レ'    L.',.   ヽ _ン    L」 ノ| .|
       (  ,ハ    ヽ _ン   人!      | ||ヽ、       ,イ| ||イ| /
      ,.ヘ,)、  )>,、 _____, ,.イ  ハ    レ ル` ー--─ ´ルレ レ´




 絵的には、おそらくこれが一番重要な要素だと思うのですよ。
 そこらの飛行機には絶対に真似できません。
 同じ動きが可能なモノに飛行船やら気球がありますが、奴らは静かに近付くから駄目なんです。
 ヘリコプターはモロに機械的な人工物を感じさせ、そして爆音を響かせながら飛んで来ます。
 だから姿が見えなくてもヤリ手なんです。

 第一、飛行船とか気球って弱そうじゃないですか。
 ゾンビに捕まったら破けて落ちちゃいそうじゃないですか。
 その点、ヘリなら安心です。
 回転するローターでゾンビをミンチにできるのです。

 だからこそ、豪腕はりーは断言しましょう。





ヘリは乗り物にあらず。







男の武器だ。


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    ヽ、:::::::::::::_/::::::::::::/   /        ⌒ ヽ¬−'´
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         /     ヽ     l::::::ノ,,,,,,---'''''''"""" ヽヽ   ゛゛:ヽ.
        l       _          "  ・       . \::.    丿
          l    ̄|                ..........::::::::::::彡''ヘ::::....ノ
          ヽ    ヽ      ::::::::::;;;;;,,---""" ̄   ^``  
           \    \、          /  /
            >. .、_、 ヽ.ー-....____/  /
            ヽ: : : : :ヽ  ヽ ̄ヽ丶//.イ
               ヽ、: :__ヽ `ー- ´/: : : イ
             l  ̄: : : : : 7フ 7: : :`´: :l





 まあ本当はローターでバンバン切り裂くなんて豆腐の踏み台なみに無理っぽいんですけどね。
 そこは突っ込んじゃいけませんから。
 ビック・モローの遺族に訴訟を起こされますから。

 こんなに素晴らしいヘリなのに、なぜか映画界では「便利な脇役」にすぎない。
 どうしてでしょうね?
 もっと注目されてもいいような気がするんですけども。

 速度の問題ですか?
 確かにヘリは音速も超えられません(エアウルフ以外は)。
 戦闘力の問題ですか?
 戦車クラスには圧勝できますけど、ヘリは歩兵の持ってるSAMで簡単に落とされちゃうんですよね。
 たかが歩兵の手持ち武器で落とされるのは痛い。
 よってヘリとはたぶん。

 速度も強さも中途半端なのでしょう。

 そして強力なライバルに「飛行機」がいます。
 はっきり言って相手になりません。
 奴は軽々と音速を超え、武装も強力で、その気になれば100人以上を平気で運んでしまうのです。
 えべっさんがアントニオ猪木をライバル呼ばわりするようなもんです。
 前者はプロレスファンでないと分からない名前だと思いますが、後者を知らない日本人はいないでしょう。そういう事なんです。






冗談じゃありません。







私はヘリが好きだ。











幼い頃、奴の事をヘボコチターと呼んでいた昔から。







私はヘリが好きだ。











奴の活躍をもっと観てみたい。



絶対に主役を張れる器なんだ。







でも高い所は苦手だ。



        /\___/\
      / /    ヽ ::: \
      | (●), 、(●)、 |
      |  ,,ノ(、_, )ヽ、,,   |
      |   ,;‐=‐ヽ   .:::::|
      \  `ニニ´  .:::/      NO THANK YOU
      /`ー‐--‐‐―´´\
             .n:n    nn
            nf|||    | | |^!n
            f|.| | ∩  ∩|..| |.|
            |: ::  ! }  {! ::: :|
            ヽ  ,イ   ヽ  :イ





 そんな私の子供みたいなワガママを叶えてくれるのが、今回ご紹介する『ブルーサンダー』です。
 やっと繋がりました。
 そういうわけで、いよいよストーリーをご紹介いたしましょう。



味方は最新鋭ジェット・ヘリ。

男は一人巨悪に立ち向かう。


ベトナム戦争より帰還した航空警察ヘリ部隊所属のフランクは、

偶然遭遇した事件を追ううちに

政府高官がらみの巨大な陰謀に突き当たる。



ロス・オリンピック警備のため開発された

最新鋭のジェット・ヘリをめぐって

ロス上空で一大空中戦が繰り広げられる

アクション・サスペンス。



中でもビルの谷間をぬって行われるクライマックスの空中戦は

度肝を抜く迫力である。








…男らしい。





 まず、たった一人で巨悪と立ち向かうというその姿勢。
 映画黎明期、いやさ冒険アクションの初期から綿々と続く黄金パターンであります。
 だって主役は名優ロイ・シャイダーですから、そりゃもう『ジョーズ』の昔からず〜っと一人で戦ってきたわけですよ。

 そして何よりも素晴らしいのがここ。






市街戦なんですよ。





漢字が違いますよ。







そう。市街戦こそ。







ヘリという兵器の潜在能力を
最も効果的に発揮できる舞台です。





 考えてみれば、今までヘリの戦いの舞台は常に戦場でした。
 ベトナムのジャングルだったり砂漠や郊外だったりしたわけです。
 それがついに市街地へとやって来たのです。
 しかもそれがメインです。
 まあ昔からアクション映画の味付けとして、一応市街地でもヘリコプター戦は行われてきたんですけど(007シリーズとか)。



 今度こそ本当の市街戦メインです。

 そして今回こそ主役はヘリです。




 長きに渡って脇役しかさせてもらえなかった男が、今こそ真の主役の舞台に立つ。
 どうですか。ワクワクしてきませんか。

 さらに今回のこの『ブルーサンダー』は。
 軍事ミステリとしても出色の出来なのです。
 ミステリというかサスペンス要素にかなりの力を注いでいます。
 敵は巨大な軍需産業、政府高官、そして軍の上層部。
 これに単身挑む我らがロイ・シャイダー、さすが名前が宇宙刑事ですね。

 これだけ詰め込んでもまだマイナーなのが悲しい所ですが、この映画の素晴らしい点はヘリが主役で市街戦だけではありません。
 例えばこれ。






ヘリがカッコいい。









それ以外に何が必要か。





 この直線的なフォルム、闇に溶け込むブラックの機体。
 曲線なんざ犬に食わせろと言わんばかりの無骨さが良いんですよ。
 まるで空飛ぶ鉄の塊ですね。
 豪腕は思うのですが、兵器というのは直線であるべきなんです。
 ゴツくて硬くてデカくて重いのが兵器です。
 これが「武器」になると流麗な曲線も良いかな〜と思うんですけど、こと兵器に至っては巨大な鉄の塊である事が極めて大きな条件です。
 完全に個人的な意見ですが、同意された方もきっと多いでしょう。

 そして素晴らしいのは造形だけじゃないんです。

 カッコ良く見せる演出が光っているのです。

 この映画を観た多くの方はご納得いただけるでしょう。



 朝日の中から現れる黒い影。

 橋の下からヌッと出てくる。

 夜の闇に潜む空の死神。




 そう、このブルーサンダーという機体は「爆音を立てて襲いかかる」というモードに加えて「静かに忍び寄る」というモードまで備えています。
 サイレント飛行ですね。
 ことヘリコプターってのはエンジン音に加えてローターの回転ノイズが入りますから、消音装置なんてモノは自律型オナホールと同程度に実現不可能なんですけどね。
 まあ、そこは映画だし目をつぶりましょう。

 このサイレント飛行がベラボーに強い。
 当たり前ですけどね。
 これのおかげで超・接近するまで気付かれないという、今までのヘリコプターアクションでは不可能だった見せ場を可能にしているのです。

 ここがこの映画のキモになりますよ。
 20ミリ機関砲を備えた空飛ぶ田代まさしになるわけですから。
 テスト飛行中に偶然遭遇した政府の陰謀。ここから物語も加速して行くのです。



 そしてこの映画の良かった所はまだあります。
 それは伏線の張り方と昇華の仕方です。
 普通、伏線は「消化」と書きますけど、私はあくまで「昇華」という表現にこだわりたいと思います。

 ちょっと書いてみま昇華。


・腕時計。

・JAFO。

・議員の暗殺未遂(メインの話)。

・ビッグ・ブラザー。

・ビデオテープの消去法。

・ベトナムの記憶。

・宙返り。

・お母さんの大暴走。








 これらすべてが違和感なく昇華されているので、アクション以外でもきちんと楽しめるのは良いですね。
 特にお母さん役のキャンディ・クラークは良いです。
 アホのようなカッ飛び母ちゃんです。
 別に大して美人でも何でも無いんですけど、その頑張りは素直に応援せざるを得ないと思います。
 ほんの一瞬だけパンチラもありますし。
 グラップラー刃牙なみの動体視力の方だけお楽しみ下さい。何が楽しいのか知りませんけど。

 そう、登場人物もね。
 主役のロイ・シャイダーは当然として、その相棒役のダニエル・スターンも良い味出してます。
 間抜けで憎めない馬鹿な子ですけど私は泣きそうになりましたよ。
 他にもスペイン系の陽気な同僚がいたり(重要な助言をくれます)、敵役では『カリギュラ』で有名なマルコム・マクダウェルですからね。
 ウォーレン・ビーティも出てたし、何気にけっこう凄いキャストだったんですよ。

 ただし、欠点も当然あります。
 特にクライマックスの空中戦なんか、思い入れの無い方にとっては若干冗長に感じるかもしれません。
 その理由は簡単で、ヘリコプターの動きがあまりに立体的すぎて位置関係を把握できないからではないかと思います。



 ヘリ本気出しすぎです。



 右に左に上に下に自在に動く、まるでフィットちゃんのランドセルのようなアクロバット飛行。
 それを郊外ではなく障害物だらけの街中でやっちゃうというね。
 戦う相手も狙撃隊を積んだ警察ヘリや軍用の攻撃ヘリ、果ては空軍のF−16戦闘機×2機まで出やがります。



 勝てるわけがありません。






でも勝つ。
                                      ,.へ
       ___                             ム  i
      「 ヒ_i〉                            ゝ 〈
      ト ノ                           iニ(()
      i  {              ____           |  ヽ
      i  i           /__,  , ‐-\           i   }
      |   i         /(●)   ( ● )\       {、  λ
      ト−┤.      /    (__人__)    \    ,ノ  ̄ ,!
      i   ゝ、_     |     ´ ̄`       | ,. '´ハ   ,!
     . ヽ、    `` 、,__\              /" \  ヽ/
        \ノ ノ   ハ ̄r/:::r―--―/::7   ノ    /
            ヽ.      ヽ::〈; . '::. :' |::/   /   ,. "
             `ー 、    \ヽ::. ;:::|/     r'"
          / ̄二二二二二二二二二二二二二二二二ヽ
          | 答 |     ヘ リ の 勝 ち       │|
          \_二二二二二二二二二二二二二二二二ノ



長い歴史において、ヘリが戦闘機にガチで勝つ
という大変貴重な映像がそこにありました。





 正直、ちょっと無理あるんじゃない的な突っ込みはありますよ。
 ですけどシーンに説得力があるんです。
 須藤元気だってバタービーン相手に110キロの体重差をものともせずにヒールホールドで勝ってるんですよ。
 ましてや戦場はビルの乱立する市街地です。
 こういう場合は上下に動ける方が有利な事もあるんです。
 地の利を生かした勝利と言えましょう。

 かつて「フォークランド紛争」という戦いがありました。
 アルゼンチン軍の主力戦闘機はミラージュ、対するイギリス軍はシーハリアーでした。
 結果はどうだったでしょう?
 下馬評では高性能との噂だったアルゼンチン軍のミラージュを、シーハリアーが0対23という圧倒的なスコアで叩き潰したのが真相です。
 理由は色々あると思います。
 その中で、自在に上下に動ける変態飛行機シーハリアーの特異な面が貢献したのかもしれません。
 上下運動ってのは強いんですね。
 だからたぶん、自宅で乗馬運動やってるババアも相当強いですよ。
 捕まったら命は無いと思います。

 何の話をしてるんでしょう(笑)。
 ひとくち感想のくせにやたら気合の入ったレビューですけど、その辺は思い入れの問題です。
 腐女子の皆さんが、エッフェル塔と東京タワーでどっちが攻めでどっちが受けかを語ってるようなもんだと思ってください。

 言える事はただ一つ。



 ヘリは男の武器だ。


 兵器は鉄の塊だ。







 以上、しっかり憶えておくように。
 忘れたら上下運動だから。

 しかし上の方で「飛行船や気球は静かだから駄目」とか書いてるくせに、サイレントモードを絶賛しているという意味不明な文章になってしまっています。
 ちょっとトイレで上下運動してきます。






 それでは続いて行きましょう。
 今度の映画はまた古い所からスミマセン的なこの作品。
 天下のマイケル・クライトン原作です。






『アンドロメダ・・・』







 クライトンと言えばこれ。



 『ジュラシック・パーク』です。



 もちろん違います。

 『大列車強盗』です。



 そうではなく、『コーマ』です。いやいやここは『ディスクロージャー』で行こうと思ったけどやっぱり『ライジング・サン』だったりとか『スフィア』だったりもしたりして。



 多作すぎるだろクライトン。



 こんばんは。
 今しがたクライトンを変換したら暗いトンとか出て悶絶した豪腕はりーです。
 それはともかく映画化された作品の多さではスティーブン・キングの次くらいに来るであろうマイケル・クライトンの、これが映画化第1作となる作品です。
 皆さんも一つくらいはご覧になってるんじゃないでしょうか。

 クライトンの小説はまず、日本におけるラノベなみに映像化がしやすいという武器があると思います。
 その点例えばトム・クランシーなんかにも通じる所があるのですが、この人の場合は映像化するとお金がかかりすぎるという弱点があります。
 よってホラー畑のキング、サスペンス畑のアイリッシュなどと並び、数多くの映画化が成されているのでしょう。

 そのクライトンの処女映画化。






地味です。







これ以上地味な映画は
数えるほどしか無い。








そう言い切れるだけの地味さがあります。







敵は睡魔です。







 フランス映画なんかに雰囲気、というか「間の重さ」が似ているような気がします。
 とにかくひたすら地味なんです。
 派手なアクションもショッキングな映像もありません。
 まあ死体の様子とか死刑台のハシゴ上りとか適当にあるわけですが、それでも派手というには程遠い。
 どこまでも地味な映画です。






ジミーと呼びます。






 しかし豪腕、皆さんにぜひ伝えたい事があります。

 地味だからって面白くないわけではないのですよ。
 昨今のスピーディーな映像に慣れ親しんでしまった目には少々辛く映るかもしれませんが、この地味さこそがこの映画の持ち味なんです。
 ゆ〜っくりと変わって行く世界。
 正体の掴めない「敵」の姿。
 丹念に映像を重ねる事によって、そうした緊張感をうまいこと演出していると思います。

 その感覚を紐解く前に。
 ひとまずストーリーからご紹介いたしましょう。



【地上に蔓延する戦慄の宇宙病原体】

【静かに忍び寄る、人類終焉の恐怖】




アメリカ中西部の小さな町に人工衛星が墜落。

機体に付着した未知のウイルスが原因で、

住人は生まれたばかりの赤ん坊と、

アル中の老人を除いて全滅。



遺体の血液は全て粉末状に変化していた。

細菌汚染の拡大を恐れた軍部は、

科学者の中から各分野のスペシャリストを召集。

ストーン博士をリーダーとする研究班を組織して、

砂漠の地下施設へと送り込むが・・・。





 ほ〜ら地味に怖い。



 だって人工衛星が墜落したのは、そんな計画とは何の関係も無い小さな村なんですよ。
 それが一瞬でほぼ全滅してしまうんですよ。
 大人も子供も関係なく、道端といわず家の中といわず、そこら中でゴロゴロ死んでるんです。
 何しろ血液が粉末状になるってのが地味に怖い。





すごい血液サラサラ効果です。






 くだらないサプリメントとかに踊らされてる奴は、まずブッチャーさんに謝るべきです(意味不明)。
 お前はこうなりたいのかと。
 油分が足りないんでしょうか。
 だったらアメリカ人が死ぬのも変な話です(危険な発言)。

 この…死に絶えた町の描写が、ですね。
 「死」に時間差があった、というのがたまらなく悲しい映像です。
 ある者はすぐに息絶え。
 またある者は、絶望してみずから死を選び。
 わずかな時間で、町全体が絶望の淵に投げ込まれたのが分かってしまうのですよ。

 その引き金となった描写も凄い。
 人工衛星を回収に行った車と、軍部の司令室とで無線が繋がっているのですが。
 何やら様子がおかしい。
 町が静まり返っている。
 そして死体…。
 不意にノイズが入り、車とは一切の連絡が取れなくなってしまう。


 それら全部は現地の画像も無く、ただひたすら音声のみで伝えられるのです。





 古典的な手法ですけど、これはこれでけっこう来ますよ。
 「目に見えない敵」というのを暗示する良いシーンです。

 そして、死に絶えた町に到着した科学者二人。
 彼らを運んだヘリコプターはとっとと上空に逃げました。
 もし何かあったら、ヘリコプターごと爆破・焼却しなければなりません。

 まず目に入るのは、大量の鳥の死骸です。
 きっと死体にたかって感染したんだなあ…と思うと恐ろしい描写ですね。

 ただ静かに鳥の死骸を映すだけで、強烈な「死」を感じさせるのですよ。

 敵はその存在を一切悟られないまま、一つの町を死のベールで覆ってしまったのです。
 動いているのは防護服の科学者二人だけ。
 私だったらこの時点で帰って風呂に入りますね。

 宇宙規模のエンガチョですから。



 しかし。
 動いているのは、彼らだけではなかった・・・。






ここで来ますよ。







その正体は。








アチョー!!!!



嘘です。







遠くから、かすかに聞こえて来るんです。







赤ん坊の泣き声が。







そして、その正体は。







オギャー!!!!



嘘です。





 この映画にブルースリーは含まれておりません。

 もちろんゾンビや他のモンスターも違います。
 人間です。
 人間の赤ん坊が泣き叫んでいるのです。

 「生存者だ!」
 色めき立つ科学者二人。
 そう。この町にはまだ生存者が残っていました。
 生まれたての赤ん坊とアル中の老人です。
 なぜ、この二人だけが生き残っていたのか? この謎は次第に明らかにされていきます。

 普通だったらここでゾンビの一体も出すでしょうし、普通ここから物語も加速するでしょう。

 ぜんぜん加速しません。

 科学者たちは規則に則り、体の消毒やら動物実験やらを淡々と行うだけなのです。


 地味すぎて目まいがします。


 科学者チームには女性もいますがサバとサンマのどっちを買うか悩んでいる主婦のように見えます。
 早い話がオバサンです。
 色気もクソもへったくれもありません。
 なんとリアリティに富んだ映画なのでしょう。
 実に現実っぽい映像が我々の心を串刺しにします。

 おっぱいはおろかパンチラでさえ絶望的です。

 この時点で私のスケベ心は未知のウイルスにやられています。
 最近のハリウッド映画なら、少なくともチームの一人はアンジェリーナ・ジョリー級の巨乳だったことでしょう。
 そしてB級映画なら、まず間違いなくおっぱい係の姉ちゃんでしょう。

 だから豪腕は思います。




美人はウイルス研究しようぜ。






というかジョリーを出すべきです。



生まれてないけど。







だからジョリーは脱げと。


           /                  、
          /           zZZえ/イ  ヽ
         /          ,ィ イ    Y)ヽ  ヽ
         |        | |/__} |     リ  }   }
         ',       /!|´_)ノヽ、   /イ ソ/ ,'
           |    /レ' | | ゞぇアyj  /ィァチ//| /
        /|  ,.イ{イ | !/       (  Y //
        { /|  / |ヽ-ヽ!ソ       _, _y /  { {   体験人数は
       /  レ'  | |      、__,、イ, /   ヽヽ   4人だけよ♪
      /   y  | |  \    ヽ`ー- イ/     ノノ
     /     ノ  |    \   `ー‐'7'   ___
  _,.-――----ヽヽ、ノ      \__/ィz―<´    \
/         ', ヽ、  ヾ    | ー‐-ヽ  \     \
           |  | `ー‐  ヽ、` /∠ ヽ  \_     \
           /  |    ____,.---'´イ__二ヽ、_ ヽ



逆スライド3段論法。





 そうすりゃ乳も拝めたでしょう。
 すみません。このウイルスは脳に転移するみたいです。



 阿呆な話はどーでもいいんですが。

 中盤以降は、基本的に一歩も施設の外に出ないで話が進みます。
 ネズミやサルを使った実験とか、人工衛星の痕跡を調べたりとか、どこから見てもNHKスペシャルみたいな内容で引っ張るのです。

 これはこれで楽しめます。というか怖いです。
 病院や化学実験に恐怖を覚える方ならタマラナイ映像です。
 それも、血まみれで怖がらせる最近のホラー風味ではありません。
 血なんか一滴も出ません。
 ただネズミが不意にピクピクしだすだけ。

 これがまた怖いんです。

 いわゆる無機質な怖さとでも言いましょうか。
 そうやって感性に来る映像、地味だからこそ訴えかける重みというのがあると私は思います。



 マイケル・クライトンのうまい所に、タイムリミットの設定が挙げられるでしょう。
 この作品も例外ではありませんよ。
 こういう特別級の地下研究所では、ウイルスの拡散を防ぐためにあらゆる方策が練られています。
 ぶっちゃけ核です。
 いざとなったら地下核爆発を起こし、すべてを溶融して後は知らん顔というアメリカ式の必殺技ですね。

 こいつらのせいでゴジラが生まれた事を思うと、この人たちは50年間何も学んでいないようです。



     関・係・ないから              γ⌒) ))  関係ないから
        ___(⌒ヽ             / ⊃__
       /⌒  ⌒⊂_ ヽヾ          〃/ / ⌒  ⌒\  
(⌒ヽ∩/( ⌒)  (⌒) |(⌒ヽ       γ⌒)( ⌒)  (⌒) \ ∩⌒) 
 ヽ  ノ| :::⌒(__人__)⌒ ::| ⊂ `、三  三 / _ノ :::⌒(__人__)⌒ 〃/ ノ
  \ \    )┬-|   / /> ) )) ( (  <|  |   |r┬(    / / ))
(( (⌒ )、 ヽ_ `ー‐' ,/ / / 三 ( \ ヽ \ _`ー‐'  /( ⌒)
  \ \ /                               / /




 そして、当然と言いますか。
 ウイルスの正体が分かった瞬間、まさにその時に核が起動を始めました。

 この映画は71年公開ですので、そういう意味ではサルマネとは言えません。
 しかしまるで歌舞伎のような様式美を感じますね。
 例えばホラー、アクション系では79年の『エイリアン』や、85年の『バタリアン』とか07年の『AVP2』なんかに引き継がれている手法です。

 新鮮味もクソもへったくれもありません。

 ありませんが、実はこのオチには2パターンあります。
 主役が辛くも脱出した後で爆発するか、主役もろとも爆発するかです。
 そしてもう1つのパターンも。
 この『アンドロメダ・・・』がどのパターンに当てはまるのか、それはぜひあなたの目で確かめてみてください。



 とは言うものの。
 主役は地味な上に神経質、ヒロインはおらずオバサンのみ、特にアクションも無く淡々と進むこの映画。

 だったらNHKでいいかな、という気がしなくも無いです。

 それでもこの作品は、B級でもうんこでもありません。
 地味なりに良い作品です。
 けれど本当は地味でも何でもなく、そもそもこの時代の映画ってのはこれが普通だったんじゃないかと。
 我々の方が急展開に慣れすぎちゃってるのではないでしょうか。

 そういうわけで。


 目に見えない「慣れ」という名のウイルスが一番怖いのではないかと。


 そう言えるかもしれませんね。
 無理やりですけども。

 クライトン作品は、ここから30年かけて『ジュラシック・パーク』に至りました。
 映画界はその間すっかりSFX化が進み、脚本もよりスピーディーに、登場人物はよりヒーローを求めるようになりました。
 これは果たして進化でしょうか。
 ちなみにその間、B級うんこ界はより下品に、より血生臭く、より低価格でより無名の役者で作られるようになっています。
 これが進化じゃないのは分かります。
 こうして裾野が広がる一方、大作志向もより先鋭化し、何よりファンの多様化を生み出していると思われます。

 そんな時こそ。
 そんな時だからこそ、時には振り返ってこんな映画も良いでしょう。





地味でもいい。



おっぱいが無くてもいい。







恐竜相手にカンフーで
戦ってもいい。








木でもいい。



ウキョキョキョキョ。







今は観たいものを観られる時代。







好きなものを好きなように観ていい時代。







だから面白いかどうかは私が決める。







でも地味。






 私はそんな『アンドロメダ・・・』が適当に好きです。
 レンタル屋さんで何も借りるものが無い時、眠れなくて困った時などにお奨めいたします。

 そういうわけで、ちょっと続けて真面目なレビューを書いてみました。
 これで真面目って言うんですからこの豪腕は。
 よって次回から、相当にハジケたレビューにてバランスを取りたく存じます。

 覚悟を完了しておいてください。



未曾有のうんこWaveが。





 あなたの股間を直撃する事でしょう。
 しばしお時間をいただきたい。
 正月に買っておいたマスクド・スーパーうんこが火を噴きますからね。
 では次回もここでお会いしましょう。







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