『フレディvsジェイソン』








まず『W☆ING』から始めましょう。

 え〜、何の事やら分からない方々(9割方そうでしょうけど)に、きちんとご説明いたします。

 まずWがレスリングの頭文字。
 INGは現在進行ですね。
 ☆は…ホシです。

 要するにインディー系のプロレス団体なんですけど。

 こんばんは。
 デスマッチを見ると貧血を起こす豪腕はりーです。

 ちなみにこの『W☆ING』という団体。
 旗揚げは1991年8月でした。
 それからたった半年間で1回目の崩壊を迎えるという、世間の認知度で言えば本田技研工業に対するほんだしかつお丸みたいな団体でした。



 な〜んでこんな枕を持ってきたかと申しますと、そもそもこの映画。
 『フレディvsジェイソン』ですが。

 とっくの昔に実現しているからなんですよ。

 今は亡き『W☆ING』の、外人所属選手たちを見てみましょう。






 ジェイソン・ザ・テリブル。
 フレディ・クルーガー。
 レザーフェイス。
 ザ・ブギーマン。
 クリプトキーパー。






無理やっちゅうねん!




 こんな悪夢のような連中が肉弾戦を繰り広げるわけです。

 普通に映画そのまんまの格好でリングに上がるのです。
 ノリは遊園地のアトラクションです。

 しかして行うは超過激なデスマッチ。

 ばんばん血が出ます。
 ごんごん火とか吹きます。
 ナイフでざくざく肉を刻むのはまだ序の口。


 まるでマグロの解体ショーみたいな光景がリング上で普通に見られる団体でした。

 アトラクション気分で子供なんか連れて行ったら、目線なしではテレビに出られない生活が待っています。
 それほどの超過激団体『W☆ING』。

 ポーゴが鎌を持ち出せば。

 松永が8メートルダイブし。

 フレディは奇声を上げての高笑い。

 そして死んだと思ったジェイソンむっくり立ち上がる。






せやから無理やっちゅうの!




ムリムリムリムリ。




 …プロレスの奥の深さを知る事ができる団体でありました。



 さて、いい加減映画の感想に移りましょう。

 かたや『エルム街の悪夢』。
 こなた『13日の金曜日』。

 B級ホラー界きっての2大スターが、ついに雌雄を決するわけですよ(W☆ING以外で)。

 まさかこの映画を本気でホラーだと思って観る方はいないでしょう。

 いや、そりゃもう怖いですよ。
 怖いというか、随所にビックラシーンが入ってますけど。

 ほら、あの感覚ですよ。
 「出るぞ、出るぞ…」と思わせといて。



いきなりドーン。



いかれすらー。




 いかレスラーこそ出ませんが、安心して心臓も動かせない映画である事は確かです。

 しかし。されど。

 この映画は、怖い怖いと震えながら観るような映画ではなく。

 『デビルマン対マジンガーZ』のように楽しむ事が重要です。

 では、ここでストーリーをご紹介しましょう。



フレディが人々の夢に侵入し殺戮を繰り返した惨劇からすでに10年。
現在、エルム街にあるフレディの古い屋敷に住む家族は、フレディの復活を怖れて夢を見ないよう細心の注意をしていた。
もう若者たちの中にフレディの存在を知る者はほとんどいなかった。
こんな状況はフレディにとってとても耐えられるものではない。
そんな時、フレディはもう一人の殺人鬼ジェイソンの存在を知る。
彼を利用する事で再び地獄から這い出てエルム街に恐怖をもたらす事ができると思いついたフレディは、さっそくジェイソンの夢に忍び込むのだったが…。






 ・・・・・・・・・・・・・・・・・。






 ヴァカですか?



 あの子供たちを震え上がらせた恐怖のフレディは、トルエン吸いすぎて脳が溶けたんじゃないでしょうか。

 ジェイソンを利用して恐怖をもたらす。

 もたらすのはお前じゃなくてジェイソンだ。

 要するにアレです。

 忘れられて寂しい中年のグチを映像化した物語のようです。

 赤提灯の焼き鳥屋で、日本酒片手にクダをまく姿を想像してしまいます。
 「…おじさんもなあ。昔はいっぱい殺したもんだよ、なあおい。み〜んな怖い怖いって、なあ。坊主、聞いてるか?」

 このまま行くとエルム街の人情物語になってしまいます。
 しかも復活の方法がひどい。

 人のフンドシで相撲を取る気マンマンです。

 常人なら恥ずかしくて口にもできないような事を、このおじさんは嬉々としてやっちゃいます。
 さすがは連続殺人鬼です。
 きっと、我々のような一般人には永久に理解できないからこそヒーローなのでしょう。

 という事で、この映画には一般人の皆さんも大勢出てきます。

 もちろん餌です。

 どんな状況でも一人で勝手にシャワーを浴びてしまう歌舞伎のような様式美が楽しめます。

 B級ホラーには絶対に必要な要素ですね。

 仰向けに寝てもまったく形の崩れない、どう考えても怪しいおっぱいを鑑賞できます。










 この方々も大変に頭が悪い。

 のっけから実に飛ばした設定がイカしてます。

 夢を見ないよう細心の注意ですよ。

 1富士2鷹3フレディですか?

 エルム街の住民になると、おそらく夢精もできないのでしょう。
 そっちの方がよほど怖いような気がします。



 え〜、序盤で激しくDVD購入の是非が問われる映画なんですが。
 話はさらに加速してしまいます。
 寂しき中年殺人鬼のおかげで、見事復活を遂げたジェイソンですが。

 なんせジェイソンですから。



言う事ぜんぜん聞かない聞かない。


 勝手にその辺の奴を端から殺して回ります。

 最初はチョ〜喜んじゃったフレディおじさん。



「これこそ求めていたものだ…」



ざんっ!



「ふっふっふ。いいぞ。どんどん殺せ…」



ざんっ!



「そろそろ俺も復活を…」



ざんっ!!



「あ、えーと…。君、もういいから…」



ざんっ!!!!



「ちょっ…。おま…」



ざんっ!!!!!!



「やめーいっ!!!」




 かくして2大怪獣サンダとガイラの闘いと相成るわけですが。

 子供の頃、デビルマンもマジンガーZも何だよ闘わないじゃんか、なんだか友達みたいじゃんJAROに電話するぞコラと思ったあなたには朗報です。

 バリバリガチにボコボコです。

 ここが、この映画最大の見所でしょう。
 私は快哉を叫びましたね。
 「これぞW☆ING魂だ」と。

 すっかりホラーじゃありません。
 怪獣同士のプロレスです。


 さっきまで実に頼りなかったフレディおじさんですが。
 逃げ惑う女の子を驚かす程度の、その辺の出来の悪い変態おやじにすぎなかった彼ですが。

 なにせ、ここは夢の中です。
 夢と言えばフレディのホームグラウンド。

 地の利を生かした驚異的な強さでジェイソンを圧倒します。

 今までの印象が180度回転しましたね。
 えっらい強い強い。
 念動まで使えるのは反則のような気もします。

 ついには、ジェイソンの弱点が「水である」というのを知ったフレディ。

 まるでジャミラを倒したウルトラマンばりに放水プレイの登場です。

 えーと、何と申しますか。

 ジェイソンの住み家は、クリスタルレイクなんですけどね。

 湖の底から平気で出てくるんですけどね。

 そんな小さな突っ込みなど、生き残ったパンピーの皆さんにとってはどうでも良いらしいです。
 この2大怪獣が夢の中で、迷惑なプロレスをしている最中。

 必死に車を走らせるパンピーの皆さん。

 寝てるジェイソンを乗せて走る皆さん。

 頭イカレてます。

 私なら放置します。
 少なくとも、盛大に火葬に付すと思うんですけど。

 果てしなくシュールな光景がそこにあります。

 なぜ、わざわざジェイソンを佐川急便してるのでしょうか?

 その理由はこれ。






「このままじゃジェイソン君が負けちゃうから、生まれ故郷に帰してあげよう」










駄目だこいつら。




 え〜…。何と申しますか。
 ここから再び怒涛の流血デスマッチでして。

 脚本は大変ぐにゃぐにゃなんですけど、暴れ狂う殺人鬼たちの公認凶器デスマッチを堪能されたい方は、濃厚な時間を過ごす事ができるかと存じます。
 特にオールドファンならニヤリとするシーンも随所にあります。

 ものすごいお金をかけたB級ホラー下地の流血アクション映画。

 そう割り切って観るのが正解でしょう。
 好きな方はそれなりに楽しめると思います。



 ちなみに、現実世界での結果はこちら。



1992年12月20日 W☆ING戸田大会

ルーザー・リーブタウン・デスマッチ
(敗者出場停止3ヶ月マッチ)



8分6秒



雪崩式ブルドッキングヘッドロック

○フレディ ×ジェイソン




 …敗れたジェイソンの、日本語による「サヨナラ…」が非常に印象的な試合でした。

 実はジェイソンいい奴。

 映画での結果はぜひあなたの目でご確認ください。




『FREDDY vs JASON』2003:米

監督:ロニー・ユー
製作:ショーン・S・カニンガム
製作総指揮:ロバート・シェイ/ダグラス・カーティス
脚本:マーク・スウィフト/ダミアン・シャノン
撮影:フレッド・マーフィー

出演:ロバート・イングランド(フレディ・クルーガー)
   ケン・カージンガー(ジェイソン・ボーヒーズ)
   モニカ・キーナ(おっぱい)






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