『Dear My Friend』








「男と女は、セックスが邪魔をして、本当の友達にはなれない」

こんばんは。
レビュー界のおすぎ、豪腕はりーです。

突然ですが、ロブ・ライナーという人をご存知でしょうか?

即答できたら、あなたはかなりの映画通です。
そうでない方も、この辺くらいは聞いた事があるんじゃないでしょうか。

「ア・フュー・グッドメン」

「ミザリー」


「スタンド・バイ・ミー」



こんばんは。
映画館では小森のおばちゃま並みに熟睡する豪腕はりーです。

冒頭のセリフは、ロブ・ライナー監督が1989年にゴールデングローブ賞を取った作品、「恋人たちの予感」からの引用です。

調子に乗ってもうひとつ引用しましょうか。

「男と女の間に恋愛は付き物だし、友情だって成立するわ。でもね。その両立だけはできないの」

これが何のセリフか分かります?
一発で分かったら、あなたは本当にいい人だ。

いや。
拙作■外道狩り■に出てくるんですけどね。

なんかよく憶えてませんが、こんな様なセリフを出した気がします。

さて。
今回ご紹介するのは、『Dear My Friend』です。

上記のセリフが本当に正しいのかどうか。

オスカー・ワイルドはクソ野郎なのかどうか。

果ては、「萌え」の本質について、本気で検証していきたいと思います。

今回は本気です。

この新作ゲームをタダで入手した経路については、この辺りを参照願います。

はっきり言って恩をアダで返すような文章ですけど、よく読めば実際そうなんですけど、要するにそれだけ私は真剣に書いたわけで。

今回も、私は心の底から真剣です。

だから序盤から飛ばします。




メインのヒロインが気持ち悪いです。








言っちゃったよ…。




まずはストーリーを紹介する前に、2次元的な記号のお話をしたいと思います。

「萌え」の定義とは何でしょうか?

髪型、リボン、猫耳、大きな瞳、服装、変な語尾。

まあ、いろいろあるでしょうけど、つまりはそういうモノによって描かれる複合的な存在…でしょうか。

よ〜く考えてみましょう。
これらはすべて記号です。

とても好きな人がいるとしましょう。

ろくに言葉も交わした事は無いけれど、好きで好きでたまらない。
いつもその人を想像してしまう。

そこで。
あなたが好きなのは、その人自身でしょうか。

本当に?

あなたの頭の中にある偶像を好きなだけではないですか?

偶像、すなわち記号です。
厚みを持たぬ存在です。

記号に厚みを持たせているのは、あくまであなたの勝手な想像です。

「萌え」とは、脳内補完による非日常の偶像化と定義しても、あながち外れではないのではないかと思います。

明確な反対材料があれば、ぜひご教示願います。
いくらでも撤回します。



では、やっとこストーリーなんですが。



主人公の森川恭一は、ごくごく普通の男の子。
エロ小説家の父と看護婦の母がいます。

そこに。
ある日突然、一人の少女が家族になります。

彼女をきっかけに、何かが変わりつつある日常。

いつもと同じ仲間たち。
幼なじみのお姉さん。
活発で明るい同級生。

額に入れ墨をした巫女。
ウサギ耳で銀髪の後輩。


友情とは何だろう。そして恋愛とは。
ある冬の日に始まった、淡い青春の物語。

という事で。

この作品は、日常生活を丹念に描き出しているという点で、幅広い層から高い支持を受けている作品です。

明らかにそれ日常じゃねえだろという所は、赤くして書きました。

ちょこっとだけ補足しましょう。

あくまでゲーム世界という虚構の中での日常です。

エロゲーやってる方で、まさか勘違いしている人はいないと思いますが。

そうなんですよ。
これをすんなり受け入れられるかどうかで、この作品の評価ががらりと変わってしまいます。

あ、今気付きました。
どうでもいいですが。

「お姉さん」という単語が出てきたのに赤く書かないのは、ひょっとして始めてでしょうか。









…もっと。





今回は本気です(しらじらしい)。



冒頭、主人公とヒロインが始めて会うシーンがあります。

犬に襲われるヒロインです。

いや、犬はじゃれてるだけなんですけど、ともかく主人公が助けようとするんです。

ありきたりですが効果的です。
有り得ない出会いです。

上がゲーム的日常、下の赤字が日常です。

そこでヒロインが一言。





「…にゅう」




思わず耳を疑いました。

この瞬間、私のゲームに対する情熱がシベリアよりも冷え切りました。



まさか「異世界もの」だったとは。



レビューなんか書いてると、前評判的なものがどうしても聞こえてくるんですよね。

この『Dear My Friend』の場合、「俺らの周りに、ごく普通にありそうな話をしっかり描いてるぜ」的な評判を耳にしていまして。

貴様と私の人生は何か重要な点で違っていると思いました。

今思えば。

彼も私も勘違いをしていたんだと思います。

彼の言う「普通」は、現実には有り得ないゲーム世界での「普通」でした。

私は私で、現実における「普通」をゲームに期待するなどという本末転倒な事を想像していました。

こいつら全員記号です。

そして、それは正しいんです。

「2ちゃんねる」のモナー絵をご存知ですか?

あれ、記号の集まりでしょ?

でも、ちゃんと「絵」に見えますよね?


これが分かった瞬間、私、本当に大笑いしたんです。
何を難しい事考えていたんでしょう。

30何年生きてて、始めて「萌え」の入り口に立った瞬間でした。

いやあ何とも。







目が覚めたー!!!!




今回は本気です。

ヒロインは相変わらずウザったいんですけど、もうガンガン飛ばしていく事にしました。

目指すは「姉」一本です。

このゲームは移動画面で、各キャラがどこにいるのか分かるので簡単です。

会ってりゃ手軽に仲良くなれます。

もうじきバレンタインデーなんで、周囲の娘どもも必死です。

必死で主人公とウザヒロインをくっつけようと活躍します。

…あれ?
ちょっと待ちましょうよ。

君たちは友達でしょう?
なんでそんな迷惑な事をするんですか?

いや、理由ははっきりしています。
ぶっちゃけ主人公がはっきりと自分の気持ちを伝えられないからなんです。

いろいろと意見はあるでしょうけど、このゲームの白眉はここです。

おせっかいな友達に、ついつい流されてしまう主人公。
「これではいけない」と思っている。

けれど、人を傷付けるのが怖い。

ひいては自分が傷付きたくない。

このゲームには、青く不器用な男の真実が描かれています。

いろいろと、各所のレビューを読んでみたんですが。
このゲームの感想で多いのが、以下です。

「主人公がヘタレ」
「主人公が卑怯」
「主人公が女々しい」


なるほどね。
ちょっと待ちなさい。

自分が始めて恋をした時の事を思い出していただきたい。

この手のゲームを買える年齢の方で、本命チョコをもらった事のない方はあんまりいないでしょう。

もしいたら、手首よりヒジの内側を縦に切った方が効果的です。

始めての恋をした時のあなた。
もっと上手に立ち回れました?

ヘタレで卑怯で女々しくなかったと、胸を張って言えますか?


おせっかいな友達の前で、自分の本心を吐露するのがいかに怖いか。

本命にコクるのがいかに怖いか。

そんな経験はありませんか?
そして、あなたはちゃんと伝えられたのですか?

右往左往しながらも、この主人公は、最後にはっきり自分の口からそれを伝えています。

好きな人ができても、頭の中の偶像に恋するだけで、告白もできないようなヘタレで卑怯で女々しい奴とは違うんです。

だからこいつは強いんです。
例えば、お姉シナリオについて例を上げましょう。

なんだか知らないうちに、ウザヒロインと流されつつある主人公。

「迷惑がるのは分かってたけど」とか言いながら、本当に迷惑なクソアマです。

主人公の下着まで洗います。
すっかり女房気取りです。

自分だけ愛されたい自己中
なんですけど、この一途さはゲーム世界において強敵です。

そしてあなた。
ついには、自分の体まで捧げようとしてきやがります。








…いただきます。




そうでなくて(笑)。

ここは、クライマックスのひとつでしょう。

クリアした方にはぜひお聞きしたい。
これ、できます?

主人公は強いんです。そういう事です。



さて。
長々と書いてきましたが、最初の命題に戻ってみましょう。

男女の間に友情は成立するんでしょうか?

この作品は、冒頭にこんな言葉が出てきます。

男と女のあいだには、情熱、敵意、崇拝、恋愛はある。しかし、友情はない。

一字一句正確かは自信がありませんが、英国の劇作家であるオスカー・ワイルドの言葉です。

この言葉を聞くたびに思うんですよね。
こいつもやっぱり男だなあと。

ピエロの涙の意味をご存知でしょうか。

あれは、友達のために好きだった人をあきらめ、二人の中をとりもって流した涙なんです。

これを、美しい話だと思われますか?
それとも、馬鹿な話だと思います?

美しく馬鹿な話だと私は思います。

そして、こんな奴が周りにいてくれる日常、こんな奴になってもいいと思える人間がいてくれる日常は、決してゲームの中だけではありませんよ。

ゲームをクリアした後、どうかゆっくりと考えてみてください。

私個人の意見ですけど。

友達は友達です。本当も嘘もありません。

セックスがあろうがなかろうが、友達は友達です。

ただし、恋愛との両立は無理です。


久々に長文のレビューになりましたが、ぜんぜんレビューじゃないんですが、珍しく最後まで本気で書きました。

後は皆さんが感じてくださいね。

そして獲ightさん、ゲームありがとうございます。
いつかどこかで必ず恩返しいたします。

いや、前回書き忘れたから。




ところでlightさん。

この真冬の話がクソ暑い真夏に出たのは、大人の事情ですか?








言っちゃったよ…。







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