『ボディ・スナッチャーズ』






ぎゃああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああっっ!!!!!!







 …一部、お見苦しい表現があった事を謝罪いたします。
 しかし皆さん。

 この叫びを憶えていてください。

 今回ご紹介する、この【ボディ・スナッチャーズ】。
 最初にはっきりと書いておきましょう。

 ある理由によって本当に惜しい映画となってしまっています。

 その理由も、映画そのものにあるのではなく。
 それより前の歴史によってこうならざるを得なかった、という。

 今回はけっこう真面目に書きたいと思います。
 例によって画像もいっぱい使ってますので、もし出なければリロード願います。
 というわけで。






 いや〜こりゃ駄目だわ。




 行くは中古屋ワゴンセール、手に取る品は千円未満。
 ひっそりとしたブースの明かりに照らされたそれを読むならば、1280円がさらに半額と書いてある。

 この時点で、結末はひぎぃを見るより明らかです。

 安ければ安いほど駄作の率は上がります。
 もちろんそれは知名度でも同じです。

 誰が知ってますかこんな映画。

 SFサスペンス・ホラー映画【ボディ・スナッチャーズ】。
 映画で言えば【ボディガード】の200分の1くらいの知名度を誇ると思われるこの映画。






腰が抜けそうな逸品です。








 よろしいですか?
 安くて誰も知らないんですよ。

 まるでうちのレビューのために生まれてきたような映画です。



 世の中には、様々なレビューサイトが存在しますよね。
 掲載されているレビューが「すべてマンセー」や「すべて批判」という所は少ないですが、ほとんどのサイトさんは両方のレビューを混在させているようです。

 それらのレビューを、豪腕的に無理やり区分けしてみれば。

 「面白いからお勧め」
 「つまらないからお勧めしない」


 普通、こうなると思います。



 されど我が「アンダーカヴァー」2は、ですね。

 「つまらないからお勧め」というスタンスを取っている数少ないレビューサイトを目指します。

 それでは、あらすじをご紹介しましょう。






フォート・デイリー空軍基地。
父と共にそこに住む娘マーティーは、ある夜バスルームで、
謎の物体に襲われる。

何を逃れ父の寝室に逃げ込むマーティー。
そこには瀕死の父と、
父の姿に変身しようとしている 超絶物体がうごめいていた――。










変身とは穏やかでない。




 まあ…何ですか。
 よくある侵略モノというお話みたいですね。
 90年代にもなって外輪船で太平洋を渡ろうとするその勇気は認めますが、こんなの北京を走る自転車くらいに世の中には溢れています。

 しかし、それには訳があった――。

 実はこの映画。

 3度目のリメイクなんですね。

 まずは1956年の【ボディ・スナッチャー/恐怖の街】
 そして1978年の【SF/ボディ・スナッチャー】

 都合3度も映画化された幸運な原作は、ジャック・フィニイの『盗まれた街』という小説です。
 今回、レビューを書くという事で原作にも当たってみたんですが、いやこれが面白いんです。
 侵略モノの古典ですね。
 サスペンスの教科書通りに進むため、常に斜め下から物事を見るような、そんな田代には若干の不満があるかも知れません。
 されどね。
 すげ〜映像化しやすそうな作品なんですよね。

 あんまり映像化しやすいもんだから。
 NHKのFM放送『青春アドベンチャー』でドラマ化されたりもしたそうです。




 映像関係ないしね。



 ちなみに56年の第1作目は。

 監督がドン・シーゲルという凄い事実があります。

 この人は有名でしょう。

 知らない方でも、これはご存知かと。
 そう。【ダーティーハリー】の監督さんです。






ダーティーハリーですから。





「きたないハリー」。


ちゃんと手は洗ってます。




 56年【ボディ・スナッチャー/恐怖の街】におけるバックボーンは、当時の世相を紐解けば見えてきます。

 すなわち『赤狩り』です。

 マッカーシズムにおける強健な反・共産主義が、この映画の重要なモチーフとなっていると思いました。

 つまりは「隣人を疑え」という姿勢。
 普段話している近所の一家は、実は「赤」なんじゃないか。
 職場の同僚は。果ては自分の家族までも。
 そうした疑心暗鬼の中、密告というシステムを活用しながら荒れ狂った近代の「魔女狩り」があったからこそ、この映画には奇妙なほどにリアリズムが漂っておりました。



 さすがの豪腕も当時はまだタンパク質にもなっていない大昔のお話ですから、私自身が実際にその現実を目にしたわけではないのですが。
 SFでありサスペンスでありながら同時に社会派の映画であるという、なかなかに見所のある作品だったと記憶しております。

 よって「うんこ映画」ではないです。



 そして78年【SF/ボディ・スナッチャー】。
 この映画も凄かったです。

 監督は、あの超大作【存在の耐えられない軽さ】のフィリップ・カウフマン。
 これだけでも十分凄いんですけど、俳優さんがまた凄い。




ドナルド・サザーランド。
レナード・ニモイ。
ジェフ・ゴールドブラム。
ヴェロニカ・カートライト 。








…個性派しかいねぇ。





 この、B級SFと読んでしまうにはあまりに勿体ない豪華キャストが泣かせます。
 正直、俳優もB級でいいじゃんとか思ってしまいます。
 デヴィッド・キャラダインとか(笑)。
 このメンバーにクリストファー・ウォーケンが加わったら最強のような気もします。

 フィルムを煮詰めると油が浮いてきそうです。

 「Mrスポック」に「ザ・フライ」ですからね。
 最初から人間が出ていません。



 映画の内容は、56年版とはテイストが結構変わっていて興味深いですよ。
 よく知る人間たちが徐々に変わってゆく過程、その辺のサスペンスっぷりは王道なんですけど。

 目茶くちゃ地味なんです。

 作成が70年代ですから、当然CGなんかは存在しません。
 ぜんぜんSFっぽくない進行なんです。



 でもね。

 無茶くちゃ緊張感があるんですよ。

 巧みなカメラワークと、個性派俳優の巧みな演技でね。
 知らないうちに非日常の世界に迷い込んでいるんです。

 こう…何と申しますか。
 じわじわと迫る危機感、何かが変わっているはずなのにそれが何か分からないという緊迫感。
 この手法で最も成功した映画はヒッチコックの【レベッカ】だと個人的には思うんですけど、この映画だって負けてはいませんよ。
 ただ、昨今のスピーディーな展開に慣れてしまった目で観ると、やっぱり地味なのは否めない所なんですが。

 サスペンスとホラーの違いは何でしょう?
 色々あると思いますけど、間接的表現と直接的表現という見方もあるでしょう。
 それぞれが意図する所は同じ「スリル」だとしても、暗喩・比喩を駆使して観る側の想像力を掻き立てるのがサスペンス。
 そこには1滴の血すら必要ないのかも知れません。




そろそろ声を大にして言いましょう。




バカバカ出しまくってる安易な自称サスペンスよ。




チラリズムがイイのだ。




おっぴろげて「イェ〜イ」とか言ってそうな馬鹿なケトウに私のプリティボーイは反応せんのだ。







嫌いじゃねェけどな。





 …大変アホな話をしておりますが、要するに。
 この映画は中々の佳作という事です。

 「うんこ映画」ではありません。



 ちなみに。
 かつて一世を風靡した、あの「人面犬」の元ネタがこの作品です。
 いや、それだけですけど。



 さ〜てお待たせしました。
 真面目なお話はここまで。
 今回のレビューに参りましょう。

 93年公開、3度目の正直。
 SFサスペンス・ホラー映画【ボディ・スナッチャーズ】です。



 長い長い枕ですみません。
 今回のこの映画ですが。











…すごいです。





 いや、そこまで駄目とは言いません。
 言いませんがうんこです。
 ごく普通の侵略テーマSFサスペンスなんですけど、前の2作が悪かった。
 優れた親を持つと子供は大変なんですよ。

 DVDを軽やかに差し込んでみれば。
 流れる星空にタイトルロールがいかにもそれらしくて素敵です。

 赤い文字で『BODY SNATCHERS』って書いてあるんですけどね。
 それがだんだん黒い文字と重なってゆくという。
 なかなか、この先を暗示していて良いタイトルロールです(若干安っぽいですが)。



 画面は冒頭、主人公の少女マーティーとその家族(パパ、義理ママ、義理弟)がワゴン車で旅する所から始まります。
 のどかな田舎の風景です。



 ここでいきなり回想です。

 出だし一発目でアンタ、言葉による説明ってのは勘弁していただきたい。
 お前はどこの【マッドマックス2】ですか。




「へい、ラーメンお待ち! …それでは原材料の説明から参ります」






そんなラーメン屋は潰れてしまえ。








 え〜、気を取り直して続きを観ましょうか。
 車はガソリンスタンドに着き、トイレに行くマーティー。
 ここで出ました。

 暗闇から、突然マーティーに襲い掛かる黒人兵!

 「奴らはそこにいる…。寝ている間に襲って来る…」

 謎の言葉を残し、そして去る黒人兵。
 映画最大のサプライズです。
 いきなり「ドーン」だから心臓に悪いです。
 もう使っちゃいましたけど(笑)。



 しかしまあ。
 なんでそんな臭そうな所で電気も点けずにじっとしていたのか、誰も説明してはくれません。
 ひょっとしたら、ものすごい気合の入ったスカトロフェチなのかも知れません。

 この変から、ほのかなうんこの香りが漂ってきます。
 続きを観てみましょうね。



 一家がたどり着いたのは、いわゆる軍の基地でした。
 兵隊さんがファミコンウォーズ走りやってます。
 この施設の中、一般居住区みたいな所で、一家の新生活が始まるわけなのですが。

 どうやらパパは研究者です。
 毒物とかの環境汚染物質を調査するために来たみたいですね。
 メガネのおぢさんです。
 メガネフェチでもまるで萌えない神経質そうなパパであります。
 まず間違いなく死ぬでしょう。
 そんな予想をしながらも映画は続きます。

 この辺、わりと淡々と進むんですよね。
 まあ余計な装飾が無いのは良い事です。
 主役のマーティーが窓際にあったトカゲの死体を持ち上げるシーンとか、効果的なようでいてまったく無意味なシーンもありますが。



 どうでもいいですけど。

 主役の顔が不景気なんだよね。

 うちのレビューで不景気な顔のヒロインが出る作品は確実に駄目でしたから、すでに結果は分かったようなものであります。
 てか、そりゃそうですよね。
 「不景気な顔フェチ」なんて足の小指フェチくらい少ないでしょう。
 このインフレ顔。



 この事から。
 インフレ顔=駄目作品、という理論が成り立ちます。






これをインフレーション宇宙と呼びます。





※ぜんぜん違います。




 うちのレビューはプラレール並みに簡単に脱線しますが、とりあえず主役の事はインフレと呼びます。

 さて、インフレの周りで静かに進む怪異。
 しかし誰もそれには気付きません。
 軍の内部で何か怪しい動きがあるという事だけは伝わるのですが、それが何かはまだ明らかにされないわけです。

 インフレもパンク娘と知り合ったり、トラボルタ顔の軍人と知り合ったりで、適度に日常が描かれています。
 ええ、悪くないんですよ。
 悪くはないです。決して。

 特にこの映画の白眉と言えるシーンをご紹介しましょう。
 それは幼稚園のシーンです。

 インフレの弟が通う幼稚園。
 みんなで仲良くお絵かきをしているシーンですけど。

 完成した絵を、ね。
 みんなで持ち上げて。
 先生に見せるシーンがね。






…全員、まったく同じ絵なんです。


こんな太い目線見た事ねぇよ。





 豪腕はりーは現在かなり危険な橋を渡っておりますが、これは…いいシーンですよ。
 弟だけが違う絵で。
 他はみんな、斗貴子が内臓ブチ撒けたようなゲチョグロの絵なんですよ。



 そしてそれを誉める先生がまた。

 「…よくできました」。
 この静かなセリフの中に、濃密な狂気のメッセージが込められています。

 ここで語られている事は。
 表面的には普段と変わらない、けれどもまったく異質な世界に放り込まれてしまった事を暗示しています。
 それが、わずか5歳くらいの弟の目を通して我々の知る所となるわけですよ。
 ほんの数分のセンテンスでね。
 これが映像の力なんです。



 ただ残念なのは。

 オリジナルでも何でもないんですよね。

 これに匹敵するシーンをオリジナルで構築できていれば、この映画の評価もさらに上がっていたと思います。



 もう一つだけ、私の心に残ったシーンを挙げましょう。
 これで使い切っちゃいますけど。
 それはインフレと偽トラボルタのデートのシーン。
 誰もいない(はずの)森の中でのシーンです。

 インフレは、あるゲームをしようと提案します。



 「両手を広げて。そして、本当の事を言ったらそのまま。でも嘘なら指を折っていくのよ」







ボキッ。


ぎゃあああ!!!!






そんなゲームではない。







 まあ何ですか、最初は「ウサギが好き」みたいな他愛もない事を言ってます。
 そのうちに、インフレがこう言うんですよ。



 「人を撃った事は無い」



 …ここで相手が指を折るんです。



 このトラボルタ似の伊達男は、実はクウェートからの帰還兵だったんですね。
 ヒロインと並んでこいつも妙に不景気な顔してるんですけど、この若干能面チックな顔には理由があるのでした。

 ぬぐい切れない過去。
 それを背負って生きる男。
 おそらくは感情をなるべく押し殺して生きてきた男が、一瞬だけ見せた本当の素顔。
 深読みすれば、そういう風にも取れるんです。
 映像と演出の勝利です。



 こいつの普段からの表情のなさは。

 決して演技が下手糞だからではないと思いたい。



 今日の豪腕はヤマジュン作品のケツの穴なみに心を広く持ちたいです。







…駄目でした。




このシーンの直後に。

せっかくの演出をブチ撒けられてしまいました。



いきなりのキスシーン。



突然にも程があります。



「俺、人殺し」



ぶっちゅ〜♪



そんなんあるか。































あるかァァッ!!!!


雄山キャノン。





 ちゃぶ台どころか人として大切なものを投げています。



 おそらくね。
 無理やり、青春映画っぽいラブシーンを入れたかったんでしょうね。
 入れたはいいけど浮きっぷりが半端ないです。
 トムキャットのサングラスみたいです(マイナーネタ)。

 B級映画ってのはね。

 これだから目が離せないんです。



 前作、前々作と、タイトルは単数形でしたけどね。
 この度の【ボディ・スナッチャーズ】で晴れて複数形になりまして。

 有名な例では。
 【エイリアン】から【エイリアン2】(原題はALIENS)などがありますね。

 それと比べると、素晴らしいスケールダウンですね。
 面白すぎて液晶画面を割ってしまいそうです。



 大体、侵略者の侵略方法がこれまたB級なんですよ。
 もう言っちゃいますけどね。
 でっかいキウイフルーツみたいな変な植物っぽい奴なんです。

 なんか、触手をピュルピュルと伸ばしましてね。
 眠ってる人の鼻に突っ込ませまして。







中身をチュルチュルと吸うんです。




これくらいに。





 そうすると、そのキウイの中で吸われた人間の複製ができる。
 そういう仕組みのようですが。

 せいぜい5分くらいで完全な人間の複製が完成します。
 素晴らしい生命の神秘です。

 柳田理科雄あたりに検証していただきたい。



 このように、完全な人間(の外見)になりすます侵略モノの映画としては、例えば【遊星からの物体]】とか【ヒドゥン】とか【ゼイリブ】などが挙げられるでしょう。
 いずれもどこかB級テイストが漂いながら、しかし演出や脚本、あるいは特撮のおかげで非常に印象深い作品でした。
 3作中2作がジョン・カーペンターという変な符合もありますが。

 漫画では、【寄生獣】などが有名ですね。



 さて。
 こうして複製ができあがるわけですが。
 吸われちゃった側の人間はどうなるのでしょう?
 コピーなのか、それともオリジナルを破棄して新しく創り出されるのか。

 上記の作品群では、ほぼいずれも後者です。
 すなわちオリジナルは完全破棄。
 いわゆる永続的な「乗っ取られ」タイプが主流のようですね。
 【ヒドゥン】は微妙ですが(寄生主を退治できれば蘇生の可能性もありそうな気がします)。

 これにはきっと、サスペンスとしてのお約束というものがあるのでしょう。
 自分の体を永久に異種族に乗っ取られてしまう恐怖。
 そうなってしまえば、それはおのれの永続死と同じです。
 たとえ外見が同じでも自分という「個」はその時点で死ぬわけです。
 ここに直接的な恐怖があり、かつまた外見では判断できないという危機的状況が生まれるのでしょう。

 数少ない例外に【ドクトル・マモーの挑戦】とかありますけど。

 …世間ではこの映画を【ルパンVS複製人間】などと呼ぶ風潮がありますけど、私は断じて【ドクトル・マモーの挑戦】と呼称いたします。
 関係ない所でリキが入ってすみませんが、古い世代にとっては重要なんです。



 そういう事で、この【ボディ・スナッチャーズ】も例外ではありません。
 なにせ中身を吸っちゃうのです。
 吸われた人間はどんどん縮んで行き、しまいに皮だけが残されるんですよ。

 怖いですねぇ。
 まるでクモに食われた昆虫の死骸ですよ。
 きっと吸うと同時に溶解液みたいのが出てて、それで体の内部を溶かしちゃうに違いありません。

 そして。







昆虫は外骨格。

人間は内骨格。






なんで皮が残るねん。




こういう素敵なB級テイストが観る者の堪忍袋をくすぐります。



よろしいですか?

いよいよ画面に戻りますよ。



インフレ吸われまくり。



ほぼ完全な人間の姿になるまでズザザッと吸われました。





それでも元気。




 …我々は現在、物理法則の壁を越える現象に対峙しているのです。

 動き出したら誰にも止められないんじゃよ。

 そんなオババの悲痛な声さえ聞こえてきます。



 第一、キウイの中で育った複製が、その重さで屋根を突き破って落ちるんですよ。
 相当な質量が吸われた証拠でしょう。

 なのに元気で逃げる逃げる。

 この女、一体何でできてるんだ?

 そんなベニーの悲痛な声さえ聞こえてきます。



 そこで皆さん。
 ついに来ましたよ。

 とっくに乗っ取られた継母が。
 逃げようとするインフレたちに叫ぶのです。

 冒頭の叫びを思い出してください。



 それはそれはもう凄まじい大絶叫です。



 ぎゃあぎゃあウルセェ。



 ここから映画はクライマックスです。
 今まで隠れつつ密やかに行われてきた人類乗っ取り計画が、本格的に牙を剥いて襲い掛かってくるのです。

 集団に襲われる映画と言えば、もちろんゾンビ系が有名です。
 ただしこの映画の複製たちはえらい勢いで全力疾走してきます。
 現代ゾンビ映画の白眉たる【ドーン・オブ・ザ・デッド】にも通じる、極めてスピーディーな群集です。

 ここにおいて。
 サスペンスからアクションへの脱却、とまで読むのは穿ちすぎでしょうか。

 急転直下の展開というのは、いつの時代も武器に成り得ます。
 それが予想もしない展開ならばなおの事。
 惜しむらくは、リメイクなんですよね。
 前の作品を観てさえいれば読めてしまうという点だけが非常に残念でした。



 この「惜しい」点はさらに続いてしまいまして。
 複製と人間の見分け方、なのですが。

 この手の「乗っ取り型作品(今勝手に考えた)」では珍しく、複製あるいは寄生種側が、ですね。

 本質的に人間と仲間の種を見分けられないようなのです。

 これには相当びっくりしました。
 だって普通、例えばゾンビだったら本能的に人間を襲うでしょう。
 知能も大して無いくせに。
 このキウイから生まれた複製は、知能が人間並みに高いにも関わらず。






黙っていれば分からないんですよ。




無表情なら誤魔化せてしまうんです。






 だから出演者みんな不景気ヅラなのかどうかは分かりませんが、ともかくこうして誤魔化しながらの逃避行なんです。

 せっかくスピーディーになったんですけどね。
 アクションで一気に溜飲を下げるかと思ったら、今度は敵の真っ只中で気付かれそうというスリル展開。
 なかなか変わり身が凄いです。

 この設定は面白いですね。
 最初は人間側が分からない。
 そして今度は複製側が分からない。

 こんなにおいしい材料なのに。

 あんまり生かされてないのが実に悲しい。

 少なくとも、プロの作った映画である以上。
 素人の豪腕なんかに、「私だったらこうするなぁ」などと思われちゃったらいけません。



 そうこうするうちに、映画もいよいよ終盤です。
 トラボルタ似の彼はヘリの操縦手なので、単身ヘリを奪いに行き。



 そしてまたもやインフレが捕まり。







そしてまたもや吸われます。





だけど元気。




 この時点でおそらく中身の95%くらいは吸われているはずです。
 複製二人分弱ですから。
 だけど、なぜか吸われた本人は元気なんです。

 お前の方がよっぽど怖いわ。

 ここまで来ると、もうね。
 吸い吸いズッコロバシですからね。

 君のような人材を献血界は待っている。

 不景気な顔してないで医学に貢献して欲しいと願います。



 …そんなわけで、今回の【ボディ・スナッチャーズ】。
 いかに素敵な作品かを分かっていただけたでしょうか。



 まずは監督のアベル・フェラーラさんですが。
 現代ニューヨークの旗手だか何だか言われていた時期もあったらしいんですけど、日本では極めてマイナーっぽいです。
 日本では、79年の【ドリラー・キラー】というスプラッタ・ムービー辺りから手に入ります。
 あえて手に入れる勇者は極めて少ないでしょうけど、ここまで来たらぜひチェックしたいですね。

 「ドリラー」で「キラー」ですからね。

 なんか響きがアンダーカヴァーに似ていて素敵ですね。

 他にも【キング・オブ・ニューヨーク】やら【スネーク・アイズ】やら、どこかで聞いたような映画をたくさん撮ってます。
 ご本人にまったくその気は無いでしょうけど、パロディ監督みたいに思えてしまうのは偶然ながら悲しい事実です。
 【ギャング・オブ・ニューヨーク】やら【スネーク・アイズ】やらね。



 続いてインフレのガブリエル・アンウォー。
 この人はそこそこに有名です。
 【セント・オブ・ウーマン/夢の香り】ではほぼ主役級でしたし、他にも色々な作品に出演しています。

 だけど何ででしょうね。
 アル・パチーノと踊ってた時はあんなに輝いて見えたのに、なぜこんなに不景気になっちゃったんでしょうか。
 同じ貧乳系でも、例えばミラ・ジョヴォヴィッチとかと比べると、そのたたずまいが不景気すぎて思わず波に向かって叫んでしまいそうになります。

 結局、女優さんを光らせるのも映画であり。
 映画を光らせるのも女優さんであり。
 この二つは有機的に結び付いているのだ、という今さらながら当たり前の事を教えてくれた映画でした。

 無理やり綺麗に落とそうという魂胆がミエミエです。



 しかしこれは重要ですよ。
 見た目で判断すると、素晴らしいフリゲや同人ゲームを見逃す可能性があります。







いつも豪腕がすみません。





 え〜、最後に偽トラボルタの伊達男くん。
 ビリー・ワースという俳優さんですけど。

 見た事も食った事もないです。

 ここまでマイナーだと落とせないから困るんです。
 そういう時はどうしましょうね。

 一応、アカデミー男優のフォレスト・ウィテカーも出てるんですけどね。
 そこそこ重要な役で。
 でもこれ…本人かなぁ。
 同姓同名の別人じゃねぇだろなぁ。

 情報をお持ちの方は、いくらでもナイショで訂正いたしますのでご協力ください。



 だらだらと書き連ねてきた今回のレビューですが。
 そろそろお別れの時間です。

 結局の所。
 私が言いたいのは唯一つ。







B級は良い。




それはまるで、冬物のポケットから小銭が出てきたような嬉しさ。

結局、何の得もなく。

失った時間は戻らないけど。




なんか良い。






 これからも、ね。

 こういうマイナーかつB級の作品をうんこ呼ばわりしながら、楽しくレビューできたらと思います。
 どっとはらい。








『BODYSNATCHERS』1993:米

監督:アベル・フェラーラ
製作:ロバート・H・ソロ
脚本:トム・バーマン

出演:ガブリエル・アンウォー(インフレ)
   メグ・ティリー(継母)
   ビリー・ワース(偽トラボルタ)






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