短編小説「4LUV2U×渋谷」


 ちんこの感じが残ったまま戻った。
 けどトイレでウツことねーじゃん。せめてVIP? つーかバースペでくわえさせようとすんなよなーって。
 まだ夜って若いよ。持ち帰り狙ってんなら、センター街のチューボーで上等じゃん。あいつら、ヨユーで持ち帰れるよ?
 基本的にパラパラやユーロよか、トランスが好き。なんでかかんないんだろ。つーか生煮えだよね。マッシュか葉っぱキメて座り込んじゃおうか。ここドラッグ率10割だよね。
 クラブは友達増えて好き。男はウチたいだけかも知んないけど、あたしらだってそーいう時あるし。ノリよく声かけられたらヤッちゃうじゃん?
 でも今日はウザいだけ。
 メグとキャッチーがヒゲのドレッド引っ張り合ってる。あれ、メグじゃないや。どこ行ったんだろ。どっかでウッてんのかな。どーでもいいや。
 なんか頭痛い。
 煙がウザいよ。
 なんか嫌だ。もう全部嫌だ。B系のファッションもユーロも嫌。
 学校も、世界も、ママの前でいい子してんのも全部嫌。
 あたし、消えちゃおうか。
 もういいや。こっから別のどっかへ行きたい。
 あたし、クラブのドア開けて登った。
 赤と緑のチカチカが綺麗。何つったっけ? そう、ネオンだ。
 吉牛の上から湯気出てるよ。となりのビルからも。
 すっごいや。雲の上歩いてるみたい。
 飛ぼうかな。飛べそう。
 そしたら、もっと別の世界に行けるんだ。
 屋上、フェンスで囲った角っこで、なんか誰かがいる。
 誰かウッてんのかな。いや違う。
 ハシデブじゃん。
 てめー、何でこんなとこにいるんだよ。
 ここはあたしの場所に決めたんだよ。
 どけよ。
 蹴った。
 ウゼーんだよ。目障りなんだよ。イジメられっ子のオタク野郎がよ。あたしの人生に出てくんなよ。デブ。似合わねーロン毛してんじゃねーよ。イガちゃんに言ってまたボコらせるぞコラ。どけよ。クソブタ。渋谷が腐るだろ。オタクはこの世に必要ねーんだよ。
 なに泣いてんだよ。
 なんだよ、それ。遺書かよ?
 おもしれーじゃん。飛んでみろよほら。クズ。
 おめー、何持ってんだよ。またあのくだらねー人形かよ。バカじゃねーの? それ見てコイてんの?
 …なに叫んでんだよ。うるせーよ。
 うるせーつってんだろ。
 あ、捨てた。捨てちゃったよこいつ。
 殴られた。
 がくん、って一瞬、暗くなった。
 ごつん、って頭打った。
 暗くなってく視界の隅で、チカチカの煙の中に、白い人形がくるくる飛んでった。
 なんか、すっごい綺麗。
 がんがん、拳が降ってくる。あんま痛くない。葉っぱ効いてんのかな。顔、熱いけど、それだけ。
 なんだか気持ちいい。
 カテキョの車ん中でマワされたの思い出す。
 気がついたら、ハシデブのちんこが当たってきた。ぜんぜん違うとこ。こいつ、やっぱバカだ。そんなんで入るわけないじゃん。
 ああ、空がいい感じ。煙のキラキラがある。あんましよく見えないや。目が腫れぼったくて。
 ハシデブがうめいて、あたしの服に射精した。こいつ明日死刑決定。けど、もうどーでもいい。
 こいつ人形捨てたけど、あたしだったらケータイは捨てらんないなあ。そんなことを考えながら、のどを締めるハシデブの指を感じてた。
 気持ちいい。唇なめたら、鉄みたいな味がした。



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