第四十二話 「戦場を駈けぬけた女戦士の真赤な青春」(83/12/23)脚本・上原正三 監督・小西通雄

 一人訓練に励むベル・ヘレンをマドーが襲った。だが、力をつけているヘレンの前に苦戦し、何とか両手の自由を奪うも、シャリバンに救出されてしまう。腕を上げたと電に誉められたヘレンは、イガ獅子をあしらったZ旗を嬉しそうに見せ、イガ星再興の夢を語った。

 ヘレンが襲われるのではないかと思ったリリィは発信器つきの指輪を作っていた。電は指輪をヘレンにはめてあげ、用心するように言う。

 魔王サイコにヘレンを倒す方法を尋ねられたレイダーは、霊界より女剣士レイサを呼び寄せた。レイサはヘレンの後をつけ回したが、背中にさえ隙を見いだすことが出来なかった。

 電は用意しておいた隠れ家へヘレンを案内する途中、ダムの水面を見つめている思いつめた感じの女性を見かける。女性は二人の視線を感じると目をそらして立ち去った。

 ダムの脇の建物内にこしらえた隠れ家へ、電はヘレン一人を残して帰る。

 イガ星へ行くことを夢見ながらZ旗を握りしめるヘレン。突如鳴った警報にモニターのスイッチを入れた。ダムの上にさきほど見かけた女性が、花を抱え沈鬱な表情で立っている。自殺するのではないかと思ったヘレンは、隠れ家を出て女性のもとへ行った。

 ここで婚約者を失ったと女性から聞き、ヘレンは死んでしまったジムのことを思い出す。感傷にひたるヘレンに突然斬りかかる女性。女剣士レイサは正体を現した。

 ヘレンは発信器のスイッチを入れ、すばやく戦闘服へ着替えた。剣を手に斬り合うヘレンとレイサ。ヘレンは隙をつき、銃でレイサを撃ち抜いた。勝負は付いたかに見えた。しかし、レイサは最後の力をふりしぼってエクトプラズムを吐き、ヘレンを動けなくしてしまう。ムクロビーストの攻撃を受け、ミスアクマ達の投げナイフをくらったヘレンはついに力つきた。

 連絡を受けた電がジープで駆けつけたとき、ヘレンは路面に横たわっていた。電はファイトローをジープでなぎ倒し、ヘレンを抱きかかえる。「シャリバン……ごめんね……」くちびるを震わせるヘレン。電はマドー一味をにらみつけると、静かにヘレンを横たえ、走りながら絶叫した。「ぅぁぁあああああああ! 赤射ぁーッ!」燃え上がるように電の体を覆うコンバットスーツ。赤い光球はマドー一味を次々とうち倒し、やがて人間の形を取り戻した。「宇宙刑事シャリバン!」いきなり剣を抜いたシャリバンは立ちはだかるものを次から次へと斬って斬って斬りまくった。最後の敵ムクロビーストもシャリバンクラッシュで粉砕し、ヘレンの元へもどる。

 グランドバースに収容されたヘレンは、瀕死の状態であった。励ます電の声にうっすらと目を開いたヘレンは、電と共にイガ星へ行った夢を見る。ヘレンは首にかけていたイガ獅子のペンダントを差し出した。電が受け取り、手を握りしめたとき、ヘレンの体から力が抜ける。電はヘレンにZ旗をかけてあげた。

 夕日を浴びながらジープで走る電。路傍に車を止め、ヘレンのペンダントを握りしめた。「出てこい。出てこいマドー!」電の心に悲しみと怒りが渦巻いていた。


 「オゼバン談」

 宇宙刑事シリーズを通しても一番にあげる人は多いであろう変身シーン。熱のこもったすさまじさは、怒りに全身が燃え上がっていくようです(赤いシャリバンならではの映像)。渡氏は映画「スーパーマン」で恋人を失ったスーパーマンが空に向かって叫ぶシーンを参考にしたとか。たしかに素晴らしい赤射で私も大好きです。しかし、なぜか語られることのない直後の殺陣にも注目して下さい。殺陣のパターンができていない初期で一度ありましたが、「宇宙刑事シャリバン!」と名乗りをあげた後、いきなり剣を抜いてザコキャラに斬りかかることがあったでしょうか。頭に血が上りきっている伊賀電をうまく表現できていると思います。「こいつらをぶちのめしてくれ!」と誰もが思っているときに、思った以上の行動をとってくれたシャリバン。何度観ても高揚するのはそのせいでしょう。ファンなら赤射シーンのみではなく、そこまで含めて最高の演出だったと言うべきです。そうでないと小西監督や金田治氏に失礼だと思います。

 渡氏は本当は「赤射!」と叫ばず「ウォォォ」と獣的な叫び声をあげて赤い光に包まれたかったそうです。当日、現場には見物人が多くいたらしいですが、渡氏の叫ぶ声の大きさに耳をふさいだくらいだったとか。渡氏いわく、とにかく叫んだそうです。

 伊賀電の衣装は白いブルゾンにもどっていました。

 ヘレンは最初から死ぬ予定で作られたキャラらしいですが、それにしてもなぜ伊賀電はグランドバースに住ませてあげなかったのか、モトシャリアンで駆けつけなかったのかは謎です。殺すためと言ってしまえばそれまでですが……(程度の低いツッコミになっているかもしれませんが、ヘレンファンということでご容赦ください)。

 ヘレンの衣装替えも赤射並のスピードでした。どの衣装もよく似合っています。LDジャケットの写真にも感動しましたが、内側のヘレンと電がZ旗を持っている写真もいいですよ。

 レイサ役の湖条千秋さんは宝塚出身(芸名は宝塚時代に友人が名づけてくれたのだとか)。デンジマンのケラー役がTVデビューで、マシンマンのレディーMなども演じられています。

 大葉氏の出演は無し。


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