第四十一話 「魔空都市は男の戦場 赤い生命の砂時計」(83/2/4)
  脚本・林強生 監督・小笠原猛

 烈がジープでパトロールをしているとき、
突然車の前に見知らぬ母と娘が飛び出してきた。
 子犬が川に流されたから助けてくれとの言葉に、
烈は拾い上げてきてあげる。
 しかし、元の場所に戻ると母と娘はいなくなっていた。

 どこかへ行こうとする子犬を追って、烈は山道に入る。
 そこで足下に落ちていた赤い砂時計を拾い、
上下をひっくり返したとたん地面が揺れ始めた。

 砂時計はマクーが仕掛けた、
魔空空間に生きたまま閉じこめることが出来る命の砂時計だったのである。

 烈はまんまと閉じこめられ、次々と襲われた。
 蒸着するとジゴクダブラーも現れ、
ミサイルまで撃ち込んでくる。

 苦しむギャバンをあざ笑う魔女キバの幻。
「砂時計の砂が無くなるまでにジゴクダブラーを倒さなければ、
 永久に魔空空間をさまようことになる」

 ギャバンは脱出するために急いでジゴクダブラーを倒した。
 宙に浮かんだ砂時計はドルで追って破壊、
無事に脱出し、波際で子犬と戯れた。


 「オゼバン談」

 15話に似た展開で、次から次へと場面転換する魔空空間の中、
大葉氏のアクションを堪能できます。
 ただし、ジープの落下など使い回しているシーンが多いのも事実です。

 おしりでつぶしてしまったサンドイッチを捨てずに食べてあげる。
 誰も見ていないのに普段から優しい気づかいをするところが、
貧乏な烈にモテモテオーラをまとわせるのでしょう。
 波打ちぎわを子犬とかける姿もいいですよね。

 JAC一のマッチョマン高橋利通氏も本領を発揮。
 自慢の肉体を有効に活用しています。

 甲冑を着てバイクに乗っている武者など、斬新な映像も豊富。
 火縄銃から戦車砲弾、
挙げ句のはてにはミサイルまで打ち込まれるギャバンが悲惨です。

 JACの蜂須賀兄弟や渡辺姉妹が双子であることを利用して、
人間が増える不思議なアクションシーンに一役買っています。
 大変テンポがよく、うまく編集されていました。

 ドルのファンは宇宙空間を進む姿が見られて嬉しいかも。

 ダブルーガールの東まり子さん出演せず。





  第四十二話 「烈よ急げ!父よ」(83/2/11)
  脚本・上原正三 監督・田中秀夫

 母親の病気見舞いのために、
バード星へ帰っていたミミーが戻ってきた。
 ミミーの話によると、
漂流していたハンターキラーが保護されたという。
 コム長官の尋問にボイサーは剣山にいると答えたと聞き、
烈は剣山へ向かった。

 山中に入ると突然身の軽い若者に襲われる。
 森林パトロール隊の青年は、烈を密猟者と勘違いしたのだ。
 猟をする道具を持っていないことを示し、
烈の疑いは晴れた。

 烈と別れた青年は密猟者らしき者達と戦うも、
現れたバッファローダブラーに重傷を負わされてしまう。

 山中を捜索していた烈は倒れている青年を発見。
 生きていることを確認し、つれて帰ろうとした。
 途中、マクーに襲われたが、
蒸着してバッファローダブラーを倒した。

 烈はボイサーが捕らわれているらしき基地を発見した。
 しかし人影はすでになく、
拷問用の椅子だけが残されていた。
 マクーは惑星さえ破壊できるホシノスペースカノンの秘密を、
ボイサーから聞き出そうと痛めつけていたのである。

 瀕死の青年はドルギランに収容されていた。
 毒を注入され危険な状態であったため、
マリーンがバード星に運び治療することとなった。


 「オゼバン談」

 ミミーが100メートルワープで帰ってきました。
 マリーンが映画に誘ったり、サンドイッチを作ったりしていましたが、
間違いはなかったみたいです。
 ギャバンの鉄の意志を見習うのだ!

 バッファローダブラーはマクー最後のダブルモンスターですが、
どこから見ても昆虫にしか見えません(特に背中)。
 ギャビオンのミサイルを避けるため地中に隠れたら、
スクーパーでほじくり出されました。

 シャリバンの渡洋史氏が登場したり、
千葉真一氏の写真以外の画像が出たりと豪華な回です。

 烈が橋でのターザン風アクションを再びやりますが、
担いだ伊賀電はふにゃふにゃです(毒を注入され脱力していたのでしょう)。

 生身の体で宇宙空間を漂流していたハンターキラーが生きていました。
 アランもメリーゴーランドの馬で宇宙を飛んでいきましたし、
烈も宇宙空間に出てから蒸着したことがあります。
 宇宙刑事には空気のないところでも大丈夫な、
秘密の呼吸法があるのかもしれません。





  第四十三話 「再会」(83/2/18)
  脚本・上原正三 監督・田中秀夫

 ボイサーが鬼首島のマクー総本部基地で熾烈な拷問に耐えていた頃、
ギャバンは懸命に父を探していた。

 魔女キバ特製の自白剤で、すでに体はボロボロにされている。
 もう一度投薬されたら命はない。
 ボイサーは天を見上げ、一目会いたいとギャバンの名を呼んだ。

 バード星人特有のテレパシーであろうか、
港にいたギャバンはその声を聞き取る。
 ドルギランで声のした方角へ向かうと怪しい島を発見した。

 砲撃されたギャバンはギャビオンで反撃し、
マクーが制作していたホシノスペースカノンをスクーパーで破壊する。

 マクーの逃走後、人気の無くなった基地内を捜索したギャバンは、
牢の中で倒れている男を見つけ、懐中時計のオルゴールをならした。
 聞き覚えのある曲に顔を上げた男は、
瀕死の体に鞭を打ち、格子の前まではい寄ってくる。
 涙をこぼしながら自分を見つめる青年に男は口を開いた。
「ギャバン……」
 万感の思いで言葉が見つからず、
あとはただ格子ごしに手と手を取り合う父と子であった。

 ボイサーはドルギランに収容された。
 しかし、すでに体は限界まで痛めつけられており、
ベッドの上で静かに息を引き取ってしまう。

 ギャバンは涙に暮れながらも、
ボイサーの手のひらにレーザー増幅装置の設計図が記されていることに気づく。
 体温が下がると浮かび上がる特殊なインクで記されていたのだ。
 ボイサーは秘密を守るために歯を食いしばって生きていたのである。

 父が命がけで守った宇宙の平和をこれからは自分が守る。
 夕日に向かって誓うギャバンであった。


 「オゼバン談」

 この回を観ていただければ、
「宇宙刑事ギャバン」という番組が、
単なる子供番組ではなかったことが解っていただけると思います。

 大葉氏は実生活でも千葉氏のことを尊敬しているため、
本当に父と子のように見えますよね。

 JACに入会して十年以上努力した結果、
自分が主役の番組に師匠をゲストとして呼ぶことができた。
 これ以上の恩返しはないでしょう。
 大葉氏の心中を察すると、また違う感動の涙がこぼれそうです。

 死別のシーンは千葉氏の仕事の都合で二人一緒に撮影されていません。
 つまり代役を前に涙をこぼしているのです。
 これを一流と言わずして、何を一流と言うのでしょうか。





  第四十四話 「ドンホラーの首」(83/2/25)
  脚本・上原正三 監督・田中秀夫

 ギャバンはボイサーと民子を一緒に埋葬し、
ミミーと共に墓前で手を合わせた。

 その頃マクーは、
豪介、わかば、陽一、月子、小次郎、当山を拉致していた。

 戻ってきた烈はサンドルバの置き手紙に従い大岩山へ向かう。
 サンドルバは豪介たちを磔にし、
罠を張ってギャバンを待ち受けていた。
 しかしギャバンはサイバリアンのレーザースピードで急接近し、
救出に成功する。

 サンドルバは魔女キバと共に魔空城へ逃げ帰り、
ドンホラーの叱責を受け、勘当を言い渡された。
 サンドルバとキバはドンホラーとギャバンを戦わせようと企み、
富士山麓に停まっているドルギランを魔空城で押しつぶそうと進言、
ドンホラーに受け入れられる。

 魔空城はドルギランに向かって行ったがレーザーで逆襲された。
 その隙にサンドルバとキバは逃げようとするも、
ドンホラーに捕まってしまい、
ギャバンを討つしか生きる道はないと言われる。

 サンドルバはキバの妖術の助けを借りギャバンを苦しめた。
 ギャバンがとどめを刺されそうになったとき光球がさえぎり、
コンバットスーツに身を包んだ男が現れた。
「宇宙刑事シャリバン!」
 その声にギャバンは目を覚ましたように反撃、
サンドルバとキバを倒した。

 ギャバンはさらにサイバリアンで魔空城内へ突入。
 ドンホラーと一対一の対決をし、
宙を舞う首に苦しめられたがギャバンダイナミックで仕留めた。

 ドンホラーの死と共に炎上する魔空城。
 かくして宇宙犯罪組織マクーは滅びたのである。

 ギャバンは銀河パトロール隊隊長に昇進、
地球担当はシャリバンに引き継がれた。


 「オゼバン談」

 この回の冒頭、捨て犬を見かけた烈が抱き上げて、
「どうした? お前もひとりぼっちか? 俺が仲間になってやるからな」と言います。
 ちょっとしたことなんですが、
もしこの言葉の最後が「俺が飼ってやるからな」だったらどうでしょうか?
 子犬に対しても「仲間」という言葉を使うのは、
弱者だからといって上から見下ろすのではなく、
常に相手の目線に立っている烈の優しさをよく表現していると思います。
 脚本家の上原正三氏は天才でしょう。

 実寸サイバリアンがかなり長く映ります。
 登場の仕方はこのあとに現れるシャリバンにそっくりでした。

 シャリバンの名乗りポーズが信じられないくらいシンプルです。
 のちの大げさなものと比べると吹き出す人もいるかもしれません。
 一応覚えます?

 サンドルバとキバに喰らわせた、
空中三回転後のギャバンダイナミック二連打も最高でした。

 この回の田中監督は、
ドンホラーの首が飛ぶときの尾を引く合成を入れるだけで徹夜したそうです。
 妥協なき製作姿勢には頭が下がりますね。

 大葉氏は企画書を読んだ段階で、
「テーマは愛」と書かれていたことに感動したそうです。
 母は亡く、父は行方知れずの混血児の青年が、
巨大な悪に挑んでゆく中で、
弱いものに対してささげる愛。子供達や動物たちへの愛。
そういったものが見ている方に伝わるような演技をしたいといつも考えていたとか。
 その姿勢は完璧に成功し、
言葉の通じない外国の方にさえ伝わる最高の演技へと昇華されました。
 恥ずかしくて人には見せなかったそうですが、
ご自身で脚本を書かれたこともあったそうです。
 ぜひ観たかったですね。





 「番組総括」

 久しぶりに最初から最後まで通して観たのですが、
とにかく面白かったです。
 17年前にこのレベルの作品があったかと思うと、
日本人として誇らしいです。
 あらゆるジャンルで一流の人が集結し、
手を抜くことなく力を出し合った成果だと思います。
 人間が本気を出すことの素晴らしさをあらためて感じました。

 番組に携わった方は、
大葉氏も含めてみなさん素晴らしいのですが、
中でも脚本家の上原正三氏、
アクション監督の金田治氏、
スーツアクターの村上潤氏は、
もっと評価されていい人だと思います。

 大葉氏によると、この作品は現場の雰囲気がすごく良く、
本来なら監督・アクション監督・カメラマンくらいで、
どんなシーンにするか決定するところを
照明係や小道具係の人までどんどんアイデアを出してくれたそうです。
 待ちの時間が長くても、あまり文句が出ず、
こったシーンでも時間をかけて撮影できたとか。
 ほとんど奇跡に近いレベルの作品に仕上がるのも解る気がします。

 後年、大葉氏が渡氏に、
「宇宙刑事シリーズは単なる子供番組ではなくスペースオペラだ」
 ということをしきりにおっしゃっていたそうですが、
まったくその通りですね。

 大葉氏は当時のインタビューで、
「宇宙刑事ギャバンを今見ている子供達が、
 大人になってからも覚えていてくれるような作品にしたい」
 とおっしゃっています。
 私は大きな声で「そうなりましたよ!」と言いたいです。

 最高の番組を作って下さった方々に応えるためにも、
オゼバン第一ルール「いっさいの悪事に荷担せず」
第二ルール「いったん味方と見定めたら絶対に裏切らず」は、
今後も守り続けていくことを約束します。


 それから、今回HPを作っていく上でも、
あらすじを書くということはいい勉強になりました。
 あらすじは書こうと思えばいくらでも詳しく書ける、
かといって省くとスカスカになるといった感じで、
加減が意外に難しく、思った以上に時間がかかりました。

 しかし、苦労した分、
みなさんがあの話は何話だったのかと思いだそうとしたときに、
役に立つものができたのではないかと思います。
 喜んでいただけるようなら嬉しいです。


 HPの文章がずいぶん増えた気がしたので、
試しに四百字詰換算をしてみたところ、
なんと総文章量が三百枚をこえていました。
 読みやすいように改行は多くしてありますが、
それにしてもいつの間に……って感じです。
 大好きな大葉氏や宇宙刑事がらみじゃないと、
とても出来なかっただろうなと思います。

 今後も背筋を伸ばして取り組んでいきますので、
よろしくお願いいたします。

(1999年5月31日)



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