WEBER 40/45DCOEセッティングデータ
(WEBER 40/45DCOE)
 



  WEBER40/45DCOEタイプの特徴
DCOEタイプキャブレターは、スポーツ車、レース車専用として開発された二つの吸気口を一つにまとめた双胴型(ツインチョーク)キャブレターです。

●豊富なセッティングパーツが用意されておりセッティングパーツを替える事により、あらゆるエンジンの仕様に合わせベストセッティングが出来る。

●専用工具無しに全てのセッティングパーツの交換が簡単に出来る.又、整備性が良い。

●純正キャプレターに比らべ吸入効率が高く、確実なパワーアップが可能。

●加速ポンプはピストン式を採用している為、タイムラグが少ない。

●車の使用目的によってその都度キャプレターの諸元を適宜変更する事が出来る。

●急旋回時、急加速、減速時にも油面変化が少なくレージングユースに最適。

●スターター系統(チョーク)は補助キャプレターにより独立した方法を使用している。(50DCOタイプを除く)


  基本機能
【メイン系統】
 
 
燃料はタンクからフューエルポンプを経て、キャプレターのニ−ドルバルプまで導かれます。
 
燃料はニードルパルプとニードルとの隙間を通ってフロ−トチャンバーに溜ります。
 
フロートチャンバーの底は深く持別の燃料室に設計されている為、運転時における急旋回、急加減速等による油面変化をできるだけ少なくする様な構造になっています。
 
フロートチャンバーに一定の然料が溜ると、フロートが浮き上り、その浮力でニードルを持ち上げ、燃料の流れを遮断し、フロートチャンバー内の燃料量を一定にします。
 
フロートチャンバーに溜った燃料は、メイン燃料通路を通りメインジェット(M/J)に達します。
 
M/Jにて計量され吸い込まれた燃料は、エマルションチューブ(E/T)の外側に入り、上からエアージェットで量された空気と一諸になってメイン系統の混合気となり、混合気通路を通って負圧を生じさせるアウターペンチュリ(O/V)、インナーベンチュリー(l/V)で構成されている部分へ導かれ、インナーベンチュリー内に有るメインノズルから噴射され、空気と再度一緒になり理想の混合比となりシリンダーに導入されます。
 
M/J、A/J、E/Tは、組み立て式で一体となっており、また、キャプレターから簡単に取り外しが出来、ジェット類の交換が簡単です。
【アイドル系統】
 
アイドル状態から低・中速運転時迄をカバーする系統です。(エンジン回転にして3000rpm前後まで)
 
燃料はフロートチヤンバーより、低速燃料通路を通ってアイドリングジェット(I/J)へ送られます。
 
アイドリングジェットはアイドリングジェットホルダーに組み立てられ一体となっており、キャブレターから簡単に取り外しが出来、交換も単時間にて行なえます。
 
アイドリングジェットで計量された燃料は低速空気通路より導入された空気と一緒になり混合気となります。
 
混合気は低速空気通路を通ってアイドリングアウトレットへ導かれます。
 
アウトレットヘ導かれた混合気はアイドルアジャストスクリューで調整され、シリンダーへと吸い込まれます。
 
【加速系統】
 
スロットルパルプが急に開いた時、燃料は空気量の増加に追いついて行けず、混合気は非常に希薄となり、追従性が悪くなります。この追従性を一時的に良くするため、燃料を加圧し噴射させる装置を加速ポンプ系統と言います。
 
<スロットルバルプが閉っている時>
スロットルシャフトにポンプレバーが固定されています。
 
ポンプレバーの先端が加速ポンプロッドを押し上げ、それに連結されているポンプピストンを引き上げます。
 
ポンプピストンを引き上げている時には、プランジャ−スプリングは圧縮されています。
 
ポンプピストンが下がり再度引き上げる時には、燃料はフロートチャンバーからインテークディスチャージ・ジェットを開き、加速ポンプシリンダー内に吸い込まれます。
 
この時、スタッフィング・ボール、バルブボールは閉じて、ボンプジェット(P/J)からの空気の逆流を防いでいます。
 
<スロットルパルプが開く時>
スロットルシャフトに固定されているポンプレバーも、同時に下がります。
 
ポンプコントロールロッドは、ポンプピストンスプリングの力により下げられ、ポンプシリンダー内の燃料も、ポンプピストンにより押し下げられます。
 
押し下げられた燃料はスタッフインタポール、パルプポールを開き、加速燃料通路を通ってポンプジェットへと強制的に圧送され、吸入空気流中へ噴射されます。


  セッティングパーツの説明
【メインジェット(M/J)】
メイン系統に於いて作用するジェットで、ガソリンの量を計量するものです。例えば、メインジェット130番とは1.30m/mの内経です。
 
【エアージェット(A/J)】
メイン系統に於いて作用するジェットであり、エアーの量を計量するものです.例えば、エアージェット200番とは2.00m/mの内経です。
 
【アイドリングジェット(I/J)】
アイドリング系統にて作用するジェットで、エンジン回転数で3000rpm前後までカバーするジェットです。
アイドリングジェットは一つのジェットで、燃料とエアーの両方の計量を行なっています。

例えば  50F−11

     11 エアーホールサイズ
     50 ガソリンの量
アイドリングジェットのガソリンの量と、エアーホールの径を変える事により、アイドリング系統に於いて適切な混合気を作る事が出来ます。
 
【ポンプジェット(P/J)】
急加速時に於いて混合気が非常に希薄になる為、一時的に燃料を加圧し噴射させるジェットです。

【インテークディスチャージジェット】
加速系統に関連するジェットです。
加速系統が作用し、ボンプシリンダー内の燃料がボンプジェットに噴射される時には、フロートチャンバーヘの逆流を防止し又、ボンプシリンダー内に燃料を溜める時の時間をインテークディスチャージジェットの径を変える事により変更出来ます。

【アウターベンチュリー(O/V)】
キャプレター内に空気が吸い込まれる時の空気の流速を変化させ、負圧を発生させるもので、インナーベンチュリーと非常に関係のあるパーツです。アウターベンチュリーの径を変える事により、負圧を調整する事が出来ます。

【インナーベンチュリー(l/V)】
M/J、A/Jにて計量された混合気をインナーベンチュリーのスモールベンチュリー内に発生する負庄により吸い出させ、空気と一緒にシリンダー内に供給する為のパーツです。インナーベンチュリーの径を変える事により、混合気の量を調整出来ます。
 
【フロート】
キャプレターのフロートチャンバーに溜る燃料を変えるものです。
フロートチャンバーの油面調整はこのパ−ツにて行ないます。フロート油面調整はキヤプレターのセッティングには不可欠のものです。

【エマルションチューブ(E/J)】
メイン系統にて作用するもので、エアージェットで計量された空気とメインジェットで計量された燃料を混合し、微粒化するものです。
エマルションチューブを替える事により、中・高速での空気と燃料との微粒化を変化させる手が出来ます。

【スタータージェット】
スターター系統(チョーク)を作動させた場合に作用するジェットです。スタータージェットを変える事により、冷間時の始動に一番適切な混合気を作る事が出来ます。

【ニードルパルプ(N/V)】
キャプレターのフロートチャンバーに燃料を供給したり、ストップさせる為に作動するパルプであり、ニードルパルプの径を変える事により、燃料がフロートチャンバー内の基準値まで溜る時間を変える事が出来ます。

【エアーファンネル(A/F)】
キャプレターの一番先についているラッパの様な型状なものです。
エアーファンネルは吸気の脈動を補正するもので、キャプレター内に空気が吸い込まれる時の乱流防止及びキャプレター内を通過する空気の流速を変える事が出来ます。




  キャブレター調整

【アイドリング調整】
キャプレターの調整を行なう前には、ディスピキャップ、ポイント、コイル、ハイテンションコード等、電気系統に異常の無い事を確認して下さい。
 
エンジンをスローアジャストスクリューにて1500rpmにセットし、水温が80℃近くなるまで待ちます。
 
シンクロテスター(バランサー)を使用して左右のキャプレターの同調を取ります。
 
キャプレターのスロート上部に取付けられているアイドルアジャストスクリューを止まる所まで軽く締め込み、エンジンがスムースに回転し始めるまで、スクリューを除々に戻してセットして下きい。この場合、基準となるアイドルアジャストスクリューの戻し量は3/4〜一回転です。この範囲で調整出来ない場合は、アイドリングジェットの選定が誤っていますので、アイドリングジェットの交換が必要となります。
 
再度シンクロテスターを使用し、スローアジャストスクリューにてアイドル回転数1000rpmにセットします。


 以上で調整は完了です。(ただし、チューニングしてあるエンジンはこのかぎりではありません)

【フロート調整】
<DCOE>
@ ニードル、ニードルバルプ等の取付け位置は、キャプレターカバーに対して垂直であり、ピンボールは、常にフロートクリップに接していなければなりません。又、ニードルがニードルバルプに、ぴったり合った時(すなわち燃料が遮断された時)、フロートの上部よりキャブレターカバーガスケットまでの距離は、標準で8.5mmになります。尚ピンボールが、ニードルの中に喰込むまで、フロートが上る様ですと、オーバーフローの原因となります。その時、ニード ルバルプとニードルの接点をよく点検して下さい。
 
A フロートの位置が上記の位置より6.5mm(キャプレターカバーガスケットより15mm)下がればラッグがニードルバルブのケースに当り止まります。もし、フロートの位置の調整が必要であれば、ラッグとフロートクリップで調整して下さい。
 
B キャプレターの取付け角度によりフロート位置及びニードルの作動で矯正が必要とされる場合、必要とするだけフロートクリップで調整して下さい。その際、各接触部分及びニードル等の作動に異常が無いか良く調べて下さい。
 
C キャプレターカバーを取付ける時、フロートが何らかの障害又は摩耗等によって動きに無理が無いか良く確かめて下さい。少しでも異状な力を必要とする時は、再度各部を点検して下さい。
無理して取付ける事は絶対にさけて下さい。
 
 
もし必要があって、フロートやニードルパルプを取換える時は、必ずフロートの調整をしなけれげなりません。この場合、キャブレターカバーガスケットも取換えて下さい。又、取換えた新しいニードルパルプは、しっかりとボディーにしめてご使用下さい。



  セッティングフローチャート

【チャートの見方】

@ エンジン一気筒当りの容積により、図1と図4を参照しアウターベンチュリー・インナーベンチュリー・アイドリングジェット・ポンプジェットを選択します。
 
A 図1から選択したアウターベンチュリーに対応するメインジェットを、図2を参照し選択します。
 
B 図2から選択したメインジェットに対応するエアージェットを、図3を参照し選択します。
 

【参考セッティング例】

1600cc 4気筒車→エンジン1気筒当りの容量400cc
 
図1よりO/Vの範囲は31〜35 アウターベンチュリー 34とする
 〃 I/Jは50   アイドリングジェット 50とする
 〃 l/Vは3.5又は4.5  インナーベンチュリー 4.5とする
図4よりP/Jは35〜45 加速ポンプジェット 45とする
図2よりO/V34のときM/Jは135〜147 メインジェット 145とする
図3よリM/J145のときA/J205〜235 エアージェット 220とする

以上のセッティングが終れば試走し所要の性能が発揮されないようであれば、チャートの範囲内のジェット類を再び選択し直し試走をするという作業をくりかえし、ぺストセッティングに調整します。

【備考】
アイドリングジェットで使用頻度の高いものは、F9・F8・F11の順となります。
 
エマルションチューブはF11を基準としています。
 
このチャートは参考値であり、エンジンによっては多少の誤差が生じることもあります。
 
このチャートはDCOEタイプのみに適合し、lDA等ダウンドラフトタイプには適合しません。 


  トラブル対策チャート

診断する時に前もって次のことを確認して下さい。
@ 電気系統は正常に作動しているか?
 
A 点火時期調整が正常になされているか?
(バキュームホースを外してエンジン回転し1,000rpmで正規より2〜3度高い点火時期に調整して下さい。)
 
B 車種・排気量とキャブレターサイズのマッチングは適切か?
 
C セッティングの内容は適切か?
 
D エンジンが暖っている時の症状か?冷えている時の症状か?
 
E アクセルを急に踏んだ時の症状か?ゆっくり踏んだ時の症状か?また、その時のトランスミッションのポジションとエンジン回転数は?
 
F エンジン改造の有無とその内容(ウェーバーキットはノーマルエンジンを対象にセッティングされています)

トラブル 症  状 原  因 対  策
アイドリングが不安
3000rpm以下で不調
冷間時は、さほとでもないが、温間時は症状がひどい。 アイドルスクリューの戻しが合っていない。 完全に締め込み、3/4回転もどした付近で円滑に回る所を選ぶ。
アイドリングジェットのサイズが大さい。 アイドリングジェットのサイズを下げるか、Fナンバーでエアホールを大さくする。
温間時は問題ないが冷間時はエンストを起こす。 スロー回転が低すぎる。 スロー回転を1000rpmにする。
片方のキャブレターからバタバタ音が出る。 キャブレターのバランス不良。 シンクロテスター等を用いてバランス調整を行う。
スロー回転にもどるのに時間がかかる。また、早くもどった時はエンストする。 スロットレバーのゆるみ。 スロットルレバー関連の点検・調整。
アイドリング及びスロー調整。
空吹かしをするとマニホールドガスケット付近から音が出て時々火が見える。 マニホールドの取付不良。 マニホールドの増し締め。
ガスケットの不良。 ガスケットの交換。
急発進すると問題ないが、ゆっくり走ると症状がひとい。 アイドリングジェットのマッチング不良(ガスか薄い)。 アイドリングジェットのサイズを上げるか、Fナンバーでエアホールを小さくする。
急発進すると問題がないが、ゆっくり発逢するとプラグがカブリ、煙も出る。 アイドリングジェットのゆるみ。 アイドリングジェットの増し締め。
アイドリングジェットのマッチング不良(ガスが濃い)。 アイドリングジェットのサイズを下げるか、Fナンバーでエアホールを大さくする。

アイドリングは安定しているが、発進時に息をつく。
冷間時にひどく、温間時にも少し症状が出る。 加速ポンプジェットのマッチング不良(ガスが薄い)。 加速ポンプジェットを大きくする。
冷間時より温間時になるにつれてひどくなる。 加速ボンフジェットのマッチング不良(ガスが濃すぎる)。 加速ポンプジェットを小さくする。

3000rpm以上で不調
ローからサード位までは良いがトップで極端に悪化する(失速する) 燃料ボンプの吐出量不足。 吐出量点検、ポンプ交換
フロートレベルが低すぎる。 フロートレベル調整。
プラグが1本失火しているような症状を起こす。 エマルションチューブのゆるみ。 エマルションチューブの点検・調整
エアークリーナを取外し、インナーベンチュリーストッパー用Oリングの有無を点検・調整。
インナーベンチュリーの座りの不良。(40DCOEでエアークリーナー取付車)
インナーペンチュリーの取付不良。(45DCOE取付車) インナーベンチュリーの取付点検・調整。
空吹かしは問題ないが走行すると、5000rpm以上回らない。 メインジェットが小さすぎる。 メインジェットを大さくする。
エアージェットが大さすぎる。 エアージェットを小さくする。
空吹かし、走行とも5000rpm以上回らない。 メインジェットが大きすぎる。 メインジェットを小きくする。
エアージェットが小きすぎる。 エアージェットを大さくする。

※ インジェクション仕様車にウェーバーキットを取付ける場合、一部の車種は電磁ポンプを交換する必要があります。


※ 参考 WEBER RACING CARBURATTOR MANUAL FET極東 


戻る.  UPDATE 00/11/26


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