うたの☆プリンスさまっ♪


 ブロッコリーさん初の乙女ゲームである本作は、「キスよりすごい音楽って本当にあるんだよADV」というジャンルが示すとおり、音楽がテーマ。 手軽に萌えて、笑って、楽しめる、ライトな乙女ゲーです。
 芸能専門学校「早乙女学園」に入学した主人公。 作曲家を志す彼女は、アイドルを目指す男の子と二人一組になって、卒業オーディション合格を目標に学園生活を送っていくことになります。 オーディションで優勝を掴むことはできるのか。そして、パートナーとの恋の行方は……?
 この作品の最大の魅力は、主人公とパートナーが二人で音楽に取り組むという設定と、その設定を活かした音楽だと思います。同じ目標に向かって一緒に努力する中で、 作曲家とアイドルとしての信頼関係が生まれていく流れがとても素敵でした。 そのうえ、卒業オーディションでパートナーが歌うキャラクターソングが、びっくりするほどシナリオとリンクしているのです。 まず、歌い手であるパートナーが書くという設定の歌詞が、そのルートでのそのキャラの心情そのもの。 だけでなく、シナリオでは主人公とパートナーが一緒に曲を作り上げていく様子も描かれているため、 パートナーの歌声やオケにまで思い入れを持つことができました。 パートナーが歌で想いを伝えてくれるエンディングには感動させられます。
 しかし、そんな魅力的な部分も、このゲームを全体的に見ると霞んでしまっているような。 原因はおそらく、乙女ゲーにおいて非常に重要な要素であるシナリオと絵の粗。
 シナリオ面では、作品世界において反則レベルの能力と権力を持っているキャラクター・シャイニング早乙女に頼りすぎてしまっています。 便利なキャラクターを便利に使ってエピソードを強引に収束させられることで、 ドキドキワクワクして読み進めていた気持ちが冷めてしまうことがありました。 また、甘い台詞がクサイうえにやたらと多いのも気になる。 脈絡なく甘い言葉を投げかけられてもときめかない……どころか、むしろ気持ち悪く感じてしまいます。 それならば、相手が主人公を好きになる過程のほうを、もっと丁寧に描いてほしかったです。 はじめにパートナーを選択する形式のおかげで、主人公の心情が比較的丁寧に描かれていたり、 全ルートシナリオが異なっているなど、良い所もあっただけに残念でした。
 絵に関しても、もう少し頑張ってもらいたかった。立ち絵もイベントCGも、キャラクターデザイン原案の倉花千夏さんの絵とはかけ離れているうえに、 キャラクターの顔が一定していません。背景もほとんど描かれていないし、パッと見て「何かが変だ!」と思うような絵も少なくありませんでした。
 それ以外の部分については、大きな不満は感じませんでした。音ゲー部分は判定が甘めで、ゲームを進めるうえで負担にならないよう配慮されていると思います。 それでいて、ハードモードも用意されているから、やり込めば結構長く遊べそう。 システムは概ね快適ですが、バックログやシステム画面を開くたびにBGMが切れるのは、慣れるまで気になりました。 あと、タイトル画面からチャプター選択に直行できないのと、ミニゲーム中に一時停止も中断もできないのはちょっと不便かな。
 と、辛い意見が多くなりましたが、愛すべきキャラいっぱいで居心地の良いうた☆プリワールド、すごく気に入っています。 個性強めの主人公も、面白可愛くて好き。 あと一歩で傑作と呼べる乙女ゲーになったかも、と感じさせる雰囲気があるから、CDなどで稼いでいつかリメイクしていただきたいなあと思います。 ……このままじゃもったいないよ!
 

「ゲーム感想」トップ
トップページ