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          イギリス旅行記

 1970年夏、ラジオの深夜放送で覚えたポップスを聴き始めて間もない頃、友人の家で1枚のレコードを聴かされた。「これ聴いてみろよ、凄くいいぜ!」 友人は自慢げに、レコード盤に針を落とした。そのレコードはビートルズのヒット曲ばかりを集めた、「オールディーズ」 というアルバムで、初めて聴くオレにはとても新鮮だったのを覚えている。“シー・ラブズ・ユー”、“抱きしめたい”、“ヘルプ!”、“イエスタディ”、“ミッシェル”・・・・それがビートルズとの出会いだった。そのアルバムをきっかけにオレたちはビートルズ・ファンになり、それからの生活は、“寝ても覚めてもビートルズ!” という生活になっていった。小遣いを貯めてはレコードを買い揃え、休みの日には、新宿、渋谷と、海賊版を探しにレコード店を歩き回った。有楽町でフィルムコンサートがあると聞けば学校をサボって足を運び、新宿でビートルズの映画を3本立てで上映すると知れば、開演前から並んで、最終回まで映画館で見ていた。ちなみにビートルズは、1970年4月、オレたちが中学に入学すると同時に解散してしまっている。いわばビートルズ第二世代である。翌年に高校受験を控えた1972年秋、同じビートルズ好きの友人との会話は、今でもハッキリと覚えている。「将来、どうする?」 「オレは将来、ビートルズの生まれ故郷、リバプールに行くんだ!」 まだCDもパソコンも携帯電話もない時代、甘酸っぱい香りのする青春のワンシーンだった。

      

  アルバム「オールディーズ」!       夢中になったビートルズ!     

  2004年初夏、「リバプールに行くんだ!」 と言ってから30数年、忘れかけていた夢を叶えるときがきた。数年前から始めたインターネットで、“ロンドン5泊6日・・・”の広告を目にしたとき、すでに心は決まっていた。フリーターの今、本来なら海外旅行より先に仕事を探さなくてはいけないのだが、そんなことはどうでもよかった。「リバプールに行ったら、キャバーン・クラブへ行って、ペニーレーンへ行って、ストロベリー・フィールズへ行って・・・」 「ロンドンに戻ったらアビーロードへ行って、ボストンプレイスへ行って、サビルロウへ行って・・・・」 自分の中ではイギリスへ行くという、既成事実が出来上がっていた。いつもの悪い癖、勝手な思い込みだ。その一方で、外見とは裏腹にけっこう大胆な行動に出る自分がいることも知っている。こういう性格は昔から変わらないし、これからも変わらないだろう。翌日、足は自然と旅行センターに向かっていた。

  イギリスツアーの日程が決まった。6月10日(木)〜16日(水)の1週間、ロンドン5泊6日だ。行き帰りのフライトと宿泊先のホテルが決まっていて、その他の日程はすべてフリータイム、自分で予定を組んで行動する。こういうツアーを、“スケルトンツアー” というらしい。初日のロンドン着は夕方5:00と早いし、帰りのロンドン・ヒースロー空港発のフライトは夜9:00発と、最終日も夕方までロンドンを満喫できるラッキーな日程だった。メーンはビートルズの故郷リバプールだが、他にも行きたい場所はたくさんある。ロンドンでは、バッキンガム宮殿、ビッグベン、ソーホー、大英博物館、ハロッズ、トラファルガー広場、ナショナルギャラリー・・・ロンドン郊外でも、ストーンヘンジ、バース・・・心はひと足先にイギリスに飛んでいた。





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