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         ナイアガラ観光記

                                   2003年 春

 この年の3月に10年勤めた会社を辞めていた。知り合いの居酒屋を手伝いながら過ごしていたある日、友人のひと言がきっかけとなった。「海外でも行ってくれば!」 海外旅行なんて今まで考えたこともなかった。オレは東京生まれの東京育ち、30代半ばで伊豆に移り住んで10年ちょっと。海外旅行どころか、国内線の飛行機さえ乗ったこともない。周りからは、「いまどき珍しい!」 といわれる典型的な “東京生まれの田舎者!” だった。なにしろ、会社を辞めてからの最初の夢は、「伊豆以外の温泉に行ってみたい!」 だったのだから。単純なオレは友人のひと言に触発され、海外旅行に行くことを決めていた。
 行くならニューヨークしかなかった。2001年9月11日に起きた米国テロの跡地、グランド・ゼロに行って祈りを捧げたい!というのが一番の理由だったが、他にもニューヨークには、オレの好きなビートルズのジョン・レノンが住んでいたダコタ・ハウスがある。ビートルズ・ファンとしては外せないスポットだ。自由の女神もこの目で見たいし、広大な敷地のセントラル・パークの芝生に寝転んで、ゴロンとしてみたい。そして去年、プロ野球の松井秀喜選手が巨人を退団して、ニューヨーク・ヤンキースに入団、松井の活躍を期待していろいろな番組が特集を組み、朝のニュースでも、“今日のニューヨークは・・・” という感じで、毎朝ニューヨークの映像が流れていたこともニューヨーク行きを後押しした。4月中旬に、「伊豆以外の温泉に行ってみたい!」 という夢を無事に叶え、帰りに立ち寄った東京・新宿の書店でニューヨークのガイドブックを買ってからは、頭の中は毎日、ニューヨークでいっぱいになっていた。
 温泉旅行から帰って数日後、近くの旅行センターにニューヨーク旅行を申し込みに行った。ツアーの日程などを相談中、パンフレットをよく見ると、“ニューヨーク&ナイアガラ!”“ニューヨーク&ラスベガス!” とあった。「・・・・どうせなら2都市、行ってしまえ!」 初めての海外旅行、高級ホテルに泊まることに興味はなかったが、こういうことでケチりたくはなかった。ナイアガラか、ラスベガスか?オレは迷うことなくナイアガラを選んでいた。以前、友人と飲み屋の席で、「世界三大瀑布のひとつ “ナイアガラの滝” は、天城にある “浄蓮の滝” の、何倍くらいあるのだろう?」 というくだらない会話を思い出したのと、ファンであるジョンとヨーコも行っている。あのエルヴィス・プレスリーも新婚旅行に選んだこの地を、是非とも訪れて見たかった。旅行の行き先なんて、だいたいこんな感じで決まるものだ。
 1週間後に日程表が届いた。“ニューヨーク&ナイアガラの旅!” 2003年6月6日(金)〜6月12日(木)、5泊7日(ナイアガラに1泊、ニューヨークに4泊)の1週間。初めての海外旅行で最初に訪れるのは、カナダ・ナイアガラと決まった。




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