「虎は死して皮を残す。」

   「人は死して名を残す。」

数を釣るより大鯛を釣らせることに誇りを持つ昭船長は独自の信念を熱く語る。

とにかく「信じて釣ること」これが真鯛釣りの秘訣だそうだ。




 確か、初めて南房総を訪れた時もこの宿だったな。
あれから二年、これで六度目の房総。一度も真鯛を捕っていないのが気になるところだけど・・。

大鯛を求めて熱くなった相棒とともに「ここで釣れるまで」と決めた「海老丸」へ。

週間予報はめまぐるしく変化し、天気図はいつもの如くシワを寄せたツレナイ表情を見せる。(天気図睨みながら休暇をとっても意味がなかったわけね。)
 前回の手ごたえを忘れないうちに訪れた平砂浦沖。
アクアラインを抜ける時に吹いていた「9m」の風は勢いを増し、また時化た・・。(汗)
何をいまさら、ちょっとやそっと時化じゃ驚きゃしないよ。(怒)





 二投目から真鯛を手にしてすっかり気をよくしたか、いいリズムで手返しを繰り返す。
とにかく「信じること」そして「こまめな人が安定した釣果を残す。」そんな言葉が頭に浮かんで離れなかった。


そして・・


南西の風に舳先が大きく煽られた次の瞬間だった。

竿が引き込まれ、緩んだドラッグから勢い良くスプールが滑った。
止まらない・・竿を手にして堪える、まだ・・まだ・・・。
10mほどラインが出たところで一旦止まると”カチッ”とドラッグを絞めた。
尻手をへその下に立て、空回りするハンドルを回し始めると野郎再び走りだした。

一進一退を繰り返しながら、その都度ドラッグを”カチッ””カチッ”と絞めてゆく。決して慌てない・・どんなにハリスが傷ついているかわからない、どこに針がかりしてるかわからない。
一度、二度・・突込みをかわすたびに今度こそ絶対に捕ってやる。その気持ちが冷静さを取り戻させた。




 いくら巻いても潮上へと鋭い突込みを繰り返す。
船長は「イナダかもしんねーなー」と半信半疑で声をかけてきた。

気持ちが動揺する・・とにかく顔を見るまでは・・・。

20mの表示を境にどれほどの攻防が繰り返されただろうか、どんなに時間がかかろうが必ず浮かせてやる。”カチッ””カチッ”奴の衰えを感じるとドラッグがどんどん絞められていった。

そしてビシを掴んでハリスを手繰り始めると
澄んだ海中に”キラッ”と白く輝く魚体が・・ワラサか?目を凝らす。
2mほど手繰ると軽くなった・・浮いた。

捕った。

船長のタモに収まったのは赤い「真鯛」だった。




南房総6度目にして満足の一枚


 この日は食いが立ったかアタリも多く、相棒は二度のチャンスを惜しくも・・。オレは二投目の1kgから9:00の5.8kg(写真)を最後に三枚で初めて房総で真鯛を手にする事ができた。





 19日は早朝から南西風が強く結局前回同様の早上がり。この日の夜まだ強い風の音が聞こえ、翌朝の出船も危ぶまれたが・・。

20日目覚めると風は止んでいた。雨はおろか星が綺麗に輝いてる。
「これなら・・」っと相棒の二日目に期待を抱いたんだけど・・。

台風のものとは違う不思議なうねり。

東からの強い上潮で大きくビシが流され釣り辛い。
船長も明らかな昨日との違いに見切りが早い。

布良瀬へと船をまわすも状況は変わらず、悪夢の「顔見ず」で終わった。
この日起きた房総震源の地震を察知したのか、明暗ハッキリ分かれた二日間の武者修行は幕を閉じた。

さて、相棒はおさまりがついたのか?
民宿いそざき(海老丸)での夕食


TOPへ戻る