「その時」は突然に訪れた

 暗がりの中、車から降りて漁業基地という言葉が似合う御前崎港の一角で支度を始めると強く冷たい東風が気になった。案の定、巨大な港内の航路を進み外海に出ると船は秋風にさまよう木の葉の様に大きく右に左に揺れはじめた。これが外洋に面した「御前崎」の海なのか。
おいらもめで鯛さんもこの時ばかりは蒼い顔をしてへたり込んでしまった。

 その後、追い風に乗りながら沖に向かうと船体の揺れもやや収まりおいらもホッとして周囲を眺めると御前崎真沖のポイントでは既に10艘ほどの船が流し始めていた。
今日の為に準備したのはをグランドマックス6号7.5m、を船ハリス4号4.5mのそれぞれを7号のローリングサルカンでジョイントした15mのテーパー仕掛け。サルカンへは海老丸のアキラ船長が切れたことが無いと言っていた八の字結びで・・・。更に針は海老丸で頂いた真鯛用に平打ちされたGRUNHook10号(金)をいつになく丁寧にチモトを補強したものだった。
お〜ま〜え〜ざぁ〜きぃ〜
御前崎の朝焼け。
 ロングハリスとはいえ太い事とテーパーにしてあるせいか手前マツリする事無く比較的スムーズに投入する事が出来た。次に・・・指示棚は28m。あらら? 余りのうねりでマーカーの付いたラインを見損ねてしまったのだ。すかさず、デジタル表示の棚で30mまで落ちたところを再度水面までゆっくり巻き上げて棚を取り直した。船長指示より−6mでハリスが馴染むまで数秒ほど待つ。そこから2m毎に東京湾のそれとは違い軽く”スゥ〜ッ”と竿をゆっくり上に振り上げながらコマセを3回に分けて竿をキーパに置いた。

 するとその瞬間は突然にやって来たのだ。

 キーパに置いてから3分ほどが過ぎた時、大きなうねりによる竿の動きとはハッキリ異なる突っ込み。穂先が海に引き込まれて戻ってこない。その瞬間、本当に戻ってこないのか?魚信なのか??そんな感じで時間が止まったかのように、間違いなく大物がその先に喰らいついている事を確かめるように深く突っ込んだ穂先を見つめていた。
すごく短い時間の中でさまざまな事を考えながら竿を手にすると緩めていたドラグで10mほどの糸が引き出されていた。竿尻をを右足太もものつけねにあてがい、竿を斜めに立てた状態で突っ込みをかわす。間違いない、時折猛然と突っ込むこの糸の先に居る魚は真鯛だ。そう思いながらいつもと同じように意外なまでに冷静に慎重なやり取りをしていた。
船が大きく揺れる中での第一投、ましてや船中一発目、二度三度と鋭く突っ込むそれをかわしながらようやくビシを取り込み長いハリスを手繰ると白い魚体がクルクルと回りながら浮いてきた。「でかい」無事タモに収まったのは自己最高の3kgはあろうかと言う少し黒ずんだ真鯛だった。
右舷舳
Viperstickが悲鳴をあげてんよぉ〜。
 時合を逃す事無く船上皆の雰囲気が一変したように思えたた時・・・。
右舳、おいらの裏手に釣り座を構えていためで鯛さんの竿が大きくしなった。おいらは一枚目の魚から針を外して二投目の準備をすると船中二発目のタモ取りへと走った。こちらも型よく手繰ったハリスの先にはさっき見た自分の魚よりも大きい4kgクラスが回りながら浮いてきた。

 第二投を投入すると今度は右舷胴の
なかじまさんにアタリが出た。まだ開始後数分で舳側では次から次への良型が連発する「信じられない事態が!」なかじまさんもめで鯛さんのタモ取りで自己記録を更新する綺麗な2kgオーバをゲット。これ以上ない幸先の良いスタートを切ったかと思われたのだが、御前崎の海では更なる大物が・・・。
開始早々!
実釣開始後数分でおいらをはじめ、めで鯛さん、なかじまさんに型が・・・

 そんなめで鯛さんなかじまさんの写真(上)を撮って釣り座に戻って穂先を見やると・・・。
ズドーン」と音がするかのように赤い穂先が、いや竿自体が海面に突き刺さった。隣りの左舷胴に釣り座を構えたマルソータさんもその竿の動きに唖然としたらしい。
慌てて竿を手にすると既に10m程の糸が引き出されていてファイティングポーズをとると奴さんひるむ事なく更に10m、水深に対して20mほどが引き出された。
手応えとしては先ほどのものより遥かに強く、確かな重量感。ハリスは4号ドラグの調整も十分。慎重かつ丁寧にやれば必ず手にする事が出来るはず。そう信じながら時間をかけ、落ち着いたやり取りをする。「ドラグさえ調整していれば十分かわせる」そんな親方の言葉が思い出される瞬間でもあった。一枚目に対して二倍ほどの時間を、恐らくは10分ほどを費やしただろうかスタミナを奪われた奴さんが掛かったハリスを手繰るとそこには一枚目を遥かに上回る5kgの真鯛が。
でろ〜ん♪
夢が現実に・・・一投目の3kgと2投目の5kg(自宅にて)
 その後はイナダが喰い始めポイントを原発沖に移すとエメラルドグリーンの海の上でいつしか爽やかな風に包まれ心地よい天気になった。
ここでの指示棚は22〜30m、時折イサキ混じりで小ぶりな真鯛が飽きる事無くポツポツ喰い続ける。小型が活発な分、大型が喰ってこないといった感じで型的には1kg以下が中心の数釣りといった様相を呈してきた。(よくよく考えてみるとここでハリスを伸ばしていたら展開が変わったかも?)

ぼうず知らずの御前崎」恐るべし。

左舷2番手、3番手
マルソータさんとMKさんもイサキ含みで順調。

 どちらかと言うと舳に分があった今回のOLMであったが、途中船長から全員ビシを上げるようにと指示があった。見ると右艫のひらいさんがやり取りをしている。
船長の話ではカンパチでは?という事らしい。遠めに見ていて全くラインが回収できていない様子。見ているだけで「ずっしり」とした重量感が伝わり力がはいる。「フッ・・・」一瞬ハリス切れかとも思えるように竿の描く孤が緩くなった。
リーリングしている本人もバレたような感触を得たようだったがまだ何かが付いている?まさか鮫にでもかじられたかと思ってみていると3kgクラスの「ワラサ」が無事?上がってるでないの。船長曰く針に掛かったワラサをモロコが咥えて違和感を感じたモロコがあきらめて吐き出したもののワラサは噛まれて「へべれけ」になって上がってきたのだろうと。
恐るべし御前崎・・・。

右舷艫
ひらいさんは、かけたワラサをモロコにパクリ!

 台風21号の動きに冷や冷やしたものの、良いコンディションのもとで行えた今回の御前崎遠征はリフレッシュの10連休を締めくくるに充分な釣行となりました。
結果はキロオーバが4枚と他8枚で12枚数では記録更新とはなりませんでしたが、その型は大きさ以上に心の中に続ける事でしょう。

 色々な方々にwebや船上でアドバイスを頂いた事、それと何より釣り方を教え自信を与えてくれた御前崎の真鯛、釣行を企画してくれためで鯛さんに感謝です。

 今回ご一緒しためで鯛さんひらいさんマルソータさんMKさんなかじまさんお世話様でした。またよろしくお願いします。

ジャ〜ン♪
キロオーバは4枚だけど終ってみれば数釣りで12枚。


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