全てが××になっていく


紀末は、来るはずの時に来なかった ―――――
マリリン・マンソン自伝、地獄からの帰還の一節である。

マリリン・マンソンとは、アメリカの超人気ロックバンドの名で、同時にバンドの中心人物であるボーカリストの名である。(ちなみに男)
最近の音楽は面白くないなぁとジジ臭いことを思っていた時に、久々に面白い音楽を聴かせてくれたのが彼らだった。

彼らの音楽は、一言で言えば過激且つ壊れていて、しかもエンターテイメント性をあわせ持っているという感じである。
また、何より恐怖と苦痛で彩られた、幻想的ですらある歪んだ悪夢の世界が展開される、MTVが素晴らしい。僕の場合、ユーリズミックスのカバー曲、「スイートドリームス」のビデオクリップを見て、一発でファンになってしまった。
マンソン氏に言わせると人間関係を歌った曲だそうだが、「どーいう人間関係だよ」と突っ込みたくなるのは僕だけではあるまい(笑)。

ところで、このバンドはその過激性からか、狂信的キリスト教徒達から様々な妨害活動や誹謗中傷をうけている。アメリカではライブの度にそうした連中の抗議デモが繰り広げられるという。そのため、ライブが中止される事もある。マリリン・マンソンのライブを公式に禁止している州もいくつかあり、ユタ州はその一つである。
(マンソンがユタ州でモルモン書を焼いてみせたと聞いた時は、思わず快哉を叫んだものだ)

確かにマンソンは、歯に衣を着せぬキリスト教批判をしている。
しかし、批判されたからと言って、悪魔だとか反キリストだとか、マリリン・マンソンを聴くと地獄に堕ちるなどと言って、人の表現活動を制限しようとする方が異常なのである。

ただし、“アンチクライスト・スーパースター”というキャラクターを曲の中で演じたりもしているが、もちろんマンソンは聖書にある「獣」ではないし、悪魔崇拝者でもない。
マリリン・マンソンの歌はネガティブなものだが、アメリカ社会、人の内面を表現しているのであり、それは彼らの曲を聴けばわかることである。

そこで、その名も『アンチクライスト・スーパースター』というアルバムから、「MAN THAT YOU FEAR」を翻訳して紹介してみよう。
このアルバムにはヘヴィでハードな曲が多いが、この曲はスローな落ち着いた曲で、心地よい絶望感に浸れる名曲である。

お奨めなので、マリリン・マンソン公式サイトで聴いてみてはいかがだろうか?



――――――――――――――――――――――――――――

お前の怖れる人間(MAN THAT YOU FEAR)


砂糖にはアリが這い 筋肉は萎え   
その向こうで、俺達はTVのスクリーンにいる   
俺の中を広げ 肋骨まで見せてやろう   
幼児達の堕胎台に俺は生まれた    
全てがクソになっていく   
お前の子供は、お前の怖れる人間になる

自分の番まで祈るがいい   
悲しみを逃れ眠るがいい   
お前の禁断の実は腐っている   
明日には朽ち果てるだろう   
俺はその全てを得たが 食いはしない   
だが、ツケは払わせてやる お前にな   
今すぐ死ぬこともできるぞ   
俺の心の中じゃ、お前はすでに死んでいるんだ   
今やお前の子供は、恐るべき怪物なのさ

その目をそらし 闇の中を這うがいい   
お前は子供達に毒を飲ませた   
自分の傷跡をごまかすために   
お前のカケラに祈れ お前の怖れに祈れ   
お前の人生が夢だったら良かったのに、と   
決して癒えることのない傷   
さあ、祈れ お前の人生はただの夢だったと        
(ただの夢・・・)   

<俺は逃れようのない罪に心を悩ます>   

俺の頭をちぎりとってみろ   
雑草みたいに踏み潰してみろ   
誰かが遠い彼方に行く   
俺の生まれた所へと   
全てがクソになっていく   
お前の子供は、お前の怖れる人間になる   

その目をそらし 闇の中を這うがいい   
お前は子供達に毒を飲ませた   
自分の傷跡をごまかすために   
お前のカケラに祈れ お前の怖れに祈れ   
お前の人生が夢だったら良かったのに、と   
決して癒えることのない傷   
さあ、祈れ お前の人生はただの夢だったと        
(ただの夢・・・)

俺の世界じゃ、お前の金切り声を聞くヤツはいない   
お前のそばには、誰も残っちゃいないのさ






        (Lyrics: Marilyn Manson)
――――――――――――――――――――――――――――


過激な詩なので、少し解説しよう。
この曲はアメリカ社会、そして自分に攻撃をしてきた者も含めた、キリスト教徒達について歌っていると思われる。保守的な連中から忌み嫌われる、マリリン・マンソンならではの歌だろう。

ところで、この曲のビデオクリップではSHIT(クソ)というのが消されているが、なぜFUCK YOU!は良くてSHITは駄目なのだろうか。
アメリカというのも不思議な国だ。

みなさんは、どのように感じられただろうか?




                                     ('99 9/18)