判例タイムズNo.1031(2000.8.1)

大真実裁判が判例として掲載されました。
(以下、P235、236より)



 一 書籍における他の著作物の記載の引用が、いわゆる適法引用に当たり著作権を侵害しないとされた事例

 二 書籍における他の著作物の記載の引用について、出所の明示がされているとされた事例

 三 書籍における図絵の引用が著作者人格権を侵害していないとされた事例

 四 著作者の名誉及び声望を侵害するような方法で著作物の利用を行ったとはいえないとされた事例


水戸地裁龍ヶ崎支部平一〇(ワ)第一五五号、発売禁止等 請求事件、平11・5・17判決、請求棄却・確定〕

【参照条文】
(一につき) 著作権法三二条一項、
(二につき) 著作権法四八条一項・二項、
(三につき) 著作権法二〇条、
(四につき) 著作権法一一三条三項


 ≪解説≫
 一 本件判決は、Yが執筆し、Zが発行及び販売した書籍がXの著作権、著作者人格権、人格権等を侵害するなどとして、XがY及びZに対し、右書籍の発売等の禁止、廃棄、謝罪広告及び損害賠償を求めたのに対し、これを棄却した事例判例である。本件の争点は多岐にわたるが、ここでは、判示事項の著作権法に係る争点部分を取り上げて紹介する。

 二 Xは、「とんでも本」といわれるような漫画本など多数の書籍を執筆し、右著作物について著作権を有するものであるが、YがXの著作物中の多数の記載や図絵を引用するなどしながら右著作物の内容を検証し批評した内容の著作物を執筆し、これを出版社であるZが新書版の本件書籍として発行及び販売した。そこで、Xは、本訴を提起し、(1)Xの著作権の侵害の有無に関して、本件書籍におけるXの著作物中の記載や図絵の引用は、著作権法三二条に定める、いわゆる適法引用に当たるか、また、Xの著作物中の記載の引用は、著作権法四八条に定める、著作物からの出所の明示がされているか、(2)Xの著作者人格権の侵害の有無に関して、Yの図絵はXの図絵を改変していて、Xの著作物の同一性保持権(著作権法二〇条)を侵害しているか、また、本件書籍は著作者であるXの名誉及び声望を侵害するような方法でXの著作物の利用を行っている部分があるか(著作権法一一三条三項)などが争われた。

 これに対し、本判決は、Xの請求を棄却し、右争点について次のとおり判断した。すなわち、(1)Xの著作権の侵害に関しては、本件書籍におけるXの著作物中の記載や図絵の引用は、本件書籍はXの仮説を検証ないし批評する目的のもので、引用される部分が従であるなどから著作権法三二条の適法引用の要件を満たすし、また、本件書籍においては必ずしも引用の都度逐一指摘していないけれども、利用の態様に応じて合理的と認められる方法及び程度により出所を明示しているといえる、(2)Xの著作者人格権の侵害の有無に関しては、Yの図絵は、Xの図絵のうち創作性が認められる部分については何らの加工をしていないといえるから、Xの著作物の同一性保持権を侵害しているとはいえないし、また、本件書籍にはXから見ると人格を嘲笑されたと受け止めたとしてもやむを得ない箇所やXがその著作物において特定したことのない特定の事象の発生するであろう日時を特定した箇所があるが、前者はYがXないしXの仮説に対し批評的意見を述べたものであり、後者はYがXの仮説に基づいて推論した結果を記載したものであって、著作権法一一三条三項が禁止する著作者人格権を侵害する態様で引用したものではないとした。

 三 本件におけるような「とんでも本」に限らず他の著作物の内容を検証し批評した内容の著作物が少なからず執筆出版されているようであり、そこでの引用に際しての出所の明示方法については、新書版書籍においては、本件書籍におけるような方法を採るものも相当多いのが実状のようである。

 また、右批評等に係る著作物を巡っては各種の著作権法等の違反の有無が争点となり得るが、本判決が参照掲記する最三小判昭55・3・28民集三四巻三号二四四頁、本誌四一五号一〇〇頁(パロディ写真事件)は、旧著作権法の規定の解釈ではあるものの、引用の意義、適法引用の要件を明らかにしたほか、さらに著作者人格権を侵害する態様の引用が許されないことを確認しており、これらは現著作権法の解釈等を巡っても参考になるものである。
 本判決は、右のような実状や判例を踏まえたものといえよう。

以下、判決文と、別紙記載・著作権侵害とされた箇所の一覧表1の一部、誹謗中傷とされた箇所の一部が続きますが、省略します。



Update/2000.8.29

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