書評・『トンデモ大予言の後始末』


1999年は、トンデモ・ノストラ解釈者への失笑だけを残して過ぎ去った。


やや不満だったのは、日本人の体質と言うべきなのか、予言を外しまくった解釈者達への追及がおざなりに済まされたように思われることである。何もマスコミを挙げて追及しろとは言わない(そんな価値はない)が、あれだけ放言しまくった連中である。
「あんた達の言ってきたことは、一体なんだったの?」と、もう少し詰め寄っても良かったのではないかと思う。
それは多分、これからも現れるであろうトンデモ大予言に対して、免疫として残されるはずなのだ。

ほとんどの人は、すでに恐怖の大王予言なんて信じていなかった。トンデモさん達の語る予言はあまりにも荒唐無稽に思えたし、現実は、相も変らぬ日常がこれからも続いていくのだと語りかけていた。
そして、七の月を自分達には影響のない安全なイベントとして過ごしたようだ。

しかし、五島勉氏には何百万もの日本人が騙されてきたのだし、たくさんの新宗教団体が影響を受けている。他の解釈者達の信奉者も含めると、かなり多くの人々が“何かが起こるに違いない”という期待混じりの不安を抱いてあの時期を過ごしていた事は間違いない。
そうした信奉者達とは関わりのないフツーの日本人も、別の予言――占いには何の疑問も持っていないようである。

1999年が平静の内に過ぎていったのは、日本人が昔と比べて賢くなったからだとは思えない。――飽きてしまったからである。
流行の中で皆が“恐怖の大王が降って来るぞ”と言えば何となく信じ、流行が過ぎ去ればそんな事も忘れる。一方で、予言を信じた信奉者達は、あれこれと理由をつけて体裁を取り繕い、無かった事にしてしまっている。

そう、日本人は何の反省もしていない。
だから、日本人は何度でも騙されるに違いない。
国際情勢が変化するたび、大事件が起こるたび、これからも便乗予言本が登場することだろう。
そして、それは結構売れるに違いない。
その頃には、1999年に何があったのかは、忘れ去られているはずだからだ。

最近出版された『トンデモ大予言の後始末』(洋泉社)は、そんな不満を一挙に解消してくれる好著である。ベストセラーとなった『トンデモ・ノストラダムス本の世界』の山本弘氏が、誰かが言うべきだったことを余すことなく代弁してくれている。
そのツッコミは今回も・・・いや、前作以上に冴えまくり、言いにくい事をズバッと言ってくれて実に気持ちがいい。
爆笑もののツッコミも健在で(特にMMRの項はお薦め)、トンデモさん達の言動には慣れているつもりでいながら、やはり笑わされてしまった。こういうツッコミを“嘲笑している”と悪意に解釈する向きもあるが、面白い話を笑ってしまうのは、生理現象なので仕方がない。
(笑える事を書く方が悪い)
まだお持ちでない方には、ぜひお薦めする次第である。

この『トンデモ大予言の後始末』は、主に『トンデモ・ノストラダムス本の世界』以降(1998年6月〜)から99年にかけて出版されたノストラダムス本への書評となっている。この時期、これだけのノストラ本が出されていたのかと、改めて驚かされる(40冊以上だそうだ)。

また、前作に比べ、飛鳥昭雄に対して大幅に紙面が割かれているのも、ここをお読みの方々にお薦めしたい理由である。
この本により、もはや飛鳥昭雄が愛すべきトンデモさんではない事を知る読者も多いだろう。飛鳥氏も、自分が相手にしたのが何者だったのか、思い知らされたに違いない。
大真実裁判、そしてネットでの動きについて報告されているところも、うれしい限りである。僕の代わりに反論してくれているような部分もあったりする。(山本先生、感謝いたしますm(__)m)

この本を読んで思ったが、飛鳥氏は他のノストラ解釈者と比べて、何ら遜色がない。
1999年7の月、世界政府誕生という予言は確かに地味だが、それに続く木星からの新惑星誕生、その惑星による電磁嵐でプラズマ発生、人類を淘汰する描写は相当キている。
加えて、モルモン教布教、見苦しい言い訳と稚拙な反論、批判されれば訴訟を起こすなど、タチの悪さでは他のトンデモさんを凌駕していると言っていいだろう。

しかし、この本で一番印象に残ったのは、最後のこの一文だった。

「フランス語も読めないオカルト・マニアたちが、なんの根拠もなしに珍解釈を競い合う時代は終わった。これからは豊富な知識を持った歴史家や文学者たちが、学術的にノストラダムスを研究する時代なのだ」(P274)

おそらく、こんな風にノストラダムス予言へツッコミを入れる本も、これで最後になるに違いない。
二十年近くに渡るノストラダムス現象の総決算として、特にビリーバーだった人達に読んでほしい一冊である。


 『トンデモ大予言の後始末』(洋泉社) 山本弘 著  1500円+税

                                    (2000, 7.2)
                                




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