第ニ章  未確認動物のデタラメ情報

飛鳥昭雄氏のUMA情報

 凡例



それでは、いよいよ飛鳥説の検証に入ろう。まずは小手調べに、未確認動物(UMA、あるいはヒドゥン・アニマル)から行こう。あの「ショック・サイエンス」も、ネッシーなどのUMAから始まったのである。
「ショック・サイエンス」に登場したUMA達は、毛むくじゃらの恐竜など、他には類を見ない異様なものだった。

ここでまずことわっておきたいのだが、誤認はあるにせよ、UMAは実在するものと筆者は考えている。この地球にはまだまだ発見されていない動物がたくさんいるというのは、生物学者の一致した見解でもある。(ただし「動物」というのは哺乳類だけではなく、虫や魚、原生動物まで含まれる、広い範囲の分類である)

※ちなみに、恐竜は鳥類に進化して生き残ったという説もあり、だとすると恐竜が絶滅したとは一概には言えないかもしれない。


そうすると、ショック・サイエンスに出てきたUMAは本物なのだろうか?

実は、あのマンガのUMA情報のほとんどは、とてもではないが正確とは言えない代物なのである。元になった情報はあるにせよ、手ひどく歪曲、あるいは誇張されているのだ。あるいは、情報が不正確であったり、都合の悪い部分はなぜか書き忘れていたり、いずれにせよ、自説に都合のいいように演出されているのである。これは、飛鳥氏の情報全般に言えることだ。
まあ、いきなりそう言われてもピンとこないだろうから、具体例を示そう。

――1958年2月、南極観測船「宗谷」が南極のリュッツオホルム湾内で氷に閉じ込められた時、松本船長ら4名が謎の生物を目撃した。
その生物には、褐色の毛と黒い斑点があった――
 (SS1−P32、SSR1−P58)

飛鳥氏はこの生物を、毛むくじゃらのディメトロドン(※)として描いている。
(※背中に大きな体温調節用のヒレを持つ、古生代ペルム紀の哺乳類型爬虫類)

ところが、宗谷の乗組員が謎の生物を目撃したのは、海上なのである。
その生物は前方300mの海面に浮かんでいて、「頭の高さが約二メートル、直径一.五メートル、かなり離れた後方に背ビレと尾ビレらしいものが見え、推定全長十四、五メートルという巨大な生物だった」。また、「全身は褐色の毛で覆われ、ところどころ濃い斑点があり、角ばった頭部の両側にピクピク耳が動いていた」そうである。
(『謎の巨大生物を追え』P148,149より)

※注:このUMAには、南極のゴジラという名前がある。
    詳しい情報はこちらをどうぞ。


この生物の正体が何かはわからないが、少なくともディメトロドンでない事だけは確かである。おそらく、飛鳥氏は断片的情報だけを得ており、宗谷が氷に閉じ込められていたから陸上生物と考え、また、背ビレがあったのでディメトロドンと推測したのだろう。
ここからも、飛鳥氏の誇張癖がうかがわれる。

さらに例を挙げよう。飛鳥氏の描いたカミナリ竜(首の長い4足恐竜)をご覧になったことがあるだろうか? やはり、毛むくじゃらに描かれているのである。
ところで、『恐竜絶滅の大真実』ではカミナリ竜が首長竜と書かれているが、首長竜とはプレシオサウルスなどの海生爬虫類のことである(爆)。例えばティラノサウルスに襲われて、「首長竜が気づいた時はすでに手おくれだった!」(P109)‥‥って、どう見てもカミナリ竜なんですけど(笑)。
他の所では、「首長竜は最新の骨格研究から 尾を水平に伸ばし首を立て脚を伸ばして 後足で立ち上がったことが判明している!」(P117)とある(そりゃスゴイ!)。
まあ、筆者も人の無知を笑えるほど博識というわけではないが、飛鳥氏の場合、明らかに間違っている事を力いっぱい断言してしまうので、苦笑せざるをえない。

ともかく、『恐竜の謎完全解明』では、「ケニアやコンゴでも20世紀のはじめ頃に全身毛むくじゃらの巨大な巨大な怪物が原住民の家屋を襲うという事件がつづいた」という説明文に、頭を除いて全身毛むくじゃら、口がクチバシ型になっているカミナリ竜の絵が付けられている。(P65,SSR1−P93)

マルセラン・アニャーニャによる怪獣の目撃スケッチ
『謎の巨大獣を追え』 P36より


そして、その後「最近も同じコンゴでコンゴ=ドラゴンと呼ばれる恐竜が目撃されて大騒ぎになった」として、コンゴ=ドラゴン(モケーレ・ムベンベ)の目撃スケッチが出ている。
ここで、先述の奇妙なカミナリ竜の絵はこの目撃スケッチが元だと判明するのだが、実はこのわずか1ページの中に、二重、三重の詐術が隠されているのである!

氷河生物カリコテリウム
『謎の巨大獣を追え』P182より

カリコテリウムの復元図

まず第一に、ケニアで原住部族を襲ったのは、恐竜の生き残りではない。確かに毛は生えているが、それは「ナンディ・ベア」と呼ばれるUMAで、クマそっくりの大型獣なのだ。この怪物が西欧人に初めて目撃されたのは1905年だが、現代でも毎年のように家畜や人間が脳を食われて死んでいるという。その正体は、ウマの遠い祖先といわれるカリコテリウムだという説が有力である。



そして第二に、「同じコンゴで」というが、ナンディ・ベアはケニアで目撃されているのであり、コンゴでは目撃されていない距離的にも、この二つの国は1800km以上離れている。全く別の二つのUMAを結びつけるため、飛鳥氏は北海道から鹿児島ぐらいの距離を無視する。

第三に、モケーレ・ムベンベ(コンゴ・ドラゴン)に毛は生えていない。目撃証言では表皮はスベスベした感じで、バイソンのそれに似た大きく暗い模様がついているそうだ。
その事に気づいたためか、あるいは恐竜土偶に毛が無かったためか、『ムー』の挿絵ではカミナリ竜に毛が描かれていない。申し訳程度に耳だけは付いているが、モケーレ・ムベンベの目撃証言では頭頂に小さな角が付いているというが、耳なんて無い。化石に跡が無くても角などの突起物がある可能性はあるが、耳の場合は内耳構造が必要なため、そうはいかない。
モケーレ・ムベンベがカミナリ竜であるならば、飛鳥説も見直しを迫られるだろう。


同様の例がそのすぐ後にあり、「毛むくじゃらの恐竜と思われる怪物は、南アメリカでも目撃されている(中略)原住民の間では『ヒムシェ(水トラ)』と呼ばれている」として、縞模様で三本爪の怪物が描かれている。その場所は、パタゴニア南部だそうだ。
(『恐竜の謎完全解明』P66,SSR1−P94)

南パタゴニアでは実際、怪物が目撃されている。しかしそれは、ナマケモノの祖先、メガテリウムだと推定されている。メガテリウムは全長5mでカギ爪を持ち、同じアルゼンチンで初めて化石が発見されている。
他にもメガテリウムの近種のミロドンだという説もあるが、いずれにせよこの怪物の正体は、新生代の巨大哺乳類であったとしても恐竜とは考えにくいのである。


ナマケモノの巨大な祖先メガテリウム

どこが恐竜やねん!
図・『謎の巨大獣を追え』P179より)





Update/1999.8.27
Addition/2000.10.13



参考文献
『まんが恐竜の謎 完全解明』 あすかあきお 小学館 1989年
『ショック・サイエンスR 〜恐竜絶滅の謎を解明する!!〜』
第一巻
あすかあきお アスキー 1998年
『恐竜絶滅の大真実』 あすかあきお 講談社 1992年
『謎の巨大獣を追え』 南山宏 廣済堂 1993年
全国こども電話相談室 
『学習まんがふしぎシリーズ6 怪獣のふしぎ』
――― 小学館 1979年



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