〜トンデモ超兵器ファイル[3]〜

書評
『人類最終兵器プラズナー』



用語解説




「お前は黙って買え! 買え! 買え!
 俺の新作を買え! 買え! 買え!!
     そしてもっと俺に金をくれ、バカ野郎!!

―― トゥール『アニマ』より(激爆)




さて、最近、ムーブックスで『人類最終兵器プラズナー』という新刊が発表された。僕としてはこのHPにプラズナー検証の記事を書いた後なので、何かしら反応があるものと楽しみにしていた。
‥‥しかし、見事に期待外れだった。

この本に少しでも期待をした自分が恥ずかしい。
(筆者は、これからは飛鳥氏の新刊には何の期待もしないことにする)

ムーブックスはムーの記事を編集、加筆したものなので、内容に新鮮味が無いことは置いておこう。(それにしても、ハイパーサイエンス・シリーズ以来、同じネタである)

しかるに、内容があまりにも粗雑なのである。
強弁を揮うばかりで、データ面では誤りだらけ。プラズナーの根拠となっているのは、お得意の“機密文書”ばかりである。その機密文書は、自分の命が関わっているので絶対に公開できないそうだ。お世辞にも、説得力があるとは言えない。

例えば、マイクロ波は水やコンクリートを透過できないという問題については、出力を上げれば水でも岩でも透過するのだと大雑把な理屈をつけてるが、根拠と言えるのは“Mファイル”のみである。
しかし、岩やコンクリートに高出力のマイクロ波を照射するとどうなるかは、マイクロウェーブ兵器により確かめられている。内部の水分が蒸発し、急激な体積膨張のため、破壊されてしまうのである。
こういう箇所もある。

「(マイクロ波は)出力を上げれば、レーダードームや戦闘機の先端、さらにイージス艦などの保護カバーなども貫通する」(P265、カッコ内筆者)

しかし、レドームをマイクロ波が透過するのはセラミックスやグラスファイバー、プラスチック素材といった電波を通す素材が使われているからであり、出力が高いせいではない。


次に、水ではどうか? 高出力にしたところでマイクロ波に対する減衰定数は変わらないのだから、多少は距離を伸ばせるとしても、進むに従い電界強度は下がる一方である。どの程度の出力なのかは書かれていないが、数ミリか数センチ距離を伸ばすのが関の山だろう。
水というのは導電率の高い物質であり、マイクロ波をその内部に吸収し、急速に減衰させてしまう(鉄に電気を流すようなものだ)。当然、すぐに拡散してしまうので、指向性など全く期待できない。
出力を上げるなどという単純な方法でマイクロ波を透過できるなら、とっくに世界中でソナーの代わりや潜水艦の通信に利用されていただろう。

ここで、飛鳥氏の主張を見てみよう。なかなか笑わせてくれる。

マイクロ・ウェーブは海の底まで届く」(P313)

いきなり常識外れの言葉が飛び出して来たが、根拠も証拠も書かれていない。ちなみに、電波の波長が長いほど水中深くと交信できるが、原潜に使われる極超長波でさえ、水深100mほどでなければ受信できないのだ(条件によってはより深くできるそうだが)。

「これまで、マイクロ・ウェーブは水に弱く、レーダーで潜水艦を発見することは困難であるというのが常識だった。今でもそう思っている人は少なくない。
だが、アメリカの電磁波技術を甘く見てはいけない。とっくの昔に、対潜水艦用のプラズナーが開発されているのだ」(P314)

まさしく、このHPで「あとは、公開はできないが、米軍やらNSAやらの極秘資料があるのだと主張するしかない」と書いた通りである。
さらに、こう続く。

「ちなみに、世界でもっとも潜水艦探知システムが進んでいるのは、日本である。日本海溝の底まで行っても、地上と交信できるほどのレベルを誇っている。いったい、どこが開発しているのかは、ここではいえないが――」(P315)

‥‥やはり、何かを勘違いしているらしい。まるで極秘情報のように秘密めかして書いているが、潜水艇というのは音波で交信しているのである。潜水艦探知システムにも音波が使われている(この技術で日本が最も優れているというのは、言うまでもなく過大評価である。対潜哨戒機P3Cにしても、アメリカから輸入しているではないか。まあ、そもそも基本的な誤解から生じた評価だが)。


次に、中性粒子ビームについてである。
SDIで開発された中性粒子ビームは、核弾頭を破壊できるほどの破壊力はないが、プラズマなら発生させられるという。
ここでもまた、“交差させればいいのだ”という、単純極まる理屈で片付けられている。

「しかし、それを交差させるとなると話は別である。SDIで開発された中性粒子ビームで、十分、プラズマを発生させることができるのだ」(P356)

むしろ、あまり強力すぎると反射鏡まで破壊されるので、破壊力が小さい方がいいという。
中性粒子ビーム照射システムはエリア51に設置されているが、その上空に浮かぶ静止衛星(笑)を介し、地球上全てを攻撃できるという。

しかし、プラズマを発生させるためには1平方センチあたりエネルギー密度10〜1000ジュールの熱量を集中させればよく、交差させる事は別に必要ではない。もちろん、確かに交差させればその分、少なくとも二倍のエネルギーを与える事ができるだろうが、問題はそれ以前にある。
指向性エネルギー兵器は距離のニ乗に反比例して急速に減衰してしまうので、静止衛星を介して地上を攻撃するような場合には、当然、莫大な出力を必要とする。そうすると、衛星に到達する以前にプラズマを形成してしまうのである。前にも書いたが、このためにSDIでは数十〜数百メートルほどの射程距離しか得られなかったのである。
数千キロ離れたミサイルを焼き切る出力のないビーム兵器でも、こうした問題を抱えているのである。
SDIで開発された中性粒子ビームで十分とは、素人考えもいいところである。

いや、中性粒子ビームの場合は、さらにそれ以前に問題がある。
荷電粒子ビームは磁場によって軌道が曲げられてしまう。そこで、中性粒子ビームでは電気的に中性な水素粒子を加速して撃ち出すわけだが、空気の分子に触れるやいなや直ちに荷電粒子に変化してしまい、予測不可能ならせん軌道になってしまうのである。
このため、中性粒子ビームは宇宙空間での使用を想定して研究されていたのだ(宇宙空間でも地球の周りには磁場があり、荷電粒子ビームは使えない)。

飛鳥氏がなぜ、SDIで研究された数ある指向性エネルギー兵器の中から、中性粒子ビームなどというプラズナーに不向きな兵器を選んだのか、とても不思議である。(核融合炉で使用されているためか?)

それから、中性粒子ビームなら小型の鏡衛星で充分とも書かれているが、静止軌道を使用するなら、20mは必要だろう。ビームやレーザーでも長い距離を進めば拡散するのであり、それを再び収束させるためには、巨大な凹鏡が必要なのである。

他に、この本で気になった細かいミスに、次のようなものがある。
直接プラズナーとは関係しないが、それだけにこの本のズサンさを客観的に例証してくれると思うので、一応書いておくことにしたい。





P42 アイゼンハワーが1935年に大統領就任とあるが、1953年の間違い。誤植か?
P66 ケネディ暗殺の時、ジャクリーン夫人が車を降りようとしたとあるが、ジャクリーン夫人はこの時、ボンネットに散らばった脳ミソを掻き集めていた。
P73 レーガン大統領が暗殺未遂事件の後、積極的な軍事強化政策に乗り出すとあるが、軍事強化は就任以来のレーガンの一貫した政策である。ホワイトハウス入りした’81年3月には1兆5000億ドルもの長期国防5か年計画を決定している。
P254 電子レンジ内部では目には見えないがプラズマが発生しているとあるが、電子レンジで物が温まるのは、マイクロ波で振動した水分子同士が摩擦されるためである。レーダー近くで水が温まる事から、この原理が発見された。
P331 ロスアラモス研究所を設置したのはエドワード・テラーとあるが、ロスアラモス国立研究所はマンハッタン計画で設立されたのであり、テラーが設立させたのはローレンス・リバモア国立研究所である。同じ本のP95、96とさえ矛盾している。


参考文献
人類最終兵器プラズナー 飛鳥昭雄/三神たける 学研 1999





Update/1999.11.11
Renewal/2000.2.27


UFO2 最後の真実
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